草思社のblog

ノンフィクション書籍を中心とする出版社・草思社のブログ。

格差拡大のドイツ、持続不可能な日本――我々の老後はどうなるのか 『老後の誤算 日本とドイツ』川口マーン惠美 著

老後の誤算 日本とドイツ
川口マーン惠美 著

◆意外なことに格差社会! ドイツの医療と介護の現在

 ドイツの医療や介護といえば、多くの人が典型的な福祉国家のそれをイメージするでしょう。しかし、ドイツ在住36年の著者によれば、実はまったくそうではありません。
 ドイツでは、一般的な「法的強制医療保険」と、お金持ちのための「プライベート医療保険」の医療格差が問題になっています。強制保険の患者は、近所のクリニックでさえすぐに診てもらえず、数日待ちも珍しくありません。プライベート保険の加入者しか診ない医院も増えていて、強制保険の患者はそういう医院では、門前払いとなります。
 また、高齢者介護でも、格差が問題になっています。老人ホーム費用は、介護保険を使っても自己負担が月額20万円を超えることが普通で、事実上お金持ちしか入れず、庶民には高嶺の花。日本の「特別養護老人ホーム」のように、リーズナブルな値段で入れる老人ホームの制度はありません。
 これらの原因の一つは、高齢化です。日本は世界第1位の高齢国家ですが、ドイツも実は世界第4位。高齢化が社会を蝕みつつある状況は日本と同じで、その影響がさまざまに表出しているのです。

◆2025年問題。「ではどうすればいいのか」を考えるヒントが国際比較に

 とはいえ、日本のほうがずっと高齢化が進んでおり、事態は深刻です。たとえば、日本の人口あたりの医師の数は、実はドイツの6割以下。現状でも医療現場に非常に大きな負荷がかかっていますが、団塊の世代が後期高齢者となる2025年以降、増加する患者に対応しきれるかどうか、心配されています。介護人材についても、2035年にはじつに79万人が不足すると予測されています。
 日本のほうが深刻さの度合いが高いのに、介護や医療において、日本はドイツより恵まれています。ということは、その持続可能性は、ドイツよりずっと低いと考えるべきでしょう。
 ではどうすればいいのか。今、手を打たないと、将来にわたって、国を支えるべき若い人たちに過重な負担を掛け、日本を衰退させることになりかねません。
 その「どうすればいいのか」を考えるとき、他国と比べることにより、学ぶこと、気づくことは少なくないはずです。ドイツの失敗や成功を知り、日本の「当たり前」がじつは当たり前ではないことに気づき、日本特有の問題が何なのかを認識する。空理空論に陥りがちな各種施策にかんする議論も、ドイツの実例を踏まえれば、リアリティを持ったものになるにちがいありません。
 豊かな国を若い世代に引き継ぐため、この議論は今すぐ、はじめなければなりません。本書がそのきっかけとなることを願っています。

(担当/久保田)

著者紹介

川口マーン惠美(かわぐちまーんえみ)
作家。ドイツ在住。日本大学芸術学部音楽学科ピアノ科卒業。シュトゥットガルト国立音楽大学院ピアノ科修了。『ドイツの脱原発がよくわかる本 日本が見習ってはいけない理由』(草思社)が第36回エネルギーフォーラム賞の普及啓発賞、『復興の日本人論 誰も書かなかった福島』(グッドブックス)が第38回同賞の特別賞を受賞。その他、『住んでみたドイツ 8勝2敗で日本の勝ち』(講談社+α新書)、『ヨーロッパから民主主義が消える』(PHP新書)、『そしてドイツは理想を見失った』(角川新書)、『ドイツ流、日本流』、『脱原発の罠』(以上、草思社文庫)など著書多数。2011年より、ウェブマガジン『現代ビジネス』にてコラム『シュトゥットガルト通信』を連載中(毎週金曜日更新)。

f:id:soshishablog:20181130114216j:plain f:id:soshishablog:20181130114237j:plain

Amazon:老後の誤算 日本とドイツ:川口マーン惠美:本

楽天ブックス: 老後の誤算 日本とドイツ - 川口 マーン 惠美 - 9784794223616 : 本

老後の誤算 日本とドイツ | 書籍案内 | 草思社

 

