草思社のblog

ノンフィクション書籍を中心とする出版社・草思社のブログ。

毎日を素敵に暮らせる「小さな家」をつくりませんか? 小さな家のつくり方―― 女性建築家が考えた66の空間アイデア

小さな家のつくり方

―― 女性建築家が考えた66の空間アイデア

大塚泰子 著

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 ◆「小さな家」成功の秘訣は、家に対する「固定概念」を捨てることから!

 「限られた土地にどうやって理想の住まいを建てるか」、土地の値段が高い都会において、家を建てようとする際、誰もがぶつかる課題です。しかし、むしろ著者は「小さな家」のほうが表面的な広さとは違う心地良い「ゆとり」に満ちた空間をつくれると断言します。

 そのためには、まず、家に対する「固定概念」を捨てること。これが小さな家づくり成功の最大の秘訣だとします。なぜなら世間一般の家の概念にとらわれていると、どうしても玄関、洗面所、各部屋のクローゼット、リビングなどをいかに土地に収めるか――その視点で家づくりを進めてしまい、その結果、家のパーツをぎゅうぎゅうに詰め込んだだけの、せまくて住みづらい家ができあがってしまうからです。

 著者の提案するアイデアは斬新です。本来独立しているはずの空間である玄関とテラスとリビングをまとめてしまったり、玄関と階段室を一体化したり、クローゼットを各部屋につけず一ヵ所にまとめてみたり、廊下につくったりetc。実際に狭小敷地や変形敷地、日照条件が厳しくお困りの方はもちろんのこと、これから新居をつくろうと思っている方や、リフォームしたいと思っている方まで、幅広くお役にたてるよう66のアイデアをまとめています。

◆小さな家に住めば、自然に断捨離! モノに振り回されない生き方ができる

 さらに、小さな家の魅力は住んでからも大いに発揮されるといいます。それはモノに振り回されない生き方ができることです。広ければ、あれもこれもと家具やモノを買い集めることもできますが、小さな家では余分なモノを置くスペースがないのですから、自然と自分が本当に必要とするものだけに囲まれたシンプルな生活になります。

 自分の目の届く空間に必要なモノだけがある。そんなすっきりした最小限の暮らしは、精神的なゆとりをもたらすでしょう。小さな家での暮らしは、今この瞬間を味わい、楽しみ尽くすことに意識を向けられるのではないか――小さな家をつくりつづけて、今著者はそんなふうに考えるようになったそうです。

 こうした著者の考えに賛同するように、最近は子育て世代のお客さん以外に、「小さな終の棲家を建てたい」という年輩の方もとても増えているとのこと。

ぜひ多くの方に読んでいただきたい一冊となっております。

(担当/吉田)

著者紹介

大塚泰子(おおつか・やすこ)

建築家。ノアノア空間工房代表取締役。大妻女子大学非常勤講師。1971年千葉県生まれ。日本大学生産工学部建築工学科卒業。同大学院生産工学研究科博士前期課程建築工学専攻修了。大学院修了後、1996年株式会社アーツ&クラフツ建築研究所に入所、杉浦伝宗に師事する。「ちっちゃな家#1」、敷地わずか9.6 坪の母の家が初めての担当作品となる。その後「ちっちゃな家」シリーズとして反響を呼ぶ。2003年有限会社ノアノア空間工房を設立。「どうしたら建築がゆたかさを育てるのか」をテーマに、これまでに約80軒の住宅設計、20店の店舗設計を手がける。趣味は写真と旅行。自分で手がけた建築はできるだけ自分の手で撮影したいと思っている。

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小さな家のつくり方 | 書籍案内 | 草思社

文庫版『昭和二十年』全13巻、未完の完結。故・鳥居民が明らかにしたこととは。

 日本が未曾有の試練に見舞われた太平洋戦争最後の一年を一月一日から十二月三十一日まで、ときの推移に従って、日本の全社会がどのように動いたかを描く巨大ノンフィクション、『昭和二十年』。著者の急逝のため未完に終わった本シリーズ全13巻の文庫版刊行が、このたび完結した。

 その第13巻に付された、担当編集者による「編集部あとがき」をここに公開します。


『昭和二十年』第13巻 編集部あとがき

 鳥居民著『昭和二十年』はここで絶筆となっている。二〇一三年(平成二十五年)一月四日朝、連絡があり、鳥居民(本名池田民)氏が倒れられ、救急搬送されたが、絶命したとのことであった。朝のシャワーを浴びている最中だったとのことである。享年八十四。

