草思社のblog

ノンフィクション書籍を中心とする出版社・草思社のブログ。

ビル・ゲイツ絶賛。「啓蒙の理念」の重要性を説いた全米ベストセラー!『21世紀の啓蒙(上・下)』スティーブン・ピンカー著 橘明美+坂田雪子訳

21世紀の啓蒙(上・下)

理性、科学、ヒューマニズム、進歩

スティーブン・ピンカー 著 橘明美・坂田雪子 訳

 ビル・ゲイツ氏が「生涯の愛読書となる、新しい一冊」と激賞した全米ベストセラー、『21世紀の啓蒙』(原題:Enlightenment Now)の邦訳がついに刊行となります。ハーバード大学心理学教授である著者、スティーブン・ピンカーは、これまで数多くのベストセラーを著し、とくに前著『暴力の人類史』(青土社刊)は日本でも高く評価されました。そのピンカーが新作で中心に据えたテーマは「啓蒙主義の理念」。その背景にはポピュリズムの台頭や、社会の二極化があります。
 啓蒙主義の理念(理性、科学、ヒューマニズム、進歩など)は、今、かつてないほど大きな成功を収め、人類に繁栄をもたらしています。多くの人は普段、気に留めないかもしれませんが、世界中から貧困も飢餓も、戦争も、暴力も減り、人々は健康・長寿になり、知能さえも向上して、安全な社会に生きています。どれも、人類が啓蒙主義の理念を実践してきた成果です。
 にもかかわらず、啓蒙主義の理念は、今、かつてないほど擁護を必要としています。右派も左派も悲観主義に陥り、進歩の否定や科学の軽視が横行、理性的な意見よりも党派性を帯びた主張のほうが声高に叫ばれています。たとえば、過去を理想化して進歩を否定、自国の衰退を嘆いてみせ、自分こそが再び国を偉大にすると主張した政治家。環境問題を科学技術の発展で解決することを不可能と決めつけ、極端なまでの自己犠牲を人々に強いる活動家。さまざまなところに例を見出すことができるでしょう。

◆世界は決して、暗黒へ向かってなどいない

 このような誤った現状認識は、著者が専門とする心理学の言葉で言えば「認知のゆがみ」「認知バイアス」の一種です。ゆがんだ認知にもとづき判断・行動すると、悲惨な結果を招きます。私たちはどうすれば、正しく世界の現状を認識できるでしょうか。答えは「数えること」と著者は言います。「今生きている人が何人で、その中の何人が暴力の犠牲になっているのか」といったことを数え、それが過去から現在に向かい減っているのか増えているのかを見ること――。すなわち「データ」で世界をとらえ直すこと、それによって啓蒙の理念の実践が確実な成果を上げていると知ることが本書の目的です。本書は70以上のグラフで、さまざまな領域の過去から現在に至るデータを示していますが、そこに見られる改善ぶりに驚くとともに、そのために人類が傾けてきた努力の積み重ねに敬服することでしょう。
 世界は良くなってきたし、これからも良くなると考える十分な理由がある。このことを正しく認識し、世界を良くしてきたものは何かを知れば、世界をさらに良くする方法を正しく考えられるようになります。「世界は暗黒に向かっているから一度完全に壊れた方がマシだ」とか、「社会を悪化させているあいつらを排除しろ」といった煽動からも、距離を置いて考えることができるようになるでしょう。本書では、このような煽動を行う「反啓蒙主義者」の系譜や現状についても詳しく論じ、強く批判しています。本書はすべての読書人が読むべき、事実に基づいた「希望の書」です。

著者紹介

スティーブン・ピンカー

ハーバード大学心理学教授。認知科学者、実験心理学者として視覚認知、心理言語学、人間関係について研究している。進化心理学の第一人者。主著に『言語を生みだす本能』、『心の仕組み』、『人間の本性を考える』、『思考する言語』(以上NHKブックス)、『暴力の人類史』(青土社)、『良い文章とは(The Sense of Style)』(未邦訳)があり、最新の『21世紀の啓蒙』が10冊目になる。研究、教育ならびに著書で数々の受賞歴があり、2004年には米タイム誌の「世界で最も影響力のある100人」に、2005年にはフォーリンポリシー誌の「知識人トップ100人」に選ばれた。米国科学アカデミー会員。『アメリカン・ヘリテージ英語辞典』の語法諮問委員会議長も務めている。