原節子か山本富士子か淡島千景か有馬稲子か淡路恵子か 『女優にあるまじき高峰秀子』斎藤明美著

女優にあるまじき高峰秀子

斎藤明美 著

 本書は高峰秀子の養女・斎藤明美さんが書いた「高峰秀子論」であるとともに、日本映画「女優論」ともいうべき内容になっている。著者は週刊誌の取材記者として20年のキャリアがあるが、その取材のなかでのべ300人の女優にインタビューしているという。数人を除いで多くの女優は傲慢で傍若無人だった。「私は女優よ」というオーラを周囲に漂わせていた。その女優たちの振る舞いと高峰峰子の静かなたたずまいを対比的に描くのが本書の狙いである。女優たちはいずれも高名な人たちらしいがすべて匿名である。
 ●インタビューの最中にたびたび四十過ぎの息子から電話があり、「ママ、いま取材中なのよ」と答えていた女優(「マネージャー、付き人を持たない」の項)。
 ●「目立ちたくないの」と言いながら真っ赤なスカーフに大きな真っ黒のサングラスをかけてきて「かえって目立っていた」女優(「目立つのが嫌い」の項)
 ●出したばかりの自伝で某監督との不倫沙汰を細かく書いていたのに「それには触れないで」と声を荒げた女優(「話が短い」の項)。
 ●お抱えの運転手が「あの人は畳の上じゃ死ねないよ」とさんざん悪口を言っていた女優(「人の手を煩わせない」の項)。
 などなど、さまざまなエピソードが出てくるが、誰だろうかと推測して読むのも面白い。
 高峰秀子と同時代の日本映画黄金時代の女優たち、例えば山本富士子か淡島千景か有馬稲子か淡路恵子か。著者は教えてくれないのでわからない。
 ただ、「自然に引退した」という項で触れられている女優はおそらく原節子だろうということはわかる。高峰が五十五歳で「引退します」と言ってあっさりやめてからの晩年の静穏な生き方に比べて、原は「なぜ辞めた」のかも不明で、一切の取材にも応じず、かえって世の関心を引き続けた。そこに女優の目立ちたいのに目立ちたくないという屈折した過剰な自意識を著者は見ている。原節子の晩年は謎であるが、本書のような見方は一理あって面白い。

 (担当/木谷)