 大作『昭和二十年』はここで未完となった。生前、「別冊文藝春秋」誌の対談で丸谷才一氏、井上ひさし氏により、完成すればギボンの『ローマ帝国衰亡史』に匹敵する昭和日本の全社会史になるだろうと言われた稀有な試みは、残念ながら完結しなかった。鳥居民氏ご本人が一番無念だったであろう。あるいは鳥居民氏らしく、自嘲気味に「仕方ないですね」と笑ったであろうか。

 鳥居民氏は編集者と前年十二月中旬、新宿駅頭で別れた時に「『昭和二十年』第十四巻は八割がた完成しているから年明けには渡せるでしょう」と言っていた。しかし、残されたパソコン・データ内にあった原稿を精査してみたが、完成原稿というには程遠く(いつもの空手形であったのだろうか)、これをそのまま刊行することは、氏の遺志にそぐわないと考えたため、多少整理の手を加え、完成されていた部分だけを、かなり縮小した形で『昭和二十年/別巻』として後日、刊行する予定である。

 『昭和二十年第十四巻』は「ポツダム、そのあいだの日本」と題され、七月三日から七月二十八日までを扱う予定であった。六月二十二日の和平への政策転換以降、対ソ交渉もはかどらず、事態は小康状態となる。その間、国内は地方都市への激しい空襲や東京の再疎開問題に関心は向けられていた。トルーマンは戦艦オーガスタで太平洋をわたり、ポツダムへ向かい、チャーチル、スターリンと会談する。戦後の荒廃したベルリンとポツダムの状況、そこで日夜繰り広げられた、虚々実々の駆け引きが描かれる。天皇保全条項が除かれたポツダム宣言が発表されるまで。

 このあと『昭和二十年』は二巻ないし三巻で第一部が完結し(八月十五日だけは一日一巻で描かれる予定だった)、第二部は三巻か四巻で終わるはずであった(となると全二十巻ぐらいか)。鳥居さんはいつまで(何歳まで)生きるつもりだったのであろうか。戦後編の構想は、ほかに書き残した著作などから、かろうじて推し量ることができるかもしれない。氏の昭和史関係の著作はほかに『日米開戦の謎』『原爆を投下するまで日本を降伏させるな』『山本五十六の乾坤一擲』(この書だけ文藝春秋社刊、他はすべて草思社刊)『近衛文麿「默」して死す』『鳥居民評論集 昭和史を読み解く』があり、後の二書に多少、氏の戦後史観をうかがうことができる。

 『昭和二十年第一巻』は正月、熱海大観荘での近衛の述懐から始まるが(どうやったら綺麗な顔で死ねるか、という)、昭和二十年十二月半ばの近衛の自殺までが主筋の一つであったようだ。八月三十日マッカーサーが厚木にやって来るが、近衛はそれ以前からすでに動き始める。だが、E・H・ノーマンの登場によって木戸対近衛の対立は、鳥居氏言うところの戦後日本を規定した木戸・ノーマン史観の勝利に終わる。十月はじめ徳田球一、志賀義雄が府中刑務所から解放される。十一月近衛が駆逐艦アンコンに呼ばれ査問される。ノーマンがマッカーサーに提出した、いい加減な戦犯リストをもとに日本は裁かれることになった。沖縄は、満州は、中国大陸はどうなったか。いよいよ風雲急を告げる昭和二十年の日本。あたかも安手の娯楽映画の予告編のようであるが、このあとは鳥居民氏の志を引き継いでどなたか有為の研究者に書いていただければと切に念じている(鳥居氏の蔵書・資料は草思社で保管しているが未整理のままである)。

 このシリーズ独自の指摘として例えば次のようなことが挙げられる。

(1) 二十年二月の重臣上奏は貞明皇后の前年末からの働きかけにより行われたこと。
(2) 木戸内大臣の責任の大きさ。開戦時および和平への転換で判断を誤ったこと。
(3) 昭和十九年春からの大陸での一号作戦(大陸打通作戦)が戦後の局面をすっかり変えたこと。
(4) 原爆投下とトルーマンの確信犯的行動。など

 死んだ子の齢を数えるようだが、もし完成していたなら、本書は朝日新聞的・NHK的ではないまったく別の昭和史観がありうるということを示せたはずなのだ(この未完の部分だけでも十分に伝わってくるのだが)。それはおそらく昭和を生きて、何も言葉を残さずに死んでいった多くの民衆の本音の部分に、これまで書かれたどの史書よりもっと深く響いたはずである。
 ここまで読んでくださった読者の方々にお礼を申し上げます。
 
 (担当・木谷)

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