草思社のblog

ノンフィクション書籍を中心とする出版社・草思社のブログ。

「どうせ自分なんて……」。自己否定のスパイラルから抜け出すための考え方・学び方・働き方!『「学歴なんて関係ない」はやっぱり正しい』安井元康著

「学歴なんて関係ない」はやっぱり正しい

安井元康 著

 本書は、マウスコンピューターを擁するMCJの経営者として活躍するかたわら、東洋経済オンラインの人気連載《非学歴エリートの熱血キャリア相談》で長年にわたってビジネスパーソンや学生の悩みに答えてきた著者が、自身の経験をベースに綴った学歴論・キャリア論です。
 20代にして上場企業の役員となり、ケンブリッジ大でMBAを取得後に入社したコンサル会社では30代半ばで幹部に昇進、そして30代後半でMCJ社長に就任……という仰天すべきキャリアを歩んでいる著者ではありますが、いわゆる「エリートコース」を歩んできたわけではありません。中堅私大と呼ばれる大学から就職氷河期のどまん中にベンチャー企業に入社、「自分には学歴がない」という焦りをエネルギーに変えて努力を重ねてきた結果が、このキャリアなのです。
 学歴社会の崩壊はずいぶん前から言われていますが、「それでも、人は自身の(パッとしない)学歴を幾つになっても、意外と引きずってしまうもの」と著者は書いています。問題はそこから生まれる「どうせ自分なんて……」という自己否定のスパイラルからいかに脱するか、そしてそれを未来を変えるための力に変えていけるかです。本書では著者自身の経験も交えながら、「学歴なんて関係ない」人生を送るための考え方と働き方・学び方を紹介しています。何より大切なのは学歴ではなく「学習歴」であり、人生のフェーズごとに学びと実践を積み重ねていくことで、人はアイデンティティが上書きされて過去の学歴など気にならなくなるという著者の言葉には、万鈞の重みがあります。自分の生き方を模索しているすべての方に読んでいただきたい一冊です。                             (担当/碇)

【目次】
第1章 なぜ学歴が気になるのか
・なぜ今、学歴について語るのか
・学歴が「安心材料」になる時代は終わっている
・「他人の評価」を成功の基準にしてはいけない
・新型コロナウイルスの流行が問いかけるもの

第2章 「高学歴な人たち」の正体
・残念な高学歴の人たち
・実録こんな高学歴には要注意
・イケてる高学歴の人たち
・人生の最高経営責任者(CEO)は自分自身
・「残念な高学歴」よりも残念な人

第3章 学歴よりも学習歴
・社会人になってからの学習歴
・自分の市場価値をどう高めるか
・社会人を待ち受ける4つの「罠
・忙しい社会人は「何を」「どのように」学ぶべきか
・モチベーション×時間×効率
・学び方をどう工夫するか
・参考:私の学習歴

第4章  学歴に頼らず仕事で成功するために
・それでも進むべき道が見えないなら
・自分の「ポジション」をつねに意識する
・自分の「やり方」を把握・構築する
・見栄やプライドを捨てる勇気
・戦略的に逃げる勇気
・自分の「幸せの基準」をつねに意識する

第5章  それでも学歴が気になるのなら
・一生ついてまわる学歴
・学歴の「代わりになるもの」を手に入れる
・要は「最終学歴」という考え方
・学歴と年齢の関係性
・学歴を「ネタ」にできるようになるのが理想

第6章 非学歴時代の人生設計
・個としての選択が問われる時代
・固定制の生き方から変動制の生き方へ
・プランBをつねに持っておく
・コロナ禍を契機に考えるべきこと、やるべきこと 
・彼を知り己を知る

著者紹介

安井元康(やすい・もとやす)

