草思社のblog

ノンフィクション書籍を中心とする出版社・草思社のブログ。

うつ治療に起きつつある革命を、世界的権威がわかりやすく解説 『「うつ」は炎症で起きる』エドワード・ブルモア著 藤井良江訳

「うつ」は炎症で起きる

エドワード・ブルモア著 藤井良江訳

◆炎症が「うつ」を引き起こすという科学的証拠が積み上がっている

 うつ病はもっぱら心や脳の問題だと考えられてきましたが、このところ、身体の炎症によりうつ病になるという証拠が、多くの研究により示されています。このことが長年にわたり停滞気味だったうつ病治療の進展に革命をもたらそうとしています。本書はその「革命」の現状や意義、これまでの経緯を、精神医学の権威がわかりやすくまとめたものです。
 本書で紹介されている研究結果は、驚かされるものばかりです。たとえば、9歳のときに血液中の炎症マーカーが高かった子は、18歳でうつ病になる確率がそうでない子の1.5倍という研究があります。高齢者でも、慢性炎症と言えるほど炎症マーカーが高かった60代女性の場合、その8年後にうつ病になる確率はそれ以外の人の3倍という結果が出ています。より短期間の影響としては、肝炎治療のためにインターフェロンを使って患者に人工的に激しい炎症を起こさせると、3分の1ほどの人がうつ状態に陥ることが知られています。また、うつ病患者は平均値より有意に炎症マーカーの値が高いことも示されています。さらには、心理的社会的ストレスによって炎症が起きることも最近の研究で明らかになっており、ストレスがうつ病を引き起こす際にも、炎症が重要な役割を演じていることが示唆されます。

◆長年停滞していたうつ病の治療法開発に、ようやく光が見えてきた

 精神科医である著者が本書の中で告白していますが、じつはうつ病は、驚くほどわかっていないことが多い病気です。うつ病には、血液検査などで測れるマーカーがないので、うつ病の診断は問診に頼りがちになっています。「セロトニン」と呼ばれる脳内伝達物質が不足することが原因だと考えられていますが、個々の患者のセロトニンを測る方法はありません。そのため、セロトニン不足を解消する「プロザック」などの薬が効いているかどうかも、患者に尋ねるしかありませんし、実際、効かないことも多いのです。このような状況もあり、新しい薬や治療法の開発は長年にわたり苦戦してきました。
 しかし、炎症がうつ病の原因となるなら、すでに内科で使われているような炎症マーカーが、うつ病の診断や、あるいは進行・回復を評価する方法に転用できる可能性があります。さらには、さまざまな病気に使われてきた既存の抗炎症薬や免疫療法が、うつ病治療に転用できるかもしれません。これらの治療法は、すでに安全性は確かめられているので、効果が実証されれば比較的早く実用化される可能性があります。著者は今後、5年から10年で、実用化されるのではないか、と論じています。
うつ病はどの人にも関係のある病気で、人口の10%がうつ状態にあり、25%が生涯に1度はうつ病になると言われています。社会的にも大きな問題となっているこの病気の将来に見えてきた展望を、患者さんにも、そのご家族にも、本書で是非、知っていただきたいと思います。

(担当/久保田)

 

著者紹介

エドワード・ブルモア

ケンブリッジ大学の精神医学科長および臨床神経科学学科のウルフソン脳イメージングセンター長。ケンブリッジシャー&ピーターバラNHSファウンデーション・トラストの精神科の名誉専門医、および研究開発部部長でもある。文学士、医学士、博士、王立内科医協会員、王立精神医学会員、イギリス医学院会員。オックスフォード大学を経て、ロンドンの聖バーソロミュー病院で医学を学ぶ。香港大学で内科医として勤務した後、ロンドンのセントジョージ病院、王立ベスレム病院、モーズレイ病院で精神科医としての教育を受け、キングス・カレッジ・ロンドンの精神医学研究所で臨床科学者としての教育を受ける。1999年より、ケンブリッジ大学精神学科教授。2005年から、グラクソ・スミスクラインで非常勤勤務をしており、現在、うつ病のための新たな抗炎症薬の開発のために産学協同体を率いている。神経科学およびメンタルヘルス分野の世界的エキスパートである。

訳者紹介

藤井良江(ふじい・よしえ)

神戸女学院大学文学部卒業。訳書に『変わり者でいこう あるアスペルガー者の冒険』(東京書籍)、『世界を変えるエリートは何をどう学んできたのか?』(日本実業出版社)、『ネイティブ・アメリカン 幸せを呼ぶ魔法の言葉』(日本文芸社)、共訳書に『3.11震災は日本を変えたのか』(英治出版)がある。

