草思社のblog

ノンフィクション書籍を中心とする出版社・草思社のブログ。

そのつらさには正当な理由がある。『人とかかわるのがずっとつらかったあなたへ 愛着障害という心の傷を癒やすために』帆足暁子 著

人とかかわるのがずっとつらかったあなたへ

――愛着障害という心の傷を癒やすために

親と子どもの臨床支援センター代表理事・公認心理師 帆足暁子 著

■“人がこわい”“ひとりはつらい”―その背景にあるもの

近年、コミュニケーションの多くがネット上で完結するようになり、
対面で人とかかわることに苦手意識を持つ若い世代が増えています。
しかし学校や会社では、これまで以上に「コミュ力」が求められ、
「どうすればストレスなく人と関係を築けるのか」という悩みは、多くの人に共通する課題となっています。
本書は、小児科の副院長として約20年にわたり、子どもや保護者の心の相談に携わってきた著者が、「人に会うと疲れる」「自分の出し方がわからない」「ひとりは楽だけれどつらい」といった対人関係のつまずきの背景にある感情や記憶を、やさしくひもとくものです。

■愛着障害がもたらす“生きづらさ”

特に、幼いころに安心できる環境で育つことができず、大人になっても生きづらさを抱えやすい“愛着障害”の人にとって、人とかかわることは想像以上に大きな不安やプレッシャーを伴うといわれています。
著者は、こうした背景をふまえながら、
“あなたがつらかったのには、ちゃんと理由がある”
“過去は変えられないけれど、未来は自分でつくれる”
というメッセージを丁寧に届けます。

■「人からどう思われるか」ではなく「自分がどうしたいのか」

読み進める中で、読者は自尊感情を取り戻し、自分の本当の気持ちに気づき、健全な人間関係を築くための具体的なステップを自然と身につけられるようになっています。
一人ひとりが自分を好きになり、自分の人生に自信を持てるように。
本書は、そのために寄り添ってくれる“伴走者”となる一冊です。ぜひ多くの方に読んでいただければ幸いです。

(担当/吉田)

 

目次より

プロローグ 今、この瞬間にあなたは幸せになる道のスタートに立っています

1部 自分を大切にする
1章 人に対していつも苦しいのはなぜ?
2章 そのつらさ、見えない虐待の「後遺症」かもしれません
3章 人を分析するのはやめて、自分をちゃんと見てあげて

2部 人とかかわる
4章 安心できる人間関係は心の修復につながる
5章 心を思春期にもどして、人とかかわる練習をしてみよう
6章 ちょっと苦手な人、嫌いな人に出会ったときの対処法

エピローグ あなたはあなたのままでいい。あなたであることに価値があるから

 

著者紹介

帆足暁子(ほあし・あきこ)

大妻女子大学児童学科卒業。公認心理師、臨床心理士、保育士資格、幼稚園教諭一種免許。専門は乳幼児発達臨床心理学、保育臨床、子育て相談、子どものメンタルヘルス。ほあしこどもクリニック副院長として約20年間、子育て相談や心の相談で子どもや親と向き合ってきた実績がある。その経験を基に、2020年に親子を支援することを目的とした一般社団法人親と子どもの臨床支援センターを立ち上げた。その他、保育者との事例研究会を毎月継続して開催するとともに、保健センターでの虐待発生予防事業等にも携わる。保育者、保健師等を対象とした研修会・講演会を全国で行っている。主な著書に『0.1.2歳児 愛着関係をはぐくむ保育』(学研プラス)、『育てにくさをもつ子どもたちのホームケア』(分担執筆/診断と治療社)など。

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崩壊の現場」から人類の現在と未来を考察する知的刺激に満ちたルポルタージュ!『廃墟のヨーロッパ』国末憲人 著

