草思社のblog

ノンフィクション書籍を中心とする出版社・草思社のブログ。

なぜ進化は私達を精神疾患に対して脆弱にしたのか?『なぜ心はこんなに脆いのか』ランドルフ・M・ネシー著 加藤智子訳

なぜ心はこんなに脆いのか

――不安や抑うつの進化心理学

ランドルフ・M・ネシー著 加藤智子訳

コロナ禍において、日本ではうつの傾向が2倍以上に増加したとOECDによる調査が明らかにしています。この抑うつ的な気分になったり、不安になることは誰にとっても非常に辛いもので、こんな気持ちなんてなければいいと思ったことがある人は少なくないでしょう。しかしここで、これらの気持ちを生み出すメカニズムが、進化の課程で理由があって人類が獲得したではないかという視点に立ってみるとき、この一見デメリットにしか思えない感情にも、その有用な存在理由が見えてくるのです。本書は、進化論の視点から不安や抑うつを生む仕組みが人類に備わっている理由を考える、画期的な進化精神医学です。

・生存率を高めるために獲得された抑うつ
本書では、感情が生物の個体ではなく遺伝子の伝達にとって有意義な機能であるとし、ダーウィニズムの視点から、不安や抑うつが遺伝子の生存率を高めることにどう貢献しているかを考察してゆきます。たとえば、抑うつ状態は不必要に行動するのを避けエネルギー消費を節約することで、過酷な環境下での生存率を上げるのに有効であったと考えることができます。また現状を悲観的に見積もる「抑うつリアリズム」と呼ばれる認識の傾向により、これも厳しい環境での生存確率を高めていた可能性が指摘されています。これは、極端に言えば、もし躁的な性格が人類の多くを占めていた場合、リスクをとる人ばかりで絶滅の危機に瀕していたしていた可能性も考えられるということです。ただし、過去の過酷な状況と比べると、現代は遥かに危機が少ない状況であると言えます。ですから、現代における不安や抑うつは、過去には生存のために必要だった機能が、誤作動を起こして過剰反応しているように見える側面があるのです。
「心の傷つきやすさ」というのは、今でも未知の領域が多い重要かつ難しいテーマですが、本書がそのしくみの理解を大きく進める一助となれば幸いです。

(担当/吉田)

著者紹介

ランドルフ・M・ネシー

医学博士。アリゾナ州立大学進化医学センターの創設ディレクターであり、同大学生命科学部の基礎教授を務める。ミシガン大学の精神医学教授、心理学教授、研究教授を歴任。著作に『病気はなぜ、あるのか―進化医学による新しい理解』(新曜社)がある。

訳者紹介

加藤智子(かとう・ともこ)

筑波大学第二学類比較文化学類卒。英国イースト・アングリア大学文芸翻訳修士課程、米国ミドルベリー国際大学院モントレー校翻訳・通訳修士課程を修了。現在は主に、書籍翻訳、映像翻訳等に携わる。訳書に『アメリカン・ハードコア』(メディア総合研究所)など。

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「救われていく道」はどこにあるのか? 浄土真宗の根本思想がわかる味わい深い物語!『仏教小説 王舎城の悲劇』向谷匡史 著

仏教小説 王舎城の悲劇

――物語で読む浄土真宗

向谷匡史 著

 本書のタイトルになっている「王舎城の悲劇」とは、〝父王殺し〟という大罪を犯した古代インドの大国マガダ国皇太子アジャセ(阿闍世)が、釈迦によって救われていくという物語です。この物語は浄土真宗・浄土宗の根本経典とされる「浄土三部経」の一つ「観無量寿経」などの中で語られていて、その解釈めぐってはさまざまな著作や論考が出ています。
 本書はこの古代インドで起こったとされる大事件の顛末を通して仏教の考え方を学ぶ《公開講座》を舞台に、老僧侶と受講生たちがおりなす物語です。「王舎城の悲劇」という物語から、今を生きる私たちは何を学べるのか。最後にお釈迦さまが登場して、「ありがたい話」をして一件落着というのではなく、現代人の感覚で納得のいかない点については、受講生と講師(老僧侶)のざっくばらんな質疑応答の形でさまざまに深掘りしています。
 物語の大事な場面に登場するお釈迦さまの言行には、現代の私たちの感覚からすると腑に落ちないものが多々あります。それに、いったいどのような意味があるのか。受講生たちは自身の問題意識をもとに遠慮なく講師に疑問を投げかけていくのですが、そこでのやりとりから仏教の基本的な考え方や、浄土真宗の「救い」の在り方がおのずと浮かび上がってくるのです。「救い」についての詳細はぜひ本書をお読みいただきたいのですが、あえてまとめるとすれば、私たちが抱える「苦しみ」の本質は「身の回りの『誰か』や『自分の人生』を思いどおりにしたい」という我執にあるのだと気づくこと、つまり「苦しみの原因は自分にあったのだ」という気づきを得ること、それが最初の一歩ということになります。
 仏教に関心がある読者はもとより、出口の見えない閉塞感を抱えて生きるすべての方に読みいただきたい一冊です。