訳者紹介

橘明美(たちばな・あけみ)

英語・フランス語翻訳家。お茶の水女子大学卒。訳書にドミトリ・チェルノフ+ディディエ・ソネット『大惨事と情報隠蔽』(草思社、共訳)、ジェイミー・A・デイヴィス『人体はこうしてつくられる』(紀伊國屋書店)、フランソワ・ヌーデルマン『ピアノを弾く哲学者』(太田出版)ほか。

坂田雪子(さかた・ゆきこ)

英語・フランス語翻訳家。神戸市外国語大学卒。訳書にドミトリ・チェルノフ+ディディエ・ソネット『大惨事と情報隠蔽』(草思社、共訳)、ロバート・I・サットン『スタンフォードの教授が教える 職場のアホと戦わない技術』(SBクリエイティブ)、クリストフ・アンドレ『はじめてのマインドフルネス』(紀伊國屋書店)ほか。

(担当/久保田)

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鉱物書の金字塔が、より鮮明に、より美しくなって登場 『愛蔵版 楽しい鉱物図鑑』堀秀道 著 門馬綱一 監修

愛蔵版 楽しい鉱物図鑑

堀秀道 著 門馬綱一 監修

鉱物書の金字塔にして、堀秀道氏の代表作である『楽しい鉱物図鑑』①②巻。本書は、これを1冊に合本、大判化し愛蔵版にしたものです。原書に使用したフィルムを高解像度スキャンし、判型を120%以上拡大した写真は、鉱物の表情・色味が驚くほど鮮明に再現されています。これらはすべて、堀氏自身の鉱物コレクションを撮影したもので、それゆえにここまでの美しさを表現することができました。テキストは、科学的な内容はもちろん、文学・歴史ほか、あらゆるジャンルから鉱物に関する知識がちりばめられ、知的に刺激されるものであると同時にユーモアに満ちており、読み物としても類まれなる傑作です。

1992年刊行の①巻「はじめに」では、鉱物は当時すでにある程度の市民権を得ていたものの、「これも一時の流行現象で、シャボン玉のように消えてしまうかも知れない」と述べ、鉱物趣味の定着はまだ遠いものと堀氏は感じていたようです。しかし、今の日本をみれば、見事に鉱物ファンが根付いています。それは、堀氏が2019年に亡くなるまで、あらゆる方面で日本における鉱物の普及に全力を尽くしてきた賜物です。鉱物趣味の会、「鉱物同志会」を設立したり、テレビ東京の番組「開運!なんでも鑑定団」で石の鑑定士を務めたりしました。東京国際ミネラルフェアの発起人の一人でもあります。そして、『楽しい鉱物図鑑』①②巻もそれを後押ししたことは、言うまでもありません。

①巻の刊行から27年、新しい鉱物の発見や、グループの再編など、鉱物界にも様々な変化がありました。今回の愛蔵版化にあたり、内容については基本的にオリジナルのテキストを残しつつ、堀氏が生前に改稿のために残していたメモをベースに、国立科学博物館研究員の門馬綱一氏により、科学的な内容を最新のものにアップデートしています。また、標本に関する情報等については、ご子息であり現在のホリミネラロジー店主である堀洋紀氏が監修しています。監修の門馬氏は、中学の時に秀道氏に出会い、以降個人的に、また鉱物同志会のアルバイト等で秀道氏の元に通い詰めていました。つまり、秀道氏の直接の弟子といってもいい人物なのです。堀秀道氏の思いを継ぐ洋紀氏・門馬氏によって、本書は現在における愛蔵版として生まれ変わることができました。門馬氏が「研究者として、標本商として、また一人の鉱物愛好家として、無数の鉱物を観察し、世界各地の鉱物産地をご自分の足で歩かれてきた堀秀道博士。その経験から紡ぎ出される鉱物の物語は、地球のロマンを教えてくれる」と語る本書は、鉱物書の1つの到達点であり、これを読まれた方が、秀道氏がそう望んでいたように、それぞれ「自らの鉱物学」を築いていかれることを心より願います。

(担当/吉田)