f:id:soshishablog:20181126120007j:plain f:id:soshishablog:20181126120040j:plain

Amazon:女優にあるまじき高峰秀子:斎藤明美著:本

楽天ブックス: 女優にあるまじき高峰秀子 - 齋藤 明美 - 9784794223630 : 本

女優にあるまじき高峰秀子 | 書籍案内 | 草思社

知る人ぞ知る「伝説の古典」の教えを、わかりやすい現代語訳と解説文で紹介 『新釈 猫の妙術』佚斎樗山 著  高橋有 訳・解説

新釈 猫の妙術

ーー武道哲学が教える「人生の達人」への道

佚斎樗山 著  高橋有 訳・解説

 本書の親本である『猫の妙術』は、江戸時代の中頃に書かれた「剣術指南本」です。著者である佚斎樗山(いっさい・ちょざん)は下総国関宿(せきやど)藩の久世家に仕えた侍ですが、当時の啓蒙書「談義本」を多く書き、人気を博した人物でもありました。
 幕末の剣聖・山岡鉄舟は自分の所蔵する多くの兵法書を門下に自由に閲覧させていましたが、この『猫の妙術』だけは容易に人に見せなかったといいます。そんな剣聖にとっても唯一無二の書であり、また武道をたしなむ人間の間でひそかに読み継がれてきた『猫の妙術』は、剣術指南本とはいいながらも技術的なことにはまったく触れず、ひたすらに「心」の在り方を問題にする不思議な本でもあります。
 無敵の大ネズミをみごとに退治してみせた古猫が、剣術家と若い猫たちに「勝負」に際しての心の持ちようを教え諭す――というシンプルな枠組の物語ではありますが、そこに含まれている内容は深淵で、十全に内容を理解するには、老荘思想や禅の知識なども必要になるとされているのです。
 その古典の奥深い教えを、現代風にわかりやすく紹介するのが本書です。原典の物語のセリフや背景を補い、予備知識なしでもすっきり頭に入る内容になっています。また、より深く理解していただくために、最後に訳者によるガイドもつけてあります。
 私たちは人生のさまざまな場面で否応なく「勝負」に直面します。そんなとき、肩の力を抜いて自然体で臨むことができたら、どんなに素晴らしいでしょうか。この本は、まさにそのための心構えを教えてくれる一冊なのです。

【目次より】
〈新釈パート〉
第一章 猫、大鼠の退治に臨む 
第二章 古猫、「勝負」と「上達」を語る 
第三章 勝軒、「世界」を我がものにす

〈解説パート〉
・三匹の猫はなぜ負けたのか
・「無限」に対応できる「技」でなければ勝つことはできない
・「浩然の気」とは何か?
・「作為」をなくす二つの段階
・「道理」は、「技」と一貫している
・すべてが一貫した先にある境地
・「勝ちたがる自分」を殺す
・物事の「とらえ方」の枠組みを外す
・「一」で物事をとらえれば人生の苦しみもなくなる
・「言葉」から「道理」を会得する

(担当・碇)

著者紹介

佚斎樗山(いっさい・ちょざん)

万治2年(1659年)~寛保元年(1741年)。下総国関宿藩の久世家に仕えた。当時の啓蒙書「談義本」を多く書き人気を博す。本名・丹羽十郎右衛門忠明。

訳者紹介

高橋有(たかはし・ゆう)

東京都生まれ。文学修士(国文学専攻・専門は漢文学)。幼少期より剣道、空手、柔術、総合格闘技などさまざまな武術を経験。現在も修行中。

f:id:soshishablog:20181113093229j:plain f:id:soshishablog:20181113093245j:plain

Amazon:猫の妙術:武道哲学が教える「人生の達人」への道:佚斎樗山著 高橋有 訳解説:本

楽天ブックス: 新釈 猫の妙術 - 武道哲学が教える「人生の達人」への道 - 佚斎 樗山 - 9784794223609 : 本

 

「データの力」が選挙を左右する――どころではなかった! 『操られる民主主義――デジタル・テクノロジーはいかにして社会を破壊するか』ジェイミー・バートレット著 秋山勝訳

操られる民主主義――デジタル・テクノロジーはいかにして社会を破壊するか
ジェイミー・バートレット著 秋山勝訳 

「トランプ大統領」を誕生させたケンブリッジ・アナリティカとは?

 今年(2018年)5月、イギリスのデータ分析会社「ケンブリッジ・アナリティカ」が破産手続きを申請した。
 2016年のアメリカ大統領選挙でトランプ陣営の情報戦争の中枢となった企業である。筆頭株主はトランプの支援者である大富豪のロバート・マーサー、取締役にはトランプ陣営の選挙参謀スティーブ・バノンが就いていた。(このあたりはジョシュア・グリーン著『バノン 悪魔の取引』に詳しい)
 同社は創業以来、2億数千万人におよぶアメリカ国民についてのデータベースを作り上げていた。「こうしたデータには、商業ベースの情報源から購入したインターネットの閲覧履歴、購入記録、所得記録、投票記録もあれば、フェイスブックや電話調査で収集された記録もあった」(本書第3章)という。
 そのビッグデータの分析に基づいて有権者をターゲットグループに分け(これを「ユニバース」と呼ぶそうだ)、それぞれの特性に応じたもっとも効果的な選挙キャンペーンを行っていた。本書は同社スタッフへの直接取材を通じて、その手法と実態についての貴重な証言を得ている。

イギリスのEU離脱、ロシアの米大統領選介入にも関与?

