草思社のblog

ノンフィクション書籍を中心とする出版社・草思社のブログ。

紙の本が優れているのは「畏怖」の感情があるからだ 『なぜ本を踏んではいけないのか』齋藤孝 著

なぜ本を踏んではいけないのか

人格読書法のすすめ

齋藤孝 著

 本書はこれまで読書術や古典のすすめなどをたくさん書いてきた著者の書物への愛情と紙の本の消滅への危機感から書かれた本である。
 去年の大学生協の調べでは一か月に一冊も本を読まない学生の割合が50%を超えたという。また大手出版社の電子書籍の売り上げが全体の30%に達したという。この二つは別々のことかもしれないが、どこかでつながっているのではないか。紙の本の消滅と電子化の進展は読書という習慣の衰退と軌を一にしているとも考えられる。著者の思想や考えを文字で記録し、紙に印刷して綴じた冊子状の書物は、教育や学習にとてもよく合致して効率的であり、近代にいたる人間の知的進歩の根幹を担ってきた。
 本には人類が継承してきた貴重な知識や知恵がたくさん詰まっていたので、極めて貴重なものとして保存され、取引され、大事にされた。若者が読書に関心を持たなくなり、本を粗末に扱うような風潮が生まれたのは、本が大量に安価に出版され、ブックオフ的な流通が生まれ、パソコン上でデータ化されて来たことと無縁ではない。何が重要で何が重要でないかが判然とせず、すべて価値の平準化が起こり、過剰にあふれた情報とやらが一切を押し流しているかのようだ。
「本をなぜ踏んではいけないのか」という著者の問いは、要するに本はその著者の人格と同じだから踏むことは失礼にあたるし、教えを乞う姿勢ではないから読者はそこから何も学べないということである。一つの単体としての紙の本がそこにあり、手触りを持った紙やインクの風合いを含めて味わうことが読書の効果を上げることにもつながるといっているが、それだけではない。畏怖という感情、畏れかしこまるという感情や偉大な人格や言葉への尊敬が失われてはならないということである。
 本書に秦の始皇帝の焚書坑儒やナチスの焚書のエピソードが出てくるが、最近までドイツでは逆にヒトラーの「我が闘争」は禁書であったし、戦後の日本は「閉ざされた言語空間」でもあった。現代の中国では「天安門事件」はいまだに禁句である。巨大なデータ管理によって一律的に言論統制ができてしまう近未来のほうが、10冊、20冊の紙の本によって、貴重な言論や記録をかろうじて伝えてきたやり方よりなぜ優れているのか、本書が問いかけているのはそのことでもある。

(担当/木谷)

著者略歴

齋藤孝(さいとう・たかし)

1960年、静岡県生まれ。東京大学法学部卒業、同大学大学院教育学研究科博士課程を経て、現在、明治大学文学部教授。専攻は教育学、身体論、コミュニケーション技法。著書に『宮沢賢治という身体』(世織書房、宮澤賢治賞奨励賞)『身体感覚を取り戻す』(日本放送出版協会、新潮学芸賞)『声に出して読みたい日本語』(草思社、毎日出版文化賞特別賞)など多数。近著に『語彙力こそが教養である』(角川書店)『こども孫子の兵法』(日本図書センター)『こども論語』『こども故事成語』(草思社)がある。NHK・ETV「にほんごであそぼ」総合指導など、マスコミでも活躍中。

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救われた一言、気づきをくれた一言……言葉をめぐる経験をやわらかな筆致で綴った心温まるエッセイ 『希望はいつも当たり前の言葉で語られる』白井明大 著

