草思社のblog

ノンフィクション書籍を中心とする出版社・草思社のブログ。

数千万年前の出来事を、地層は教えてくれる。『楽しい地層図鑑』小白井亮一 写真・文

楽しい地層図鑑

小白井亮一 写真・文

◆ゼロから地層の面白さを解説する本格的入門図鑑、遂に登場

 地層や地質を扱うテレビ番組が人気になったり、2020年には地質年代として「チバニアン」が承認されたことが大きく報道されたりと、いま、地層に注目が集まっています。また日本各地に「ジオパーク」という、地球の活動の営みを体感し学ぶ場所も整備され、観光地として賑わうようになってきました。
 にもかかわらず、前提知識なしで読み始められる入門的な地層図鑑はあまりなく、初学者が地層の知識を得ることは、なかなか難しい状況が続いてきました。本書は、そこに登場した本格的入門図鑑です。「地層のシマシマはなぜできるのか」「地層の年代はなぜわかる?」のような素朴な疑問から、大地の成り立ちまで、著者自ら撮影した約240点の美しい写真を使ってわかりやすく解説します。本書を読めば、見慣れた崖の地層も、どのようにできたのかを推理したくなり、以前とはまったく違って見えることでしょう。

◆日本は地層の大展示場!? 多彩な地層が観察できる特別な場所

 日本は世界有数の地震国ですが、その原因となっているのは、たくさんのプレートが日本周辺に集まり、沈み込んでいるからです。そのせいでたくさんの火山もあります。これは裏を返せば、日本では多種多様な地質活動が非常に長い期間にわたり起こり続けてきたということで、結果的に多彩な地層が形作られることとなりました。つまり、日本は、数多くの種類の魅力的な地層が観察できる、実に恵まれた立地にあるのです。
 本書は「地層とは何か」「どうやって地層はできるか」「岩石にはどんな種類があるか」「化石はどのようにできるか」のような事柄を、基礎から順を追って写真で解説していくのですが、その写真に出てくる地層は、ほとんどすべてが日本のもの。地層に関するあらゆる事柄が、日本で見られる地層で語れてしまうというのも驚きですし、写真を見ればその美しさ・奇妙さに魅了され、実際にその場に行ってみたくなるでしょう。 千葉県銚子市の犬吠埼や、宮崎県日南海岸の「鬼の洗濯岩」などの著名な景勝地だけでなく、城の石垣に使われた珍しい岩石や、さらには都内を流れる神田川河床の露頭(地層などが露出している場所のこと)なども紹介、なぜそこにそのようなものができたのかについても、詳しくわかりやすく解説しています。
 知識を持って地層を見れば、数十万年前、数千万年前、あるいは数億年前に、その場で何が起きたのかを知ることができます。本書を読んで、地層を見に行って、地球の歴史に思いをはせる体験を、是非味わってみてください。

(担当/久保田)

著者略歴

小白井亮一(こじろい・りょういち)

1960年、東京都生まれ。1986年3月、千葉大学大学院理学研究科(地学専攻)修了。国土地理院にて測量・地図作成や災害対応の業務に携わり、2021年3月退職。趣味で関心を持ち続けてきた“石の世界(地層・化石・岩石・鉱物のこと)”について、興味深く、わかりやすく伝える執筆活動を始める。これまでの著書に『わかりやすい測量の数学 行列と最小二乗法』、『わかりやすいGPS測量』(ともにオーム社)、『地形のヒミツが見えてくる 体感!東京凸凹地図』(分担執筆、技術評論社)などがある。

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新進気鋭の歌人が文学、哲学の深淵に迫る 『死にたいのに死ねないので本を読む 絶望するあなたのための読書案内』吉田隼人著

死にたいのに死ねないので本を読む

――絶望するあなたのための読書案内

吉田隼人 著

◆縦横無尽な筆致で誘う「書物への旅」

 ホフマン、ボードレール、マラルメ、ニーチェ、ハイデガー、バタイユ、藤原定家、上田秋成、波多野精一、九鬼周造、塚本邦雄、三島由紀夫……。
 十六歳で自殺未遂を犯してから、文学書、思想書は著者にとって唯一の心の拠り所でした。本書は角川短歌賞・現代歌人協会賞受賞の歌人・研究者が、古今東西の名著のエッセンスを、読書時の記憶を回想するとともに紹介する一冊です。
 巧みに引用を交えながら、ペダンティズムとナルシシズムをスパイスに、縦横無尽な筆致で古典的名作の読みどころを解説します。