著者紹介

堀秀道(ほり・ひでみち)

1934年、東京生まれ。アマチュア鉱物界の泰斗、桜井欽一氏に師事し、中学校時代より鉱物を愛好する。北里大学化学科助手、モスクワ大学地質学部留学を経て、鉱物標本の販売および鑑定・研究の機関、「ホリミネラロジー」(旧・鉱物科学研究所)を設立。その所長として鉱物漬けの日々を送る。2019年1月3日、敗血症のため死去。長石の新種「ストロナ長石」をはじめ3種の新鉱物を自身発見、研究・発表し、これらの業績に「櫻井賞」を贈られている。その後も岩代石などを発見。また「東京国際ミネラルフェア」の開催に主導的な役割を果たし、アマチュア愛好会「鉱物同志会」の主宰、テレビ東京の人気番組『開運!なんでも鑑定団』の石の鑑定レギュラー、各地の博物館の開設協力など、日本における健全な科学趣味の普及に大きな貢献を残す。著書に『楽しい鉱物学』『堀秀道の水晶の本』(草思社刊)『鉱物 人と文化をめぐる物語』(ちくま学芸文庫、2017)など。訳書に『石の思い出』(フェルスマン著、草思社刊)、『合成宝石』(バリツキー著、新装飾刊)などがある。理学博士。

監修者紹介

門馬綱一(もんま・こういち)

1980年生まれ。中学生の頃よりホリミネラロジー(旧・鉱物科学研究所)に通い、『楽しい鉱物図鑑』を愛読。2009年に東北大学大学院理学研究科博士課程を修了し博士(理学)となる。2011年より国立科学博物館研究員。専門は鉱物学、結晶学。研究に携わった新鉱物に「千葉石」「房総石」などがある。著書に、松原聰・宮脇律郎共著『図説 鉱物の博物学』(秀和システム)、 監修書に『大迫力バトル鉱物キャラ超図鑑』(西東社)、『KOUBUTSU BOOK 飾って、眺めて、知って。鉱物のあるインテリア』(ビー・エヌ・エヌ新社)などがある。

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世界のリングで活躍する名選手が「職業としてのプロレス」の深奥をつづる!『プロレスラーは観客に何を見せているのか』TAJIRI著

プロレスラーは観客に何を見せているのか

TAJIRI著

 本書は、世界最大のプロレス団体「WWE」で長年にわたって活躍し、ゼロ年代には全米で「イチローより有名な日本人」と言われた名レスラーが、プロレスというエンターテインメントビジネスの魅力と奥深さを語り尽くした一冊です。
 本書の冒頭で著者は、「プロレスとはキャラクター産業である」というWWE総帥ビンス・マクマホンの言葉を引用しています。この言葉にこそプロレスというジャンルの真理が込められているという著者ですが、興味深いのは「プロレスにおけるキャラクターは、その人がもともと持っている資質を活かしたものでないとうまくいかない」という指摘です(著者は稀代の人気選手ジョン・シナの「ラッパーキャラ」を例にあげて、ブレイクするキャラと不発に終わるキャラの違いを論じています)。
 さらに著者は、プロレスのリングにおいて選手が繰り出す技は「自身のキャラクターを紹介するためのツールにすぎない」と断言しています。技自体を披露することを目的とした試合は、それがどんなに派手な技であっても見る者の心に残らないのです。「(プロレスラーが)お客さんに見せるものは技自体ではなく、あくまでもその技を通して見えてくるプロレスラーの『キャラクター』と、その『心情』なのだ」という記述は、多くのプロレスファンにとって目からウロコではないでしょうか。プロレスラーにはオリジナリティのある完成度の高い技が必要不可欠ですが、その技を通してその選手のキャラクターが観客に伝わらなければまったく意味がないのです。観客に明確に「伝える」ための方法論を、本書ではサイコロジーという言葉を使って詳しく解説しています。
 かつて、これほどまでに深く重層的にプロレスというジャンルの特質を語った本はありませんでした。WWEからインディペンデント団体まで、世界中でさまざまなリングに上がり、またみずから団体をプロデュースした経験も豊富な著者だからこそ書きえたプロレス論といえます。プロレスファンのみならず、エンターテインメントや表現に関心のあるすべての方にぜひお読みいただきたい一冊です。