希望はいつも当たり前の言葉で語られる

白井明大 著

 本書は、沖縄を拠点に精力的な創作活動を展開している詩人・白井明大が、これまでの人生行路の中で出会った「自分の支えとなった言葉」「気づきをくれた言葉」について綴ったエッセイです。
 たとえば、元上司から届いた年賀状に書き添えてあった「焦らず、着実に」という一言であったり、友人がふと口にした「手を抜かずにやっていれば、誰かが見ていてくれる」という一言であったり、言葉そのものはいずれもいたって平凡なのですが、そういう言葉が、先の見えない暗闇の中でもがいていた若き日の著者に大きな勇気を与え、立ち上がる力を授けました。司法浪人としての日々に終止符を打ち、二十代後半になってやっと社会人としての歩みをはじめて悪戦苦闘する著者には、実感のこもった「当たり前の言葉」が希望のともしびになったのです。
 「希望というのは、夢や成功にじかに結びつくものというよりも、むしろいまの難所をどう切り抜けるか、どうしたらこのドン底の苦境から脱け出せるか……といった抜き差しならない実際問題の迷路をさまよっているときに、こっちだよ、と道を知らせる星明かりのようなものだった」と著者は書いています。そして、「そんな希望は、時に誰かがくれた言葉という姿で、ぼくの前に現れた」のです。
 本書をお読みいただければ、言葉というものが時と場合によって計り知れない力を持ちうるのだということが、おわかりいただけると思います。「あきらめないで」「好きなことを大事に」「締切を守ること」「けなすのは簡単」「夜明け前がいちばん暗い」「気をつけていらしてください」……。何の変哲もないシンプルな言い回しであっても、そこに血の通った思いが込められている言葉は、時に誰かの支えになり、絶望の波を押し返す防波堤にもなりうるのです。
 この本が、これから新しい人生の節目を迎え、未知のフィールドを歩んでいく読者に、なんらかのヒントを手渡すことができたら、これにまさる喜びはありません。

(担当/碇)

著者紹介

白井明大(しらい・あけひろ)
詩人。1970年東京生まれ、横浜育ち。司法浪人から書店アルバイトを経て、27歳でコピーライターとして就職。以後、会社を転々とし、2001年よりフリーランスとして活動。2002年、ホームページ「無名小説」で詩を発表しはじめる。2004年、第1詩集『心を縫う』(詩学社)を上梓。2011年、沖縄へ移住。2012年に刊行した『日本の七十二候を楽しむ ─旧暦のある暮らし─』が静かな旧暦ブームを呼び、30万部のベストセラーに。2016年、『生きようと生きるほうへ』(思潮社)が第25回丸山豊記念現代詩賞を受賞。詩集に『歌』(思潮社)、『島ぬ恋』(私家版)など。ほか『一日の言葉、一生の言葉』(草思社)、『季節を知らせる花』(山川出版社)、『島の風は、季節の名前。旧暦と暮らす沖縄』(講談社)など著書多数。

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公表する意図のなかった個人的日記に記録された百年前の日本人の実像 『アインシュタインの旅行日記』アルバート・アインシュタイン著

アインシュタインの旅行日記
ーー日本・パレスチナ・スペイン
アルバート・アインシュタイン 著 ゼエブ・ローゼンクランツ 編 畔上司 訳

 本書は二〇一八年にプリンストン大学出版局によって刊行された“The Travel Diaries of Albert Einstein:The far East, Palestine & Spain 1922-1923 ”の全訳です。アインシュタインが一九二二年十月から翌年三月までの間に日本とパレスチナ、そしてスペインを旅した際の日記が全編網羅されているだけでなく、本人が旅先から出した書簡や葉書、旅行中に各地で行なったスピーチ原稿なども収録されています。
 当時すでに世界的な名声を得ていたアインシュタインを日本に招聘したのは、数年後に「円本」を考案してブームを巻き起こすことになる改造社の社長・山本実彦で、二万ポンド(当時のレートで一万五千円強)という条件を提示して、「長いあいだ極東の人々の文化に関心を抱いていた」アインシュタインを極東に招くことに成功しました。アインシュタインがノーベル賞(物理学賞)受賞の知らせを受けたのは、じつはこの旅の途中の上海でのことなのですが、興味深いことにアインシュタインはノーベル賞について、自身の日記の中でまったく触れていません。
 本人に公表する意図がまったくなかったという事情もあり、この旅行日記においてアインシュタインは筆のおもむくままに各国の国民性について描写しています。たとえば途中で寄港した中国においては、「子どもたちでさえ無気力だし、鈍感に見える。もしこうした中国人が他の全人種を駆逐することになったら残念だ」と記すなど、その筆致はまことに手厳しいものがあり、差別的でもあります。それは本書の編者が指摘するように「知性に関するアインシュタインの明白なエリート意識」の表れであったのかもしれませんが、特筆すべきは、六週間にわたって滞在した日本についてはきわめて好意的な記述が多い、という点です。
「自分に課された役割を何の気取りもなく喜んで果たしているが、連帯感と国家には誇りを抱いている」「簡素で上品」「自然と人間が、ここ以外のどこにもないほど一体化しているように思える。この国から生まれるものはすべて愛くるしくて陽気で、決して抽象的・形而上的ではなく、常に現実と結びついている」「皮肉や疑念とはまったく無縁……純粋な心は、他のどこの人びとにも見られない。みんながこの国を愛して尊敬すべきだ」
 といった日記中の記述のほかに、息子たちに宛てた手紙や、友人の物理学者ニールス・ボーアへの手紙にも日本人の謙虚さ、責任感の強さなどへの称賛の言葉が並んでいるのです。二十世紀を代表する科学者が観察し、書き残した百年前のこの国の人々の姿は、「日本人とは何か」を考えるための格好の材料になるのではないでしょうか。

