草思社のblog

ノンフィクション書籍を中心とする出版社・草思社のブログ。

教育は簡単にできるものか、難しいものか。『教師の仕事がブラック化する本当の理由』喜入克 著

教師の仕事がブラック化する本当の理由

喜入克 著

 著者は本書の中で、人間とは複雑なものであると繰り返し書いている。その一つの例として近年流行りの「命を守る教育」というものを上げている。そこでは学校で優先されるべきものはまず「生徒の命を守る」ことだとされ、最近、年頭の校長訓示の中でも、よく声高に語る人が多い。それで何が起こったかというと「生徒が家出した」という一報が入ったら、担任教師は大慌てで各方面に連絡し、その一日、対応で追われ、他の生徒の教育はおろそかにされる。そのあげく当の生徒といえばゲームセンターで遊んでいましたなどと言ってけろりとした顔で出てくる場合が多い。
「家出した生徒は自殺しかねない」から出来る限り探さなくてはならないという論理なのだ。しかし、もちろん生徒の命は大切にしなければならない、そんなことは当たり前だ。
だが、人が自殺するのは何の兆候もなく行われることもあり、そのような行動を完全に防ぐことはできない、最近ではまったくそのそぶりも見せなかった有名男優や女優が相次いで自殺するという事件もあった。
 人間とは複雑なものであるというのが著者の人間観であり、また教育の根幹にもそれがあるというのが著者の考えである。これを単純化し、教育は効率化して簡単に行えるようにできる、という論理によって、どんどん官僚主義がのさばり、教育のカルチャーセンター化、予備校化、スポーツクラブ化が進んでいる。その一方で教師は現場で本来の意味での教育を行うために孤軍奮闘を強いられる。これが教師の仕事がブラック化する根本原因である。
 人間は複雑なものだから教育のしがいもあるのだと著者は訴える。
 この根本的な人間観の違いがあるので教育行政はうまく行っていない。例えば生徒の命を守ることが最大の目的なら警察や精神科医や福祉関係の人、弁護士などを総動員でことにあたらなければならない。それを一教師に担わせれば、本来行われるべき教育活動は著しく縮小されるし、教師にないものねだりをしているのが父兄であり、行政側である。A=Bにならないのが教育なのだという考え、だから商品売買のようなサービスとはなじまない、むしろ「贈与」的な教育観から考え、ある種の理想や誇りをもって行うのが教師なのだと著者は主張している。長年の教師体験をもとに書かれた本書は今日の教育を考えるうえで非常に重要な問題を衝いている。

(担当/木谷)

著者紹介

喜入克(きれい・かつみ)

1963年、東京生まれ。立命館大学文学部卒。1988年から都立高校の教師となる。2012年~2018年まで、三つの都立高校で、副校長を務める。管理職として都立高校の改革を目指したが、うまくいかなかった。そのため、2019年から、管理職を辞めて、一教師に戻る。現在、東京23区内の都立高校の教務主任。教科は国語科。プロ教師の会(埼玉教育塾)の会員、都立高校の現場から、教育を考えるミニコミ誌『喜入克の教育論「空色」』を主催している。著書に『高校が崩壊する』(革思社、1999年)、『それでもまだ生徒を教育できるのか?』(洋泉社、2002年)『「教育改革」は改革か』(PHP研究所)、『叱らない教師、逃げる生徒―この先にニートが待っている』(扶桑社、2005年)など。

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感染症でもっとも恐ろしいのは、 それによって引き起こされる社会的パニックである!『感染症の虚像と実像』ディディエ・ラウト著 鳥取絹子訳