 

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「徴用工問題」を橋下徹も日本共産党も誤解している 『でっちあげの徴用工問題』西岡力著

でっちあげの徴用工問題

西岡力 著

 橋下徹元大阪市長がこの「徴用工問題」について発言していた。韓国人の「個人請求権」は残っているから賠償もやむないというような趣旨だった。また日本共産党も同趣旨のことを言っている。日本の韓国併合が間違いなのだから、賠償もやむなしという。二者とも今回の判決を誤読している。本書の中で著者はつぶさに反論している。
 この二者の論理は法理論と情緒的な道義の問題をごちゃ混ぜにした、極めて危険な論理であり、途方もなく巨額な韓国への賠償金の支払いをもたらすことになりかねない考え方なのだ。
今回の韓国最高裁の判決は「日韓併合」が不法であり、その法の下で強制された労働であるからこれも不法であり、その法律違反にたいして賠償せよと言っているのだ。ここで韓国は一線を踏み越えてしまった。
 1910年の「日韓併合条約」は正式な文書もあり、当事者同士の署名もあり、当時の国際社会の中で、正式な契約と認められていた過不足のない条約だった。手続き上の瑕疵はないのである。これをしも違法と主張すると、近代社会の根幹が崩壊し、すべての契約関係はご破算になってしまう。大げさに言うなら、歴史的に積み上げてきた人間間の合意、法律や文書は何だったのかになりかねない。それでは、係争事は結局、暴力によって解決するしかないではないか。
 こうやって、日本人の過剰な道義心を刺激し、揺さぶってくるのがこれまでの韓国からの攻勢だった。もうこれは古いやり方である。われわれ日本人は、終戦直後のみすぼらしくかわいそうな韓国人という幻想からは解き放たれた方がいい。
 韓国も豊かな社会になった。日本よりも豊かな部分もある。こんな不当な判決がまかり通ると考えている現韓国政府と文在寅大統領はどのような種類の国民を代表しているのだろうか。また、本書の巻末に韓国に同調する日本の文化人のリスト540人が実名入りで書いてある。彼らは本書の主張にどう答えるだろうか。

 (担当/木谷)

著者紹介

西岡力(にしおか・つとむ)

1956年、東京都生まれ。国際基督教大学卒業。筑波大学大学院地域研究家修了(国際学修士)。韓国・延世大学国際学科留学。1982年~1984年、外務省専門調査員として在韓日本大使館勤務。東京基督教大学教授を経て、現在、(公財)モラロジー研究所教授・歴史研究室長、麗澤大学客員教授。「北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会(救う会)」会長。著書に、『日韓誤解の深淵』(亜紀書房)『日韓「歴史問題」の真実』(PHP)『よくわかる慰安婦問題』(草思社文庫)『ゆすり、たかりの国家』(ワック)ほか多数、最新刊に『歴史を捏造する反日国家・韓国』(ワック)がある。

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ドラフト研究の第一人者が、有名選手の「入団前の評価」と「プロ入り後の現状」を徹底検証! 『プロ野球 問題だらけの選手選び』小関順二著

プロ野球 問題だらけの選手選び
ーーあの有名選手の入団前・入団後
小関順二 著

 毎年、プロ野球の世界には数多くの有望選手が入団してきます。それぞれが「即戦力」であったり、「将来のクリーンナップ候補」であったりと、さまざまな期待を背負ってプロの世界に足を踏み入れるわけですが、彼らのプロ入り時点での評価がかならずしもアテにならないのは、年季の入ったプロ野球ファンなら誰もが知っています。そして、そうであるからこそ、新入団選手の成長曲線をあれこれ想像するのは、プロ野球ファンにとって無上の楽しみでもあるのです。
 本書は2000年以降、年度版の『プロ野球 問題だらけの12球団』(小社刊)の中ですべてのドラフト指名選手について歯に衣着せず論評してきた著者が、計103名の有名選手について、それぞれの入団時の評価と現時点での成績を対比し、検証した一冊です。
 高校からプロ入りした選手の「大化け」の時期をみごとに予見していた例(巨人・岡本和真など)や、プロ入り前は無名だった選手のプロでの活躍を断言していた例(ソフトバンク・森唯斗、日本ハム・上沢直之など)がある一方、プロ入り後の伸び悩みを予言していて、その通りになってしまった例(日本ハム・斎藤佑樹など)もあります。また、著者の予想とまったく違う成長曲線を描いて大成した選手も当然います。メンタル面での不安定さが目立つ高校時代のダルビッシュ有を見て、著者は「正直にいえば、プロでは成功しないと思っていた」と書いています。
 アマチュアの試合を中心に年間約300試合を生観戦し、野球評論に「ドラフト」というカテゴリーを確立した著者が、各選手の何を評価し何を見逃していたのか。また、入団する球団やプロ入りするタイミングによって選手の成長曲線はどう変わってくるのか。本書に収められた各選手の足跡は、人間の「成長可能性」を考えるための格好の材料ともいえるでしょう。