(担当/碇)

著者略歴

アルバート・アインシュタイン

ドイツ生まれの理論物理学者。1879年3月14日生まれ。チューリッヒ工科大学を卒業後、ベルンで特許局技師として働きながら研究を続け、1905年に特殊相対性理論など画期的な3論文を発表。1916年には一般相対性理論を発表。1921年度のノーベル物理学賞を受賞。この時期から世界各国を訪問するようになり、1922年~1923年に訪日。ナチス政権の成立にともないアメリカに逃れ、以後はプリンストン高等研究所を拠点に研究を続ける。1955年4月18日死去。「20世紀最高の物理学者」「現代物理学の父」等と評される。

編者略歴

ゼエブ・ローゼンクランツ

カリフォルニア工科大学アインシュタイン・ペーパー・プロジェクトのアシスタントディレクター。メルボルン出身。ヘブライ大学のアルバート・アインシュタイン・アーカイブと共同でアインシュタイン・アーカイブ・オンラインを設立。著書に“Einstein Before Israel: Zionist Icon or Iconoclast?”(未邦訳)などがある。

訳者略歴

畔上司(あぜがみ・つかさ)

1951年長野県生まれ。東京大学経済学部卒。ドイツ文学・英米文学翻訳家。共著に『読んでおぼえるドイツ単語3000』(朝日出版社)、訳書に『5000年前の男』(文藝春秋社)、『ノーベル賞受賞者にきく子どものなぜ?なに?』(主婦の友社)、『エンデュアランス号 シャクルトン南極探検の全記録』(ソニー・マガジンズ)、『アドルフ・ヒトラーの一族』(草思社)などがある。

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文藝春秋が刊行していたオピニオン誌『諸君!』(1969年創刊、2009年休刊)の元・編集長による一読驚嘆の回想 「『諸君!』のための弁明」仙頭寿顕著

『諸君!』のための弁明

ーー僕が文藝春秋でしたこと、考えたこと

仙頭寿顕 著

 本書は文藝春秋で長年『諸君!』の編集にたずさわり、編集長時代には同誌の最大部数を達成した著者による回顧録です。松下政経塾の塾生だった1983年に「塾外研修」として『諸君!』編集部で働きはじめ、社員として文藝春秋に正式入社後も『諸君!』を中心にキャリアを重ねてやがて編集長に就任……という著者は、ある意味で「ミスター諸君」ともいうべき人物です(そのように評した執筆者がいたという逸話もあります)。
 本書では、昭和・平成の論壇史を彩ってきた個性あふれる執筆者たちとの蔵出しエピソードはもちろんのこと、文藝春秋という会社のカルチャーや、その変容についてもきわめて率直に記されています。
 1969年に創刊され、その後休刊になる2009年まで、その際立った批評精神と闘争心で多くの読者を惹きつけてきた雑誌『諸君!』について、著者はライバル誌を引き合いに出して《『諸君!』は『正論』でも『新潮45』でもないけど『自由』ではあるかも》とユニークな定義づけをしています。
 雑誌『自由』は『諸君!』の創刊時にモデルにされたともいわれる雑誌で、その名の通り真の意味でのリベラルな精神を宿した媒体でした。現在のようにネットがなかった時代に、新聞・テレビといった大メディアがつくりだす有無を言わせぬ空気に対して物申すことができた数少ない媒体が『自由』であり、『諸君!』でした。その「異議申し立て」の具体的な事例についてはぜひ本書をお読みいただきたいと思いますが、『諸君!』が朝日新聞を筆頭とする主流メディアに対して戦闘的でありつづけたのは、それらのメディアが旧ソ連邦や、北朝鮮、共産中国といった個人の自由を抑圧する全体主義国家のプロパガンダに加担する報道を繰り返していたからにほかなりません。
 《大新聞などが、戦前の軍部のようにみずからへの批判を許さない「検閲機関」のように居丈高になっていたときに、週刊誌や月刊誌が細々と異論を提示したからこそ、日本の言論の自由は守られてきた》と著者は書いています。その「反・大勢」の旗手であったはずの雑誌ジャーナリズム、あるいは文春ジャーナリズムがすっかり変質してしまったのではないか、というのが本書に通底する危機意識です。いままさに存亡の危機にある雑誌メディアを考える上でも、本書は必読の一冊といえます。
(担当/碇)

