草思社のblog

ノンフィクション書籍を中心とする出版社・草思社のブログ。

ホテル・グリーンハウスはどこにあったのか

銀座 歴史散歩地図 ――明治・大正・昭和

赤岩州五 編著 原田弘・井口悦男 監修

 映画『仁義なき戦い』の脚本家笠原和夫の自伝『「妖しの民」と生まれきて』(ちくま文庫)に氏が昭和20年代に雇われ支配人だった「ホテル・グリーンハウス」の思い出の記述が出てくる。記述に従って当時の地図を調べてみると、銀座第一ホテル近くに確かに「ホテル・グリーンハウス」がある(本書p112~113)。

 映画監督・川島雄三が愛した八重司さんの実家「割烹・菊川」は銀座西六丁目の裏にあり、川島が『銀座二十四帖』を書くために泊まり込んでいた旅館「数寄屋」のすぐ隣にあることが当時の広告地図でわかる(P116~117)。これは『川島雄三 サヨナラだけが人生だ』(ノーベル書房)の記述から類推した。

 本田靖春が書き、『闇市の帝王』(草思社文庫)で詳細に述べられた国際賭博場、王長徳のクラブ・マンデリンは、福富太郎の本(『銀座キャバレー秘史』文春文庫)を参考にして、キャバレー・クラウンが立つ前の土地ということから、六丁目電通通り沿いにあったということが判明した(p96~97)。

 これらは日本戦後史、現代史にとっては本来どうでもいいことで、歴史の彼方に忘れられてもいいようなことかもしれない。しかし、これを知ると現代史や戦後史がもっと立体的に面白く見えてくるのではないか。

 日本近代文化の華であり、庶民のあこがれの対象だった「資生堂パーラー」や「カフェ・プランタン」の銀座通りの華の部分と夜の相貌を取り混ぜて、地図で再現してみた本書をひもときながら、現代版銀ブラを楽しんでみるのも終戦70年を迎える今年の夏、感慨深いのではないか。

(担当/木谷)

著者略歴

赤岩州五(あかいわ・しゅうご)

昭和23年、長崎県生まれ。同志社大学卒。雑誌「トランヴェール」、地図雑誌「ラパン」の編集長を務める。著書に『東京懐かし散歩』『藩と県』など。

原田弘(はらだ・ひろし)

昭和2年、東京杉並生まれ。日大三商卒。昭和20年警視庁警察官に採用され、昭和60年まで勤務。『築地警察署史』の編纂など、東京の地誌、警察史などに精通。著書に『MPのジープから見た占領下の東京』『銀座故事物語』など。

井口悦男(いぐち・えつお)

昭和6年、東京生まれ。慶應義塾大学大学院卒。慶應大学中等部教諭、帝京大学教授などを歴任。元古地図学会会長、東京市電研究の第一人者。著書に『古地図でたどる鉄道の知恵 線路の不思議』『東京今昔歩く地図帖』など。

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