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草思社のblog

ノンフィクション書籍を中心とする出版社・草思社のブログ。

現代ロシアの「強欲な利権構造」を浮き彫りにする

海外事情

ロシア 利権闘争の闇――迷走するプーチン政権

元日経新聞モスクワ特派員 江頭 寛 著

◆ウクライナ危機はロシア自身が招いていた!

今年2月、ウクライナで欧米派の活動家と治安部隊の間で大規模な武力衝突が起こり、親ロシア派政権が倒れ、欧米派の暫定政権が成立しました。これに対する報復として、ロシアはウクライナの自治共和国クリミアを自国に編入します。

なぜロシアは、ウクライナの親ロ派政権を失うことになったのか。その背景をたどると、「強欲なまでに経済利権を追求するロシア」というこの国家の本質が見えてきます。

ウクライナとロシアはともにソ連から独立した兄弟国家であり、独立以後、緊密な関係が続いてきましたが、その関係に大きな変化が訪れたのが、2009年でした。

当時首相だったプーチンは、ロシア産天然ガスのウクライナへの輸出価格を国際市場価格の2倍もの額につり上げ、買い取り義務量を設定し、義務量を下回った場合は違約金が発生するとの決定を下します。ウクライナは再三値下げを要請しましたが、プーチンはこれを無視。窮したウクライナはEUに接近し、これに慌てたプーチンがようやく値下げに応じたことでウクライナはロシアに歩み寄ります。この事態に、EUへの接近を期待していたウクライナの欧米派の活動家らが武装蜂起し、今回の政権転換に至ったのです。つまり、プーチンの過剰な経済利権追求が、ウクライナを欧米側に追いやってしまったわけです。

◆長年の利権政治で窮地に立つプーチン

本書では、プーチンが2000年に大統領に就任して以来今日まで、いかに経済利権に固執してきたか、そしてその利権政治にメドヴェージェフら欧米寄りのリベラルグループがいかに対抗してきたかを時系列で克明にたどります。

プーチンは大統領就任以来、ソ連のKGB時代の古い友人グループを政府や国営企業の要職に送り込み、彼らに石油や天然ガスなどの生産・販売に関する利権を分け与え、それを固守してきました。2008年頃の時点で利権分配は完成し、利権を手にした政治家や経済人は巨万の富を築きます。彼らは、モスクワ郊外の別荘地や黒海沿岸の保養地にぜいたくな不動産を数々所有し、権力者プーチンの庇護のもと、エリートの生活を謳歌しているといわれます。彼らが是が非でも利権を手放せない理由がわかろうというものです。

しかし、こうしたプーチンの長年の利権政治のツケが、近年、顕著に見られるようになりました。国内で政権への大規模な抗議デモが行われ、利権政治による経済の非効率化が経済低迷を招いています。また、閣僚たちが汚職や愛人問題で辞職し、プーチン自身にも女性問題がささやかれています。そして、今回のクリミア編入による国際的非難です。

かつてのプーチン政権の原油価格の高騰を追い風にした威勢は過去のものになりつつあります。本書は、ロシアの現状を理解するための格好の一冊といえるでしょう。

(担当/貞島)

著者紹介
江頭寛(えがしら・ひろし)

1944年神奈川県生まれ。東京外国語大学ロシア語科卒業。70年日本経済新聞社入社。81年から4年間モスクワ特派員。国際部編集委員などを経て2007年退職。関東学院大学経済学部講師「ロシア経済事情」などを務める。著書に『ロシア 闇の大国』『プーチンの帝国』(いずれも草思社)がある。

 

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