著者紹介

仙頭寿顕(せんとう・としあき)

1959年(昭和34年)、高知県安芸市生まれ。中央大学法学部政治学科卒業後、1982年に松下政経塾に入塾(第三期生)。その後、1984年7月に株式会社文藝春秋に入社。『諸君!』編集長、出版局編集委員などを歴任。2016年9月に文藝春秋を退職し、ワック株式会社に移る。現在、「歴史通」および書籍編集長。松下政経塾塾友・塾員。文藝春秋社友。いくつかのペンネームによる執筆活動・著作がある。「江本陽彦」名義で雑誌『自由』に1986年4月号より「読書日記・私のための読書遍歴」を長期連載。その一部を志摩永寿名義で『本の饗宴・新保守の読書術』(徳間書店)として刊行。そのほかにも、里縞政彦名義で『20世紀の嘘:書評で綴る新しい時代史』(自由社)、城島了名義で『オーウェル讃歌:「一九八四年への旅路』『歪曲されるオーウェル:「一九八四年」は何を訴えたのか』『オーウェルと中村菊男:共産主義と闘った民主社会主義者』(いずれも自由社)などを著している。読書ブログでは政治から風俗モノまでの書評コラムをほぼ毎日連載・更新中。

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うつ治療に起きつつある革命を、世界的権威がわかりやすく解説 『「うつ」は炎症で起きる』エドワード・ブルモア著 藤井良江訳

「うつ」は炎症で起きる

エドワード・ブルモア著 藤井良江訳

◆炎症が「うつ」を引き起こすという科学的証拠が積み上がっている

 うつ病はもっぱら心や脳の問題だと考えられてきましたが、このところ、身体の炎症によりうつ病になるという証拠が、多くの研究により示されています。このことが長年にわたり停滞気味だったうつ病治療の進展に革命をもたらそうとしています。本書はその「革命」の現状や意義、これまでの経緯を、精神医学の権威がわかりやすくまとめたものです。
 本書で紹介されている研究結果は、驚かされるものばかりです。たとえば、9歳のときに血液中の炎症マーカーが高かった子は、18歳でうつ病になる確率がそうでない子の1.5倍という研究があります。高齢者でも、慢性炎症と言えるほど炎症マーカーが高かった60代女性の場合、その8年後にうつ病になる確率はそれ以外の人の3倍という結果が出ています。より短期間の影響としては、肝炎治療のためにインターフェロンを使って患者に人工的に激しい炎症を起こさせると、3分の1ほどの人がうつ状態に陥ることが知られています。また、うつ病患者は平均値より有意に炎症マーカーの値が高いことも示されています。さらには、心理的社会的ストレスによって炎症が起きることも最近の研究で明らかになっており、ストレスがうつ病を引き起こす際にも、炎症が重要な役割を演じていることが示唆されます。

