草思社のblog

ノンフィクション書籍を中心とする出版社・草思社のブログ。

ラスト・トリオのドラマーの回想記『ビル・エヴァンス・トリオ 最後の二年間』ジョー・ラ・バーベラ・チャールズ・レヴィン 著 荒井理子 訳

ビル・エヴァンス・トリオ 最後の二年間

――TIMES REMEMBERED

ジョー・ラ・バーベラ・チャールズ・レヴィン 著 荒井理子 訳

 瀕死のビル・エヴァンスを病院に送る

 1980年9月15日、マンハッタンのマウントサイナイ病院でビル・エヴァンスはその生涯を閉じた。51歳だった。

 ビル・エヴァンス・トリオは、マンハッタンのライブハウス「ファット・チューズデイズ」に出演していたが、体調悪化が激しいエヴァンスは演奏を続けられなくなった。

彼はずっと病院行きを拒んでいたが、ドラマーのジョー・ラ・バーベラの必死の説得によりマウントサイナイ病院へと向かう。その途中の車内でエヴァンスは血を吐いた。

 ラ・バーベラがその時のことを回想する――。

***********

私たちは何とか緊急救命室の入り口にたどり着き、車を停めた。

私はビルの身体を抱きしめなければならなかったことが三回あると前述した。これが三回目で最後となった。

私は彼を病院に運び込んだ。二人とも全身血まみれだった。頭の中は、彼の体重がないも同然だということでいっぱいだった。

ほんの二年前は元気で力強く見えたこの人が、もはや骨と皮だけになってしまっていたのだ。私はビルを診察室に運んだが、彼のまなざしがすべてを語っていた。

――彼には二度と会えないのだろうと。

***********(第19章 1980年9月15日)

 アルバム『We Will Meet Again』の録音

 ジャズ界の非常に多くのミュージシャンに大きな影響を与え、いまだ至高の音楽家として愛されつづけるビル・エヴァンスの「ラスト・トリオ」のドラマー、ジョー・ラ・バーベラがエヴァンスとの二年近くの日々を綴ったのが本書。

 音楽一家に育ち、プロの音楽家としてキャリアを重ねた著者にとって、エヴァンスはつねに憧れと敬愛の対象だったという。ベースのマーク・ジョンソンとともに、後に「ラスト・トリオ」と呼ばれたこのピアノ・トリオが生み出していく、誰の想像をも超えた深く純粋な音楽を著者は全身で受け止めていた。

 トリオは二年足らずの短い期間だったが、アメリカ国内はもとよりヨーロッパや南アメリカで数多くの演奏を精力的にこなした。パリでのコンサート(アルバム『The Paris Concert』)、そして伝説的なヴィレッジ・ヴァンガードでのライブ(アルバム『Turn Out The Stars』)。そして、この間、唯一スタジオで製作されたアルバム『We Will Meet Again』の録音の様子はこう綴られる。

***********

 私たちはマンハッタンにあるCBSの三十丁目スタジオでレコーディングを行った。

 私は興奮していた。レコーディングの経験は以前にもあったが、今回はビル・エヴァンスとだ。ビルとのレコードというのは私にとって一大事で、しかも奏者としての参加だ。私はその成功を願った。

 セッションは、八月六日から九日までの四日間にわたって行われた。雰囲気はとても明るく前向きなものだった。マイルス・デイヴィスが『カインド・オブ・ブルー』や、『ポーギー&ベス』、『スケッチ・オブ・スペイン』といった多くのスタジオ・セッションをこのスタジオでレコーディングしたことは有名だった。

 ラリー(サックス)とトム(トランペット)は、『カインド・オブ・ブルー』のセッション時のマイルスとジョン・コルトレーンの立ち位置をビルに聞いて、それぞれその場所に陣取った。ピアノの位置は私から三メートルも離れていなかった。

 ビルの要望で、私たちはヘッドフォンを使用しなかった。そのため私たちは、よく聴いて、なおかつ適切な音を出すことに集中せざるを得なかった。それは結果として本当によかった。

 私たちはセッションのリハーサルをやらなかった。ビルはいつも通りのやり方でレコーディングを進めた。私たちがスタジオに着くと、楽譜がそこにあり、テープを回す前に主な部分をざっと読んで、誰がソロを取るか話し合い、それから演奏を開始した。

***********(第7章 We Will Meet Again)

 このアルバム『We Will Meet Again』は見事にグラミー賞を受賞している。最後の収録曲「We Will Meet Again」は少し前に自殺した兄ハリー・エヴァンスに捧げられた曲だった。そしてこのアルバムが、ビル・エヴァンスの最後のスタジオ録音となった。