 同社は同年のイギリスのEU離脱投票においてもコンサルタントとして参加しているが、この英国国民投票と米国大統領選において個人情報の不正取得が疑われた。さらに米国大統領選へのロシアの介入疑惑についても、同社の手法が関与していた疑いも持たれ、そうした攻撃のさなかに同社は破産の道を選んだ。
 一国の動静をも左右する影響力を「データ分析」が生み出している。もちろんデータによる選挙戦略はネット登場の前から存在してはいるが、デジタル技術の急激な進化によるネットの、SNSの拡大、ビッグデータの分析等々はこれまでになかったスケールの変化を、きわめて見えにくい形でもたらしている。

デジタル技術は自由で民主的な世界を産み出したのか?

 本書の著者はイギリスのシンクタンク「デモス(Demos)」ソーシャルメディア分析 センターのディレクター。むろんデジタル技術の進化を否定するものではない。だが、デジタルメディア分析の専門家であるからこそ、いま現在進行形で起こりつつある事態に対して深刻な危機感を覚えている。
 たしかにネットの進化は、政治的な国境を越え、言語や文化の違いを超えて、全地球規模での自由な情報の交換と拡散を実現していると言える。SNSがジャスミン革命で活躍したように、旧来の強権による閉塞した抑圧的な社会に風穴があき、そこには自由で民主的な理想の世界が生まれるはずだ。
 が、現実はどうなのか。デジタル技術がもたらす革命は、同時に、予想されなかった変化をももたらしている。アラブの春がもたらしたものは何だったか。旧政権の打倒は新たな秩序ではなく果てしない混乱を産み出し、国境をまたぐテロリスト集団を産み出したとさえ言われる。
 もちろん、それらすべてをデジタル技術の責に帰することはできない。しかし、デジタル技術の急速な進化がもたらす影響は、人間の行動や思考の基盤を揺さぶり、民主主義社会そのものを揺るがしつつある。それが本書の指摘だ。

「私以上の私のことが知られる」監視社会、そして自由意志のゆくえ

 私が何を見て、何に関心をもち、何に「いいね!」を付けたか。そうした痕跡はすべて記録され、ネット経由で吸い上げられて膨大なビッグデータに取りこまれる。それを分析することによって「私が何者か」が驚くべき精度で、「私が知っていた以上に」把握されるという。あらゆる個人のあらゆる行動が把握されてしまう、新たなパノプティコン(全展望監視システム)社会の到来である。
 そうして個人特性が知られてしまうと、私の好みに合った商品情報が呈示されれば、私は思わずそれを買ってしまうだろう。商品のかわりに私の感情に心地よい言葉を吐く「候補者」を置けば、その名前を投票用紙に書くだろう。
 膨大なデータ分析に覆われた社会で「自由意志」はどこまで自由なのか。

感情が解き放たれ、増幅され、部族化し断片化する世界

 民主主義に求められるものは、冷静で論理的な熟考と感情に左右されない抑制の力である。それによって異なる意見も穏当な妥協点を見出していく。だが、インターネットでは直感的で感情的で本能的な思考が増幅されていく。
 間違っているのは相手であって、正しいのは自分である。意見をともにする集団が出来、意見を異にする集団と衝突、排除が始まる。こうした「部族」化によって従来の民主主義の下でコントロールされていた暴力性が解き放たれ、世界は妥協点を見失ったまま果てしなく断片化していく。

技術を持つものが世界を独占し、持たざるものとの分断が拡大する

 デジタル技術はさらに、それを持つものと持たざるものとの格差を拡大させていく。ビジネスではフェイスブック、ツイッター、アマゾン、グーグルなど自らのプラットフォームを持つ企業がより強力に支配領域を広げていく。
 人工知能の発展は旧来の仕事を奪う一方で、新たな仕事を産み出す。だがその「新たな仕事」のスキルを持つ人びとと持たない人びととの収入格差はどんどん拡大していく。こうして世界の分断化は止めようがなく広がっていく。