MCJ社長。1978年東京生まれ。都立三田高校、明治学院大学国際学部卒業後、2001年にGDH(現ゴンゾ)に入社。2002年に株式会社エムシージェイ(現MCJ)に転職し、同社のIPO実務責任者として東証への上場を達成、26歳で同社執行役員経営企画室長(グループCFO)に就任。その後、ケンブリッジ大学大学院に私費留学しMBAを取得。帰国後は経営共創基盤(IGPI)に参画。さまざまな業種における成長戦略や再生計画の立案・実行に従事。同社在職中に、ぴあ執行役員(管理部門担当)として2年間事業構造改革の他、金融庁非常勤職員等、社外でも活躍。2016年にMCJに復帰、2017年より同社社長兼COO。2014年より東洋経済オンラインで「非学歴エリートの熱血キャリア相談」を連載中。著書に『極端のすすめ』(草思社)、『非学歴エリート』『下剋上転職』(ともに飛鳥新社)、『99・9%の人間関係はいらない』(中公新書ラクレ)などがある。

f:id:soshishablog:20210208100359j:plain f:id:soshishablog:20210208100423j:plain

 Amazon:「学歴なんて関係ない」はやっぱり正しい:安井元康著:本

楽天ブックス: 「学歴なんて関係ない」はやっぱり正しい - 安井 元康 - 9784794225030 : 本

「映画」と「科学」の意外な共通点『ハリウッド映画に学ぶ「死」の科学』リック・エドワーズ 著 マイケル・ブルックス 著 藤崎百合 訳

ハリウッド映画に学ぶ「死」の科学

リック・エドワーズ 著 マイケル・ブルックス 著 藤崎百合 訳

◆映画と科学の共通点「死を避ける方法を探しつづけていること」

 どうにかして「死」を逃れたい……。多くの映画は、このためにストーリーが展開し、人食いサメや殺人ロボット、全面核戦争と戦ったり逃げたりして、私たちはそれを夢中で観ることになります。科学も、「真理の探究」という高尚な目的はあるものの、実際上は、感染症から加齢、小惑星衝突にいたるさまざまな「死」の要因を回避する方法を探究・開発する営みとして、役割を果たしてきました。
 つまり、「映画」と「科学」と「死」は、とっても相性がいいテーマなのです! 

◆パンデミックから世界最終戦争まで、11の映画の死と滅亡のシナリオを科学する

 本書は11の映画について、それぞれ1章ずつを割り当てて、ウイルスや不眠、人工知能兵器など、死や滅亡をもたらす災厄にまつわる科学を探究していくものです。意外な映画が真剣に科学を踏まえて描かれていたり、実際の科学者が本当に映画と同じようなことを考えているとがわかったりして、驚かされること間違いありません。
 例えば『エルム街の悪夢』の中で描かれる「悪夢で死ぬ」という話は、1970年代に大量虐殺の恐怖を味わってアメリカへ逃げてきたベトナムやカンボジアの難民たちの間で、PTSDによる不眠と悪夢、それに続く睡眠中の心臓発作による死が数多く起こり、その一例が報道されたことが脚本のもとになったといいます。そうなんです! 悪夢は時として、本当に人を死に追いやることがあるのです。
 また、世界最終戦争を描いた『博士の異常な愛情』では核抑止力のゲーム理論が重要なテーマになっています。そのゲーム理論によれば、米国トランプ前大統領の予測不可能な北朝鮮に対する外交は、相手に警戒感を抱かせて慎重な対応を促すことにつながり、意外にも、世界をより安全にした可能性があるとのこと。その名も「マッドマン・セオリー(狂人理論)」と呼ばれる戦略で、理論的な根拠があるというのです!
 そして、第1章で紹介される映画『コンテイジョン』は真剣にパンデミックを描いた作品で、本書でも次のパンデミックを予言するものと高く評価されています。実は、本書の原書は、コロナ蔓延の直前に刊行されたのですが、ウイルスの生物学から感染の数理モデルまで、著者らによる解説はコロナ以後に読んでもビックリするほど的を射たもので、いままさに読まれるべき内容となっています。

 本書は、著者2人が出演するイギリスの人気Podcast番組から派生したもので、前作『すごく科学的― SF映画で最新科学がわかる本』(草思社刊)に続く第2弾です。前作同様、クスリと笑える2人の映画談義の掛け合いも魅力のひとつ。映画好きにも科学好きにもオススメでき、映画も科学も、よりいっそう楽しめるようになる1冊です。

(担当/久保田)

 

●本書で扱う映画
『コンテイジョン』……映画から感染を防ぐ方法が学べる?
『アルマゲドン』……小惑星衝突回避にペンキが役立つ?
『ジョーズ』……ヒトが社交的なのは捕食者のおかげ?
『ターミネーター』……兵器の自動化は現実にかなり進んでる?
『トゥモロー・ワールド』……人類は不妊で滅びつつある……?
『ジオストーム』……温暖化は工学的手段で止められる?
『エルム街の悪夢』……悪夢のせいで死ぬことが実際にある?
『人類SOS! トリフィドの日』……植物には知能があり会話も?
『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』……人類は近い将来、老化を克服する?
『博士の異常な愛情』……最終戦争がまだ起きてないのはなぜ?
『フラットライナーズ』……臨死体験はつくりだせる?