 音楽家エヴァンス、そして人間エヴァンスの生身の姿

 ビル・エヴァンスのトリオは、演奏者どうしの緊密なインタープレイが驚くほど純粋な高みにのぼっていく至上の音楽を生み出している。まさにその共演者でしかわからない体験を著者ラ・バーベラは回想していく。

 音楽に対するきびしい厳しい姿勢と深い哲学に触れるとともに、音楽を離れての人間エヴァンスのさまざまなエピソードも綴られる。著者の娘に曲を書いてくれたり、演奏をキャンセルしてしまったあとで、そっと詫びを入れたり。と同時に、その生命削ることになった薬物依存についてもしっかりと見据えて描かれている。

 本書は全篇にわたってビル・エヴァンスに対する限りない敬愛の想いにあふれる、静かな感動を与えてくれる回想記。著者は本書をこの文章で終えている。

***************

 私はビル・エヴァンスが残りの人生で、自分の肉体の衰弱を不屈の精神で克服するのを何度も目撃した。彼はよくこう言っていた。私の外側はボロボロかもしれないけれど、内側はきれいなままだ。それは本当だったに違いない。

****************

(担当/藤田)

 

著者紹介

ジョー・ラ・バーベラ(Joe La Barbera)

ジャズ・ドラマー。1948年生まれ。ニューヨーク州出身。バークリー音楽大学、米陸軍軍楽隊での兵役を経て、ジャズ・ミュージシャンとしてのキャリアをスタートさせた。1979年1月~1980年9月、ビル・エヴァンスの逝去までビル・エヴァンス・トリオのドラマーを務めた。ウディ・ハーマン、チャック・マンジョーネ、ジョン・スコフィールド、ジム・ホール、ハンク・ジョーンズ、バド・シャンク、ゲイリー・バートン、マイケル&ランディ・ブレッカー、トゥーツ・シールマンスなどの世界的なジャズ・アーティストと共演。1993~2021年までカリフォルニア芸術大学で教鞭とる。2019年にはロサンゼルス・ジャズ・ソサエティおよびロサンゼルス・カウンティ美術館より名誉あるジャズ・トレジャー・アワードを受賞。現在はカリフォルニア州在住。

チャールズ・レヴィン(Charles Levin)

ライター。「Ventura County Star」「DownBeat」「Jazziz」各誌や、モントレー・ジャズ・フェスティバルのプログラムに寄稿。プロのドラマーとしては計30年間活動。途中、カリフォルニア芸術大学に戻りラ・バーベラに師事し、BFAとMFAを取得。ジャズ・グループCodaを率いたほか、ジョニ・ミッチェルのトリビュート・バンドDreamlandの共同リーダー兼マネジメント担当としてツアーを開催した。

荒井理子(あらい・あやこ)

お茶の水女子大学文教育学部外国語文学科(英文学専攻)卒業。主な訳書は『サクソフォン マニュアル日本語版』(ヤマハミュージックメディア)、『ブルーノート・レコード 妥協なき表現の軌跡』(共訳、ヤマハミュージックメディア)、『ゲッツ/ジルベルト 名盤の誕生』(シンコーミュージック・エンタテイメント)など。

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筋肉を動かす人は一生幸せ! 筋トレを始めたい人も、すでに始めている人も必読の書『筋トレスイッチ するかしないかが人生の分かれ道』久野譜也 著

筋トレスイッチ

――するかしないかが人生の分かれ道

久野譜也 著

「運動しようと思っても長く続かない」―これは多くの人が口にする言葉です。
その一番の理由は「なぜ、これをやらなければいけないのか」を個々がきちんと理解できていないからなのかもしれません。
運動をするときに「その運動が自分にとってどんな利益につながるのか」、「それをすることでどんな素晴らしい結果が得られるのか」をはっきりクリアにしておけば、運動は必ず習慣化できると著者の久野譜也氏は語ります。
本書では「健康づくり」のプロフェッショナルである久野氏が、筋トレがもたらす素晴らしい結果とその理由をとことん掘り下げ、解説。毎日続けられる『「若返り力」を引き出す6つの筋トレメニュー』を、イラストとともにわかりやすく掲載しています。
さあ、あなたもスイッチを入れて、体を動かしてみませんか?
すでに筋トレを始めている人でも、時折くじけそうになったときにこの本がやさしく叱咤激励してくれる存在になることは間違いありません。
全国に75万人以上の会員を有する「女性だけの30分フィットネス カーブス」の会員向け雑誌「カーブスマガジン」の大人気連載を書籍化したものですが、男性にも知っていただきたい健康情報が満載です。

(担当/五十嵐)

 

目次

PART1
女性の老後には筋トレが欠かせない――将来の不安を解決する
PART2
筋肉を動かす女性は「一生病気知らず」――健康の不安を解決する
PART3
筋トレをする女性はいつまでも美しい――美容の不安を解決する
PART4
老いない脳と体をキープして「健幸」を招き寄せる――心と体の不安を解決する
PART5
筋肉の「若返り力」を最大限に引き出す6つのメニュー――継続できる!トレーニング効果が上がる!