◆長年停滞していたうつ病の治療法開発に、ようやく光が見えてきた

 精神科医である著者が本書の中で告白していますが、じつはうつ病は、驚くほどわかっていないことが多い病気です。うつ病には、血液検査などで測れるマーカーがないので、うつ病の診断は問診に頼りがちになっています。「セロトニン」と呼ばれる脳内伝達物質が不足することが原因だと考えられていますが、個々の患者のセロトニンを測る方法はありません。そのため、セロトニン不足を解消する「プロザック」などの薬が効いているかどうかも、患者に尋ねるしかありませんし、実際、効かないことも多いのです。このような状況もあり、新しい薬や治療法の開発は長年にわたり苦戦してきました。
 しかし、炎症がうつ病の原因となるなら、すでに内科で使われているような炎症マーカーが、うつ病の診断や、あるいは進行・回復を評価する方法に転用できる可能性があります。さらには、さまざまな病気に使われてきた既存の抗炎症薬や免疫療法が、うつ病治療に転用できるかもしれません。これらの治療法は、すでに安全性は確かめられているので、効果が実証されれば比較的早く実用化される可能性があります。著者は今後、5年から10年で、実用化されるのではないか、と論じています。
うつ病はどの人にも関係のある病気で、人口の10%がうつ状態にあり、25%が生涯に1度はうつ病になると言われています。社会的にも大きな問題となっているこの病気の将来に見えてきた展望を、患者さんにも、そのご家族にも、本書で是非、知っていただきたいと思います。

(担当/久保田)

 

著者紹介

エドワード・ブルモア

ケンブリッジ大学の精神医学科長および臨床神経科学学科のウルフソン脳イメージングセンター長。ケンブリッジシャー&ピーターバラNHSファウンデーション・トラストの精神科の名誉専門医、および研究開発部部長でもある。文学士、医学士、博士、王立内科医協会員、王立精神医学会員、イギリス医学院会員。オックスフォード大学を経て、ロンドンの聖バーソロミュー病院で医学を学ぶ。香港大学で内科医として勤務した後、ロンドンのセントジョージ病院、王立ベスレム病院、モーズレイ病院で精神科医としての教育を受け、キングス・カレッジ・ロンドンの精神医学研究所で臨床科学者としての教育を受ける。1999年より、ケンブリッジ大学精神学科教授。2005年から、グラクソ・スミスクラインで非常勤勤務をしており、現在、うつ病のための新たな抗炎症薬の開発のために産学協同体を率いている。神経科学およびメンタルヘルス分野の世界的エキスパートである。

訳者紹介

藤井良江(ふじい・よしえ)

神戸女学院大学文学部卒業。訳書に『変わり者でいこう あるアスペルガー者の冒険』(東京書籍)、『世界を変えるエリートは何をどう学んできたのか?』(日本実業出版社)、『ネイティブ・アメリカン 幸せを呼ぶ魔法の言葉』(日本文芸社)、共訳書に『3.11震災は日本を変えたのか』(英治出版)がある。

 

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「徴用工問題」を橋下徹も日本共産党も誤解している 『でっちあげの徴用工問題』西岡力著

でっちあげの徴用工問題

西岡力 著

 橋下徹元大阪市長がこの「徴用工問題」について発言していた。韓国人の「個人請求権」は残っているから賠償もやむないというような趣旨だった。また日本共産党も同趣旨のことを言っている。日本の韓国併合が間違いなのだから、賠償もやむなしという。二者とも今回の判決を誤読している。本書の中で著者はつぶさに反論している。
 この二者の論理は法理論と情緒的な道義の問題をごちゃ混ぜにした、極めて危険な論理であり、途方もなく巨額な韓国への賠償金の支払いをもたらすことになりかねない考え方なのだ。
今回の韓国最高裁の判決は「日韓併合」が不法であり、その法の下で強制された労働であるからこれも不法であり、その法律違反にたいして賠償せよと言っているのだ。ここで韓国は一線を踏み越えてしまった。
 1910年の「日韓併合条約」は正式な文書もあり、当事者同士の署名もあり、当時の国際社会の中で、正式な契約と認められていた過不足のない条約だった。手続き上の瑕疵はないのである。これをしも違法と主張すると、近代社会の根幹が崩壊し、すべての契約関係はご破算になってしまう。大げさに言うなら、歴史的に積み上げてきた人間間の合意、法律や文書は何だったのかになりかねない。それでは、係争事は結局、暴力によって解決するしかないではないか。
 こうやって、日本人の過剰な道義心を刺激し、揺さぶってくるのがこれまでの韓国からの攻勢だった。もうこれは古いやり方である。われわれ日本人は、終戦直後のみすぼらしくかわいそうな韓国人という幻想からは解き放たれた方がいい。
 韓国も豊かな社会になった。日本よりも豊かな部分もある。こんな不当な判決がまかり通ると考えている現韓国政府と文在寅大統領はどのような種類の国民を代表しているのだろうか。また、本書の巻末に韓国に同調する日本の文化人のリスト540人が実名入りで書いてある。彼らは本書の主張にどう答えるだろうか。