(担当/碇)

【目次】
第一回講義
仏教はなにを説いているのか 
《四門出遊》の伝説
「悩み」と「悩みの犯人捜し」

第二回講義
お経の役割 
生まれるまえから恨みをもつ者 
さとりを開いた釈迦が説法を躊躇した理由 
《因縁生起》を考える  
 
第三回講義
反省するのも「欲」
「物語におけるリアリティ」とはなにか  
ダイバダッタの野望  
親の愛情と親のエゴ  

第四回講義
投獄された父王 
釈迦の沈黙  
アジャセが激怒した真因 
無限に連鎖する「因」と「果」 
なぜ人は裏切られて怒るのか 

第五回講義
幽閉されたイダイケ 
無言の説法 
釈迦が説いた《三福》 
救いの光明が射す瞬間 

第六回講義
自己都合で生きてきた自分 
いまここで救われていく道がある 
「自分の欲」が生みだした苦しみ 
「信じること」の難しさ 
「悪いのはわたし」という出発点

著者紹介

向谷匡史(むかいだに・ただし)

1950年、広島県出身。拓殖大学卒業。週刊誌記者などを経て作家。浄土真宗本願寺派僧侶。保護司。日本空手道「昇空館」館長。人間社会を鋭くとらえた観察眼と切れ味のよい語り口に定評がある。著書として『親鸞がヤクザ事務所に乗り込んで「悪人正機」を説いたら』(ベストセラーズ)『任侠駆け込み寺』(祥伝社)『親鸞の言葉――明日を生きる勇気』(河出書房新社)『定年後、ゼロから始めて僧侶になる方法』(飛鳥新社)『浄土真宗ではなぜ「清めの塩」を出さないのか』『名僧たちは自らの死をどう受け入れたのか』(以上、青春出版社)『心の清浄をとりもどす名僧の一喝』(すばる舎)『成功する人だけが知っている「一万円」の使い方』『もし、お釈迦さまに人生の悩みを相談したら』(以上、草思社)などがある。

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一読忘れ難い、鮮烈なエピソードを満載して、43人の豪奢な生涯を描く 『世界大富豪列伝 19-20世紀篇』『世界大富豪列伝 20-21世紀篇』福田和也著

世界大富豪列伝 19-20世紀篇

世界大富豪列伝 20-21世紀篇

福田和也著

◆贅沢、豪奢、快楽を満喫した人生

 渋沢栄一、フォード、小林一三、ピカソ、五島慶太、谷崎潤一郎、チャップリン、松下幸之助、安藤百福、本田宗一郎、田中角栄、力道山、ウォーホル、ヘプバーン、勝新太郎、プレスリー、トランプ……。
 『世界大富豪列伝 19-20世紀篇』『世界大富豪列伝 20-21世紀篇』では、政治家、経営者から、芸術家や俳優、プロレスラーに至るまで、広範な分野で活躍した、合わせて43人の大富豪の人生を取り上げています。
 彼らはいかにして資産を築き、いかにして蕩尽したのか。何のために働き、何を貴び、何を信じたのか――。富豪たちの豪奢な生涯を、稀代の散文家、福田和也氏が一読忘れ難い、鮮烈なエピソードを満載して描きます。

◆一番、金の使い方が巧かったのは誰だろう?