 

著者紹介

久野譜也(くの・しんや)

1962年生まれ。筑波大学体育専門学群卒業。同博士課程医学研究科修了。医学博士。その後、東京大学大学院助手を経て、1996年より筑波大学先端学際領域研究センター講師、2011年より現職の筑波大学大学院 人間総合科学研究科教授(2020年より筑波大学 人間総合科学学術院に名称変更)、2002年7月より、健康増進事業を推進する筑波大学発ベンチャー、つくばウエルネスリサーチを設立。主な要職として厚生労働省「介護予防サービス評価研究委員会」「運動所要量・運動指針の策定検討会」、内閣府「新健康フロンティア戦略賢人会議-女性を応援する分科会、働き盛りと高齢者の健康安心分科会」、国土交通省「健康・医療・福祉まちづくり研究会」委員等を歴任。著書に『寝たきり老人になりたくないなら大腰筋を鍛えなさい』(飛鳥新社)、『筋トレをする人が10年後、20年後になっても老けない46の理由』(毎日新聞出版)など多数。

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シニアの加齢な日常を描く、一気読み必至の超短編小説集!『死んでしまえば最愛の人』小川有里 著

死んでしまえば最愛の人

小川有里 著

身につまされる! いるの、こんな人!古希を過ぎても恋に萌える男女、犬も食わない老年夫婦の秘密、驚くべきイマドキ家族の実態を軽いタッチで描く超短編小説集。

年寄り=隠居という時代は遥か昔。いくつになっても人間は恋もするし、食欲も衰えないし、お金も大事だし、人のことだっておおいに気になる。苦労をさせられた夫も、亡くなってしまえば妻の勝ち。幸せだった日々だけを上書きしていけば、やがてダメ夫だっていつかは「最愛の人」になるのかも!?

「夫は81歳になったけどとても元気よ。でも、昔から動かない人でね、私は自分の時間と体力を食われすぎないように、いろいろ命令してさせているの。食うか食われるか、恐竜世界のような老後よ」(表題作『死んでしまえば最愛の人』より)

「3回目のデートは映画だった。(中略)柴山さんがトイレに立った間にママは考えた。今日も帰りに手を握られるだろう。次は「1泊でドライブ旅行しませんか」と誘われそうな気がする。71歳、男の前で脱げるだろうか。体を見せられるだろうか」(『喫茶店のおしごと』より)

どれも著者が今どきの60~90代の男女を数多く取材してできた物語。年齢を重ねることの哀しさ、楽しさがテンポよく綴られ、一気読み必至の読者が続出しそうです。

(担当/五十嵐)

 

目次

第1章 老い萌え
第2章 夫婦の道すじ
第3章 家族哀歌(エレジー)
第4章 今日の友は明日の友?
第5章 ときは流れて

 

著者紹介

小川有里(おがわ・ゆり)

1946年高知県生まれ。介護雑誌などのライターを経て現在はエッセイストとして活躍中。テーマは、女性、家族、育児、社会現象、シニアなど。著書に『定年ちいぱっぱ―二人はツライよ』『定年オヤジのしつけ方』『負けるな姑! 嫁怪獣(ヨメサウルス)に喰われるな』『おばさん事典』『加齢なる日々 定年おじさんの放課後』『強いおばさん 弱いおじさん 二の腕の太さにはワケがある』『おばさん百科』などがある。

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25音の長大な季語も楽しい。『音数で引く俳句歳時記・冬+新年』岸本尚毅 監修 西原天気 編