 

著者紹介

リック・エドワーズ

ライター、テレビ司会者。BBC Oneのクイズ番組「!mpossible」の司会をしている。ケンブリッジ大学で自然科学の学位を取得したが、ようやくそれが少しは役立つようになった。

マイケル・ブルックス

著述家、科学ジャーナリストで、「ニューサイエンティスト」誌のコンサルタント。現在のところ、彼の最大の業績は、量子力学で博士号を得たことではなく、リックが好きな科学書『まだ科学で解けない13の謎』(草思社)を書いたこと。

訳者紹介

藤崎百合(ふじさき・ゆり)

高知県生まれ。名古屋大学大学院人間情報学研究科、博士課程単位取得退学。バイザー『砂と人類』(草思社)、アーニー他『ぶっ飛び!科学教室』(化学同人)など、主に科学に関する書籍の翻訳を幅広く手掛ける。最近は女性だらけのスタトレ新シリーズに胸熱の日々。

f:id:soshishablog:20210120155354j:plain f:id:soshishablog:20210120155407j:plain

Amazon: ハリウッド映画に学ぶ「死」の科学:リック・エドワーズ 著 マイケル・ブルックス 著 藤崎百合 訳:本

楽天ブックス: ハリウッド映画に学ぶ「死」の科学 - リック・エドワーズ - 9784794224910 : 本

教育は簡単にできるものか、難しいものか。『教師の仕事がブラック化する本当の理由』喜入克 著

教師の仕事がブラック化する本当の理由

喜入克 著

 著者は本書の中で、人間とは複雑なものであると繰り返し書いている。その一つの例として近年流行りの「命を守る教育」というものを上げている。そこでは学校で優先されるべきものはまず「生徒の命を守る」ことだとされ、最近、年頭の校長訓示の中でも、よく声高に語る人が多い。それで何が起こったかというと「生徒が家出した」という一報が入ったら、担任教師は大慌てで各方面に連絡し、その一日、対応で追われ、他の生徒の教育はおろそかにされる。そのあげく当の生徒といえばゲームセンターで遊んでいましたなどと言ってけろりとした顔で出てくる場合が多い。
「家出した生徒は自殺しかねない」から出来る限り探さなくてはならないという論理なのだ。しかし、もちろん生徒の命は大切にしなければならない、そんなことは当たり前だ。
だが、人が自殺するのは何の兆候もなく行われることもあり、そのような行動を完全に防ぐことはできない、最近ではまったくそのそぶりも見せなかった有名男優や女優が相次いで自殺するという事件もあった。
 人間とは複雑なものであるというのが著者の人間観であり、また教育の根幹にもそれがあるというのが著者の考えである。これを単純化し、教育は効率化して簡単に行えるようにできる、という論理によって、どんどん官僚主義がのさばり、教育のカルチャーセンター化、予備校化、スポーツクラブ化が進んでいる。その一方で教師は現場で本来の意味での教育を行うために孤軍奮闘を強いられる。これが教師の仕事がブラック化する根本原因である。
 人間は複雑なものだから教育のしがいもあるのだと著者は訴える。
 この根本的な人間観の違いがあるので教育行政はうまく行っていない。例えば生徒の命を守ることが最大の目的なら警察や精神科医や福祉関係の人、弁護士などを総動員でことにあたらなければならない。それを一教師に担わせれば、本来行われるべき教育活動は著しく縮小されるし、教師にないものねだりをしているのが父兄であり、行政側である。A=Bにならないのが教育なのだという考え、だから商品売買のようなサービスとはなじまない、むしろ「贈与」的な教育観から考え、ある種の理想や誇りをもって行うのが教師なのだと著者は主張している。長年の教師体験をもとに書かれた本書は今日の教育を考えるうえで非常に重要な問題を衝いている。

(担当/木谷)

著者紹介

喜入克(きれい・かつみ)

