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草思社のblog

ノンフィクション書籍を中心とする出版社・草思社のブログ。

大人のための「社内政治の教科書」! 『今日からヒラ社員の~』「プロローグ」を公開します。 『今日からヒラ社員のオレが会社を動かします。』高橋健太郎著

◆ビジネスマンなら知っておきたい、「上司の動かし方」「嫉妬のかわし方」がわかる!

 会社の中でうまく人を動かせないと苦労している方は多いのではないでしょうか? いきなり正論を言っては敵をつくるばかり。知らない間に、はしごをはずされていた、なんてことはないでしょうか? 
 そんな社内政治にしくじりがちなビジネスパーソンの方々にぜひとも読んでいただきたい本が、『今日からヒラ社員のオレが会社を動かします。』です。
 この本には、“中国古典史上最強の人心操縦術”と名高い「鬼谷子」のエッセンスが盛り込まれており、ストーリーを楽しみながら、自然と「上司の動かし方」「はしごをはずされないための言質の取り方」「同僚からの嫉妬のかわし方」等々、大人の政治力が身に付くものになっております。
 今回は、「鬼谷子」の人心操縦術の一端をご覧いただくため、特別に「プロローグ」を公開します。

★「プロローグ 鬼谷子の使い」より

 共和帝国出版ビル。五階小会議室。企画会議。
 オレはウンザリしていた。
「いやあ、この企画は著者が有名じゃないから、難しいかもしれませんねぇ。テレビで見たことないですよ、この人」
「たしかに、部長のおっしゃる通り、売れる要素っていうのが欲しいですね」
「もっと売れている本をベンチマークした企画にしたらどうですか?」
「私もそう思います」
 中央に座った男がまとめに入る。
「わかりました。他に意見がある人はいますか?」
「あの……」
 一応は反論を試みようとするオレ。それを無視して、男は言った。
「でしたら、この企画は見送るということで」
 今回も企画は却下された。
§
「いったいなんなんだ、アイツらはよお! 編集のことはオレらに任せるんじゃなかったのかよ!」
 と居酒屋〈鯨飲〉でクダを巻いているのは、オレではない。目の前にいる編集部のセンパイ・端鹿太郎(はなしかたろう)だ。ちなみに、「端」までが名字。
「チョウギよ! オマエ、悔しくないのかよ、え!」
「悔しいに決まってんでしょうよ。でも、どうしょうもねえじゃん!」 
 オレの声も思わず大きくなる。
 会社の合併から半年あまり。オレと端センパイの出す本の企画は、ことごとく落とされ続けてきたのだ。チョウギというのはオレのあだ名。張本儀一(はりもとぎいち)、略して「チョウギ」だ。
 オレらの勤めていた共和書房は、半年前に帝国パブリッシャーズなる別の出版社と合併。共和帝国出版になった。センパイの言う「アイツら」というのは、帝国パブリッシャーズ出身の社員たちのことだ。
 帝国パブリッシャーズは、米田喬(べいだきょう)が一代で作り上げた出版社。他社のヒット作に類似した本を素早く作り、強力な営業力で時には本家の本以上に売るという、米田自らが「マーケット・イン」と呼ぶ手法で急速に大きくなった会社。ただし、まあ、こう言っちゃなんだが、読書好きにとってはあまり評判のいい会社ではない。
 一方、オレたちのいた共和書房という会社は、人文学・科学系の入門書や古今の名著の翻訳、時には「問題作」と言われるような評論も出す、どちらかと言えば「読者に新しい価値観を提供したい」みたいなことを恥ずかしげもなく言ってしまうタイプの、それだけに今時儲からないタイプの出版社だった。
 つまり、正反対の出版社の合併だったわけだ。その証拠に、共和の編集者は帝国との合併が決まった瞬間からほとんど辞めてしまい、結局残ったのは、オレと端センパイ、そして、センパイと同期の剣振次郎(けんぶりじろう)ってヤツだけだ。
「次郎も変わっちまったなあ……」
 たしかに剣振は新しい会社で編集長に抜擢されてから人が変わったようだ。なにしろ、会議において、帝国出身者の反論ばかりを受け入れ、オレらの企画を却下し続けているのは、他ならぬ同じ共和書房出身の剣振だったからだ。
「なんなんですかね、一体、この状況は」
 そう言った一言が、オレの本心のすべてだった。なんなんだ、一体。これに尽きる。
§
 その後、千鳥足のセンパイを見送って、時計を見るとまだ十一時。飲み足りない気がした。我が共和帝国出版のあるこの銀保町の外れには、オレの唯一行きつけのバー〈クロスロード〉があった。
「空いてる?」
「見りゃ、わかんだろ」
 入店時のほんの挨拶ぐらいのつもりのオレの一言につっかかってきたのが〈クロスロード〉のマスターだ。名前は知らない。向こうもオレの名前を多分知らない。はずだ。
 カウンターの奥では、オッサンが二人なにやら話をしている。客はそれだけ。
 オレが店で一番安いウイスキーをロックで飲みはじめた頃。ビックリした。
 話し込んでいる二人のオッサンのうちの一人が、よく見たら南郷継春(なんごうつぐはる)だったからだ。
 南郷継春。一部上場企業MSG 生命のCEO。経営だけでなく歴史や文学にも造詣が深く、著書を何冊も出しているカリスマ経営者だ。上品に整えられた白髪交じりの髪型にバッチリ決まったスーツの着こなしも、メディアで目にするそのまんまだ。
 オレはウイスキーをなめながら、さりげなく聞き耳を立てていたが、南郷はなにやら重大な相談事を持ちかけているらしい。会話はしばらく続いたが、もう一人の男が妙に通る声で、
「それは、木村さんで、いいんじゃないでしょうか?」
 と言うと、南郷は心底救われたといった表情になり、感動も露(あらわ)に礼を述べ、繰り返し頭
を下げながら店から出ていった。なんだ。南郷継春があんなんなるってことは、店に残ったあの男も相当な大物か。振り返った男の顔をよく見てみる。じーっと。
 知らん。どう見ても、普通のオッサンだ。
 視線に気がついたオッサンが声をかけてきた。
「こっちに来て、一緒に飲まないかい?」
 オレは少しビックリしたが、オッサンが何者なのか興味が湧いていた。編集者なんて仕事、なんでも知りたがりの野次馬根性のあるヤツじゃなきゃ、つとまらないのだ。
 オッサンの隣に席を移したオレは、ちょっとしたインタビューのような気分で質問した。
「あの人、南郷継春さんですよね?」
「そうだね」
 平凡な髪型の下方に存在する平凡な顔には、平凡なセンスの眼鏡が装着されている。
オッサンには、南郷から感じられるキラキラ感のようなものが一切ない。
「どういったご関係で……」
「上司と部下だね」
「え、でも南郷さんは社長ですよね。その上司ってのは……」
「私は部下だよ。ほら」
 オッサンが出した名刺には、「MSG 生命 堀船支社 第一営業所 孫田子太郎(まごたこたろう)」とある。肩書きはない。つまり、南郷の経営する会社の一支社、一営業所のヒラ社員だ。そんなオッサンになんで南郷継春は、あんな態度だったんだ。
「いや、なんか相談を受けていたみたいですけど……」
 そう言ってから、自分が聞き耳を立てていたことを自白したのに気がついたが、孫田にそれを気にした様子はなかった。
「そりゃ、私にだって話す口と聞く耳はあるからね」
 はぐらかされているのかどうかもわからないが、話がツルツルと上滑りしているのはたしかだ。なんだ、このオッサンは南郷の弱みでも握ってるのか?
「なにか個人的に親しいとか?」
「いいや」
「なんで、部下のあなたに南郷さんはあんな態度だったんですか?」
 いらついたオレは思わず単刀直入に質問をした。多少、酒のせいもあるかもしれない。それを聞いた孫田は、ふっと笑ってこう言った。
「そんな〝反〟を投げかけるのはまだ早いだろう」
「〝反〟?」
「まあいい。私がなぜ部下の立場でありながら南郷さんを動かせるか? それは一つの術を知っているからだよ」
「術……、ですか?」
「その術さえ知れば、部下の立場であろうが、上司を動かすことなどたやすい。たとえ、はるか上の上司であろうがね。組織自体を動かしてしまうことだってできる」
「え、それって、どんな術なんですか?」
 オレは引き込まれるようにして、そう質問してから、自分の今の状況を思い浮かべていることに気がついた。合併以降、一変してしまった社風、通らない企画、なにを考えているのかわからない経営陣や新しい同僚たち。どうにかしなければと考えながらも、どうすればいいのか見当もつかなかった。
「キコクシの術」
「え?」
「〝存在と滅びの門〟を操る術さ」
 うえ、なんだ。オカルト……。
「別に、オカルトじゃないよ」
 そう言って笑った孫田はジャケットの内ポケットからボールペンを取り出すと、グラスを載せていたコースターになにやら書き込み、オレに差し出した。
「ここに行けば、動かせない現実などない、ということがわかるはずだ」
コースターには、住所が書かれていた。