 福田氏は「金をいかに稼いだかよりも、金をいかに使ったか、そちらのほうにこそ、その人間の人間性は色濃く出ている」と指摘します。
 例えば、松下幸之助は70億円の私費を投じて松下政経塾を作り、自らの死後も長期にわたって、日本の政治と経済に影響を与え続けています。
 梅原龍三郎は大変な健啖家で、八十歳を過ぎても軽く三人前の鰻をたいらげていました。キャビアとフォアグラが大好物、いつも家に常備していて、昼食にも夕食にも薄いトーストとともに食べていたといいます。
 孤独で、恐ろしく、愉快、そして燃えるような使命感を持った傑物たちの人生を描いた本作を、是非ご一読ください。

(担当/渡邉)

【目次】
『19-20世紀篇』
はじめに
アルフレート・クルップ
アルフレッド・ノーベル
大倉喜八郎
ジョン・D・ロックフェラー
渋沢栄一
ルイス・C・ティファニー
高峰譲吉
御木本幸吉
ヘンリー・フォード
小林一三
パブロ・ピカソ
五島慶太
ココ・シャネル
正力松太郎
谷崎潤一郎
梅原龍三郎
石橋正二郎
長尾よね
チャールズ・チャップリン
遠山元一
ポール・ゲティ
山崎種二

『20-21世紀篇』
松下幸之助
ベーブ・ルース
藤山愛一郎
是川銀蔵
エンツォ・フェラーリ
上田清次郎
林芙美子
本田宗一郎
安藤百福
麻生太賀吉
田中角栄
力道山
アンディ・ウォーホル
藤山寛美
オードリー・ヘプバーン
勝新太郎
福富太郎
エルヴィス・プレスリー
大塚明彦
ドナルド・トランプ
アルワリード・ビン・タラール王子
おわりに

著者紹介
福田和也(ふくだ かずや)
1960年、東京都生まれ。批評家。慶應義塾大学環境情報学部教授。慶應義塾大学大学院修士課程修了。1993年『日本の家郷』で三島由紀夫賞、1996年『甘美な人生』で平林たい子文学賞、2002年『地ひらく 石原莞爾と昭和の夢』で山本七平賞、2006年『悪女の美食術』で講談社エッセイ賞を受賞。著書に、『福田和也コレクション1 本を読む、乱世を生きる』、『教養脳 自分を鍛える最強の10冊』ほか多数。

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岩波の偽書に謝罪なし。和田春樹の日本は破滅しなかったからいけない、という論理。『日韓「歴史認識問題」の40年』西岡力著

日韓「歴史認識問題」の40年

――誰が元凶か、どう解決するか

西岡力著

 編集者は1970年代に岩波新書のベストセラー『韓国からの通信――T・K生からの報告』をリアルタイムで読んだ世代である。本書『日韓「歴史認識問題」の40年』の中で著者はこの本が半分以上捏造であり、偽書だったことをつぶさに書いている(第5章)。当時の岩波新書の信頼性、影響力の大きさは今では計り知れないだろう。ほとんどの岩波新書の新刊は軒並みベストセラーとなり、学生をはじめインテリ(インテリ・モドキも)はみな読んだものだ。
 これが『世界』に連載された記事で、T・K生という名のもと朝鮮総連系の在日韓国人(池明観)がソウルや韓国内で起こったことをあたかも目撃したかのように書いているがほとんどデマである。韓国の朴正熙ほかの右派政権がきわめて悪辣な政権だという印象をもたらすために書かれたのだ。あることないこと書き放題である。これをして偽書というしかないだろう。完全なプロパガンダであり、岩波新書の良質な歴史に泥を塗った本である。しかしこれについて岩波書店はいまだに謝罪していない。
 もう一つ、本書が指摘しているのは和田春樹東京大学名誉教授の歴史観である(第4章)。和田春樹教授は拉致問題が発覚したときもこれは拉致ではないと言いはったし、慰安婦問題、徴用工問題などに一貫して北朝鮮と韓国内の親北左翼の代弁者として世論を惑わしてきた。彼が編者としてあらわした『日本は植民地支配をどう考えてきたか』の編者前書きでこのようなことを書いている。
 つまり現在の日本はなぜドイツのように植民地に対して謝罪・賠償をちゃんと行えないのかというお決まりの論調に加えて、ドイツと日本の戦後処理の違いを述べている。ドイツは1945年5月ソ連軍のベルリン侵攻の後、首都攻防戦を激しく戦い、ヒトラーは司令部地下で自決しドイツ第三帝国は完全に敗北・解体された。
 しかしかたや日本はポツダム宣言を天皇の聖断で受諾し降伏した。本土決戦は回避され戦前の体制は中途半端に温存された。あのときドイツのように九州から東京まで徹底抗戦を唱え、本土決戦を行っていれば、惨禍はひどかっただろうが、戦前の体制は一掃されたのだ。負け方が中途半端だからいけないという論理である。
 東京大空襲、沖縄戦、広島・長崎の原爆投下と続く何百万という国民の犠牲の後に、米軍上陸と本土決戦があったならどうなっていただろうか。和田春樹はこんな日本など壊れてしまえばよかったのだと言っているのだ。日本に対する憎悪に唖然とするばかりだ。
 本書を読んで多くの蒙を開かれた。日韓関係だけでなく今日の言論状況を考える一助となる本である。