民主主義の脆弱さが露呈し、人間社会が抱え持つ問題が噴出する

 技術の発展はつねに光と影をともなってきた。デジタル技術もまた同様かもしれない。だが、その進化の速度はあまりにも速すぎる。問題の本質を把握し対応しようとしている間に、社会基盤の変容はとっくに先に進んでしまっている。アナログの存在である人間が追いついていないのだ。
 民主主義はデジタルではない。そもそも自由と民主主義はあい矛盾するものである。その矛盾を孕んだまま民主主義というシステムはさして進化することもなく、21世紀の今日までなんとか持ちこたえてきた。
 だが現在、デジタル技術は民主主義の脆弱さの亀裂を広げ、その亀裂から続々と問題が噴出しはじめている。デジタルという光が、人間社会の抱え持つダークサイドを掘り起こして世にバラまきつつあるのか。
 現在進行形の難題の数々を、本書は手際よく整理して突きつける。そこに見えてくるわれわれの社会の未来は、輝くユートピアか、それとも引き返すことのできないディストピアなのか。

(担当:/藤田)

著者紹介

ジェイミー・バートレット

イギリスのシンクタンク「デモス(Demos)」ソーシャルメディア分析センターのディレクター。ジャーナリスト。専門はオンライン上の社会運動やテクノロジー、ビッグデータの調査手法の研究。著書に『闇ネットの住人たち:デジタル裏社会の内幕』(CCCメディアハウス)、Orwell versus the Terrorists: A Digital Short(2015)、Radicals Chasing Utopia: Inside the Rogue Movements Trying to Change the World(2017)がある。2018年にはBBCでシリーズ「シリコンバレーの秘密」を担当している。

訳者紹介

秋山勝(あきやま・まさる)

立教大学卒業。出版社勤務を経て翻訳の仕事に。訳書に、ジャレド・ダイアモンド『若い読者のための第三のチンパンジー』、デヴィッド・マカルー『ライト兄弟』、曹惠虹『女たちの王国』(以上、草思社)、ジェニファー・ウェルシュ『歴史の逆襲』、マーティン・フォード『テクノロジーが雇用の75%を奪う』(以上、朝日新聞出版)など。

f:id:soshishablog:20180927103003j:plain f:id:soshishablog:20180927103017j:plain

Amazon:操られる民主主義 デジタル・テクノロジーはいかにして社会を破壊するか:ジェイミー・バートレット著 秋山勝訳:本

楽天ブックス: 操られる民主主義 - デジタル・テクノロジーはいかにして社会を破壊するか - ジェイミー・バートレット - 9784794223524 : 本

操られる民主主義 | 書籍案内 | 草思社

クローゼットがきれいな人はなぜ「見た目」も美しいのか? 『私を美しく変える クローゼットのつくり方』ジェニファー・バウムガードナー 著 藤井留美 訳

私を美しく変える クローゼットのつくり方

ジェニファー・バウムガードナー 著 藤井留美 訳

■アメリカで人気の女性心理学者が教える「自分」と「クローゼット」の劇的改造法とは?

 いくつになっても「洋服の悩み」は尽きることはありません。しかも、年齢が上がるごとに悩みはより複雑化して、手に負えなくなっているのではないでしょうか?

    古い服や着ない服を捨てられない。
    同じような服ばかり着てしまう。
    自分に合う服が見つからない
    クローゼットはいつもごちゃごちゃ…

 本書は、こうした多くの女性が抱える「洋服の悩み」を心理学者である著者が、心理的アプローチを用いながら、解決に導く本です。
 一見誰でもができそうな“クローゼット改造”という行動を通じて、着る服のみならず、自己イメージが劇的に変わり、充実した人生へと歩き出すきっかけができる。そんな一挙両得の方法を本書では紹介します。

■無意識の服選びのパターンから、今のあなたの本当の問題がわかる!