◆定家からベルクソン、そして18禁ゲームまで

 第一部にフィクションの要素を含む小説風のもの、第二部に評論風のものをまとめた二部構成です。
 上田秋成『雨月物語』、塚本邦雄『定家百首』、ボードレール『パリの憂愁』、『マラルメ詩集』といった文学書から、ベルクソン『物質と記憶』、波多野精一『時と永遠』、九鬼周造『「いき」の構造』といった哲学・思想書まで、幅広い書物を取り上げます。数々の書物に加え、伝説的18禁ゲーム『さよならを教えて』の魅力も解き明かします。
 憂鬱、絶望、虚無、孤独、不安……。こうした感情に苛まれながらも、文学や哲学の深淵に迫る読書エッセイを是非お楽しみください。

(担当/渡邉)

【目次】
はしがき

Ⅰ 記憶――十二の断章
一行のボオド「レエル」――『パリの憂愁』
傍観者のエチカ――『エチカ』
存在と弛緩――『存在と時間』
記憶の周波数――『物質と記憶』
浅茅が宿の朝露――『雨月物語』
放課後の物騙り――『アクアリウムの夜』
コッペリウスの冬――『砂男』
雨はライプニッツのように――『形而上学叙説』
カフカと父親の話――『文学と悪』
かるてしうす異聞――『省察』
アナベル・リイ変奏――『美しいアナベル・リイ』
書かれざる物語――『二人であることの病い』

Ⅱ 書物への旅――批評的エセー
世界は一冊の書物――『マラルメ詩集』
ブライヤーは何の花?――『思想のドラマトゥルギー』
木漏れ日の哲学者――『喜ばしき知恵』
終る世界のエクリチュール――『渡辺一夫敗戦日記』
ある自伝の余白に――『闇屋になりそこねた哲学者』
美とは虚無のまたの名――『定家百首』
時間についてのエスキース――『時と永遠』
劇的人間と劇場型人間――『岬にての物語』
視ることのドラマトゥルギー――『内的体験』
ジル・ド・レ覚書――『異端の肖像』
一輪の花の幻――『夏の花』
翻訳の悪無限――『「いき」の構造』
さよならの不可能性について――『さよならを教えて』

あとがきにかえて――「早稲田の文学と私」

著者紹介
吉田隼人(よしだ・はやと)
1989年、福島県生まれ。県立福島高校を経て2012年に早稲田大学文化構想学部表象・メディア論系卒業。早稲田大学大学院文学研究科フランス語フランス文学コースに進み、2014年に修士課程修了、2020年に博士後期課程単位取得退学。高校時代より作歌を始め、2013年に第59回角川短歌賞、2016年に第60回現代歌人協会賞をそれぞれ受賞。著書に歌集『忘却のための試論』(書肆侃侃房、2015年刊)。

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いつか来る最愛のペットとの別れを、真正面から考えてみる『ペットが死について知っていること』ジェフリー・M・マッソン著

ペットが死について知っていること

――伴侶動物との別れをめぐる心の科学

ジェフリー・M・マッソン著 青樹玲訳

コロナ禍による巣ごもりの拡大でペットを飼う人が増えていることを「ペットノミクス」と呼ぶそうです。動物とかけがえのない時間を過ごす人が増えているのはとても素晴らしいことです。しかし、避けては通れない瞬間が、いつの日か必ず訪れます。最良の友人であるペットの最後に、私たちはどう向き合うべきでしょうか。また、動物たち自身は、死について何かを知っているのでしょうか。本書は、動物たち自身あるいは飼い主の「死」の認識について考え、そのうえで、私たちがどう彼らの最後に向き合うことができるかを考える、動物との絆についての書です。