【本書より】
〈プロレスは「人に見られること」が大前提なので、「見るに値する何か」を提示できないプロレスラーには存在理由がない。〉

〈WWEのプロレスは、サイコロジーにより徹底的に整備されている。緻密で合理的なサイコロジーによって、無駄な要素は一切排除される。時にはそうではない作品もあるのだが、少なくとも「すべて、そうあるべきだ」という方向性がつねにある。
そこでは映画やマンガと同様に「意味のないシーンが一瞬でもあってはならない」という、エンターテインメントと呼ばれるジャンルの基本が徹底されているのだ。〉

〈全員ミーティングで、毎回ビンスが最後に決まって話していたのは「表情でプロレスをしろ!」ということだった。両手で四角いフレームを作り、それを顔の前で交互に動かし、「マネー・イズ・ヒア!」
「プロレスというビジネスでは、マネーは『ここ(顔の表情)』によって生み出されるんだ!」というのがビンスの最重要なプロレス哲学の一つだった。〉

〈いま、プロレス界には「楽しいプロレス」という概念が蔓延している。もちろん、楽しいという打ち出し方も「一つの正解」で、それを否定するつもりは微塵もない。(中略)しかし、プロレスを見せる側までその概念に染まってしまって、その範疇から外れたものを提供することにビビッてしまってはいけない。プロレスというジャンルはもっと奥深いものなのだ。〉

(担当/碇)

著者紹介

TAJIRI(タジリ)

プロレスラー。1970年生まれ。1994年IWAジャパンでデビュー。大日本プロレスを経てメキシコへ渡ったのち、米国ECWでトップ選手に。2001年にWWEに入団し、長きにわたって「日本人メジャーリーガー」として活躍。帰国後はハッスルでの活動を経て、SMASH、WNCで選手兼プロデューサーとして団体を率いる。その後、WRESTLE-1などを経て、現在は世界各地のさまざまなリングに上がっている。WWEクルーザー級王座、WWE世界タッグ王座、世界ジュニアヘビー級王座、GAORA TVチャンピオンシップなど、国内外で数多くのベルトを戴冠。著書に『TAJIRI ザ ジャパニーズバズソー』(マガジンハウス)、『TAJIRIのプロレス放浪記』(ベースボールマガジン社)がある。鍼灸師としても活動中。

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クルマの未来と、ベストな1台。両方わかる信頼の一冊。年間70近い日本車の小改良・新型車のほぼすべてを網羅!『2020年版間違いだらけのクルマ選び』島下泰久著

2020年版間違いだらけのクルマ選び

島下泰久著

 走りの楽しいニューカー続々。一方、EVと自動運転に暗雲…どういうこと?

100年に一度のクルマ大変革期と言われて、はや数年。いよいよここにきて、各社の、特に日独のメーカーの生き残り戦略に違いが表れてきました。今期、国産メーカーからは、走りの基本性能や魅力的なデザインで「クルマっていいな」と思わせる秀作ニューカーが次々デビュー。一方、ドイツ勢からはEVが大量デビュー。とくにフォルクスワーゲンは2025年までに年間最大300万台のEVを生産するという急激なEVシフトを公言。日独に明らかな方向性の違いを感じます。それでいて、日独共通なのは自動運転熱が急に冷めてしまったこと。この裏でいったい何が起きているのか? そして、そんななか登場したニューカーはいいのか、ダメなのか? 『間違いだらけ』がクルマ界の今を浮き彫りに!
◎第1特集:ヤリスvsフィット
 2020年2月、そろって世代交代の国産コンパクト両雄を、最速比較!
◎第2特集:トヨタとVW、ベストセラーカーの未来
 世界屈指の最量産車種同士の闘いに、異変あり。カローラvsゴルフ&ID.3
◎第3特集:マツダは本当に危機なのか?
 危うげに見えるほど強気の、攻めの改革。その裏にある、自信の根拠とは? 
●2020年版の指摘
◎ドイツ勢の急激なEVシフトは非現実的だ
◎メーカーも誤算。自動運転は簡単じゃなかった
◎日本発。人間中心のクルマ進化「シート革命」
◎モーターショーの復権が“東京”から始まった!
◎VWはゴルフをフェードアウトさせるつもりか

 

※カバー画像のダウンロードが下記リンクより可能です。
https://tinyurl.com/vys2upy
またはhttps://1drv.ms/u/s!Ar9pV9DENX3Whd5Ltvmhud6GciFKDg

 

◎今期版の論評より

ヤリス
先進技術てんこ盛り。走りが物凄くハイレベル

インサイト
 美点あるが、焦点定まらず。シャシーも△

RAV4
 骨太の四駆性能を引っ提げ、帰ってきた!