(担当/木谷)

著者紹介

西岡力(にしおか・つとむ)
1956年、東京都生まれ。国際基督教大学卒業。筑波大学大学院地域研究科修了(国際学修士)、韓国・延世大学国際学科留学。1982年~84年、外務省専門調査員として在韓日本大使館勤務。1990年~2002年、月刊『現代コリア』編集長。東京基督教大学教授を経て、現在(公財)モラロジー道徳教育財団教授・歴史研究室室長。麗澤大学客員教授。「北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会(救う会)」会長。歴史認識問題研究会会長。著書に『日韓誤解の深淵』(亜紀書房)『日韓「歴史問題」の真実』(PHP)『歴史を捏造する反日国家・韓国』(WAC)『増補新版・よくわかる慰安婦問題』(草思社文庫)『でっちあげの徴用工問題』(草思社)などがある。

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『枕草子』に魅せられたフィンランド人女性による自伝的エッセイ『清少納言を求めて、フィンランドから京都へ』ミア・カンキマキ著 末延弘子訳

清少納言を求めて、フィンランドから京都へ

ミア・カンキマキ 著 末延弘子 訳

◆仕事に行き詰まったアラフォーシングル。新しい人生への旅立ち
 仕事にも人生にもうんざりしたアラフォーシングルのフィンランド人「私」は、長期休暇制度を使って日本へ旅立つ。目的は「清少納言を研究する」ため――。
 本書は、フィンランド人女性作家によるデビュー作。遠い平安朝に生きた憧れの女性「セイ」を追いかけて、ヘルシンキから京都、ロンドン、プーケットを旅する自伝的長編エッセイです。

◆北欧人から見た日本の魅力、仲間たちとの交流
 うだるような京都の夏の暑さ、ゴキブリだらけの「ガイジンハウス」、同居人たちとのドタバタ劇、博物館や図書館での資料探し、東日本大震災による精神的混乱、深夜のバーでの友との語らい、この世のものとは思えないほど美しい桜、女性が生きていくことの困難さ……。清少納言を追い求めながら、語り手は様々な印象深い体験を重ねていきます。
 本国では「何度も読みたい本」「人生を変える勇気をくれた」「転職する気になった」「これまでしようと思っていたことを実行することに決めた」などと評され、フィンランド旅行誌「モンド」の旅の本賞、ヘルシンキ首都圏図書館文学賞を受賞しました。
 新しい人生へと旅立つ期待と不安を、鮮烈に描いた本作。是非ご一読ください。

【目次】
Ⅰ 始まり。十月
   清少納言について知っていること
Ⅱ エスポー。冬から夏
   長期休暇――助成金――研究――傲慢と恐怖――引っ越しと出発
Ⅲ 平安京へのタイムスリップ
   美と歌の世界
   平安時代の女たち
   仮名文字
Ⅳ 京都。九月
   暑さ――同居人たち――町
   『枕草子』とは何だったのか。様々な伝本
Ⅴ 京都。九月。第二部
   歌舞伎――石庭――坐禅――能――芸者たち
   空っぽの部屋、つまり平安時代の調度品
   後宮、つまり女たちの世界
Ⅵ 京都――九州。十月
   庭園――宇治――比叡山――金運稲荷たち――列車の旅――美容院にて――手蹟テスト――苔庭にて――セイ、あなたが見える
   宗教と食事について
   セイ、あなたはどう思われている?
   友だちノート、つまり清少納言って誰?
Ⅶ 東京――京都。十一月
   大都市――日文研塹壕――ヴォーグ
   嫌味なセイとムラサキ――二人の宮廷女房の争い
Ⅷ フィンランド――ロンドン、冬
   ものづくしの秘密
   ヴァージニア・ウルフと女性事情――セイ
   四十二人のセイ――訳書
   脱線とセイの後継者たち――文学、映画、音楽
Ⅸ 男たちと恋人たち
   恋人との逢瀬
   平安時代の男たち
   セイの男たちと子どもたち
Ⅹ 津波――タイ
Ⅺ 京都。四月
   桜――もののあはれ――兼好と私
   源氏狩り
   和歌テスト
Ⅻ 京都。五月
   坐禅――舞踏――レイのバー
   春画よ、セイ
   宴会と酒飲みについて
   セイの運命
XIII 脱ぐこと、纏うこと
   最後の質問、つまり『枕草子』とは何だったのか?
XIV 終わり――始まり。ノルマンディー、八月から九月