 その具体的手法とは、まず今あるクローゼットの中身を分析し、過去の服選びのパターンから、無意識の服装選びを左右する“心理的な原因”をあぶりだし、自己の内面を掘りさげるところから始めます。
 なぜぶかぶかの洋服ばかり買ってしまうのか、なぜ実年齢よりも若い服を買ってしまうのか、なぜ目立つ服を着たくないのか……。溜め込み続けた洋服の一点一点と向き合うことは自分の内面と向き合い、自問自答をするようなものなのです。
このまるでカウンセリングのような過程を通じて、本人も気づかない過去のトラウマ、今の苦悩、未来の目標が明らかになっていきます。
 著者は、「これから先どんな人間に成長していきたいか(未来の目標)」がわかって初めて、今、本当に着るべき服を選べるようになるといいます。
 まさに、表面的なファッションのみならず生き方までを根本的に変えていく、このユニークな試みは、服装に悩む多くの日本人を救ってくれることと思います。ぜひお試しください。

■目次より 
第一章 買って、買って、買いまくる――必要以上に服を買ってしまう
第二章 さよならのとき――あふれるクローゼット
第三章 私はゾンビ――無難の殻を破りたい
第四章 私はタイムトラベラー――年齢と服装のギャップ
第五章 キャリアウーマンの幻想――仕事着以外の服がない!
第六章 ちがいのわかる女?――全身ブランドずくめ

(担当/吉田)

著者紹介

ジェニファー・バウムガードナー

気分障害、不安障害、物質関連障害、摂食障害を専門とする臨床心理学者。研究テーマは運動、栄養、心理的健康と多岐にわたる。多くの患者に接した経験から「服装の心理学」という画期的なアプローチを考案し、実践している。ワードローブ診断で、服装の選び方を左右する心理的な原因をあぶりだし、自己の内面を掘りさげることで、ファッションのみならず生き方まで変えていくこの試みは、服装に悩む多くの人に救いをもたらしている。

訳者紹介

藤井留美 (ふじい・るみ)

翻訳家。訳書にアニル・アナンサスワーミー『私はすでに死んでいる』(紀伊國屋書店)、エイミー・パーディ他『義足でダンス』(辰巳出版)、アネット・アンチャイルド『女友だちは自分を映す鏡です』(講談社)、アラン・ピーズ+バーバラ・ピーズ『話を聞かない男、地図が読めない女』(主婦の友社)ほか多数。

f:id:soshishablog:20180911174334j:plain f:id:soshishablog:20180911174343j:plain

 Amazon:私を美しく変える クローゼットのつくり方:ジェニファー・バウムガードナー 著 藤井留美 訳:本

楽天ブックス: 人生を変えるクローゼットの作り方 あなたが素敵に見えないのは、その服のせい - ベティ・ホールブライシュ - 9784087816433 : 本

 

日本という「裏口」を使って大戦へ参戦したルーズベルト外交を批判的に検証 『裏口からの参戦 [上][下] ルーズベルト外交の正体 1933-1941』チャールズ・カラン・タンシル 著 渡辺惣樹 訳