音数で引く俳句歳時記・冬+新年

岸本尚毅 監修 西原天気 編

25音の長大な季語「童貞聖マリア無原罪の御孕りの祝日」も楽し。音数で整理された画期的な歳時記。

 俳句の最小限のルールは五・七・五という音数による定型と、その時節の季語が含まれることです。それなら季語を音数ごとに整理しておけば作句に役立つのではないかという発想のもとに本書は作られています。春編・夏編・秋編とすでに3冊刊行され、いずれも好評を博しています。ようやくこの度、立冬(11月8日)を控えて冬編の刊行となり、四季がそろいました。
冬の季語は一音の「炉」(ろ)、二音の「寒」(かん)「暮」(くれ)などから始まり、本書では最長25音の「童貞聖マリア無原罪の御孕りの祝日」(どうていせいまりあむげんざいのおんやどりのいわいび)までが入っています。
 25音と言えばすでに定型をはみ出していますし、どういう季語なのかと不審に思われる人が多いと思いますが、『角川大歳時記』などにも載っているれっきとした季語なのです。
キリストの母、聖マリアをその母アンナが身ごもった日、カトリックでは12月8日聖胎節のことです。例句に
「童貞聖マリア無原罪の御孕りの祝日とはなれり 夏井いつき」
「童貞聖マリア無原罪の御孕りの祝日と歳時記に 正木ゆう子」
などがあります。いずれもこの長大な季語をあえて使った「遊び句」ともいえるものです。
 このように、本書はさまざまな音数の季語を自由に操り、俳句という融通無碍の境地に遊ぶことを推奨する歳時記です。
 監修者の岸本尚毅さんは本書の「はじめに」で季語の選択の細心さに触れて、高浜虚子が昭和三十一年暮れの句会で詠んだ
「鎌倉の此処に住み古り初日の出」
が翌年(雑誌「玉藻」三月号)には改稿され
「鎌倉のここに住みふり初日かな」
になったことを例として挙げています。「初日の出」(5音)を「初日かな」(3音)に替えた虚子の意図はどこにあったのかを類推して、この日の句会は大野伴睦などの政治家や吉屋信子などの有名な小説家を交えた句会であったために、やや気負った言葉の選択になったことを自身反省して時を経て「初日かな」と替えたのではないかと書いています。
「虚子先生ならぬ我々が、句の表現を綿密に吟味するとき、本書が大いに役立ちます」と岸本氏は書いています。こうした微妙な表現を楽しむときに本書は役に立つことでしょう。

(担当/木谷)

 

監修者紹介

岸本尚毅(きしもと・なおき)

俳人。1961年岡山県生まれ。『「型」で学ぶはじめての俳句ドリル』『ひらめく!作れる!俳句ドリル』『十七音の可能性』『文豪と俳句』『室生犀星俳句集』など編著書多数。監修に本書の既刊『音数で引く俳句歳時記・春』『音数で引く俳句歳時記・夏』がある。岩手日報・山陽新聞選者。俳人協会新人賞、俳人協会評論賞など受賞。2018・2021年度のEテレ「NHK俳句」選者。角川俳句賞等の選考委員をつとめる。公益社団法人俳人協会評議員。

編者紹介

西原天気(さいばら・てんき)

1955年生まれ。句集に『人名句集チャーリーさん』(2005年・私家版)、『けむり』(2011年10月・西田書店)。2007年4月よりウェブサイト「週刊俳句」を共同運営。2010年7月より笠井亞子と『はがきハイク』を不定期刊行。編著に本書の既刊『音数で引く俳句歳時記・春』『音数で引く俳句歳時記・夏』『音数で引く俳句歳時記・冬+新年』がある。

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楽天ブックス: 音数で引く俳句歳時記・冬+新年 - 岸本 尚毅 - 9784794226815 : 本

日常生活に役立つ哲学的思考法を、フランスの教科書を読んで鍛えよう!『フランスの高校生が学んでいる哲学の教科書』シャルル・ぺパン 著 永田千奈 訳

フランスの高校生が学んでいる哲学の教科書

シャルル・ぺパン 著 永田千奈 訳

古代ギリシャを起源とする西欧哲学は、中世を経て近代に至り、ヨーロッパ各国で花開いていきました。フランスではデカルト、ルソー、サルトルなどの哲学者が大きな影響力を持ち、1970年代にはポスト構造主義が隆盛を極めました。

現在においてもフランスの高校では哲学が必修、バカロレア(大学入学資格試験)では文系理系を問わず哲学の筆記試験が課されます。フランスのエリートにとって、哲学は不可欠な教養であると言えるでしょう。

「現実の複雑さを熟知し、現代世界に対する批判意識を働かせることのできる自律的精神を育てる」(「解説」より)ことがフランスの哲学教育の目標とされています。
ではフランスの高校生はどのように哲学を学んでいるのでしょうか。その答えを知るには、彼らの教科書を手に取ってみるに如くはありません。

本書は『フランスの高校生が学んでいる10人の哲学者』に続く、シリーズ第二弾。60人に及ぶ哲学者に言及しながら、「主体」「文化」「理性と現実」「政治」「道徳」といったテーマを解説するベストセラー教科書です。