感染症の虚像と実像

ーーコロナの時代を生きるための基礎知識

ディディエ・ラウト 著 鳥取絹子 訳

 本書は感染症の分野で世界的に著名なフランス人医師で、現在マルセイユ大学病院研究所の所長をつとめているディディエ・ラウト教授が、今回のコロナ禍に際して「私が体験したことを通して広い視野で流行病について伝えたい」(本書より)と緊急出版した著作(原題Épidémie:Vrais dangers et fausses alertes「流行病:本当の危険とまちがった警告」)です。フランスでは発売と同時に他の類書をおさえてベストセラーになっています。
 これまでも人類はさまざまな感染症に苦しめられてきましたが、本書ではとくに世界中にパニックをまき散らしたエボラ出血熱や鳥インフルエンザ、SARSといった流行病についてわかりやすく説明し、またワクチン開発というデリケートな問題についても言及(きわめて厳しい見方を提示)しています。多くの感染症の原因はいまだにわかっておらず、たとえばインフルエンザが季節によって変化することや、突然自然に消滅する理由さえも不明であるといったことを指摘しつつ著者が強調するのは、パンデミックによる死者数は予測より少なくなるという点と、にもかかわらず危機をあおるメディアや政治家によって異様な社会的恐怖が醸成されがちであるという点です。
《ジャーナリストは本来、新しい情報に敏感で、それが仕事である。一方科学者は自分たちの研究分野が話題になることを望み、これもいたって自然である。問題は、決定者や政治家の思考形態がメディアに近く、即効性のあるものに引かれすぎていることだ。》といった指摘は日本にもそのまま当てはまりそうです。またWHOについての《(WHOは)その時点の恐怖に同調することで注目を集め、そうして資金協力を呼びかけて、運営を継続できるようになっていくのである。ちなみにこの組織を構成するのは専門家ではなく、世界各国の「代表」にすぎない。》という厳しい見方にも説得力があります。数理モデルによる感染拡大予測については《感染に関しては、病気に感染した人の数で示されている。そしてもちろん、これは感染を表わす方法として合理的ではない。というのもこの方法は、きわめて複雑で、何一つ明らかになっていない現象を、数学に変えているからだ。感染原因のなかには、人から人の場合もあるが、すべての人間が同じ方法で病気をうつすことはなく……》と懐疑的な見方を示しています。このあたりは、世界各地で現場・患者第一主義を貫いて感染症と格闘してきた著者ならではの視点といえるかもしれません。多種多様な感染症と対峙してきた著者の知見が、広がり続ける「見えない恐怖」を克服するための一助となることを願ってやみません。

(担当/碇)

 

【目次】
まえがき
・流行病の死者は予測より少ない
・感染症の死亡率は下がりつづけている

1 炭疽菌──バイオテロの恐怖を引き起こした偽の流行病
・軍事目的で操作された炭疽菌
・バイオテロへの過剰な反応
・集団的な恐怖が利用される

2 無視された本当の医療危機──二〇〇三年の猛暑
・超過死亡率が無視されていた
・猛暑の夏と死亡率のピーク

3 チクングニア熱──医薬品観察の有効性と、国の警告のギャップ
・エイズの発見
・チクングニア熱の死亡例は薬の副作用

4 エボラ出血熱狂騒と、ペスト、その他の出血熱
・出血病の恐怖が地球全体に広がる
・恐怖が恐怖を生みだす
・中世の遺骨からペスト大流行の原因を発見
・流行病で危険なのはそれが引き起こす恐怖

5 呼吸器感染症――SARS:過剰なパニック、インフルエンザ:適切な治療法への認識不足
・SARSの謎
・インフルエンザ──怖がるのは正しいけれど、適切な治療法が知られていな
・恐怖をあおる本がパニックを引き起こした

6 鳥インフルエンザ──幻想だった恐怖
・世界が怯えた鳥インフルエンザ
・WHOは警告をあおる元凶
・制御不能となった過剰な騒ぎ

7 H1N1危機──二〇〇九年新型インフルエン
・天変地異のように思われた新型インフルエンザ
・対策には現場の医師からの報告を
・感染しやすいのは常軌を逸した恐怖
・免疫の記憶が高齢者を守る

8 コロナウイルス
・インフルエンザこそが重要なのだ、愚か者!
・感染者数の表示は合理的ではない
・呼吸器感染症の死亡率は下がりつづけている
・新型コロナの大騒動で利益を得る人たち

9 ジカウイル
・タヒチで発見されたウイルス
・新しい問題には必ずしも新薬開発ではない

10 フランスおよび世界の感染症
・死の一カ月前の病原体の徹底考察
・偽りの警告で新薬の開発

11  忘れられ、無視された流行病──コレラとチフス
・コレラ──ハイチでの流行
・チフス──ブルンジでの流行
・チフスで死んだナポレオン軍の兵士

12 新しいワクチンと未来のワクチン──幻想か現実か?
・ワクチンの接種は政治的な問題である
・ワクチン接種でより重い病気になることもある

13 予言から予言者まで
・現実と予言の関係
・政治家とジャーナリストが共鳴する

14 新興病の発生と拡散
・動物と人間のバリアが消滅
・感染症の大半が地理的に固定されている
・情報の透明性とパニックを防ぐことのバランス

結論
・観察された現実と情報による現実の乖離
・情報を文化的に分析すること

訳者あとがき

 