1963年、東京生まれ。立命館大学文学部卒。1988年から都立高校の教師となる。2012年~2018年まで、三つの都立高校で、副校長を務める。管理職として都立高校の改革を目指したが、うまくいかなかった。そのため、2019年から、管理職を辞めて、一教師に戻る。現在、東京23区内の都立高校の教務主任。教科は国語科。プロ教師の会(埼玉教育塾)の会員、都立高校の現場から、教育を考えるミニコミ誌『喜入克の教育論「空色」』を主催している。著書に『高校が崩壊する』(革思社、1999年)、『それでもまだ生徒を教育できるのか?』(洋泉社、2002年)『「教育改革」は改革か』(PHP研究所)、『叱らない教師、逃げる生徒―この先にニートが待っている』(扶桑社、2005年)など。

f:id:soshishablog:20210119151140j:plain f:id:soshishablog:20210119151155j:plain

 Amazon:教師の仕事がブラック化する本当の理由:喜入克 著:本

楽天ブックス: 教師の仕事がブラック化する本当の理由 - 喜入 克 - 9784794224927 : 本

感染症でもっとも恐ろしいのは、 それによって引き起こされる社会的パニックである!『感染症の虚像と実像』ディディエ・ラウト著 鳥取絹子訳

感染症の虚像と実像

ーーコロナの時代を生きるための基礎知識

ディディエ・ラウト 著 鳥取絹子 訳

 本書は感染症の分野で世界的に著名なフランス人医師で、現在マルセイユ大学病院研究所の所長をつとめているディディエ・ラウト教授が、今回のコロナ禍に際して「私が体験したことを通して広い視野で流行病について伝えたい」(本書より)と緊急出版した著作(原題Épidémie:Vrais dangers et fausses alertes「流行病:本当の危険とまちがった警告」)です。フランスでは発売と同時に他の類書をおさえてベストセラーになっています。
 これまでも人類はさまざまな感染症に苦しめられてきましたが、本書ではとくに世界中にパニックをまき散らしたエボラ出血熱や鳥インフルエンザ、SARSといった流行病についてわかりやすく説明し、またワクチン開発というデリケートな問題についても言及(きわめて厳しい見方を提示)しています。多くの感染症の原因はいまだにわかっておらず、たとえばインフルエンザが季節によって変化することや、突然自然に消滅する理由さえも不明であるといったことを指摘しつつ著者が強調するのは、パンデミックによる死者数は予測より少なくなるという点と、にもかかわらず危機をあおるメディアや政治家によって異様な社会的恐怖が醸成されがちであるという点です。
《ジャーナリストは本来、新しい情報に敏感で、それが仕事である。一方科学者は自分たちの研究分野が話題になることを望み、これもいたって自然である。問題は、決定者や政治家の思考形態がメディアに近く、即効性のあるものに引かれすぎていることだ。》といった指摘は日本にもそのまま当てはまりそうです。またWHOについての《(WHOは)その時点の恐怖に同調することで注目を集め、そうして資金協力を呼びかけて、運営を継続できるようになっていくのである。ちなみにこの組織を構成するのは専門家ではなく、世界各国の「代表」にすぎない。》という厳しい見方にも説得力があります。数理モデルによる感染拡大予測については《感染に関しては、病気に感染した人の数で示されている。そしてもちろん、これは感染を表わす方法として合理的ではない。というのもこの方法は、きわめて複雑で、何一つ明らかになっていない現象を、数学に変えているからだ。感染原因のなかには、人から人の場合もあるが、すべての人間が同じ方法で病気をうつすことはなく……》と懐疑的な見方を示しています。このあたりは、世界各地で現場・患者第一主義を貫いて感染症と格闘してきた著者ならではの視点といえるかもしれません。多種多様な感染症と対峙してきた著者の知見が、広がり続ける「見えない恐怖」を克服するための一助となることを願ってやみません。

(担当/碇)

 

【目次】
まえがき
・流行病の死者は予測より少ない
・感染症の死亡率は下がりつづけている

1 炭疽菌──バイオテロの恐怖を引き起こした偽の流行病
・軍事目的で操作された炭疽菌
・バイオテロへの過剰な反応
・集団的な恐怖が利用される

2 無視された本当の医療危機──二〇〇三年の猛暑
・超過死亡率が無視されていた
・猛暑の夏と死亡率のピーク

3 チクングニア熱──医薬品観察の有効性と、国の警告のギャップ
・エイズの発見
・チクングニア熱の死亡例は薬の副作用

4 エボラ出血熱狂騒と、ペスト、その他の出血熱
・出血病の恐怖が地球全体に広がる
・恐怖が恐怖を生みだす
・中世の遺骨からペスト大流行の原因を発見
・流行病で危険なのはそれが引き起こす恐怖