著者は、哲学の教鞭をとる一方、教科書、参考書のほか、エッセイや小説を多数執筆。テレビやラジオ、映画にも出演し親しまれています。
本書を紐解くことによって、西欧文明のバックボーンを成す思想の一端が垣間見られることでしょう。是非ご一読ください。

(担当/渡邉)

 

【内容紹介】
日常生活に役立つ、哲学的思考法を鍛えよう。
フランスの人気哲学者が、
西欧哲学の真髄を明快に解説したベストセラー教科書。

ソクラテス、プラトン、アリストテレス、ホッブズ、デカルト、スピノザ、ルソー、カント、ヘーゲル、ニーチェ、フロイト、サルトルなど、60人に及ぶ哲学者に言及しながら、「主体」「文化」「理性と現実」「政治」「道徳」といったテーマを解き明かす。各哲学者の引用も多数紹介。
26項目もの「キーワード解説」も充実。

『フランスの高校生が学んでいる10人の哲学者』に続くシリーズ第二弾。
坂本尚志氏(『バカロレアの哲学』)による解説「フランスの高校生はどのように哲学を学んでいるのか?」を収録。

欧米のエリートにとって、哲学は不可欠な教養だ。
フランスの高校では哲学が必修、バカロレア(大学入学資格試験)では文系理系を問わず哲学の筆記試験が課される。
教養としての哲学を、フランスの教科書を読んで身に着けよう!

 

【目次】
はじめに

1.主体 「私」は私ひとりだけのものか、それとも他者との関係で定義されるものなのか
2.文化 文化とは自然なことか、それとも自然に反することか
3.理性と現実 理性は現実を捉えることができるのか、それとも現実は理性では捉えきれないものなのか
4.政治 政治は現実的であるべきか、理想を目指すべきか
5.道徳 道徳は現実に存在するのか、ただの幻想なのか

キーワード解説
絶対と相対/抽象と具象/現実態と可能態/分析と総括/原因と目的/偶発性、必然性、可能性/知ると信じる/本質的(エッセンシャル)と非本質的(アクシデンタル)/説明と理解/法的な権利と現実/形(形相)と素材(質料)/属、種、個人/理想と現実/同一、平等、差異/直観的と論証的/合法性と正当性/直接(媒介なし)と間接(媒介あり)/客観と主観/義務と強制/起源と根拠/論破と納得/類似と類比/原理と結果/理論と実践/超越的と内在的/普遍、全般、個人、個別

バカロレア試験対策 実践編

おわりに
訳者あとがき
解説「フランスの高校生はどのように哲学を学んでいるのか?」坂本尚志
哲学者索引

 

【本文「質問と回答」より】
「本当になりたいものは何か、どうすればわかるのか」

哲学者にこんな質問をしたら、内省や論理的な考察を推奨し、世間の喧騒から離れ、自身の内なる欲望に耳を傾けよという答えが返ってくると思っている人が多いのではないだろうか。

だが、それは誤解である。デカルト、ヘーゲル、アラン、サルトルなど何人もの哲学者、いや、かなりの数の哲学者がそれを知るには、行動を起こすこと、その選択が正しいか否かを知るにはまずひとつの道を選んで歩き出すしかないとしている。

なぜ行動が推奨されるのか。すぐに浮かぶ理由は、考察だけですべての問題を解決できるわけではないからである(デカルト風に言うなら、悟性は限定的なものだからということになる)。大学に行くか、専門学校に行くか、どちらを選ぶにしろ、人それぞれに理由はあるだろう。だが、「悟性」で想像しても限界はある。どちらの選択肢があなたの人生、その生き甲斐に直結するものかを断定することはできない。それでも、決めなくてはならない。知性ではなく、意志の力で「決断」するのだ。

アランは、デカルトが「行動の世界」と「形而上学的真理の世界」を区別していることを例にとり、「行動の秘訣は、行動を起こすことだ」と書いている。行動の世界において、私たちはその選択の意味や結果を確信することはできない。だが、疑念を抱きつつも行動する勇気、つまり、はっきりしない部分に一歩踏み出すことが重要なのだ。

だから、私としてはデカルトと同様、あなたにこう言いたい。自分が何を目指すべきか本当の意味で知ることは難しい。でも、何が正しいかわからなくても自分で選ぶことはできる。それがあなたの強みなのだ。