著者紹介

ディディエ・ラウト(Didier RAOULT)

1952年、ダカールに生まれる。マルセイユ大学医学部で感染症を専攻し、1981年に医師の国家資格を取得。その後、微生物学者として特に新興感染症の分野で国際的に著名になり、現在はフランスで唯一の感染症専門センターであり、国際的にも権威のあるマルセイユ大学病院研究所所長。臨床現場・患者第一主義を貫いて精力的に活動し、その成果を多くの論文で発表。感染症の分野では世界でもっとも文献を引用される研究者の一人としても知られている。2010年、フランスで最高の医学賞Inserm(国立衛生医学研究所)グランプリを受賞したほか受賞歴多数。

訳者紹介

鳥取絹子(とっとり・きぬこ)

翻訳家、ジャーナリスト。主な著書に『「星の王子さま」 隠された物語』(KKベストセラーズ)など。訳書に『崩壊学』(草思社)、『私はガス室の「特殊任務」をしていた』(河出文庫)、『巨大化する現代アートビジネス』(紀伊國屋書店)、『地図で見るアメリカハンドブック』『地図で見る東南アジア』『地図で見るアフリカ』(以上、原書房)などがある。

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なぜ黒川紀章の中銀カプセルタワーは常に時代の先端を行くのか? 『中銀カプセルスタイル』中銀カプセルタワービル保存・再生プロジェクト編

中銀カプセルスタイル

中銀カプセルタワービル保存・再生プロジェクト 編

1972年、世界的建築家である黒川紀章氏の代表作が誕生しました。それが銀座に立つ、中銀カプセルタワービルです。本書はそのカプセルの中で「超イマドキ」な生き方を実践している人たちの暮らしと、普段は見学できないインテリア空間に美麗な写真で迫ります。

・「移動する人類」が生きる未来を予見していた建築
 丸い窓のついた箱がブドウの房のように取り付いたカプセルタワーの印象的な外観は「メタボリズム」の思想を体現したものです。メタボリズムは世界的に知られる日本の建築運動で、社会の変化に合わせて生き物のように成長・増殖する建築をめざしました。その思想の実現とともにこの建築が目指したのは、「人類は将来、交通や情報技術の発達により移動し続けるようになる」という黒川氏の未来予想のもと、都市に短期間滞在するための最小限の空間をつくることでした。この予想図は、情報化が進み、パソコン一つあればどこでも仕事ができる今の時代に見事に一致します。そればかりではなく、極小の空間に住まうというコンセプトは、昨今流行りの「ミニマリズム」さえも先取りしていたと言えます。
・リモートオフィスにも対応。常に時代の先端を行く
 カプセルタワーはいま、さらにその上を行く展開を見せています。DJコスプレイヤーのSNS配信用の「映える」発信拠点。コロナ禍でのリモート用オフィス。建築家が自身でリノベーションした空間……最先端のライフスタイルに、カプセルタワーはまるでそれを待っていたかのように適応しているのです。備え付けのデスクにノートパソコンを置いて作業したり、Bluetoothスピーカーを仕込んでみたり。カプセルでの暮らしぶりを見ると、極小の空間は人間の想像力を刺激し、無限に工夫できるかのように感じられます。
 現在、カプセルタワーは解体の危機にさらされています。これほど時代にフィットした空間を50年近く前に実現していた建築を壊してしまうことで、私たちはどんなものを失うのでしょうか。あるカプセルの利用者はこう言います。「窓の外を見ていると、1時間に2~3人くらいは向かいの歩道橋から写真を撮っています。面白さ、楽しさは住んでいる人だけのものではない」、と。カプセルを魅力的に使いこなす人たちの姿をご覧になり、建築が形を通して文化を築く装置であることの意味に、思いを馳せていただければ幸いです。

(担当/吉田)