(担当/碇)

著者紹介

小関順二(こせき・じゅんじ)

スポーツライター。1952年神奈川県生まれ。日本大学芸術学部文芸学科卒業。プロ野球のドラフト(新人補強)戦略の重要性に初めて着目し、野球メディアに「ドラフト」というカテゴリーを確立した。2000年より年度版として刊行している『プロ野球 問題だらけの12球団』シリーズのほか、『甲子園怪物列伝』『「野球」の誕生 球場・球跡でたどる日本野球の歴史』(いずれも草思社)、『ドラフト未来予想図』(文藝春秋)、『野球力ストップウォッチで判る「伸びる人材」』(講談社+α新書)、『間違いだらけのセ・リーグ野球』(廣済堂新書)、『プロ野球戦国時代!』(学陽書房)、『大谷翔平 日本の野球を変えた二刀流』(廣済堂出版)など著書多数。CSテレビ局スカイ・A sports+が中継するドラフト会議の解説を1999年以降、フレッシュオールスターゲームのゲスト解説を2010年以降務めている。15年4~7月に、旧新橋停車場 鉄道歴史展示室で行われ好評を博した「野球と鉄道」展の監修を務める。
【小関順二HP】 http://kosekijunjihomepage.com/

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なぜ東京はいつまでも若々しいのか? 『東京 上がる街・下がる街 鉄道・道路から読み解く巨大都市の未来』川辺謙一著

東京 上がる街・下がる街

ーー鉄道・道路から読み解く巨大都市の未来

川辺謙一著

◆東京は「弱点」を克服すればまだまだ成長し続ける!

 実は東京は、世界の都市と比較すると、交通が未発達と言えます。電車でどこへでも行ける便利な都市という印象が強いので、意外に思われるかもしれません。しかし、その電車も、世界にまれなほど混雑がひどいこと、鉄道事業者がたくさんあり乗り換えが頻繁に必要なうえ、わかりづらいことなど、欠点は少なくありません。さらに道路は、渋滞がとても多いうえ、曲がりくねっていてわかりづらく、しかも計画の6割ほどしか完成していません。いつ完成するか、だれにもわからないという状態です。
 しかし、これは決して悪いことばかりではありません。この「弱点」は克服可能で、つまりそれは、東京が今後成長する余地を残しているということでもあるからです。
 交通改善による成長が今も実際に起きていることは、東京圏の「住みたい街ランキング」や交通各社の利用者伸び率のデータにも端的に表れています。詳しくは本書の内容に譲りますが、近年「上がる街」つまり人やモノが集まるようになった人気の街は、電車の直通運転や圏央道・外環道の延伸などで、一気に利便性が増したところがその多くを占めています。交通の改善は街の機能、ひいては東京の機能向上に大きな影響を与えているのです。
 本書は、交通の発達が東京および東京圏にある街をどう変えるか、そして世界有数の巨大都市・東京圏全体をどう変えるか、渋谷や虎ノ門、武蔵小杉、豊洲、八潮など、具体的な場所の実例や各種データを交えて考えるもの。JR東日本/東京メトロ/首都高のリーダーへのインタビューも行い、東京の交通の展望や問題点について、統計や公式資料になかなか表れない、貴重な当事者の話を聞いています。

◆人口減少前夜の東京にも、交通の改善で次々と「上がる街」が生まれる

 交通改善で「上がる街」が次々生まれるということは、以前「下がる街」だった場所も、ちょっとした交通の変化で復権する可能性があるということです。古びた工場街が一転して最新のオフィスビルやタワーマンションが建ち並ぶ街になるようなことがたびたび生じることで、東京は変化へ柔軟に対応する力を保っていると言えるでしょう。いつまでも東京が若々しい都市である理由もここにあります。
 東京は今、人口減少前夜にあり、今後は郊外から衰退が始まっていくことは間違いありません。しかしその一方で、交通の発達・改善により、次々と「上がる街」が登場し続け、その地元を活性化するだけでなく、東京全体を成長させることもまた、間違いないでしょう。東京の衰退が予測される今こそ、東京に残された大きな成長余地である「交通」にフォーカスした本書は、必読の一冊です。