廃墟のヨーロッパ

国末憲人 著

 かつて世界の中心だったヨーロッパは、二十世紀を通して大小の戦争と先鋭的なイデオロギー対立、民族紛争の舞台となり、数えきれないほどの「廃墟」を残すことになりました。本書『廃墟のヨーロッパ』は、長年、新聞社の記者として欧州各地で取材や調査に携わり、現在は研究者としてさらに考察を深めている著者が、ヨーロッパ各地の廃墟とそこに生きる人々の姿を通して、これまで顧みられることのなかった「記憶」と「時間」の層を掘り起こす文明論的なルポルタージュです。
 本書で取り上げられている廃墟の形態はさまざまです。チェルノブイリ原発事故で無人となった街、ロンドンの地下に眠る核シェルター、戦後朽ち果てたピレネー山中の乗換駅、南イタリアの産業振興策の残骸、分断に苦悩し権威主義勢力の揺り戻しに脅かされる東欧の各地、EU離脱を支持した英国のラストベルトやルペン躍進の土壌となったフランスのラストベルト、そしてナチスの強制収容所跡……。本書の冒頭で著者は、「はじめから廃墟を意識して現地を訪ねたわけではない。その時々に焦点となった出来事やニュースの現場に足を運び、ふと振り返ると、その多くがある種の廃墟だったと気づいた」と書いています。現代を深く理解しようとすれば、廃墟に目を向ける必要があるのです。
 そして、社会的な分断や対立、人口減少と移民問題……といった本書が扱っているテーマは、日本人にとっても今やまったく他人事ではありません。本書が浮き彫りにするヨーロッパの苦悩が、日本が置かれた状況を考えるための糧になることを願ってやみません。

(担当/碇)

 

目次

はじめに 

第1章 よみがえるソ連――プリピャチ 
■「ウクライナでもっとも快適な道路になりました」 
■再現されたソ連の生活風景 
■想像力を呼び戻す仕掛け 
■「一時的に、三日間だけ避難せよ」
■帰還者の行方

第2章 足元に潜む核戦争――ロンドン 
■米ソの「ホットライン」も経由
■核シェルターは政府関係者専用 
■戦略の要として復権しつつある核兵器 

第3章 分断された世界――ボスニア・ヘルツェゴビナ 
■「互いに撃ち合った過去」の呪縛 
■「首都で私はトイレに行かない」 
■利権を差配する「お山の大将」 
■狭い行政区に大臣が十五人 
■聖火台のマクドナルド 
■「EUのレベルに達するには百年かかる」 

第4章 名君だった「暴君ネロ」――ローマ、ポンペイ 
■ポピュリスト政治家としての皇帝ネロ 
■ポンペイ落書きが語る意外な人物像 
■フェイクニュースが歴史になるとき 
■タイムカプセルとしてのポンペイ遺跡 
■歴史は発見とナラティブのせめぎ合いでつくられる

第5章 人影が消えた浜辺――キプロス 
■閉ざされた「地中海の宝石」 
■「住民の間には、もはや何の対立もありません」 
■三種類の旅券を保有する住民たち 
■キプロス問題を左右するエルドアンの思惑 
■三つのシナリオ
■トルコによる北キプロス併合という悪夢 

第6章 峠を越えた金塊――ピレネー山脈・カンフラン国際駅 
■ナチスの金塊が運び込まれた国境の駅 
■線路上に散らばっていた古い書類 
■中立国スペインの複雑な立場 
■金塊の用途と行き先 
■古びた窓枠から歴史を振り返る 

第7章 地中海の中心で、地図を描く――南イタリア・カラブリア 
■頓挫した開発とマフィア、発がん性物質 
■人口二百万人の州に四百万人分の住宅 
■辺境が地中海の中心になる日

第8章 アウシュヴィッツの東を見よ――ソビブル、トレブリンカ、ベウジェツ 
■ソ連によって整えられた虐殺の条件 
■ホロコーストを物質的な面から分析する 
■なぜアウシュヴィッツが象徴となったのか
■ソビブルの名札 
■有刺鉄線を越えて 
■立ち尽くす一万七千の石 
■「青い壁」の秘密 
■演出はどこまで必要か 
■政治によって封印された記憶 
■絶滅収容所映画が意図するもの 