著者紹介

中銀カプセルタワービル保存・再生プロジェクト 編

代表、前田達之。中銀カプセルタワービルの保存と再生を目的に、2014年にオーナーや住人とプロジェクトを結成。見学会の開催や1か月単位で宿泊できるマンスリーカプセルの運営、取材や撮影のサポートをおこなう。編著書に『中銀カプセルタワービル 銀座の白い箱舟』(2015年、青月社)『中銀カプセルガール』(2017、青月社)などがある。

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内田樹の原点! カミュ、レヴィナス、ブランショを読み解く 『前–哲学的 初期論文集』内田樹 著

前–哲学的 初期論文集

内田樹 著

◆内田樹氏の若き日の論文を集成

 本書は思想家・内田樹氏が若い頃に書いたフランス文学、哲学についての論文を集めたものです。多くはフランス文学者として駆け出しの80年代から90年代にかけて執筆されました。論文という「定型のしばり」がある文章は、独特の緊張感に溢れています。

◆カミュ、レヴィナス、ブランショを読み解く

 本書に収録された作品は、内田樹氏が偏愛するカミュ(『異邦人』『ペスト』『カリギュラ』『シシュポスの神話』)、レヴィナス、ブランショを題材にしたものです。
「20世紀の倫理――ニーチェ、オルテガ、カミュ」では、カミュの「私の興味はいかに行動すべきかを知ることにある。より厳密に言えば、神も理性も信じないときに人はいかにして行動しうるのかを知ることにある」という問題提起を引いて、「なぜ人を殺してはいけないのか」という主題に一つの回答を示します。
 著者の原点である倫理的なテーマに真摯に向き合った七篇を是非ご高覧ください。

(担当/渡邉)

 

【目次】
はじめに
20世紀の倫理――ニーチェ、オルテガ、カミュ
アルジェリアの影――アルベール・カミュと歴史
「意味しないもの」としての〈母〉――アルベール・カミュと性差
鏡像破壊――『カリギュラ』のラカン的読解
アルベール・カミュと演劇
声と光――レヴィナス『フッサール現象学における直観の理論』の読解
面従腹背のテロリズム――『文学はいかにして可能か』のもう一つの読解可能性
解題

 

著者紹介

内田樹
1950年、東京都生まれ。思想家、武道家。神戸女学院大学名誉教授、凱風館館長。東京大学文学部仏文科卒業、東京都立大学大学院人文科学研究科博士課程中退。著書に『ためらいの倫理学』、『レヴィナスと愛の現象学』、『他者と死者』、『私家版・ユダヤ文化論』(小林秀雄賞)、『日本辺境論』(新書大賞)、『日本習合論』など多数。伊丹十三賞受賞。

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激変期のクルマ界は、コロナ禍でも止まれない。『2021年版間違いだらけのクルマ選び』島下泰久著

2012年版間違いだらけのクルマ選び

島下泰久著

※2020年12月23日ころ書店店頭に並ぶ見込みです。

●車種別徹底批評。国産車の小改良・新型を網羅。

2019年12月中旬から2020年11月の国産各社の新登場車やフルモデルチェンジ(FMC)は、プロトタイプ発表も含め合計21と、コロナ禍にもかかわらず大変なニューカー・ラッシュとなりました。さらにマイナーチェンジ(MC)や車種追加は62にもおよび(いずれも編集部調べ)、つまり国産車の状況はこの1年で完全に変わったと言えます。とくに、「コンパクトカー」「SUV」「スポーツカー」「EV・PHEV・FCV」のセグメントには新型車やMCが集中し、「総入れ替え」に近い状態。昨年のクルマ選び知識はまったく通用しないのです。

例年同様、『2021年版』もこの新登場車、FMC、MC、車種追加のほぼすべてを、第一級のモータージャーナリストである著者が1人の目で網羅。車種別に徹底的に批評し、さらにセグメントごとの動向解説やライバル比較も行うことで、クルマ選びのガイドとしてはもちろん、クルマビジネスの理解にもマストな1冊となりました。また今期からは著者Youtubeチャンネルと連動、記事内のQRコードから試乗動画が閲覧できるようになっています。進化した『間違いだらけ』を、ぜひお楽しみください!

 

◎第1特集:百花繚乱! コンパクトSUV

ヤリスクロスvsキックスvsフィットクロスター、ハスラーvsタフト、外国車小型SUV一挙紹介など

◎第2特集:レクサス、“愚直”なプレミアム

佐藤プレジデント独占インタビュー、LS/LC/UX300e批評、レクサスのビジネス分析

 

2021年版の指摘

・なんと日本はスポーツカー爛熟期に突入した!