5 呼吸器感染症――SARS:過剰なパニック、インフルエンザ:適切な治療法への認識不足
・SARSの謎
・インフルエンザ──怖がるのは正しいけれど、適切な治療法が知られていな
・恐怖をあおる本がパニックを引き起こした

6 鳥インフルエンザ──幻想だった恐怖
・世界が怯えた鳥インフルエンザ
・WHOは警告をあおる元凶
・制御不能となった過剰な騒ぎ

7 H1N1危機──二〇〇九年新型インフルエン
・天変地異のように思われた新型インフルエンザ
・対策には現場の医師からの報告を
・感染しやすいのは常軌を逸した恐怖
・免疫の記憶が高齢者を守る

8 コロナウイルス
・インフルエンザこそが重要なのだ、愚か者!
・感染者数の表示は合理的ではない
・呼吸器感染症の死亡率は下がりつづけている
・新型コロナの大騒動で利益を得る人たち

9 ジカウイル
・タヒチで発見されたウイルス
・新しい問題には必ずしも新薬開発ではない

10 フランスおよび世界の感染症
・死の一カ月前の病原体の徹底考察
・偽りの警告で新薬の開発

11  忘れられ、無視された流行病──コレラとチフス
・コレラ──ハイチでの流行
・チフス──ブルンジでの流行
・チフスで死んだナポレオン軍の兵士

12 新しいワクチンと未来のワクチン──幻想か現実か?
・ワクチンの接種は政治的な問題である
・ワクチン接種でより重い病気になることもある

13 予言から予言者まで
・現実と予言の関係
・政治家とジャーナリストが共鳴する

14 新興病の発生と拡散
・動物と人間のバリアが消滅
・感染症の大半が地理的に固定されている
・情報の透明性とパニックを防ぐことのバランス

結論
・観察された現実と情報による現実の乖離
・情報を文化的に分析すること

訳者あとがき

 

著者紹介

ディディエ・ラウト(Didier RAOULT)

1952年、ダカールに生まれる。マルセイユ大学医学部で感染症を専攻し、1981年に医師の国家資格を取得。その後、微生物学者として特に新興感染症の分野で国際的に著名になり、現在はフランスで唯一の感染症専門センターであり、国際的にも権威のあるマルセイユ大学病院研究所所長。臨床現場・患者第一主義を貫いて精力的に活動し、その成果を多くの論文で発表。感染症の分野では世界でもっとも文献を引用される研究者の一人としても知られている。2010年、フランスで最高の医学賞Inserm(国立衛生医学研究所)グランプリを受賞したほか受賞歴多数。

訳者紹介

鳥取絹子(とっとり・きぬこ)

翻訳家、ジャーナリスト。主な著書に『「星の王子さま」 隠された物語』(KKベストセラーズ)など。訳書に『崩壊学』(草思社)、『私はガス室の「特殊任務」をしていた』(河出文庫)、『巨大化する現代アートビジネス』(紀伊國屋書店)、『地図で見るアメリカハンドブック』『地図で見る東南アジア』『地図で見るアフリカ』(以上、原書房)などがある。

f:id:soshishablog:20210114121344j:plain f:id:soshishablog:20210114121356j:plain

 Amazon:感染症の虚像と実像:ディディエ・ラウト 著 鳥取絹子 訳:本

楽天ブックス: 感染症の虚像と実像 - コロナの時代を生きるための基礎知識 - ディディエ・ラウト - 9784794224965 : 本

なぜ黒川紀章の中銀カプセルタワーは常に時代の先端を行くのか? 『中銀カプセルスタイル』中銀カプセルタワービル保存・再生プロジェクト編

中銀カプセルスタイル

中銀カプセルタワービル保存・再生プロジェクト 編

1972年、世界的建築家である黒川紀章氏の代表作が誕生しました。それが銀座に立つ、中銀カプセルタワービルです。本書はそのカプセルの中で「超イマドキ」な生き方を実践している人たちの暮らしと、普段は見学できないインテリア空間に美麗な写真で迫ります。