目次より

プロローグ 鬼谷子の使い 
第1章 人と現実を動かす、最強古典『鬼谷子』とは
1鬼谷子に出会う──ホリフネ会館三階で
2人は見えないところから動かせ!
3動かす相手は見えるところにおけ!
4鬼谷子からの宿題──会話せよ!

第2章 いきなり人を動かすな、雑談で情報収集せよ
5会話は”反覆”だ。同調が基本
6”内ケン”を知れ!──人と人との見えない「関係性」
7”象比の術”を身につけよ!──相手の狙いを探る
8帝国パブリッシャーズの事情――酒の席で聞いた話

第3章 命取り! 動かすべき相手を間違うな
9こちらの言葉に相手の心を反応させるには?
10会話の本質を理解するための陰陽思考法
11否定と同調で強力に内心を引き出す”飛カンの術”
12智者は易しいことを選び、阿呆は難しいことを選ぶ

第4章 有利な「陣営」を見定め、安全地帯を確保せよ
13勢力図を見極め、最も有利な「陣営」に就け!
14社内のうわさやデマとのつきあい方
15"飛カンの術”応用編──ヨイショで言葉を引き出す
16強敵を崩すには、チームワークの隙間を狙え!

第5章 相手の欲を利用して、動かさずに動かせ 
17”摩の十法”とは?──相手の心を動かす十の方法
18言葉の裏に隠された狙いを見極めよ!
19説得とは、相手を助けること
20”摩の十法”実践編──相手の心に合わせた言葉で揺さぶる

第6章 誰が動かしているのか、知られずに去れ
21『鬼谷子』の教えるプレゼン四つのルール
22入ってくる猫が青いとは限らない
23ピンチのときこそ”転円”せよ
24チョウギの犯した”周密”の誤りとは?
25失敗の亀裂をふさいだら、ただちに去れ!
エピローグ 鬼谷子の集い
あとがき

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