謝辞
あとがき
親愛なるミア・カンキマキさん――訳者解説
参考文献

(担当/渡邉)

著者紹介
ミア・カンキマキ(Mia Kankimäki)
1971年、フィンランドのヘルシンキ生まれ。国立ヘルシンキ大学比較文学専攻卒業。編集者、コピーライターとして活動した後、本作でデビュー。日本文化に精通していて、生け花の師範でもある。第二作『夜に私が思う女たち』(未邦訳)。これまでにフィンランド旅行誌「モンド」旅の本賞、ヘルシンキ首都圏図書館文学賞、オタヴァ書籍財団ノンフィクション賞を受賞。

訳者紹介
末延弘子(すえのぶ・ひろこ)
東海大学文学部北欧文学科卒業。フィンランド国立タンペレ大学フィンランド文学専攻修士課程修了。白百合女子大学非常勤講師。フィンランド現代文学、児童書の訳書多数。2007年度フィンランド政府外国人翻訳家賞受賞。

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ガミガミ叱らない子育てが子どもの能力を最大化する本当の理由『お母さんが知らない伸びる子の意外な行動』齋藤浩著

お母さんが知らない伸びる子の意外な行動

公立小学校教諭 齋藤浩 著

■子どもが伸びるためのたった1つの簡単なきっかけ
 子どもはかわいいけれど、余裕がなくなるとついイライラしたり、怒鳴ってしまったり…。なかなか思い通りにいかない自分の子育てにこのままでいいのか不安を感じているお母さんは多いものです。

 本書はそんなお母さんたちに向け、35年もの長い間小学校の現場で数多くの子育てに関する悩み相談を受けてきたベテラン教諭が、お母さんたちの子育てがそのままでいかに正しい方向に進んでいるのかを明示するものです。お母さんたちが自らの子育てを肯定し、子どものありのままを受け入れることこそが、子どもたちに変化を起こし、多種多様な能力を伸ばしていく土壌になると断言します。

■「これって、もしかしたら長所かも?」伸びる子は一見するとヘンな行動を取るものです
 子どもが持っている性格や特質は、何事も表裏一体です。往々にして“問題行動”の裏に子どもの長所が隠されていることが多いのです。従って今は悪いように見えても、けっして悲観することはないと著者は説きます。たとえ子どもの言動で問題があると感じても、すぐ否定せずその延長上を見るように努めることが肝要なのです。

 例えばお腹が空いたら冷蔵庫から食べ物を出して勝手に食べている子に対して、「お腹が空いたからって、どうして冷蔵庫を開けて食べてるの! ママ、このチーズ使おうと思ってたのに」と言ってしまうと、子どもは次から勝手に冷蔵庫を開けないばかりか、自分から勝手に行動してはいけないというメッセージと受け止めます。

 でも、この行動を子どもに主体性が身に付きつつある良い兆しだと捉えられれば、
「ママの助けを借りずに、よく自分で食べられるものを探したわね」とほめる言葉が出てくるでしょう。子どもは信じてもらえれば、その期待に応えようとするものです。「じゃあ今度はもっとママを助けよう」と思い、さらに主体性を発揮し、やがて自炊するようになることも期待できます。
 子どもの行動を否定せず、ありのままを受け入れることこそ、親にとっても子どもにとってもより良い結果につながっていくのです。
 子育て中の方にはぜひ手にとっていただきたい一冊です。たくさんの気づきが得られることでしょう。

(担当/吉田)