一方、それに取り組むことが、あなたにとって、人間的な能力、知性や感性、想像力を伸ばすことが可能になるような分野があるなら、それがあなたの適性だと言える。自分とその分野の相性がいいということだ。どんな出会いにも言えることだが(そしてまた、だからこそ出会いは美しいのだが)、人はあらかじめ、その出会いが自分の人生にどんな影響をおよぼすかを予想することはできない。そこに踏み込んでみないことには、それが「本当に自分がやりたいこと」に通じる道なのかを知ることができない。それでいいのだ。

最後にもうひとつ。「あなたが本当にやりたいこと」に少なくとも何らかの意味があるのかという問題だ。それをやり遂げるには、「本質」つまり天性が必要かもしれない。サルトルなら、「本質」には意味がないというだろう。あなたは「実存」であって、「本質」ではない。実存は本質に先行する。それなら、あなたが何を本当にやりたいと思おうがかまわない。あなたはあれにもこれにもなれるし、自分がこれからすることが「あなた」を定義する。

あなたの悩む気持ちもわかる。進路の選択を間違うかもしれない。もしかすると一年を無駄にしてしまうかもしれない。確かにそうだろう。でも、それがプラスになったかマイナスになったかは、死ぬまで判断することができない。人生は毎日いつだって軌道修正が可能なのだ。死ぬまでずっと。

 

著者紹介

シャルル・ぺパン(Charles Pépin)

1973年、パリ郊外のサン・クルー生まれ。パリ政治学院、HEC(高等商業学校)卒業。哲学の教鞭をとる一方、教科書、参考書のほか、エッセイや小説を多数執筆。映画館で哲学教室を開いたり、テレビやラジオ、映画に出演している。邦訳に『フランスの高校生が学んでいる10人の哲学者』『幸せな自信の育て方 フランスの高校生が熱狂する「自分を好きになる」授業』などがある。

訳者紹介

永田千奈(ながた ちな)
東京都生まれ。早稲田大学第一文学部フランス文学専修卒業。主な訳書にルソー『孤独な散歩者の夢想』、ペパン『フランスの高校生が学んでいる10人の哲学者』『考える人とおめでたい人はどちらが幸せか 世の中をより良く生きるための哲学入門』がある。

 

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シニアの加齢な日常を描く、一気読み必至の超短編小説集!『死んでしまえば最愛の人』小川有里 著

死んでしまえば最愛の人

小川有里 著

「人生100年時代」と言われる現在、70代、80代はひと昔のその世代とは違い、仕事もプライベートも「まだまだ現役」という方は多いのではないでしょうか?
本書はそんないまを生きるシニアたちのリアルな本音を「超短編」というかたちで抉り出した、新しいタイプの小説集です。
古希を過ぎても恋に萌える男女、犬も食わない老年夫婦の秘密、驚くべきイマドキ家族の実態、高齢者ならではの本音の友情物語……。身近になさそうでありそうなエピソードの数々。読み進めるうちに身につまされたり、励まされたり、思わずクスッと笑ってしまったり、と、読み手の感情はジェットコースターのように揺さぶられます。
年寄り=隠居という時代は遥か昔。いくつになっても人間は恋もするし、食欲も衰えないし、お金も大事だし、人のことだっておおいに気になります。おおいに苦労をさせられた夫も、亡くなってしまえば妻の勝ち。幸せだった日々だけを上書きしていけば、やがてダメ夫だっていつかは「最愛の人」になるのかもしれません。
帯のコピーには「読みだしたら止まらない あなたのまわりにもありそう39の人間模様」と記しましたが、ここに登場する主人公たちは、あなた自身、そしてあなたの親御さんや子どもや孫なのではないでしょうか。
著者の小川有里さんは「あとがき」でこのように記しています。
『主人公たちの生き方はたくましく、また柔軟でもある。思いがけない出来事にいっときはうろたえても嘆き過ぎることなく現実を受け止める。そうして、選んだ生き方を「これでいいんだよ」と自分に言い聞かせて納得し、前を向く。年齢(とし)をとる良さとは、まさにこういうふうに自分の生き方を肯定できるようになることかもしれない』
なるほど、長生きも悪くないかも!?
人気イラストレーター・村田善子さんの「おせんべいを食べる女性」のカバー装画が、作品そのもの魅力を表しています。
ぜひ本書を手に取っていただいて、思いきり笑って泣いて、楽しんでいただければ幸いです。

(担当/五十嵐)

 

目次

第1章 老い萌え
第2章 夫婦の道すじ
第3章 家族哀歌(エレジー)
第4章 今日の友は明日の友?
第5章 ときは流れて


<表題作『死んでしまえば最愛の人』より>
「夫は81歳になったけどとても元気よ。でも、昔から動かない人でね、私は自分の時間と体力を食われすぎないように、いろいろ命令してさせているの。食うか食われるか、恐竜世界のような老後よ」