・ホンダF1撤退。その説明に誰が納得できるのか

・今のクルマは30年後には楽しめないかもしれない

・SUVは今、最もクルマ選びが面白いジャンルだ

・クルマ好き社長の就任で日産に希望が見えてきた

 

※カバー画像のダウンロードが下記リンクより可能です。

https://tinyurl.com/2021machigaidarake

 

〈著者略歴〉

島下泰久(しました・やすひさ)
1972年神奈川県生まれ。立教大学法学部卒。国際派モータージャーナリストとして自動車、経済、ファッションなど幅広いメディアへ寄稿するほか、講演やイベント出演なども行なう。2020-2021 日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。『間違いだらけのクルマ選び』を2011年から徳大寺有恒氏とともに、そして2016年版からは単独で執筆する。YouTubeチャンネル「RIDE NOW -Smart Mobility Review-」の主宰など更に活動範囲を広げている。

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何があっても大丈夫! 安心に満たされた人生に変わる本。 『自分と調和する生き方』川井かおる著

自分と調和する生き方

川井かおる 著

●コロナ禍で不安が募っている人に向け、「新しい生き方」を提案します。

私たち日本人は小さい頃から、「まわりに迷惑をかけないよう」、つねにまわりに意識を向けて生きてきました。ずっとまわりに合わせて生きていると、それが当たり前となり、いつしか自分にとって何が本当に大切なのか、自分が何をしたいのかがわからなくなってしまいます。
ところが、幸か不幸か、現在はコロナによる長期の外出自粛によって、自分と向き合う時間が圧倒的に増え、あらためて「自分は本当はどういう生き方をしたかったのか」、を問い直すきっかけとなっています。 
本書は、そうした迷える人のために、郵政省時代から広く人材教育に携わり、ライフワークとして坐禅会や瞑想会を主宰するなど、人間の心の教育にも深い関心を寄せてきた著者が、人間誰もが持っている「意識」の力を使い、本来の自分を取り戻し、毎日を楽しく生きるための方法を伝授するものです。

●何があっても大丈夫! すべては「自分」から始まっています。

今、意識をどこに向けているでしょう?――実は普段から「意識」を意識的に使うことで、誰もが自分の思う通りの現実を創ることができると著者は説きます。
もし、今、「これから先どうしょう?」と意識が不安に向いているとします。すると、≪どうしよう?≫と、不安にエネルギーが供給され、ますます不安が大きくなっていくというのです。まわりを見まわしても、愚痴ばかり言っている人、「めんどくさいなあ」「嫌だなあ」が口癖の人は、いつ会っても同じようなことを言っていませんか? 
「意識」が現実を創っている。そして「意識」の向け方こそがしあわせのカギ。そこに気づけば、人生は大きく変わり始めます。
他人やまわりを気にして、外側に意識を向けることをやめ、100パーセント自分の内側に意識を集中する。そうすることで、まわりに振り回されることがなくなり、自分の内側にエネルギーが集まって、どんどんパワフルで元気になっていきます。
ぜひ混迷の時代の今、多くの方に読んでいただきたい一冊となっております。
さあ、自分の中の新しい扉を開けて、変わることを楽しんでみませんか?

(担当/吉田)

著者紹介

川井かおる(かわい・かおる)

1962年愛知県一宮市生まれ。東京理科大学理学部第一部応用数学科を卒業後、郵政省(現総務省)に入省。郵政研究所などを経て、郵政大学校の教官として教育に携わる。その後、郵政事業庁、日本郵政公社、日本郵政グループ本社で数々の役職を歴任。2019年3月に約31年間の会社人生を早期退職で卒業し、独立。勤務期間中から、兼業として、執筆、講演、企業や大学での講師を務め、坐禅会や瞑想会を主宰、整理収納アカデミア顧問など、幅広く人間教育に関わっている。早期退職の7年前から週末に東京を離れる週末移住を始め、自然の中での暮らしも楽しんでいる。

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「怪しげな東洋人」という役柄が彼の忘れられた理由ではないか『占領下のエンタテイナー』寺島優 著