・「移動する人類」が生きる未来を予見していた建築
 丸い窓のついた箱がブドウの房のように取り付いたカプセルタワーの印象的な外観は「メタボリズム」の思想を体現したものです。メタボリズムは世界的に知られる日本の建築運動で、社会の変化に合わせて生き物のように成長・増殖する建築をめざしました。その思想の実現とともにこの建築が目指したのは、「人類は将来、交通や情報技術の発達により移動し続けるようになる」という黒川氏の未来予想のもと、都市に短期間滞在するための最小限の空間をつくることでした。この予想図は、情報化が進み、パソコン一つあればどこでも仕事ができる今の時代に見事に一致します。そればかりではなく、極小の空間に住まうというコンセプトは、昨今流行りの「ミニマリズム」さえも先取りしていたと言えます。
・リモートオフィスにも対応。常に時代の先端を行く
 カプセルタワーはいま、さらにその上を行く展開を見せています。DJコスプレイヤーのSNS配信用の「映える」発信拠点。コロナ禍でのリモート用オフィス。建築家が自身でリノベーションした空間……最先端のライフスタイルに、カプセルタワーはまるでそれを待っていたかのように適応しているのです。備え付けのデスクにノートパソコンを置いて作業したり、Bluetoothスピーカーを仕込んでみたり。カプセルでの暮らしぶりを見ると、極小の空間は人間の想像力を刺激し、無限に工夫できるかのように感じられます。
 現在、カプセルタワーは解体の危機にさらされています。これほど時代にフィットした空間を50年近く前に実現していた建築を壊してしまうことで、私たちはどんなものを失うのでしょうか。あるカプセルの利用者はこう言います。「窓の外を見ていると、1時間に2~3人くらいは向かいの歩道橋から写真を撮っています。面白さ、楽しさは住んでいる人だけのものではない」、と。カプセルを魅力的に使いこなす人たちの姿をご覧になり、建築が形を通して文化を築く装置であることの意味に、思いを馳せていただければ幸いです。

(担当/吉田)

著者紹介

中銀カプセルタワービル保存・再生プロジェクト 編

代表、前田達之。中銀カプセルタワービルの保存と再生を目的に、2014年にオーナーや住人とプロジェクトを結成。見学会の開催や1か月単位で宿泊できるマンスリーカプセルの運営、取材や撮影のサポートをおこなう。編著書に『中銀カプセルタワービル 銀座の白い箱舟』(2015年、青月社)『中銀カプセルガール』(2017、青月社)などがある。

f:id:soshishablog:20201215141018j:plain f:id:soshishablog:20201217155120j:plain

Amazon:中銀カプセルスタイル:中銀カプセルタワービル保存・再生プロジェクト編:本

楽天ブックス: 中銀カプセルスタイル - 20人の物語で見る誰も知らないカプセルタワー - 中銀カプセルタワービル保存・再生プロジェクト - 9784794224880 : 本

内田樹の原点! カミュ、レヴィナス、ブランショを読み解く 『前–哲学的 初期論文集』内田樹 著

前–哲学的 初期論文集

内田樹 著

◆内田樹氏の若き日の論文を集成

 本書は思想家・内田樹氏が若い頃に書いたフランス文学、哲学についての論文を集めたものです。多くはフランス文学者として駆け出しの80年代から90年代にかけて執筆されました。論文という「定型のしばり」がある文章は、独特の緊張感に溢れています。

◆カミュ、レヴィナス、ブランショを読み解く

 本書に収録された作品は、内田樹氏が偏愛するカミュ(『異邦人』『ペスト』『カリギュラ』『シシュポスの神話』)、レヴィナス、ブランショを題材にしたものです。
「20世紀の倫理――ニーチェ、オルテガ、カミュ」では、カミュの「私の興味はいかに行動すべきかを知ることにある。より厳密に言えば、神も理性も信じないときに人はいかにして行動しうるのかを知ることにある」という問題提起を引いて、「なぜ人を殺してはいけないのか」という主題に一つの回答を示します。
 著者の原点である倫理的なテーマに真摯に向き合った七篇を是非ご高覧ください。

(担当/渡邉)

 

