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草思社のblog

ノンフィクション書籍を中心とする出版社・草思社のブログ。

安保をめぐるモヤモヤを一気に晴らす!

兵頭二十八の防衛白書 2014

兵頭二十八 著

◆日本の安保環境を知るためのベストブック

論議がつづく「集団的自衛権」の行使容認問題ですが、大方の日本人はその核心部分について殆ど何もわかっていないはずです。わかってないと言えば、昨年公布された「特定秘密保護法」の意義もわからないし、オスプレイ配備の真意もわからない。尖閣や南シナ海で起きていることの背景もわからない。戦後70年、軍事や安全保障について正面切って語ることが〝封印〟されてきたわけですから無理ないこととはいえ、国際関係が混沌の度を増す今、ひとり日本だけがこれに鈍感なままではいられないでしょう。

 古典からインターネット情報まで、軍事に関する膨大な文献・資料を日々渉猟、その該博な知識をもとに時事問題について鋭い評論活動をおこなっている兵頭二十八氏はこれまで書籍や雑誌、ブログ等を通じ、自衛隊や政府の安全保障部門にさまざまな提言をしてきました。2012年にはこれらの到達点たる『日本人が知らない軍事学の常識』(小社刊)を上梓。本書はそのエッセンスを更新し年刊とした兵頭版「防衛白書」第1号です。氏はここで、最新の国際情勢を解説するとともに、もろもろの防衛施策を忌憚なく批評し、独自の視点から日本の安保環境を読み解いていきます。専門的な情報が隘路とならぬよう叙述はきわめて平明。安保理解を深めるためのベストブックといっても過言ではありません。

◆米国の軍事予算削減、中国の「間接侵略」の脅威

 本書は「わが国を取り巻く国際情勢」と「わが国の防衛施策の問題点」の2部構成。最初にとりあげられ、かつ本書の中で最も多くのページが割かれているのがアメリカの現況です(Ⅰ部第1章)。章タイトルに「米国 軍事予算大幅カットの趨勢」とあるとおり、2010年、米国では軍事予算の大削減が法律化。その結果、陸軍では毎年2万人を除隊させねばならなくなり、海軍では空母の外地展開シフトが変更されることになる(2014年11月)など、米各軍に多大な影響が出ている状況を詳述。つづいて10年ごとに2倍のペースで軍拡が進む中国の現況がとりあげられます(Ⅰ部第2章)。最新兵器を購入し、挑発を繰り返す中国ですが、兵器製造・維持能力はお粗末、軍の腐敗もあいかわらずで、かりに米国との軍事衝突があったとしても完敗は必至といった内実を明らかにしたうえで、ほんとうに警戒すべきはサイバー攻撃やスパイ工作などの「間接侵略」だと説きます。

アメリカの相対的な弱体化と中国の「間接侵略」の脅威。これらの大きな流れから俯瞰してみれば、「集団的自衛権」や「特定秘密保護法」、オスプレイ配備の意味するところがハッキリとしてきます。その詳細はⅡ部で述べられていますが、一読、視界がひらける思いがします。とくに、「なるほど」と膝を打ちたくなるのは、「集団的自衛権」問題の背後には、「(アメリカの先兵となって)中国や朝鮮のために戦うなどまっぴら御免」という吉田茂の意思を密かに引き継ぐ内閣法制局vs.アメリカ+アメリカの意を汲む外務省の構図があるのではないかとの見立てです(Ⅱ部第1章)。

 日本では長きにわたって等閑視されてきましたが、元来「軍事」の視点は物事を正確に測るための最も有効なスケールの一つです。日本の真の国力を知り、日本が国際社会でどのような位置にあるのかを知るためにも、多くの人に読んでいただきたい1冊です。

(担当/A)

著者略歴
兵頭二十八(ひょうどう・にそはち)

著述家、軍学者。1960年長野市生まれ。陸上自衛隊を経て神奈川大学英語英文科、東京工業大学江藤淳研究室に所属。社会工学専攻修士。著訳書に『兵頭二十八の農業安保論』『日本人が知らない軍事学の常識』『北京が太平洋の覇権を握れない理由』『「日本国憲法」廃棄論』(いずれも草思社)、『人物で読み解く「日本陸海軍」失敗の本質』『新訳・孫子』『新訳・フロンティヌス戦術書』『新訳・戦争論』(いずれもPHP研究所)、『新解 函館戦争』(元就社)など多数。

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