占領下のエンタテイナー

日系カナダ人俳優&歌手・中村哲が生きた時代

寺島優 著

 本書(『占領下のエンタテイナー』)の201ページに1952年2月の『NHKスター・オン・パレード』の写真が載っている、占領末期のおそらくNHKラジオ主催による当時の花形歌手共演のいかにも豪華な歌謡ショーの写真である。そこに写っている、舞台に横並びに立った歌手(および歌う映画スター)の名前を左から上げると「久慈あさみ(社長シリーズの社長夫人役が有名)、越路吹雪、中村哲、淡谷のり子、灰田勝彦、ディック・ミネ、鶴田浩二」とある。中村哲以外は今でも記憶される、そうそうたる名前のスター、歌手であるが、いま彼一人、忘れられた存在になっているのはなぜだろうか。
 それはおそらく、中村哲が時代の寵児であり、占領下日本、植民地日本を体現していた(し過ぎていた)からなのではないか、というのが編集者の推理である。
 これは戦後日本の「恥ずかしい」時代であった。
 訪米から帰国したスター女優田中絹代は飛行機から降りて来るなり投げキッスをして「アメション女優」と揶揄された。日大ギャング事件の主犯は捕まった時「オーミステイク」とつぶやいて流行語になった。トニー谷は「トニイングリッシュ」なる珍妙な英語もどきを連発した。戦争に負けてアメリカに占領された日本はアメリカ人になろうとして懸命だった。恥も外聞もなくアメリカ人の物まねをする人も多く、また「パンパン・オンリーさん」の時代でもあった。
 その時代、英語ができて歌をうたえる中村哲、日系カナダ人二世の彼は進駐軍キャンプでスペシャルAランクの芸能人としてわが世の春を謳歌していた。戦後、多くつくられた日米合作映画の常連であり、東宝のB級娯楽映画にもよく出ていた。口ひげを蓄えたがっちりした体格、英語も得意だから「怪しげな東洋人」といった役どころが多かった。
『五十万人の遺産』という映画がある。三船敏郎主演で三船唯一の監督作品である。フィリピン山中に残された山下将軍の埋蔵軍資金を探しに行くサスペンス映画だが、ここにも中村哲は出演していて三船を追い詰める謎の東洋人をやっている。
 この口ひげの茫洋とした風貌が、いかにも植民地日本に似合っているのである。何か後ろ暗い商売、密輸などで大儲けしていそうな男、インチキそうな英語(実際の中村はちゃんとしたネイティブの英語をしゃべったが)を使い、アメリカ人風の立ち居振る舞い、彼が体現していたのは戦後日本人の典型ではないのか。中村は1960年代から70年代にかけて初期のテレビ番組やテレビCМに出演しながら次第に姿を見せなくなっていく。
 日本は高度成長期を迎えてもはや戦後ではないと言われるように、占領時代は忘れたかのようになった。日本人は中村哲のことは忘れたかったのかもしれない。植民地日本の恥ずかしい過去、それは忘れられたとはいえ、いまでも本質は植民地のままではないか、と彼の顔を本書の写真で見るとしきりに思い起こされる。

(担当/木谷)

著者紹介

寺島優(てらしま・ゆう)

本名・中村修。1949年、東京都出身。武蔵大学人文学部社会学科卒業後、東宝株式会社に入社、宣伝部勤務。山口百恵・三浦友和の文芸シリーズや『ルパン三世カリオストロの城』(宮崎駿第1回監督作品)、『火の鳥2772愛のコスモゾーン』(手塚治虫総監督)などの宣伝を担当。また、当時のゴジラ映画全作品を日替わり上映した『ゴジラ映画大全集』(日本劇場)を企画宣伝。1978年、週刊少年ジャンプのマンガ原作賞に入賞。翌年に『テニスボーイ』(小谷憲一)で連載デビュー。他に『雷火』(藤原カムイ)『競艇少女』(小泉裕洋 )『スポーツ医』(ちくやまきよし)『三国志』(李志清)などマンガ原作多数。80年12月に東宝を退社後はTVアニメの脚本(本名)も執筆。『それいけ!アンパンマン』では「バイバイキ~ン!」「元気100倍!アンパンマン」といった決め台詞を創案。2019年には初の舞台脚本『かぐや姫と菊五郎』を書き下ろす。1999年、山梨県の富士北麓に移住。趣味は、音楽と映画とタップ。

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