お母さんが知らない 伸びる子の意外な行動●目次           

はじめに 子どもが心配でたまらないのがお母さんです 

Part1 その“問題行動”の裏に、子どもの長所が隠されています
ウチの子は真面目過ぎて心配という親/ウチの子は元気過ぎて心配という親/社会に出て必要な力とは?/子どもは意外なところで伸びている/間違ったダメ出し、していませんか? 
Part2 その行動、コミュニケーション能力が高い証拠です
 ◎コミュニケーションとは分かち合い 
 ①学校での生活編 
給食中でもおしゃべりが止まらない/ときに取っ組み合いのケンカをする/嫌いなおかずを食べたくないと言い張る/自分が仕事を頼まれたのに友だちに丸投げする/怒られてもいつも返事だけは良い 
 ②家庭での生活編 
知らない子でも普通に家に連れてくる/友だちと遊ぶのに電話より口約束してくる/学校であったことを何でも細かく伝えようとする/雨が降ったら軒下で雨宿りする/宿題が終わっていないのに隠れて遊びに行ってしまう
Part3 その行動、主体性がある証拠です
 ◎子どもの意志や判断を尊重していますか 
 ①学校での生活編 
忘れ物をしても隣のクラスから平気で借りてくる/体育が楽しみで廊下を走ってしまう/みんなが外遊びに行っても一人残って教室で本を読む/授業時間になっているのを気付かず校庭で遊んでいる /給食でいろいろな食べ方を試す
 ②家庭での生活編 
家で料理ばかり作っている/玄関にランドセルを置きっぱなしで遊びに行く/お腹か空いたら冷蔵庫から何か出して勝手に食べている/朝早く起きて宿題の続きをやる/放課後の居場所がまったく特定できない

Part4 その行動、チャレンジ精神がある証拠です
 ◎たくさん失敗する意義 
 ①学校での生活編 
雨でもずっと校庭で楽しそうに遊んでいる/行ってはいけないという所に思わず行ってしまう/給食を食べる速さを競い合う/一度は学校に泊まってみたいと言う/ときにやたらと張り切って宿題を頑張ってくる 
 ②家庭での生活編 
わざわざ道にできた水たまりに入っていく/家から離れた知らない場所に遊びに行きたがる/プールを作ると言って空き地に穴を掘る/生き物をつかまえてきて上手に飼育する/一度に読み切れないほど何冊もの本を借りてくる
Part5 その行動、ストレス耐性がある証拠です
 ◎子どもたちを待ち受ける未来に備えて 
 ①学校での生活編 
窓ガラスを割ったくらいでは全然しょげない/汗がたれていても拭かない/水道水があるから水筒は要らないと言う/休み時間にひたすら鶴を折り続ける/授業中、わからなくてもよく手を挙げる 
 ②家庭での生活編 
取っておいたお菓子が湿気って食べられなくなった経験がある/何時間でも生き物を観察している 179/いつも早寝早起き/きょうだいでよくケンカする/へそを曲げたらてこでも動かない
おわりに 伸びる子は案外ヘンなんです 
正解のない子育て/前向きにとらえたい育てにくさ/やはりいい線行ってるのでは?/今日からチャレンジ

著者紹介

齋藤浩(さいとう・ひろし)

1963(昭和38)年、東京都生まれ。横浜国立大学教育学部初等国語科卒業。佛教大学大学院教育学研究科修了(教育学修士)。現在、神奈川県内公立小学校教諭。日本国語教育学会、日本生涯教育学会会員。これからの時代に合った学校教育の在り方を研究している。著書に『子どもを蝕む空虚な日本語』『教師という接客業』(以上、草思社)、『理不尽な保護者への対応術』『“学校のルーティン”を変えてみる』(以上、学事出版)などがある。

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「トレーニングのためのトレーニング」からどう脱却するか? ウェイトトレーニングの常識がガラリと変わる最新理論!『VBT トレーニングの効果は「速度」が決める』長谷川裕著