命が尽きる直前に独特な表情でこちらをみつめる犬、飼い主の前から姿を消した死期の近い猫など、動物が自身の死を悟ったかのように特定の行動をとることは多く確認されています。また、オスカーという病院で飼われていた猫は、死期が近い患者を正確に見分けられたといいます。これらは、動物たちが何らかの形で死をとらえる能力がある可能性を示しています。そうであるならば、死に対して動物が抱きうる感情に寄り添って行動することが、飼い主として彼ら彼女らにできる最良のことなのかもしれません。
彼らの最後の瞬間を見続けるのはつらいという人も多くいます。しかし、彼らが最後の最後まで一緒にいてほしいと思っている可能性があるのなら、できるかぎりその時まで一緒にいてあげたほうが良いというのが著者の基本的な主張です。ですが、あくまでも最後の決断に正解というものはありません。自分自身の納得のいくように見送り、悲しみ、悼むことで、私たちが深い感情を味わうことができればよいのです。それは、動物たちが、私たちをより人間らしくしてくれた証だといえます。

その他にも、子どもに正直に現実を伝えるべきなのか、自分よりも早く逝ってしまうことについてどう考えるべきなのかなど、飼い主を悩ませる様々な問題に対して、本書は解決のための糸口となるような話題をたくさん提供しています。この難しい課題に向き合ったのは、『ゾウがすすり泣く時』で一躍動物の心に関する大家となったジェフリー・M・マッソン氏です。犬を中心に動物たちの感情について多くの書を世に送り出したジェフリー氏の、集大成ともいえる作品です。
本書が、ペットを飼っている方はもちろんのこと、動物と人間の心のつながりについて興味がある多くの方に手に取っていただければ幸いです。

(担当/吉田)

著者紹介

ジェフリー・M・マッソン

1941年、シカゴ生。ハーヴァード大学でサンスクリット学、トロントの大学で精神分析学を学ぶ。『ゾウがすすり泣くとき』(河出書房新社)は世界的ベストセラーに。『猫たちの9つの感情』『犬の愛に嘘はない』(河出書房新社)など、動物の感情世界に関する著作多数。

訳者紹介

青樹玲(あおき・れい)

翻訳者。立教大学文学部英米文学科卒業。海外小説、英語学習誌、英語教材書籍の編集者、英語教材の開発者を経て、翻訳者になる。

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「将来役に立つ?」「始めるなら小さいうち?」 幼児期の勉強や習い事に悩むすべての人へ『子どもの英語教育はあせらなくて大丈夫!』ピーター・フランクル著

子どもの英語教育はあせらなくて大丈夫!

――12ヵ国語を操る、世界的数学者が、今伝えたい、子育てで本当に優先すべきこと

ピーター・フランクル著

■幼児期の英語教育で、本当に将来グローバルに活躍する力が身に付くの?

 グローバルな時代の本格的な到来が叫ばれる中、子どもが将来大きくなったときに少しでも有利になるよう、英語の早期教育に俄然注目が集まっています。 
 あちらこちらで幼児向け英語教室やインターナショナル保育園や幼稚園を見かけるようになり、最近ではバイリンガル環境が用意されたインターナショナル学童まで登場し、大変な人気のようです。 
 でも小さい頃からの英語偏重の教育で本当にグローバルに活躍する力が身に付くのでしょうか? 本書はこうした疑問や不安に答えるべく、世界110ヵ国を訪れた経験を持ち、12ヵ国語に堪能な世界的数学者である著者が、自らの学習体験をもとに、いかにしてグローバル時代を生き抜く能力を身に付け、自分で考え自発的に学んでいく力を育んでいくかのコツと方法をあますところなく伝授するものです。

■小さいうちは子どもの自己肯定感を高め、人間としての土台づくりを優先しよう!