第9章 虹の彼方に消えた「移民」――ウェスト・ヨークシャー 
■半世紀にわたる衰退の歴史 
■なぜアジア系住民はEU離脱に賛同したのか 
■スケープゴートにされた「ポーランド移民」 
■「レフト・ビハインド」の虚実 
■「ブレグジット」から「ブレグレット」へ 

第10章 かつてこの国に王がいた――ソフィア 
■国王から亡命者、そして首相に 
■廃屋がブルガリアの共通の風景 
■若者が夏休みにだけ帰ってくる国 
■新興大国の草刈り場 
■ガラパゴス化するEUの政治モデル 
■ポピュリストが語る「心温まる社会」 
■「世界の終わり」と「月末までの生活」 
■EUの存在意義はどこにあるのか 

第11章 ボタ山が育んだ政治勢力――ノール・パドカレー炭田 
■平屋の美術館「ルーブル分館」 
■多様な人々によって育まれた豊かさ 
■マリーヌ・ルペンの拠点となったボタ山の街 
■「欲しいのは、援助やカネじゃない」 
■利用される「不平等感」と「承認欲求」 
■「トランプなんて、まだましだった」 

第12章 ナンバープレートの上の「国家」――コソボ・ミトロヴィツァ 
■国境でのばかげた「義務」 
■政府によって煽られる住民対立 
■コソボ政府の行政能力にも不信感 
■「プーチンは嘘つきの常習犯です」 
■セルビアとコソボに共通する自己認識 

第13章 共産主義の亡霊が徘徊する――ブダペスト 
■「恐怖の館」の政治性 
■目指すのは「非リベラルな社会」 
■「外国をコピーするだけではだめだ」 
■イデオロギーからアイデンティティーへ
■「オルバンの手法はスズキの工場と同じ」 
■「三十年前とあまり変わっていない」 
■富裕層と貧困層の結託 
■「総統民主主義」が審判を受ける日 

第14章 壁なき大平原の幻想――ベルリン 
■消滅したはずの「壁」が再び立ちふさがる 
■「欧州の病人」から「一人勝ち」へ 
■「接近による変化」の理想と現実 
■メルケル政権の「功」と「罪」 
■「相互依存は安定には結びつかなかった」 

破壊と再生――結びにかえて

 

著者紹介

国末憲人(くにすえ・のりと)

東京大学先端科学技術研究センター特任教授、ウクライナ国立工科大学客員教授。1963年岡山県生まれ。1985年大阪大学卒。1987年に紀行「アフリカの街角から」でノンフィクション朝日ジャーナル大賞優秀賞を受賞。同年、パリ第2大学新聞研究所を中退し朝日新聞に入社。パリ支局長、GLOBE編集長、ヨーロッパ総局長を務めた。2024年より現職。著書として『自爆テロリストの正体』『サルコジ』『ミシュラン 三つ星と世界戦略』 (以上、新潮社)、『ユネスコ「無形文化遺産」』(平凡社)、『ポピュリズム化する世界』(プレジデント社)、『ポピュリズムと欧州動乱』(講談社)、『ロシア・ウクライナ戦争 近景と遠景』岩波書店、『ポピュリズムに蝕まれるフランス』『イラク戦争の深淵』『巨大「実験国家」EUは生き残れるのか?』『テロリストの誕生』(以上、草思社)などがある。

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麻布台ヒルズの設計で世界を熱狂させる、希代の建築家のビジュアル・マニフェスト!『HUMANISE 建築で人間味のある都市をつくる』トーマス・ヘザウィック 著 牧尾晴喜 訳