マツダ3
スタイルと走りに振り切ったスペシャルティだ

リーフ
 電池増えて重くなったe+は△だった!

BMW新型1シリーズ
FF化で得た物は失った物より大きいか

カローラ
大衆車としての使命感・誇りみなぎる快作

スカイライン
 日産にまだスカイラインをやる気あった!

新型フィット
 走りも視界も心地よさ実感。ハイブリッド◎

テスラ・モデル3
 ライバル達の心胆寒からしむ本物のクルマ

MX-30
 EVの良さとマツダの得意技は相性が抜群!

◎今期版のニューカー
ヤリス/フィット/カローラ/VW ID.3/VW新型ゴルフ/マツダ3/CX-30/MX-30/MIRAI/インサイト/レヴォーグ/アコード/レガシィ・アウトバック/レガシィB4/スカイライン/デイズ/ekクロス/N-WGN/タント/デリカD:5/スープラ/ロッキー/ライズ/RAV4/BMW1シリーズ/プジョー208/ポルシェ・タイカン/テスラ・モデル3/メルセデス・ベンツEQC/VWゴルフTDI/アルファロメオ・ジュリア・ディーゼル

著者紹介
島下泰久(しました・やすひさ)
1972年神奈川県生まれ。立教大学法学部卒。国際派モータージャーナリストとして専門誌やweb、男性誌などへ寄稿するほか、ラジオ、テレビ番組への出演、講演など様々な舞台で活動する。2019-2020 日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。『間違いだらけのクルマ選び』を2011年の復活から徳大寺有恒氏とともに、そして2016年版からは単独で執筆する。2019年には新たにYouTubeチャンネル「RIDE NOW -Smart Mobility Review-」を立ち上げた。

(担当/久保田)

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あの京大吉田寮の「今」を記録する、写真によるドキュメント

京大吉田寮

平林克己:写真 宮西建礼・岡田裕子:文

 吉田寮は、京都大学の学生寄宿舎であり、1913年に建設された日本最古の学生寮です。本書は、その寮の関係者から、寮のことを記録してほしいという依頼を受けた写真家の平林克己さんが撮影した写真をもとに構成されています。さらに、実際に吉田寮に暮らした宮西建礼氏、岡田裕子氏による、寮での暮らしや歴史、自治の在り方等についての解説テキストも記載されています。実際の寮の姿、寮生の生活がどのようなものなのかを記録した、フォトドキュメンタリーとも呼べる本書ですが、書籍の制作にあたり、撮影から使用写真、テキストまで、吉田寮自治会の了解を得ながら進行しました。

 吉田寮はアルファベットの「E」の水平部分を長くしたような平面に、120の和室があり、原則的に相部屋で使われています。第三高等学校学生寄宿舎(竣工1889年)を譲り受けた旧・京都帝国大学寄宿舎の材料を一部再利用しており、部分的には130年もの歴史がある建物で、日本建築学会近畿支部・日本建築史学会も、その資料的な価値を指摘しています。

 寮では、運営に関わることは寮生たち自身で決定し、実行する「学生自治」が行われているのですが、その様子を本文から以下に紹介します。
「吉田寮では、100 年以上も寮生による自治が行われてきた。自分たちに関することは自分
たちで決める、ということだ。したがって、毎年二回行われる部屋割りでは、入寮選考委
員会が複数人に人数分の面積の居室を提供し、居室の使い方は構成メンバーが話し合って
決める。4 人3 部屋なら、1 室は寝室に、1 室は遊び部屋に、1 室は勉強部屋といったふ
うに。」
 初めは男子寮としてつくられた吉田寮ですが、今ではあらゆるジェンダーの人が入寮できます。もちろん年齢制限も存在せず、なかには59歳で京大に入学し、吉田寮に入ったという寮生もいるとのこと。