 まず著者は小学校低学年までは英語などの具体的な勉強はさせなくていいと断言します(実際、著者が初めての外国語であるドイツ語を習得したのは中学3年生になってから)。むしろ幼児期は人間としての基盤をつくる大切な時期であり、そのためには母国語をしっかり身に付け、自分のルーツを確立することが最重要であると説きます。
 自分のルーツを確立することが安心感を生みだし、心の安定や自己肯定感をもたらし、それがその後の健やかな成長と学力や能力を伸ばしていく上で欠かすことができない土台となっていくからだと言います。
 また、母国語の確実な習得に加え、カードゲームやチェスやパズルなどの遊びを通じて、小さいうちから自然と論理的に考える力や算数・数学に対する関心を高めていった著者の子ども時代の経験談は、どうすれば頭の良い子が育つのか知りたいという人にとって大変参考になる内容となっています。

 本書の存在が、子どもの英語学習について迷っている方、子育てそのものに悩んでいる方の一助となりましたら、これほどうれしいことはありません。
 ぜひ多くの方に手に取っていただければ幸いです。

(担当/吉田)

 

第1章 子どもの英語学習、いつから始めるのが正解? 
第2章 小さな子どもの「好奇心」と「考える力」を大事にしよう 
第3章 英語はあとから、算数は小さいうちが良い理由 
第4章 英語はスキルではなく、コミュニケーション 
第5章 僕が出会った真の国際人 
第6章 親が人生を楽しめば、子どもも人生を楽しめる

 

著者紹介

ピーター・フランクル

1953年ハンガリー生まれの数学者で大道芸人。国際数学オリンピック金メダリスト。世界各国で暮らした後、1988年より日本に定住。算数オリンピック委員会理事、ハンガリー学士院メンバー、日本ジャグリング協会名誉顧問。12ヵ国語を話せ、110ヵ国以上を訪れた経験を持つ。講演活動、テレビ出演、執筆活動など多彩な活動を通じて、日本人に人生をより豊かにするコツを伝えようと尽力している。

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なぜ進化は私達を精神疾患に対して脆弱にしたのか?『なぜ心はこんなに脆いのか』ランドルフ・M・ネシー著 加藤智子訳

なぜ心はこんなに脆いのか

――不安や抑うつの進化心理学

ランドルフ・M・ネシー著 加藤智子訳

コロナ禍において、日本ではうつの傾向が2倍以上に増加したとOECDによる調査が明らかにしています。この抑うつ的な気分になったり、不安になることは誰にとっても非常に辛いもので、こんな気持ちなんてなければいいと思ったことがある人は少なくないでしょう。しかしここで、これらの気持ちを生み出すメカニズムが、進化の課程で理由があって人類が獲得したではないかという視点に立ってみるとき、この一見デメリットにしか思えない感情にも、その有用な存在理由が見えてくるのです。本書は、進化論の視点から不安や抑うつを生む仕組みが人類に備わっている理由を考える、画期的な進化精神医学です。

・生存率を高めるために獲得された抑うつ
本書では、感情が生物の個体ではなく遺伝子の伝達にとって有意義な機能であるとし、ダーウィニズムの視点から、不安や抑うつが遺伝子の生存率を高めることにどう貢献しているかを考察してゆきます。たとえば、抑うつ状態は不必要に行動するのを避けエネルギー消費を節約することで、過酷な環境下での生存率を上げるのに有効であったと考えることができます。また現状を悲観的に見積もる「抑うつリアリズム」と呼ばれる認識の傾向により、これも厳しい環境での生存確率を高めていた可能性が指摘されています。これは、極端に言えば、もし躁的な性格が人類の多くを占めていた場合、リスクをとる人ばかりで絶滅の危機に瀕していたしていた可能性も考えられるということです。ただし、過去の過酷な状況と比べると、現代は遥かに危機が少ない状況であると言えます。ですから、現代における不安や抑うつは、過去には生存のために必要だった機能が、誤作動を起こして過剰反応しているように見える側面があるのです。
「心の傷つきやすさ」というのは、今でも未知の領域が多い重要かつ難しいテーマですが、本書がそのしくみの理解を大きく進める一助となれば幸いです。

(担当/吉田)

著者紹介

ランドルフ・M・ネシー

医学博士。アリゾナ州立大学進化医学センターの創設ディレクターであり、同大学生命科学部の基礎教授を務める。ミシガン大学の精神医学教授、心理学教授、研究教授を歴任。著作に『病気はなぜ、あるのか―進化医学による新しい理解』(新曜社)がある。