HUMANISE 建築で人間味のある都市をつくる

トーマス・ヘザウィック 著 牧尾晴喜 訳

2012年オリンピックの聖火台や上海万博パビリオンのウニのような建物で日本でも一躍話題になり、ついに麻布台ヒルズで日本でも作品が実現した、建築家トーマス・ヘザウィック。彼の独創的な建築は、いったいどのような理念から生まれているのでしょうか。そのカギは、「人間らしさ」にあると言います。
本書は、彼の建築哲学をインパクトのあるグラフィックとともに表現した1冊です。

本書は3部構成になっています。第一部では、ガウディにあこがれて建築を目指したところから始まり、いかに現代の都市が退屈で、人間味のないものになっているかを指摘します。それは東京も例外ではありません。第2部では、そうなってしまった原因を探ります。その犯人は、装飾のないモダニズム建築であると言います。建築教育に大いに問題があると言い、大胆にも、モダニズム建築の巨匠であるコルビュジェやミースに批判的に切り込みます。
第3部では、どのようにして都市をふたたび人間的なものにすることができるかを考えていきます。どのようにして、人間の感性に訴えるデザインが可能なのかを、実作も交えながら紹介します。AIなど現代の技術によって、彼が目指す装飾的な都市は、ますます実現できるものになってきており、その意味でも彼の目指す建築は時代に適ったものであるといえそうです。

本書を通して語られる「人間らしい」建築は、人間を幸福にするものです。都市や建築は、人間にとってよりよい世界を導くことができるのだという、希望に満ちた内容になっています。

(担当/吉田)

 

著者紹介

トーマス・ヘザウィック(Thomas Heatherwick)

世界で最も著名なデザイナーの一人であり、建築から家具に至る多様な作品群は、独創性、創意工夫、そして人間味を特徴とする。ヘザウィック・スタジオは、私たちの周りの物理的な世界を、より楽しく、より魅力的なものにするために尽力している。設計事例に、ロンドンのルートマスターバス、2012年オリンピックの聖火台、キングスクロスのコール・ドロップス・ヤード、Google初の地上キャンパスであるベイビュー、ニューヨークのハドソン川に浮かぶ公園、リトルアイランド、上海万博イギリス館、麻布台ヒルズなどがある。

訳者紹介

牧尾晴喜(まきお・はるき)

建築やデザイン分野の翻訳を手がけている。メルボルン大学客員研究員などを経て、同志社女子大学で兼任教員。博士(工学)。主な訳書・監訳書に、『建築のかたちと金融資本主義:氷山、ゾンビ、極細建築』『ナットとボルト 世界を変えた7つの小さな発明』、『世界を変えた建築構造の物語』(以上、草思社)、『モダン・ムーブメントの建築家たち:1920-1970』(青土社)、『目標という幻想』(ビー・エヌ・エヌ)などがある。一級建築士。株式会社フレーズクレーズ代表。

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苦痛を味わう方が幸福になる?科学的に苦しみの価値を考察『苦痛の心理学 なぜ人は自ら苦しみを求めるのか』ポール・ブルーム 著 夏目大 訳

苦痛の心理学

――なぜ人は自ら苦しみを求めるのか

ポール・ブルーム 著 夏目大 訳

 ホラー映画、激辛料理、SM、過酷な運動など、現代人はさまざまなしんどい趣味を持つ人が少なくありませんが、人はなぜ自ら苦痛や恐怖を求めるのでしょうか。実はそこには、科学的な理由があるのです。
本書は、人間にとって「意味ある痛み」というものを科学的に考察します。「苦痛」という一般にはネガティブなものと思われている要素が、むしろ「快楽」「意味」「充足」といったポジティブな体験と深く結びついているという逆説的な視点を示します。苦痛を伴いながらも、その後に訪れる安らぎや達成感を求める人間の心理を、心理学や進化論の観点から解き明かしていきます。
「痛み=悪」、「快楽=良」という単純な二元論を超え、本書は「人生をより意味あるものにするには、ある種の“適度な苦しみ”が必要だ」という考えを示します。著者はまた、幸福や快楽を「快適さ」や「苦痛のない状態」としてではなく、「意味」「目的」「努力」と結びついたものとして再定義します。
著者のポール・ブルームは心理学を専門とし、前著『反共感論』でも、共感のもつ負の側面にフォーカスし、大きな議論を呼び起こしました。本書もそんな著者ならではの、逆説的な視点から人間の心理を考察した書籍と言えます。
もちろん、本人の望まない苦痛は不要なものでしかありませんが、本書を読めば、いかに「適切な苦痛」が人生において重要なものであるかを理解いただけるかと思います。痛みについて考えたい人はもちろんのこと、人生の意味について考えたい方にもぜひ読んでいただきたい1冊です。

