草思社のblog

ノンフィクション書籍を中心とする出版社・草思社のブログ。

芸術

ソルニットにも影響を与えた、英国稀代の批評家の傑作集 『批評の「風景」 ジョン・バージャー選集』ジョン・バージャー著 トム・オヴァートン編 山田美明訳

批評の「風景」 ジョン・バージャー選集 ジョン・バージャー 著 トム・オヴァートン 編 山田美明 訳 ジョン・バージャーは英国が誇る美術批評家で「イギリスのベンヤミン」などとも評されます。『見るということ』や『イメージ』などの著作で日本でも確固た…

ラスト・トリオのドラマーの回想記『ビル・エヴァンス・トリオ 最後の二年間』ジョー・ラ・バーベラ・チャールズ・レヴィン 著 荒井理子 訳

ビル・エヴァンス・トリオ 最後の二年間 ――TIMES REMEMBERED ジョー・ラ・バーベラ・チャールズ・レヴィン 著 荒井理子 訳 瀕死のビル・エヴァンスを病院に送る 1980年9月15日、マンハッタンのマウントサイナイ病院でビル・エヴァンスはその生涯を閉じた。51…

NHK朝ドラ「ブギウギ」の原点がわかる名著、待望の文庫化!『文庫 ジャズで踊って 舶来音楽芸能史 完全版』瀬川昌久 著

文庫 ジャズで踊って ――舶来音楽芸能史 完全版 瀬川昌久 著 戦前の昭和モダニズム文化の中でジャズがいかに華麗に花開いたか?服部良一を「日本のガーシュイン」、笠置シヅ子を「日本人離れの奔放さ」と喝破! NHK朝ドラ「ブギウギ」の原点がわかる名著、待…

アアルト夫妻の素顔に手紙から迫る、貴重なドキュメント!『アイノとアルヴァ アアルト書簡集』ヘイッキ・アアルト=アラネン 著 上山美保子 訳

アイノとアルヴァ ――アアルト書簡集 ヘイッキ・アアルト=アラネン 著 上山美保子 訳 フィンランドが生んだ世界的なデザイナーにして建築家であるアアルト。2023年10月には日本でも映画『アアルト』が公開され、そのデザインはわが国で人気が高まり続けている…

なぜ数学者には黒板が必要不可欠なのか? 『数学者たちの黒板』ジェシカ・ワイン著 徳田功訳

数学者たちの黒板 ジェシカ・ワイン著 徳田功訳 誰もが、かつて黒板に板書された授業の内容をノートに写して勉強した経験があると思います。その意味で黒板は身近とも言えますし、一方である時期を過ぎれば疎遠になってしまうものでもあります。そんな黒板は…

世界最古の木造建築「法隆寺」のすべてを解説した名著が、ハンディサイズに!『【普及版】法隆寺 世界最古の木造建築』西岡常一・宮上茂隆 著 穂積和夫 イラストレーション

【普及版】法隆寺 ――世界最古の木造建築 西岡常一・宮上茂隆 著 穂積和夫 イラストレーション 法隆寺が世界の最古の木造建築であることは周知の事実ですが、その価値は古いということにあるのではなく、法隆寺に込められた、古代日本人がもっていた技術や知…

売春、ドラッグ、酒、犯罪、戦争、人種差別、民族差別、リンチ――。二十世紀日米ジャズの裏話満載! 『欲望という名の音楽 狂気と騒乱の世紀が生んだジャズ』二階堂尚 著

欲望という名の音楽 ――狂気と騒乱の世紀が生んだジャズ 二階堂尚 著 本書のカバー写真は、戦後の横浜を舞台にした黒澤明監督の『天国と地獄』(1963年)からのカット。山﨑努が演じる研修医が、ジャズ・バンドが大音量で演奏し人々が踊り狂う喧騒にまぎれて…

海エッセイの傑作 『海のプール 海辺にある「天然プール」を巡る旅』清水浩史 著

海のプール ーー海辺にある「天然プール」を巡る旅 清水浩史 著 海と太陽、透明感、静寂、自由――きらめく「ノスタルジック・プール」の世界へ。 北海道から沖縄、豪州まで…本邦初!野趣あふれる海のプール遊泳記 【海のプールとは】 海辺の岩場を掘ったり、…

昔の日本映画はどのように残ってきたか。それはどこかに眠っている。『映画を追え フィルムコレクター歴訪の旅』山根貞男 著

映画を追え 山根貞男 著 戦前の日本映画で残っているものは10パーセント以下、一説によると4パーセントぐらいだと言われている。小津安二郎監督の初期短編、溝口健二のサイレント期の作品、伊丹万作や山中貞雄の名作と言われる時代劇もほとんど残っていない…