裏口からの参戦 [上][下]  ルーズベルト外交の正体 1933-1941

チャールズ・カラン・タンシル 著 渡辺惣樹 訳

 本書は第二次世界大戦の終結から間もない1952年に刊行され、大戦における米国の大義をまっこうから否定したことで議論を呼んだ歴史書 “Back Door To War”の全訳です。ヨーロッパで始まっていた大戦への介入に拒絶反応を示す米国世論を「開戦やむなし」に誘導するために、ルーズベルト大統領が利用したのが日本という「裏口(Back Door)」だった、というのが書名の由来です。
 著者のチャールズ・カラン・タンシルは当時、ジョージタウン大学で教鞭をとっていた外交史の専門家で、本書では主として米国務省に残されていた一次資料に依拠して戦間期の欧米諸国および日本の熾烈な外交交渉のプロセスを検証しています。
 「アメリカの若者を決して戦場に送らない」という公約で大統領選挙を闘い、異例の三選を果たしたルーズベルトは、一方で密かに世界大戦への参戦をもくろみ、枢軸国側にさまざまな揺さぶりをかけました。
 アメリカを戦争に引き入れて戦況を好転させたいイギリス、ルーズベルトの挑発をたくみにかわし続けるヒトラー。著者は歴史学の正当な手続きに則って列国が繰り広げた虚実紙一重の駆け引きを検証し、最終的にルーズベルトの仕組んだ「罠」にはまったのが日本だった、という衝撃的な見方を提示するのです。
 本書が世に出た1952年、アメリカは泥沼の朝鮮戦争を戦っていました。そういう時期に、直近の戦争におけるアメリカ外交の欺瞞を白日のもとに晒す本を世に出したことで、著者は厳しいバッシングにさらされ、それは著者が1964年に世を去るまで変わりませんでした。
 しかし、著者の見方を強力にサポートする証言や資料、刊行物はその後も出続け、その中には31代米国大統領ハーバート・フーバーの『裏切られた自由(原題FREEDOM BETRAYED)』や、共和党の重鎮ハミルトン・フィッシュの『ルーズベルトの開戦責任(原題FDR:The Other Side of Coin)』といった、同時代を生きた米政界の大立者による記録も含まれます。
 どのような角度から光を当てるかによって、まったく異なった見え方をするのが歴史というものですが、本書が照射する歴史の断面は日本人の歴史認識にとってきわめて重大な意味を持つにもかかかわらず(あるいはそれゆえに)、これまで実質的に黙殺されてきました。本書が、真摯に歴史に向き合おうとする心ある読者の目に留まることを願ってやみません。

(担当/碇)

著者紹介

チャールズ・カラン・タンシル

1890年生まれ。アメリカの歴史学者。ジョージタウン大学教授(1944~1957)。第二次世界大戦開戦以前は不干渉主義の立場をとり、戦後はルーズベルト外交を痛烈に批判したことで知られる。本書のほか、“America goes to War”など、アメリカ史、アメリカ外交に関する多数の著作がある。1964年没。

訳者紹介

渡辺惣樹(わたなべ・そうき)

日本近現代史研究家。北米在住。1954年静岡県下田市出身。77年東京大学経済学部卒業。30年にわたり米国・カナダでビジネスに従事。米英史料を広く渉猟し、日本開国以来の日米関係を新たな視点でとらえた著作が高く評価される。著書に『日本開国』『日米衝突の根源1858-1908』『日米衝突の萌芽1898-1918』〔第22回山本七平賞奨励賞受賞〕(以上、草思社)、『激動の日本近現代史 1852-1941』(共著・ビジネス社)、『戦争を始めるのは誰か』『第二次世界大戦 アメリカの敗北』(以上、文春新書)など、訳書にフーバー『裏切られた自由(上・下)』、フィッシュ『ルーズベルトの開戦責任』、レコード『アメリカはいかにして日本を追い詰めたか』、マックウィリアムス『日米開戦の人種的側面 アメリカの反省1944』(以上、草思社)などがある。

f:id:soshishablog:20180817100539j:plain f:id:soshishablog:20180817100548j:plain

Amazon:裏口からの参戦[上]ルーズベルト外交の正体1933-1941:チャールズ・カラン・タンシル 著 渡辺惣樹 訳:本

Amazon:裏口からの参戦[下]ルーズベルト外交の正体1933-1941:チャールズ・カラン・タンシル 著 渡辺惣樹 訳:本

楽天ブックス: 裏口からの参戦 上 - ルーズベルト外交の正体1933-1941 - チャールズ・カラン・タンシル - 9784794223487 : 本

楽天ブックス: 裏口からの参戦 下 - ルーズベルト外交の正体1933-1941 - チャールズ・カラン・タンシル - 9784794223494 : 本

 