 そんな独自の文化を持ち、建築としての歴史的な価値もある吉田寮ですが、2017年に、京都大学は耐震性を理由に、寮から退舎するよう通達を出しました。現在、寮生は大学と立ち退きをめぐり裁判中です。寮の存続が揺れていますが、まずは吉田寮のことを客観的に知ることこそが、求められているのではないでしょうか。
 寮を記録するプロジェクトの代表である岡田さんがあいさつ文に込めた思いが、本書の核心を伝えています。
「様々な情報が溢れ、様々な問題に接する機会が増えています。勿論全ての問題を把握するのは、無理なことだと思います。しかしそこで諦めてしまっては、何も解決しないのではないでしょうか。相手が何を考え、感じ、生活しているかを受け止める姿勢が、多くの問題へのアプローチになるのではと願っています。」

(担当/吉田)

著者紹介

写真:平林克己(ひらばやし・かつみ)

東京生まれ。ウィーンを拠点に東ヨーロッパで写真を始める。外資系商社勤務を経て、写真家として独立。世界8カ国、20都市以上で写真展を開催。「撮った写真に仕事をさせる」ことを第一に掲げ、写真を通じて世界を、そして人をつなぐことを理念としている。作品に、希望をテーマとし、東日本大震災後の東北を撮り続けた『陽』(河出書房)、僧侶たちとともに禅の世界を伝える『禅』、などがある。

文:宮西建礼(みやにし・けんれい)

1989年、大阪府生まれ。吉田寮の元寮生。2013年に「銀河風帆走」で第四回創元SF短編賞を受賞。近作に「もしもぼくらが生まれていたら」(『宙を数える 書き下ろし宇宙SFアンソロジー』(東京創元社)収録)がある。

文:岡田裕子(おかだ・ひろこ)

2006年、京都精華大学芸術学部ストーリーマンガコースを卒業。07年、北海道アイヌ民族と生活を送る。08年、知床ナチュラリスト協会に勤務。16年、鍼灸師/柔道整復師の資格を取得。17年、京都大学人間・環境学研究科入学。

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郵便配達の仕事に従事しながら6年がかりで東大に合格。 フルタイムの仕事と学業を両立させた中年男性の奇跡の実話! 『41歳の東大生』小川和人著

41歳の東大生

小川和人 著

 人生100年時代を見すえたキャリアプランの一環として、「社会人の学び直し」に注目が集まっています。ですが「働きながら学ぶ」のは、現在でも決して容易なことではありません。本書は今よりもはるかにその両立が難しかった時代(著者は1997年に東大入学、2001年卒業)に、郵便配達員としてフルタイムでの仕事を続けながら東大に入り、ストレートで卒業した著者による前代未聞の「学び直し」の記録です。
 郵便配達の仕事を天職と考え、実際に東大卒業後も定年まで郵便配達員として勤め上げた著者がわざわざ東大をめざした理由は何だったのか? そして、実際にはどんな学生生活を送ることになったのか? 詳しくはぜひ本書をお読みいただければと思いますが、さまざまなハードルを乗り越え続けた著者を支えたのが「自分には、やり残したことがある」という思いだったという点は、強調しておきたいところです。そういう思いに苛まれることがあっても、日々の慌ただしさに追われて特に何をするわけでもなく年齢を重ねっていってしまうのが私たちですが、著者はそこを諦めず、自身の燃える向学心を満たすための場所と時間を手に入れたのです。
 とはいえ、著者は決して声高に「正しい生き方」を語ったりはしません。実際に起こったこと、出会った人たちを明朗な文体で描写するところに著者の真骨頂があります。〈出席をとるとき、(最初、先生は)「小川君」と呼んだが、第二回目の授業からは、「小川さん」に変わった〉といった調子で、飄々とユーモラスに自身の経験をつづります。また、〈(この同級生は)説明は難しいが、東大生と聞いて、誰もが「あー、やっぱり」と納得するようなタイプの好青年である。私とは全然違った〉という叙述に見られるような、独特の観察眼も本書に味わいを添えています。
 学び直すことは生き直すこと。そして、それはやる気になれば自分にもできるのではないか。ページをめくるうちにそんな気分にさせられる一冊です。
(担当 碇)