すべてが視覚化する時代に、「触れたい」建築を考える『建築と触覚 空間と五感をめぐる哲学』ユハニ・パッラスマー著 百合田香織訳

建築と触覚 ――空間と五感をめぐる哲学 ユハニ・パッラスマー 著 百合田香織 訳 SNSやメタバース空間の登場など、世界がますます視覚を重視していくかのように感じられる昨今。そんな視覚以外の空間体験が薄まっていくような時代に、空間における五感の重要性…

国際的映画ビジネスの大変さ、日本映画の契約意識の低さなど。『黒澤明の弁護士』乗杉純 著

黒澤明の弁護士 乗杉純 著 本書は第6回(2021年度)文芸社・草思社W賞金賞受賞作のノンフィクションである。著者の乗杉純氏は弁護士で個人事務所を経営している。国際間の契約の交渉、知的所有関係などに長けていて、黒澤プロとも近年までさまざまな案件で…

鉄道開業150周年。電車もいいけど、駅のデザインにも注目してみませんか?『東京の名駅舎』大内田史郎 著 傍島利浩 写真

東京の名駅舎 大内田史郎 著 傍島利浩 写真 皆さんは、電車で目的の駅の改札を出た後に、うしろを振り返ったことがあるでしょうか?誰もが利用しているのに、普段は見過ごされている駅舎。しかし、そこには設計者がデザインに託したさまざまな思いや考え方が…

竣工から50年。カプセルタワーという名建築の終局『中銀カプセルタワービル 最後の記録』中銀カプセルタワービル保存・再生プロジェクト編

中銀カプセルタワービル 最後の記録 中銀カプセルタワービル保存・再生プロジェクト編 1972年に竣工した、日本建築史に残る名作、中銀カプセルタワービル。建物が新陳代謝し、時代ごとに成長するという革新的な「メタボリズム」の概念に基づいて黒川紀章が設…

雲の分類は約100種! その全部がわかる本『新・雲のカタログ 空がわかる全種分類図鑑』村井昭夫・鵜山義晃 文と写真

新・雲のカタログ ――空がわかる全種分類図鑑 村井昭夫・鵜山義晃 文と写真 雲好き・空好きに愛され続けてきたロングセラーが全面リニューアル 雲をちゃんと理解して、その性質を知るためにはどうすればいいでしょうか。それにはまず、雲の名前を知らなければ…

61人の女性の美しさを捉えた写真と言葉『ワンピースのおんな』宇壽山貴久子 写真、すまあみ 文

ワンピースのおんな 宇壽山貴久子 写真 すまあみ 文 本書は、ニューヨーク、カリフォルニア、そして日本各地に在住の50歳以上の女性61人をモデルにしたポートレート写真集です。「暮しの手帖」誌に11年間にわたって連載された作品をもとに、一冊にまとめまし…

飛んでくる蝶から見えてくるもの『蝶が来る庭 バタフライガーデンのすすめ』海野和男 著

蝶が来る庭 バタフライガーデンのすすめ 海野和男 著 本書『蝶が来る庭――バタフライガーデンのすすめ』で著者が繰り返し述べていることは以下の一節に表れている。「ぼくの事務所がある東京の千代田区でも30種類ほどの蝶がいて、日本全国では240種類ほどの蝶…

「なにもできない。でも、力になりたい。」誰もがそう思った3.11から10年。『「陽」 HARU Light&Letters』平林克己 写真 横川謙司 文

「陽」 HARU Light&Letters 3.11 見ようとすれば、見えるものたち。 平林克己 写真 横川謙司 文 2021年02月13日、10年という時機をまるで見定めたかのように、東北で大きな地震が起きました。2011年3月11日、東日本大震災から10年。日本中が一丸となって…

「映画」と「科学」の意外な共通点『ハリウッド映画に学ぶ「死」の科学』リック・エドワーズ 著 マイケル・ブルックス 著 藤崎百合 訳

ハリウッド映画に学ぶ「死」の科学 リック・エドワーズ 著 マイケル・ブルックス 著 藤崎百合 訳 ◆映画と科学の共通点「死を避ける方法を探しつづけていること」 どうにかして「死」を逃れたい……。多くの映画は、このためにストーリーが展開し、人食いサメや…

なぜ黒川紀章の中銀カプセルタワーは常に時代の先端を行くのか? 『中銀カプセルスタイル』中銀カプセルタワービル保存・再生プロジェクト編

中銀カプセルスタイル 中銀カプセルタワービル保存・再生プロジェクト 編 1972年、世界的建築家である黒川紀章氏の代表作が誕生しました。それが銀座に立つ、中銀カプセルタワービルです。本書はそのカプセルの中で「超イマドキ」な生き方を実践している人た…