「スゴい」「ヤバい」でなく「杞憂だね」「五十歩百歩だ」と言おう 『こども故事成語 怒髪 天を衝く』齋藤孝 著 丸山誠司 絵

声に出して読みたい・こどもシリーズ

こども故事成語 怒髪 天を衝く

齋藤孝 著 丸山誠司 絵

 SNSの発達の影響か、日本語の乱れがはなはだしくなっている。「スゴい」「ヤバい」と言った言葉の多用で語彙は貧困になり、短文で、どぎつい言葉の氾濫が見られる。
 本書の著者の齋藤孝さんは『語彙力こそが教養である』(角川書店)『大人の語彙力ノート』(ソフトバンク)などのベストセラーで、若者たちに「語彙力」「表現力」「コミュニケーション力」が社会での活躍に欠かせないということを訴えている。本書でも「故事成語」という古くからある慣用句を子供の時から覚えておくことの重要性を主張している。国語のテストの点数を上げるという直接的な効用だけでなく、子どもの生きる力を養ってくれるというのである。「人間は言葉でものを考えるから、言葉が少なければ、感情や思考が単純になってしまう。」「スゴい、ヤバいの一言ですべてをすましてしまうと、それ以上は考えなくなって、思考が止まってしまう。」(本書はじめにより)
「考えすぎ」「心配しすぎ」のことを「杞憂だね」と言うと、教養人に見られるし、表現に深みが生まれる。これは「杞憂」が古い中国の故事から生まれた慣用句であるからだ。『列子』にある逸話で、「杞」という国の人が天から空が落ちてくることを心配して夜も眠れなくなるという話が由来である。「杞憂」の「杞」というのは古代中国の国名なのである。また「たいして違いがないこと」を「五十歩百歩だね」と言うが。これは『孟子』にある逸話が由来で、孟子がある国の王様に「戦場で五十歩逃げた兵士と、百歩逃げた兵士は臆病であることに変わりがない(だから論功行賞では差をつける必要がない)」と助言した故事がもとになっている。こうした歴史的背景があって出来てきた慣用句を使って語彙を豊かにしていると(あるいはその背景まで知っていると)、思考や感情まで豊かになり、他人との会話が広がり、物事がスムーズにいくことが多い。人間は言葉でできている動物なのである。
 本書は「古い慣用句」「決まり文句」「面白い昔からの表現」「古代中国の逸話が由来の言葉」――いわゆる「故事成語」を楽しいイラストで覚えるように構成されたとても役に立つ教育絵本である。

(担当/木谷)

著者紹介

齋藤孝(さいとう・たかし)

1960年、静岡県生まれ。東京大学法学部卒業、同大学大学院教育学研究科博士課程を経て、現在、明治大学文学部教授。専攻は教育学、身体論、コミュニケーション技法。著書に『宮澤賢治という身体』(世織書房、宮沢賢治賞奨励賞)『身体感覚を取り戻す』(日本放送出版協会、新潮学芸賞)『声に出して読みたい日本語』(草思社、毎日出版文化賞特別賞)など多数。近著に『語彙力こそが教養である』(角川書店)『こども孫子の兵法』(日本図書センター)『大人の語彙力ノート』(ソフトバンク)『こども論語』『こどもギリシア哲学』『こども西郷どん』(いずれも草思社)など。NHK・ETV「にほんごであそぼ」監修など、マスコミでも活躍中。

イラストレーション

丸山誠司(まるやま・さとし)

本デビュー。『おしろとおくろ』(佼成出版社)、『こんなことがあっタワー』(えほんの杜)、『だるまなんだ』(文・おおなり修司 絵本館)、『でんしゃずし』(交通新聞社)など、ユニークで楽しい絵本を多数発表。絵本のほか、書籍や雑誌・広告イラストレーションの分野でも活躍。「僕ビール、君ビール。」のパッケージが話題。

f:id:soshishablog:20180809174705j:plain f:id:soshishablog:20180809174720j:plain

Amazon:声に出して読みたい・こどもシリーズこども故事成語 怒髪 天を衝く:齋藤孝 著 丸山誠司 絵:本

楽天ブックス: こども故事成語 - 怒髪天を衝く - 齋藤 孝 - 9784794223500 : 本