訳者紹介

加藤智子(かとう・ともこ)

筑波大学第二学類比較文化学類卒。英国イースト・アングリア大学文芸翻訳修士課程、米国ミドルベリー国際大学院モントレー校翻訳・通訳修士課程を修了。現在は主に、書籍翻訳、映像翻訳等に携わる。訳書に『アメリカン・ハードコア』(メディア総合研究所)など。

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「救われていく道」はどこにあるのか? 浄土真宗の根本思想がわかる味わい深い物語!『仏教小説 王舎城の悲劇』向谷匡史 著

仏教小説 王舎城の悲劇

――物語で読む浄土真宗

向谷匡史 著

 本書のタイトルになっている「王舎城の悲劇」とは、〝父王殺し〟という大罪を犯した古代インドの大国マガダ国皇太子アジャセ(阿闍世)が、釈迦によって救われていくという物語です。この物語は浄土真宗・浄土宗の根本経典とされる「浄土三部経」の一つ「観無量寿経」などの中で語られていて、その解釈めぐってはさまざまな著作や論考が出ています。
 本書はこの古代インドで起こったとされる大事件の顛末を通して仏教の考え方を学ぶ《公開講座》を舞台に、老僧侶と受講生たちがおりなす物語です。「王舎城の悲劇」という物語から、今を生きる私たちは何を学べるのか。最後にお釈迦さまが登場して、「ありがたい話」をして一件落着というのではなく、現代人の感覚で納得のいかない点については、受講生と講師(老僧侶)のざっくばらんな質疑応答の形でさまざまに深掘りしています。
 物語の大事な場面に登場するお釈迦さまの言行には、現代の私たちの感覚からすると腑に落ちないものが多々あります。それに、いったいどのような意味があるのか。受講生たちは自身の問題意識をもとに遠慮なく講師に疑問を投げかけていくのですが、そこでのやりとりから仏教の基本的な考え方や、浄土真宗の「救い」の在り方がおのずと浮かび上がってくるのです。「救い」についての詳細はぜひ本書をお読みいただきたいのですが、あえてまとめるとすれば、私たちが抱える「苦しみ」の本質は「身の回りの『誰か』や『自分の人生』を思いどおりにしたい」という我執にあるのだと気づくこと、つまり「苦しみの原因は自分にあったのだ」という気づきを得ること、それが最初の一歩ということになります。
 仏教に関心がある読者はもとより、出口の見えない閉塞感を抱えて生きるすべての方に読みいただきたい一冊です。

(担当/碇)

【目次】
第一回講義
仏教はなにを説いているのか 
《四門出遊》の伝説
「悩み」と「悩みの犯人捜し」

第二回講義
お経の役割 
生まれるまえから恨みをもつ者 
さとりを開いた釈迦が説法を躊躇した理由 
《因縁生起》を考える  
 
第三回講義
反省するのも「欲」
「物語におけるリアリティ」とはなにか  
ダイバダッタの野望  
親の愛情と親のエゴ  

第四回講義
投獄された父王 
釈迦の沈黙  
アジャセが激怒した真因 
無限に連鎖する「因」と「果」 
なぜ人は裏切られて怒るのか 

第五回講義
幽閉されたイダイケ 
無言の説法 
釈迦が説いた《三福》 
救いの光明が射す瞬間 

第六回講義
自己都合で生きてきた自分 
いまここで救われていく道がある 
「自分の欲」が生みだした苦しみ 
「信じること」の難しさ 
「悪いのはわたし」という出発点

著者紹介

向谷匡史(むかいだに・ただし)

1950年、広島県出身。拓殖大学卒業。週刊誌記者などを経て作家。浄土真宗本願寺派僧侶。保護司。日本空手道「昇空館」館長。人間社会を鋭くとらえた観察眼と切れ味のよい語り口に定評がある。著書として『親鸞がヤクザ事務所に乗り込んで「悪人正機」を説いたら』(ベストセラーズ)『任侠駆け込み寺』(祥伝社)『親鸞の言葉――明日を生きる勇気』(河出書房新社)『定年後、ゼロから始めて僧侶になる方法』(飛鳥新社)『浄土真宗ではなぜ「清めの塩」を出さないのか』『名僧たちは自らの死をどう受け入れたのか』(以上、青春出版社)『心の清浄をとりもどす名僧の一喝』(すばる舎)『成功する人だけが知っている「一万円」の使い方』『もし、お釈迦さまに人生の悩みを相談したら』(以上、草思社)などがある。