【目次】
はじめに
20世紀の倫理――ニーチェ、オルテガ、カミュ
アルジェリアの影――アルベール・カミュと歴史
「意味しないもの」としての〈母〉――アルベール・カミュと性差
鏡像破壊――『カリギュラ』のラカン的読解
アルベール・カミュと演劇
声と光――レヴィナス『フッサール現象学における直観の理論』の読解
面従腹背のテロリズム――『文学はいかにして可能か』のもう一つの読解可能性
解題

 

著者紹介

内田樹
1950年、東京都生まれ。思想家、武道家。神戸女学院大学名誉教授、凱風館館長。東京大学文学部仏文科卒業、東京都立大学大学院人文科学研究科博士課程中退。著書に『ためらいの倫理学』、『レヴィナスと愛の現象学』、『他者と死者』、『私家版・ユダヤ文化論』(小林秀雄賞)、『日本辺境論』(新書大賞)、『日本習合論』など多数。伊丹十三賞受賞。

f:id:soshishablog:20201215141758j:plain f:id:soshishablog:20201215141810j:plain

 Amazon:前-哲学的 初期論文集:内田樹:本

楽天ブックス: 前ー哲学的 - 初期論文集 - 内田 樹 - 9784794224781 : 本

激変期のクルマ界は、コロナ禍でも止まれない。『2021年版間違いだらけのクルマ選び』島下泰久著

2012年版間違いだらけのクルマ選び

島下泰久著

※2020年12月23日ころ書店店頭に並ぶ見込みです。

●車種別徹底批評。国産車の小改良・新型を網羅。

2019年12月中旬から2020年11月の国産各社の新登場車やフルモデルチェンジ(FMC)は、プロトタイプ発表も含め合計21と、コロナ禍にもかかわらず大変なニューカー・ラッシュとなりました。さらにマイナーチェンジ(MC)や車種追加は62にもおよび(いずれも編集部調べ)、つまり国産車の状況はこの1年で完全に変わったと言えます。とくに、「コンパクトカー」「SUV」「スポーツカー」「EV・PHEV・FCV」のセグメントには新型車やMCが集中し、「総入れ替え」に近い状態。昨年のクルマ選び知識はまったく通用しないのです。

例年同様、『2021年版』もこの新登場車、FMC、MC、車種追加のほぼすべてを、第一級のモータージャーナリストである著者が1人の目で網羅。車種別に徹底的に批評し、さらにセグメントごとの動向解説やライバル比較も行うことで、クルマ選びのガイドとしてはもちろん、クルマビジネスの理解にもマストな1冊となりました。また今期からは著者Youtubeチャンネルと連動、記事内のQRコードから試乗動画が閲覧できるようになっています。進化した『間違いだらけ』を、ぜひお楽しみください!

 

◎第1特集:百花繚乱! コンパクトSUV

ヤリスクロスvsキックスvsフィットクロスター、ハスラーvsタフト、外国車小型SUV一挙紹介など

◎第2特集:レクサス、“愚直”なプレミアム

佐藤プレジデント独占インタビュー、LS/LC/UX300e批評、レクサスのビジネス分析

 

2021年版の指摘

・なんと日本はスポーツカー爛熟期に突入した!

・ホンダF1撤退。その説明に誰が納得できるのか

・今のクルマは30年後には楽しめないかもしれない

・SUVは今、最もクルマ選びが面白いジャンルだ

・クルマ好き社長の就任で日産に希望が見えてきた

 

※カバー画像のダウンロードが下記リンクより可能です。

https://tinyurl.com/2021machigaidarake

 

〈著者略歴〉

島下泰久(しました・やすひさ)
1972年神奈川県生まれ。立教大学法学部卒。国際派モータージャーナリストとして自動車、経済、ファッションなど幅広いメディアへ寄稿するほか、講演やイベント出演なども行なう。2020-2021 日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。『間違いだらけのクルマ選び』を2011年から徳大寺有恒氏とともに、そして2016年版からは単独で執筆する。YouTubeチャンネル「RIDE NOW -Smart Mobility Review-」の主宰など更に活動範囲を広げている。

f:id:soshishablog:20201215141126j:plain f:id:soshishablog:20201215141141j:plain

Amazon:2021年版間違いだらけのクルマ選び:島下泰久:本

楽天ブックス: 2021年版 間違いだらけのクルマ選び - 島下 泰久 - 9784794224873 : 本