 

著者紹介

小川有里(おがわ・ゆり)

1946年高知県生まれ。介護雑誌などのライターを経て現在はエッセイストとして活躍中。テーマは、女性、家族、育児、社会現象、シニアなど。著書に『定年ちいぱっぱ―二人はツライよ』『定年オヤジのしつけ方』『負けるな姑! 嫁怪獣(ヨメサウルス)に喰われるな』『おばさん事典』『加齢なる日々 定年おじさんの放課後』『強いおばさん 弱いおじさん 二の腕の太さにはワケがある』『おばさん百科』などがある。

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殺人者はどう裁かれるべきか?『殺人者たちの「罪」と「罰」 イギリスにおける人殺しと裁判の歴史』ケイト・モーガン著 近藤隆文・古森科子訳

殺人者たちの「罪」と「罰」

――イギリスにおける人殺しと裁判の歴史

ケイト・モーガン 著 近藤隆文・古森科子 訳

「殺人」とは何か? そして「殺人者」を裁く法はどのような経緯で成立したのか? 
実際に起きた驚愕の事件を俎上にのせ、「正しい裁き」をめぐる社会意識の変遷をたどる
スリリングな考察!

 洋の東西を問わず、殺人という最悪の行為は多くの人々の関心を集めるテーマであり続けています。これまでにさまざまな凶悪事件や猟奇殺人、その背景に焦点を当てた書物が刊行されており、小説や映画においても「殺人事件」は一大勢力となっています。では、そうした殺人を裁くための法律はどのような経緯で(どのような事件がきっかけとなって)制定されたのでしょうか。そして、そもそも「殺人」とは法的にどのように定義されるものなのでしょうか。
 本書(原題は“MURDER: THE BIOGRAPHY”)は「殺人」という罪が規定されてゆくプロセスを、英米法の祖国イギリスの現役弁護士がリーダブルにつづった一冊です。本書の冒頭(イントロダクション)で著者は下記のように書いています。
〈殺人の真実はどんなフィクションよりも奇妙で、暗鬱とし、人の心をつかんで離さない。それは物語の継ぎはぎ細工、罪と罰の物語であるばかりか、正義と不正義の物語、人間と土地、ごく個人的な悲劇の物語だ。そのどれもが絶え間ない社会の変化と政治的激動を背景に起こっている。この歴史をたどることで、こうした死が今日の私たちの生活に与えてきた影響が見えてくるだろう。〉
 殺人をどのように定義づけ、裁くのかという切り口から、社会や人々の意識の変遷もかいまみえるという意味で、本書は異色の社会史ということもできるかと思います。本書では、驚くような事件やその犯人たちについても紹介されていますが、それらを通じて見えてくるのは、今日の日本でもしばしば問題になる「責任能力はどこまであるのか」「過失だったのか、意図的に引き起こされた死なのか」といった論点が実際の法律に落とし込まれるまでに、長きにわたる論争があったということ、そして、その時々の社会状況よって法の適応や解釈が大きくブレてきたということです。
 著者は殺人について「法律そのものは数世紀にわたって何千もの鋳型で形成されてきたが、その担い手となるのは真の悪人というより、不運な人、思慮を欠く人、思い違いをした人が多い。(中略)人間関係がわずかにこじれ、関係者全員に恐ろしい結末をもたらした物語なのである」と述べています。私たちが殺人事件に関心を抱くのは、それを無意識のうちに察知しているからかも知れません。「殺人と法」という視点から人間社会の不可思議さに切り込む本書は、日本人にとっても示唆に富む一冊といえるのではないでしょうか。

(担当/碇)

 

【本書より抜粋】
〈約一〇〇〇年前に法で定められて以来、この最も恥ずべき犯罪は、何よりも実在の人物によって決定づけられてきた。法廷で事件を審理される殺人者と犠牲者、彼らの運命を左右する裁判官、陪審員、弁護士、そして法の施行後も人々の命を握ってきた政治家や君主たち。この英国の殺人史は、命を奪うことが正当化あるいは容赦されるとしたら、それはどんな場合なのか、また、ときに極悪な行為におよぶ善良な人々をどう酌量すべきなのか、といった大きな問題をはらんでいる。〉