「怪しげな東洋人」という役柄が彼の忘れられた理由ではないか『占領下のエンタテイナー』寺島優 著

占領下のエンタテイナー 日系カナダ人俳優&歌手・中村哲が生きた時代 寺島優 著 本書(『占領下のエンタテイナー』)の201ページに1952年2月の『NHKスター・オン・パレード』の写真が載っている、占領末期のおそらくNHKラジオ主催による当時の花形歌…

蝶は視覚動物なので、あんなに奇麗なのだ。『増補新版 世界で最も美しい蝶は何か』海野和男 写真・文

増補新版 世界で最も美しい蝶は何か 海野和男 写真・文 人間が歴史的に惹きつけられた自然にある美しいものには、宝石の結晶や夜空の星や植物の花などともに、空に舞う蝶がある。とくに熱帯の大型の蝶には18、19世紀の欧米の博物学者や収集家が夢中になった…

伝説的ラジオ番組の書籍化、完結篇! 『菊地成孔の粋な夜電波 シーズン13-16 ラストランと♂ティアラ通信篇』菊地成孔、TBSラジオ 著

菊地成孔の粋な夜電波 シーズン13-16 ラストランと♂ティアラ通信篇 菊地成孔、TBSラジオ 著 ◆伝説的ラジオ番組の番組本が遂に完結 2011年4月から18年12月まで約8年に亘って放送された伝説的ラジオ番組、「菊地成孔の粋な夜電波」(TBSラジオ)。ジャズミュー…

あの京大吉田寮の「今」を記録する、写真によるドキュメント

京大吉田寮 平林克己:写真 宮西建礼・岡田裕子:文 吉田寮は、京都大学の学生寄宿舎であり、1913年に建設された日本最古の学生寮です。本書は、その寮の関係者から、寮のことを記録してほしいという依頼を受けた写真家の平林克己さんが撮影した写真をもとに…

『天井桟敷の人々』『勝手にしやがれ』などから20世紀の映画史を俯瞰『山田宏一映画インタビュー集 映画はこうしてつくられる』山田宏一著

山田宏一映画インタビュー集 映画はこうしてつくられる 山田宏一著 本書は映画評論家・山田宏一氏が19人の映画人にインタビューしているが、そのテーマはさまざまである。まったく無名の人(ルネ・リシティグ=修復・編集、サム・レヴァン=スチールマン・肖…

スパイダーマン、アイアンマン、ハルク、ドクター・ストレンジ、ブラックパンサー…… 世界中で人気のスーパーヒーローを数多く創造したクリエイターの人生を描いた傑作評伝!『スタン・リー マーベル・ヒーローを創った男』ボブ・バチェラー著 高木均訳

スタン・リー マーベル・ヒーローを創った男 ボブ・バチェラー 著 高木均 訳 本書は、昨年11月に惜しまれつつ世を去った稀代のクリエイター、スタン・リーの評伝(原書“Stan Lee: The Man behind Marvel”、2017年刊)です。コミックというメディアの社会的地…

遺伝子操作で賢いサルは作れる?――たぶん「イエス」 『すごく科学的:SF映画で最新科学がわかる本』リック・エドワーズ/マイケル・ブルックス 著

すごく科学的ーーSF映画で最新科学がわかる本リック・エドワーズ/マイケル・ブルックス 著 藤崎百合 訳 ◆絶滅種再生や人工知能、ブラックホールにゾンビまで、映画から科学の最先端が見える! 映画「猿の惑星」のように、賢いサルを遺伝子操作などの手法…

スマートフォンで蝶をうまく撮るには? 『海野和男の蝶撮影テクニック』海野和男著

海野和男の蝶撮影テクニック 海野和男著 本書の最終頁(124~125ぺージ)にスマートフォン(iPhone)で撮った蝶の写真が載っている。兵庫県で撮ったアサギマダラと都内自宅近くで撮ったアオスジアゲハだ。iPhoneでもこんなにきれいな蝶の写真を撮れるのだと…

満映、キン・フー、チャン・イーモウの関係 『新装版 キン・フー武侠電影作法』キン・フー/山田宏一/宇田川幸洋著

キン・フー監督の現在の中国語映画史上での評価は、例えば2011年に台湾金馬影展執行委員会というところが発表した中国語映画のオールタイムベスト100というリストを見ればよく分かる。9位に『龍門客桟』、15位に『俠女』が入っている(ちなみに1位はホウシャ…