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一読忘れ難い、鮮烈なエピソードを満載して、43人の豪奢な生涯を描く 『世界大富豪列伝 19-20世紀篇』『世界大富豪列伝 20-21世紀篇』福田和也著

世界大富豪列伝 19-20世紀篇

世界大富豪列伝 20-21世紀篇

福田和也著

◆贅沢、豪奢、快楽を満喫した人生

 渋沢栄一、フォード、小林一三、ピカソ、五島慶太、谷崎潤一郎、チャップリン、松下幸之助、安藤百福、本田宗一郎、田中角栄、力道山、ウォーホル、ヘプバーン、勝新太郎、プレスリー、トランプ……。
 『世界大富豪列伝 19-20世紀篇』『世界大富豪列伝 20-21世紀篇』では、政治家、経営者から、芸術家や俳優、プロレスラーに至るまで、広範な分野で活躍した、合わせて43人の大富豪の人生を取り上げています。
 彼らはいかにして資産を築き、いかにして蕩尽したのか。何のために働き、何を貴び、何を信じたのか――。富豪たちの豪奢な生涯を、稀代の散文家、福田和也氏が一読忘れ難い、鮮烈なエピソードを満載して描きます。

◆一番、金の使い方が巧かったのは誰だろう?

 福田氏は「金をいかに稼いだかよりも、金をいかに使ったか、そちらのほうにこそ、その人間の人間性は色濃く出ている」と指摘します。
 例えば、松下幸之助は70億円の私費を投じて松下政経塾を作り、自らの死後も長期にわたって、日本の政治と経済に影響を与え続けています。
 梅原龍三郎は大変な健啖家で、八十歳を過ぎても軽く三人前の鰻をたいらげていました。キャビアとフォアグラが大好物、いつも家に常備していて、昼食にも夕食にも薄いトーストとともに食べていたといいます。
 孤独で、恐ろしく、愉快、そして燃えるような使命感を持った傑物たちの人生を描いた本作を、是非ご一読ください。

(担当/渡邉)

【目次】
『19-20世紀篇』
はじめに
アルフレート・クルップ
アルフレッド・ノーベル
大倉喜八郎
ジョン・D・ロックフェラー
渋沢栄一
ルイス・C・ティファニー
高峰譲吉
御木本幸吉
ヘンリー・フォード
小林一三
パブロ・ピカソ
五島慶太
ココ・シャネル
正力松太郎
谷崎潤一郎
梅原龍三郎
石橋正二郎
長尾よね
チャールズ・チャップリン
遠山元一
ポール・ゲティ
山崎種二

『20-21世紀篇』
松下幸之助
ベーブ・ルース
藤山愛一郎
是川銀蔵
エンツォ・フェラーリ
上田清次郎
林芙美子
本田宗一郎
安藤百福
麻生太賀吉
田中角栄
力道山
アンディ・ウォーホル
藤山寛美
オードリー・ヘプバーン
勝新太郎
福富太郎
エルヴィス・プレスリー
大塚明彦
ドナルド・トランプ
アルワリード・ビン・タラール王子
おわりに

著者紹介
福田和也(ふくだ かずや)
1960年、東京都生まれ。批評家。慶應義塾大学環境情報学部教授。慶應義塾大学大学院修士課程修了。1993年『日本の家郷』で三島由紀夫賞、1996年『甘美な人生』で平林たい子文学賞、2002年『地ひらく 石原莞爾と昭和の夢』で山本七平賞、2006年『悪女の美食術』で講談社エッセイ賞を受賞。著書に、『福田和也コレクション1 本を読む、乱世を生きる』、『教養脳 自分を鍛える最強の10冊』ほか多数。

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