〈最新のデータから大まかな結論をいくつか引き出すことは可能だ。殺すのも殺されるのも圧倒的に男性が多く、犠牲者の六四パーセント、殺人容疑者の九二パーセントを占める。男女とも、自宅が最も命取りになる場所であり、殺人事件の大多数は犠牲者の住居で発生している。驚くべきことに、女性の犠牲者の四〇パーセント以上が現在または過去のパートナーに殺されていたが、男性は友人や知人に殺害されるケースが最も多い。シップマン医師のような連続殺人犯が見出しをさらう一方で、〝見知らぬ者の危険性〞は統計では証明されない。〉

 

【目次】
イントロダクション 汝、殺すなかれ

第一章 決闘場
・文学者がポン引きを殺したのは正当防衛なのか?
・武力で自分の名誉を守る権利―決闘
・決闘裁判の慣習を蘇らせた男
・殺人にいたる理由を視野に入れる

第二章 悪の狂気
・心神喪失の申し立てをした男
・国王を銃撃した男のその後
・暗殺(assassination)の概念
・心神喪失に関するルール―「マクノートン準則」
・少女の首を切り落とした男の精神状態
・心神喪失を認められながらも有罪となった男
・外的な圧力や絶望的な状況は殺人の理由になるのか?

第三章 自治領の外へ
・「海の慣習」としてのカニバリズム
・少数の犠牲に多数の運命が左右される海難事故の法的ジレンマ
・第一次世界大戦下で起きた最も衝撃的な殺人事件
・結合双生児を切り離す手術に違法性はないのか?
・変動していく謀殺と故殺の境界線

第四章 まかせてください、医者ではないので
・故殺罪の審理を受けることになった「スラムの開業医」
・医師の過失とミスの隠蔽
・新たなカテゴリー「重過失故殺」の誕生
・有罪を証明するのは訴追側の義務
・自動車事故と重過失故殺
・殺人法を変えてきた人々

第五章 収穫逓減とキャピタル・ゲイン
・挑発という由緒ある抗弁
・挑発に関する法律の限界
・「やってやれ」――共同企図
・一九五七年殺人法――謀殺に対する三つの部分的抗弁の導入
・限定責任能力の概念をどう適用すべきか
・ベントリーとエリスの有罪判決をめぐる論争
・死刑廃止以降の問題

第六章 HIRAETH
・謀殺の概念に疑問を投げかけさせた事件
・災害における刑事責任の欠如
・殺害する意図がない場合の罪はどうなるのか?
・ヨークシャーの切り裂き魔との対比

第七章 鏡に口紅
・控訴院の欠陥と司法過程における役割
・虐待に苦しむ女性と挑発に関する法律の見直し
・蓄積された挑発という考え方
・〈ブリッジウォーター・フォー〉の解放
・刑事事件再審委員会の設立
・殺人法の盲点にもなる大量殺人

第八章 法人
・企業を故殺で有罪にはできないのか?
・会社の故殺罪をめぐる六〇余年ぶりの裁判
・「一年と一日ルール」の廃止
・法人故殺法の成立

第九章 謀殺:手引き
・謀殺の神話と現実とのあいだにあるずれ
・限定責任能力と挑発の新たな定義
・「挑発の抗弁」から「自制心の喪失」へ
・殺人に関する責任の範囲を広げる根拠
・法人故殺罪の適用
・嬰児殺しを取り巻く法律
・「危険な自転車運転致死」罪を導入すべきか
・たえず変化してきた謀殺法

 

著者紹介

ケイト・モーガン(Kate Morgan)

2008 年に事務弁護士の資格を取得。長年にわたり水道業界で上級社内弁護士を務め、現在はカンパニーセクレタリーとして企業の法務や管理業務に携わる。そのかたわら、Commercial Litigation Journalをはじめとする法律専門誌に執筆し、季刊文芸誌Slightly Foxed に寄稿してきた。本書は著書第一作。

訳者紹介

近藤隆文(こんどう・たかふみ)

翻訳者。一橋大学社会学部卒業。主な訳書に、マクドゥーガル『BORN TO RUN 走るために生まれた』、フォア『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』(以上、NHK出版)、ネスター『BREATH:呼吸の科学』(早川書房)、マカナルティ『自閉症のぼくは書くことで息をする:14歳、ナチュラリストの日記』(辰巳出版)、スピーノ『ほんとうのランニング』(木星社)などがある。

古森科子(こもり・しなこ)

翻訳者(英日・日英)。日本大学国際関係学部卒業。AFS第35期生として米国オレゴン州に留学。社内翻訳者を経て、2008年よりフリーランス翻訳者。共訳書:『【閲覧注意】ネットの怖い話 クリーピーパスタ』(早川書房)。翻訳者グループ「自由が丘翻訳舎」の一員。

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