 著者紹介

小川和人(おがわ・かずと)

1956年、千葉県市川市生まれ。1980年、明治学院大学社会学部社会学科卒業。証券会社勤務、学習塾講師、教材制作会社勤務を経て、1988年、江戸川郵便局集配課(現日本郵便株式会社)勤務。1997年、東京大学教養学部文科Ⅲ類入学。2001年、東京大学文学部思想文化学科(インド哲学仏教学専修課程)卒業。2016年、日本郵便株式会社定年退職。東京都江戸川区で育ち、結婚後、東京都豊島区(西池袋、目白)で暮らし、現在は神奈川県川崎市麻生区在住。趣味は内田樹氏の本を読むこと、映画鑑賞、野球観戦、競馬観戦、東京ディズニーシーで一日をのんびり過ごすこと。家族は妻と子ども二人(男)、孫一人(女)。

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人はどのような過程を経てテロリストになっていくのか? 現地取材をもとに新たなテロリスト像を提示する力作ノンフィクション! 『テロリストの誕生』国末憲人著

テロリストの誕生

ーーイスラム過激派テロの虚像と実像

国末憲人 著

 2015年から16年にかけてフランスとベルギーで相次いで起きた下記の四つのテロは、世界に大きな衝撃を与えました。
▼辛辣な風刺で知られる週刊紙の編集部が標的となった「シャルリー・エブド襲撃事件」(同時に起こったユダヤ教スーパー襲撃事件と合わせて17名が死亡)
▼街角のカフェや劇場が襲われ130名の犠牲者を出した「パリ同時多発テロ」
▼EUの拠点で空港・地下鉄が狙われ32名の犠牲者を出した「ブリュッセル連続爆破テロ」
▼海岸沿いの遊歩道を散策する86名の生命が奪われた「ニース・トラック暴走テロ」

 これらのテロはいずれも「イスラム過激派」によるものと報じられましたが、犯人側が死亡していることもあり、現在にいたるまで凶行の全体像が解き明かされたとはいえません。本書は朝日新聞の外信部で長く現地取材にたずさわってきた著者が、欧米社会を震撼させたこれらのテロの深層に迫ったノンフィクションです。
 多くは欧州で生まれ育ち、一度は欧米社会の価値観になじんだ若者たちが、どのようなプロセスを経て自身の命を犠牲にすることすら厭わないテロリストになっていったのか。著者は丹念な取材と多角的な分析によって、人がテロリストになっていく過程を浮き彫りにしていきます。
 本書には注目すべき記述が数多くありますが、なかでも重要なのは、彼らを凶行に駆りたてたのは信仰心や思想信条ではなかったという指摘です。
 本の冒頭で著者は、「テロに関しては、これまで『貧困こそが過激派を生み出す』『テロの背景にはイスラム教徒への差別がある』といった俗説が広く信じられてきた。このような根拠に乏しい言説が流布される一方で、テロの根本的な原因である過激派ネットワークの実態はしばしば見過ごされた」「社会の問題を解決しないとテロもなくならないと思うなら、テロリストの論理の術中にはまる」と述べています。
 本書では、宗教組織ではなく犯罪組織とテロ集団との関係性を指摘する興味深い研究も紹介されています。
テロという異常な現象はどのようして起きるのか。そして、テロの背後にはどんな人間がいるのか。本書はこれまでにないテロリスト像を提示する刺激的な一冊といえます。

(担当/碇)

著者紹介

国末憲人(くにすえ・のりと)

朝日新聞ヨーロッパ総局長。1963年岡山県生まれ。1985年大阪大学卒。1987年パリ第2大学新聞研究所を中退し、朝日新聞社に入社。パリ支局員、パリ支局長、論説委員、GLOBE編集長などを経て現職。著書に『ポピュリズムに蝕まれるフランス』『イラク戦争の深淵』『巨大「実験国家」EUは生き残れるのか?』(以上、草思社)、『自爆テロリストの正体』『サルコジ』『ミシュラン 三つ星と世界戦略』(以上、新潮社)、『ユネスコ「無形文化遺産」』(平凡社)、『ポピュリズム化する世界』(プレジデント社)、『ポピュリズムと欧州動乱』(講談社)などがある。

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