(担当/久保田)

著者紹介

川辺謙一(かわべ・けんいち)

交通技術ライター。1970年三重県生まれ。東北大学大学院工学研究科修了後、メーカー勤務を経て独立。高度化した技術を一般向けに翻訳・紹介している。著書は『東京道路奇景』『日本の鉄道は世界で戦えるか』(以上、草思社)、『オリンピックと東京改造』(光文社)、『東京総合指令室』(交通新聞社)、『図解・燃料電池自動車のメカニズム』『図解・首都高速の科学』『図解・新幹線運行のメカニズム』『図解・地下鉄の科学』(以上、講談社)など多数。本書では図版も担当。

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消費税、規制改革から、AI、GAFAまで、平成の経済用語で《日本の未来》が見えてくる! 『経済の流行語・論点でたどる平成史』浜野崇好 著

経済の流行語・論点でたどる平成史

浜野崇好 著

 まもなく幕を閉じようとしている「平成」という時代は、バブル経済の熱狂と消費税の導入で始まりました。そしてその後も良きにつけ悪しきにつけ、その時代相を映すさまざまな経済ワードに彩られています。平成という時代は「経済に笑い、経済に泣いた時代」だったといえるかもしれません。
 この本はNHKの記者として高度経済成長の時代から長きにわたって日本経済をウォッチし続け、現在も経済コラムニストとして活動している著者が、経済のキーワードに注目して平成の三十年を振り返った本です。多年にわたり新聞・テレビを丹念にあたって収集した経済の新語・流行語をテーマごとに並べてみることで、日本の「これから」を展望できるのではないかと著者は考えています。
 平成のはじめから大きな問題になっていて、いまだに課題として残っている「規制緩和」や「少子化」。一方で「土地神話」は完全に失われて「負動産」の時代に突入と、平成の三十年間で何が変わり何が変わっていないかを、われわれは経済の言葉から読みとることができます。またここ数年では、「AI」「GAFA」に「5G」と、アルファベット混じりの新語が非常に多くなってきているあたりに、時代の変化を感じずにはいられません。私たちは今、どんな時代に生きているのか。それを知るヒントが詰まった一冊です。

(担当/碇)

著者紹介 

浜野 崇好(はまの・たかよし)
経済コラムニスト。1935年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。NHK経済記者・解説委員を経て、宮崎公立大学教授・学長。退任後、フリーの経済コラムニストとして活動中。

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日本統治の歴史を一次資料をもとに再構築し、「反日」の起源を明らかにするとともに、それが国家イデオロギーへと発展する過程を圧巻の筆で描く! 『韓国「反日主義」の起源』松本厚治 著

韓国「反日主義」の起源

松本厚治 著

 日韓関係が悪化の一途をたどっています。というより、韓国側の一連の行為によって日本国内の対韓国感情がかつてない水準にまで悪化している、というほうが正確かもしれません。旭日旗問題、慰安婦合意の破棄、「徴用工」判決、レーダー照射問題……と、日本の国民感情を逆なでするような事態が立て続けに起こるのはなぜなのか。本書は長年にわたって韓国研究に携わってきた著者が、膨大な資料を援用しながら韓国の「反日」の起源とその構造を明らかにした一冊です。
 それが実体験にもとづく「反日感情」であるのならば、生々しい記憶が残っている戦争直後にもっとも強烈に存在し、時の流れとともに弱まっていくはずですが、現実はその逆です。戦後、日本は韓国の最大の経済支援国であり続け、両国間で起こった唯一の紛争である竹島問題では一方的な占拠を許してしまった側なのです。
 にもかかわらず韓国で反日感情が高まり続ける理由を、著者はそれが韓国の「国家イデオロギー」として機能してきたからだと説明しています。かつて共産主義国家が共産主義思想によって国家を統合し国民を教化していったように、韓国は反日によって国家の存立を正当化している、ということです。日本統治時代に近代化の道を歩み始め、日本を範型として民族の枠組をつくり、日本の制度・文物を自国の新たな「伝統」としてしまった韓国は、それゆえにこそ日本を全否定する価値観が必要となるのです。
 日韓関係が現実にはどのようなものだったのかについて、本書ほど詳細かつ明確に論じた本はありません。そして本書をお読みいただければ、なぜ史実とかけ離れた歴史問題が執拗に持ち出されるのか、そして、日本が韓国にどのような態度で臨めばよいかも明らかになります。これからの日韓関係を考える上での基本図書となる一冊です。

