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草思社のblog

ノンフィクション書籍を中心とする出版社・草思社のブログ。

朝鮮の開国の歴史にまったく新しい光をあてる

朝鮮開国と日清戦争――アメリカはなぜ日本を支持し、朝鮮を見限ったか

渡辺惣樹 著

◆多国間関係のなかで歴史の謎を解く

著者の渡辺氏は「プロローグ」で、明治維新期から朝鮮併合までの歴史は不思議なことばかりであると書き、朝鮮開国・日清戦争期にはこんな不思議があるとして、いくつかを挙げています。たとえば一八七六年に日朝修好条規が結ばれ、朝鮮は「自主の国」として開国するわけですが、西欧列強に先がけて、なぜ日本が朝鮮開国の役割を担ったのか。江華島での軍事衝突を経てこの条約を結んだのが、西郷隆盛ら対朝鮮強硬派を押さえ込んだ明治要路の穏健派だったのはなぜか。しかも日本は朝鮮が自主(独立)の国であることをあらためて承認させるために清国と戦わねばならず、この経緯も不思議です。渡辺氏は日米開戦にいたるプロセスをたどり、その成果を『日米衝突の根源 1858―1908』『日米衝突の萌芽 1898―1918』として上梓、高い評価を得ていますが、氏の持論は、近代の歴史は二国間関係だけを見ていてはわからないということです。本書でも、日清戦争期を、米国の対アジア外交を中心に当時の入り組んだ多国間関係のなかでとらえ、米国の未公刊資料を駆使して、これらの不思議(謎)を解き明かしていきます。

◆黒子に徹した米国の役割をクローズアップ

 朝鮮開国をめぐる渡辺氏の謎解きの一部をごく簡単に述べます。

南北戦争(1861-65)は、徹底した保護主義により国内の幼稚産業を育て、インフラを整備して米国を工業国へと転換させたい(アメリカン・システムの構築)とする北部と、自由貿易主義の雄イギリスに依存した産業形態の継続を望む南部の戦いだった。その北軍の勝利から六年後に派遣された岩倉訪米使節団の一員、大久保利通、木戸孝允は、このアメリカン・システムの考えにおおいに啓発されたはずであり、朝鮮開国プロジェクトは日本近代外交の成熟度を示す好機であるが、内治の充実こそが喫緊の課題であるとはっきり自覚して帰国。かつての盟友が主張する強気の交渉に猛烈に異を唱え、その後ロシア、清国の動向を見極めたうえで、朝鮮の実質的な宗主国たる清国と交渉して朝鮮開国について“仁義を切り”、日朝修好条規締結を実現させた。

渡辺氏はこの一連の動きの背後には、日本外務省顧問の第一号で、国際法の権威にしてアンチ自由貿易主義者でもあったペシャイン・スミスという(戦後の史書では殆ど無視されている)人物のアドバイスがあったと洞察、ペリー以降、影が薄くなったかに見えるアメリカは、実は黒子に徹して明治日本の国家建設を支えていたのだと説いています。

日本近代史のパラダイムを一変させる

朝鮮開国も日清戦争もその根本には日本の「朝鮮侵略の意図」があったとする通説がいかに史実と乖離しているかも明らかになります。朝鮮との外交は清国との外交と同義であり、きわめて厄介であることを西欧列国も日本も承知していました。こうしたなか、列国との不平等条約解消という懸案事項を抱える明治政府に「侵略」の意図や余裕などあるはずもなく、その対応は米国が「理解しがたい」と慨嘆するほど抑制的、日清戦争は日朝修好条規を反故にする朝鮮=清国の反近代的行動の結果、生じたものだとわかるのです。

日本近代史の解釈に新たなパラダイムを示した一冊であることは間違いありません。

(担当/A)

著者略歴

渡辺惣樹(わたなべ・そうき)

日本近現代史研究家。1954年生まれ。静岡県下田市出身。東京大学経済学部卒業。米英資料を広く渉猟、日本開国いらいの日米関係、とくに太平洋戦争開戦にいたる経緯を新たな視点でとらえた著作を上梓し高い評価を得る。著書に『日米衝突の根源 1858-1908』『日米衝突の萌芽 1898-1918』(第22回山本七平賞奨励賞)『TPP 知財戦争の始まり』、訳書に『日本 1852』『日米開戦の人種的側面 アメリカの反省1944』『アメリカはいかにして日本を追い詰めたか』『ルーズベルトの開戦責任』(いずれも草思社刊)がある。

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