VBT トレーニングの効果は「速度」が決める

長谷川裕 著

 本書のタイトルであるVBT(Velocity Based Training)とは、「速度=Velocity」を基準におこなうトレーニングという意味です。従来のウェイトトレーニングは最大挙上重量(全力で1回だけ持ちあげられる重さ)の数値にもとづいて「〇㎏×▽セット」とメニューを設定していたのですが、この「古典的トレーニング法」の限界が明らかになるにつれ、急速に注目され始めているトレーニング理論が「挙上速度」を基準とするVBTなのです。
 VBTは、各々のトレーニング課題やコンディションに合わせてウェイトトレーニングの強度と量を自動的に調整し、確実に目標達成へと導くトレーニング方法で、挙上速度のモニタリングによって「疲労させるだけの無駄なトレーニング」を省くことができるという大きなメリットを有しています。「トレーニングのためのトレーニング」を脱却するためには絶対に押さえておかなくてはいけないトレーニング理論なのです。
 著者はスポーツ科学の研究者で、とくにアスリートのパフォーマンス分析の研究をメインに幅広く活動してきました。教鞭をとっている龍谷大学で学生の指導にあたるだけではなく、名古屋グランパスエイト(コンディショニングアドバイザー 、2004~08年)、本田技研工業ラグビー部Honda Heat(スポーツサイエンティスト、2008~2011)といったトップチームでのキャリアもあります。本書は、理論と実践の両輪でトレーニングを考察しつづけてきた著者の集大成ともいえる一冊です。そもそも、なぜ今VBTなのか、VBTにはどのようなトレーニング効果があるのか、VBTをどのように実践するのかといった中心的な内容に加えて、VBTを理解するうえで欠かせないバイオメカニクスや運動生理学についてもわかりやすく解説することで、トレーニング全般についても理解が深まる一冊になっています。スポーツの現場で指導にあたっているトレーナーやコーチの方だけでなく、一般のトレーニング愛好者にも役に立つ「トレーニングサイエンスの参考書」といえます。

◆本書「はじめに」より抜粋
 日本のスポーツ競技力はかつてに比べれば多くの種目で世界と同等に戦えるレベルにまで向上し、少なくない種目でトップレベルに手が届くようになってきました。ワールドカップで世界の強豪と同等に渡り合えるようになったラグビーしかり、世界のトップに上り詰めた女子アイススケートしかりです。
 こうした背景の1つには、最新のトレーニング科学の成果に基づいて処方された緻密なプログラムを、客観的なデータに基づいて徹底的に効率を追求して取り組まれているウェイトトレーニングがあります。それが本書で紹介するVBTです。(中略)
 しかし国内には、まだまだこうしたウェイトトレーニング法の存在に気づかず、何キロのウェイトを何回持ち上げればよいかということだけを追求し、重ければ重いほどいい、持ち上げる回数は多ければ多いほどいい、ウェイトトレーニングで疲れて少々身体が重くなるのは仕方がないことだ、強くなるためにはそれに打ち勝って追い込まなければ……と、涙ぐましい努力をしている選手やチームがまだまだ存在します。そしてトレーニング科学を学んで資格を取得したはずのトレーニング指導者の中にも、ウェイトトレーニングにおける挙上速度のデータを用いて行うVBTについて知らない、聞いたことはあるけれども十分理解できていないため導入に至っていないという人がまだまだ多数おられます。
 本書は、こういう選手や指導者に最先端のトレーニング科学の成果であるVBTというウェイトトレーニング法を知っていただき、その科学的根拠から理解を深めていただいて、スポーツパフォーマンスと生活の質やレクリエーションのレベルをさらに向上させるという目的のために自信を持ってVBTを導入していただけるようになることを目的としています。
 すでにVBTを導入している選手や指導者には、VBTに関するより深い理解と最新の研究成果を踏まえさらに進んだ方法をご自身で工夫していただくためのヒントを提供できればと考えています。

(担当/碇)

著者紹介

長谷川裕(はせがわ・ひろし)

龍谷大学教授。スポーツサイエンス、とくにパフォーマンス分析の研究に注力。1956年京都府出身。79年筑波大学体育専門学群卒業。81年広島大学大学院教育学研究科博士課程前期修了。龍谷大学サッカー部部長・監督(88年~)、ペンシルベニア州立大学客員研究員兼男子サッカチームコンディショニングコーチ(97~98年)、名古屋グランパスエイトコンディショニングアドバイザー(2004~08年)、本田技研工業ラグビー部Honda Heat スポーツサイエンティスト(2008~2011)。スポーツ科学計測テクノロジー・S&C Corporation代表。著書に『IOC hand book-strength training for athletes-』(John Wiley & Sons)『アスリートとして知っておきたいスポーツ動作と身体のしくみ』『サッカー選手として知っておきたい身体のしくみ・動作・トレーニング』(ともにナツメ社)、訳書に『レジスタンストレーニングのプログラムデザイン』(ブックハウス・エイチディ)『爆発的パワー養成プライオメトリクス』『パフォーマンス向上に役立つサッカー選手の体力測定と評価』(ともに大修館書店)等がある。日本トレーニング指導者協会名誉会長。 JATI認定特別上級トレーニング指導者(JATI-SATI)。

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