(担当/碇)

著者紹介

松本厚治(まつもと・こうじ)

1944年生まれ、東京大学経済学部卒業。通商産業省入省。在大韓民国大使館参事官、在オーストラリア大使館参事官、埼玉大学大学院教授などを歴任。韓国関係の著作として『日韓経済摩擦』(東洋経済新報社)、『韓国経済の解剖』(共編著。文真堂)などがある。

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かつては動物より植物の方が、移動が得意だった?『脚・ひれ・翼はなぜ進化したのか 生き物の「動き」と「形」の40億年』マット・ウィルキンソン著 神奈川夏子 訳

脚・ひれ・翼はなぜ進化したのか

生き物の「動き」と「形」の40億年

マット・ウィルキンソン 著 神奈川夏子 訳

◆人間の直立歩行の起源を探るヒントが、カンガルーにあった!?

 人間の直立二足歩行はどのように始まったのか? ひれはいかにして肢(あし)になったか? なぜ多くの動物は左右対称なのか? なぜ植物はかたくなに移動しないのか? これらのような生き物の動きや形にかんする素朴な疑問に、最新科学はどのような答えを出しているのでしょうか。
 人間の直立二足歩行の起源に関しては、「それまで暮らしていた熱帯林が乾燥化でサバンナになったため、人は立って歩き始めた」という説が広く流布していますが、最新の研究によればそうではありません。人間の祖先は、樹上で生活していたときから、すでに木の上で直立二足歩行をしていたのです(手で枝などにつかまりながら)。じつは、カンガルーも、かつて樹上で、前肢で枝につかまりながら二足歩行していて、その後地上へ降り、引き続き二足歩行を続けたと考えられています。
 じつは植物は、単細胞生物としては、動物の単細胞生物より移動運動がずっと得意です。単細胞の植物にはかたい細胞壁があり、しっかりと形状を保つことができます。そこにべん毛が付くことで、進む向きをコントロールしながら、水中をすいすいと泳ぎ回ります。一方、細胞壁を持たない単細胞の動物は、形を一定に保つことができないので、べん毛で向きを制御しつつ移動することが不得手。アメーバとして形を変えながら、ゆっくり這うしかありません。しかし、多細胞生物となったとき、両者の形勢は逆転しました。植物は細胞壁のせいで、多細胞化するとほとんど動くことができなくなったのです。一方、動物は、多細胞化すると互いに支え合うことである程度形状を保つことができるようになり、かえって移動運動が得意になりました。

 ◆生き物の「動き」と「形」の素朴な疑問に答える本は、なぜ少ないか

 生き物の「動き」と「形」の素朴な疑問は数多く、誰でも一度は思いついたことがあるでしょう。しかし、これに答える本はとても少ないと言えます。その理由は、答えるのがとても難しいから。動物の動きは物理法則に支配されているのでその説明が必須ですし、動物の形の形成やその進化についても、発生学や分子遺伝学などの難解な領域の説明が必要となります。これを理路整然とわかりやすく行うには、その分野の専門家であることも重要ですが、さらに相当の筆力と情熱がなければ不可能です。
 本書の著者マット・ウィルキンソンは、もともと翼竜の飛行の研究者。つまり動物の飛行運動にかんする専門家で、動物の運動と物理学の関連の研究に情熱を持って取り組んできました。一方で、サイエンスライターとしても、高い評価を受けており、まさにこの分野の一般向け書籍を書くのにうってつけの位置にいる人物です。おかげで、多くの人が疑問に思ってきた問いに答えてくれる本が、ようやく登場することとなりました。進化に興味のある方なら、是非とも読むべき一冊と言えるでしょう。

(担当/久保田)

著者紹介

マット・ウィルキンソン
ケンブリッジ大学動物学部の生物学者、サイエンスコミュニケーター。その研究はテレグラフやニュー・サイエンティスト、ネイチャーなどで取り上げられた。イギリス・ケンブリッジ在住。1975年生まれ。

訳者紹介

神奈川夏子(かながわ・なつこ)
東京都出身。日仏英翻訳者。上智大学外国語学部フランス語学科卒業、同大学院フランス文学修士課程修了。サイモンフレーザー大学日英通訳科修了。訳書『偉大なる指揮者たち』『偉大なるダンサーたち』『偉大なるヴァイオリニストたち2』(ヤマハミュージックメディア)、『BIG MAGIC「夢中になる」ことかはじめよう。』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)など。

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