 (担当/木谷)

著者紹介

西岡力(にしおか・つとむ)

1956年、東京都生まれ。国際基督教大学卒業。筑波大学大学院地域研究家修了(国際学修士)。韓国・延世大学国際学科留学。1982年~1984年、外務省専門調査員として在韓日本大使館勤務。東京基督教大学教授を経て、現在、(公財)モラロジー研究所教授・歴史研究室長、麗澤大学客員教授。「北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会(救う会)」会長。著書に、『日韓誤解の深淵』(亜紀書房)『日韓「歴史問題」の真実』(PHP)『よくわかる慰安婦問題』(草思社文庫)『ゆすり、たかりの国家』(ワック)ほか多数、最新刊に『歴史を捏造する反日国家・韓国』(ワック)がある。

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ドラフト研究の第一人者が、有名選手の「入団前の評価」と「プロ入り後の現状」を徹底検証! 『プロ野球 問題だらけの選手選び』小関順二著

プロ野球 問題だらけの選手選び
ーーあの有名選手の入団前・入団後
小関順二 著

 毎年、プロ野球の世界には数多くの有望選手が入団してきます。それぞれが「即戦力」であったり、「将来のクリーンナップ候補」であったりと、さまざまな期待を背負ってプロの世界に足を踏み入れるわけですが、彼らのプロ入り時点での評価がかならずしもアテにならないのは、年季の入ったプロ野球ファンなら誰もが知っています。そして、そうであるからこそ、新入団選手の成長曲線をあれこれ想像するのは、プロ野球ファンにとって無上の楽しみでもあるのです。
 本書は2000年以降、年度版の『プロ野球 問題だらけの12球団』(小社刊)の中ですべてのドラフト指名選手について歯に衣着せず論評してきた著者が、計103名の有名選手について、それぞれの入団時の評価と現時点での成績を対比し、検証した一冊です。
 高校からプロ入りした選手の「大化け」の時期をみごとに予見していた例(巨人・岡本和真など)や、プロ入り前は無名だった選手のプロでの活躍を断言していた例(ソフトバンク・森唯斗、日本ハム・上沢直之など)がある一方、プロ入り後の伸び悩みを予言していて、その通りになってしまった例(日本ハム・斎藤佑樹など)もあります。また、著者の予想とまったく違う成長曲線を描いて大成した選手も当然います。メンタル面での不安定さが目立つ高校時代のダルビッシュ有を見て、著者は「正直にいえば、プロでは成功しないと思っていた」と書いています。
 アマチュアの試合を中心に年間約300試合を生観戦し、野球評論に「ドラフト」というカテゴリーを確立した著者が、各選手の何を評価し何を見逃していたのか。また、入団する球団やプロ入りするタイミングによって選手の成長曲線はどう変わってくるのか。本書に収められた各選手の足跡は、人間の「成長可能性」を考えるための格好の材料ともいえるでしょう。

(担当/碇)

著者紹介

小関順二(こせき・じゅんじ)

スポーツライター。1952年神奈川県生まれ。日本大学芸術学部文芸学科卒業。プロ野球のドラフト(新人補強)戦略の重要性に初めて着目し、野球メディアに「ドラフト」というカテゴリーを確立した。2000年より年度版として刊行している『プロ野球 問題だらけの12球団』シリーズのほか、『甲子園怪物列伝』『「野球」の誕生 球場・球跡でたどる日本野球の歴史』(いずれも草思社)、『ドラフト未来予想図』(文藝春秋)、『野球力ストップウォッチで判る「伸びる人材」』(講談社+α新書)、『間違いだらけのセ・リーグ野球』(廣済堂新書)、『プロ野球戦国時代!』(学陽書房)、『大谷翔平 日本の野球を変えた二刀流』(廣済堂出版)など著書多数。CSテレビ局スカイ・A sports+が中継するドラフト会議の解説を1999年以降、フレッシュオールスターゲームのゲスト解説を2010年以降務めている。15年4~7月に、旧新橋停車場 鉄道歴史展示室で行われ好評を博した「野球と鉄道」展の監修を務める。
【小関順二HP】 http://kosekijunjihomepage.com/

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