(担当/吉田)

 

著者紹介

ポール・ブルーム(Paul Bloom)

トロント大学心理学教授。イェール大学心理学名誉教授(ブルックスおよびスザンヌ・レーゲン冠教授職)。道徳、アイデンティティ、快楽の心理学を探求している。学術誌『ネイチャー』や『サイエンス』のほか、『ニューヨーク・タイムズ』『ニューヨーカー』『アトランティック・マンスリー』にも寄稿している。著書に『ジャスト・ベイビー―赤ちゃんが教えてくれる善悪の起源』(NTT出版)、『喜びはどれほど深い?―心の根源にあるもの』(インターシフト)、『反共感論』(白揚社)などがある。

訳者紹介

夏目大(なつめ・だい)

翻訳家。1966年、大阪府生まれ。同志社大学文学部卒業。『人間には12の感覚がある』(ジャッキー・ヒギンズ 文藝春秋)『ブラッド・コバルト』(シッダルタ・カラ 大和書房)『動物のひみつ』(アシュリー・ウォード ダイヤモンド社)『ソクラテスからSNS』(ヤコブ・ムシャンガマ 早川書房)『タコの心身問題』(ピーター・ゴドフリー=スミス みすず書房)など訳書多数。

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近代短歌はおもしろい! 『みんなの近代短歌』髙良真実 編

みんなの近代短歌

髙良真実 編

本書は近代歌人15人の代表歌550首に、丁寧な鑑賞を付した決定版アンソロジーです。

取り上げる歌人は、石川啄木、島木赤彦、三ヶ島葭子、若山牧水、岡本かの子、与謝野晶子、北原白秋、今井邦子、前田夕暮、斎藤茂吉、釈迢空、片山広子、吉井勇、窪田空穂、土屋文明。

同様の選集では歌人の生年順に並べられることが多いですが、本書では没年順に配しています。これは「それぞれの歌人の人生とともに近代史を眺めたい」という編者の思いからなされたものです。

例えば、啄木は関東大震災を経験しなかった。牧水は日中戦争を経験しなかった。晶子と白秋は戦争末期の疎開を経験しなかった。茂吉と迢空は戦後の高度経済成長を経験しなかった。

石川啄木から土屋文明までの15人の作品を読み進むことにより、日本の近代を確かに生きた一生活人でもある歌人の姿をまざまざと見てとることができるでしょう。

そして同時に深く得心させられるのが、歌人それぞれの文体の存在であり、世界に対する態度の違いです。同じ時代に生き、同じ事件に接しても、詠まれる歌の姿は大きく異なります。収録されている歌の歌人名を隠してみても、高い確率で誰が作者かを言い当てられるかもしれません。偉大な作家だからこそ持つ文体の力といえるでしょう。

近代の文語が用いられている作品も含まれていますが、すべての歌に付された鑑賞では、単純な現代語訳ではなく、文語のニュアンスも説明されています。近代短歌のおもしろさを存分に堪能してください。

(担当/渡邉)

 

内容紹介

髙良さんの魔術によって、教科書から抜け出してきた
晶子、啄木、かの子……。みんな生きている!                   
――穂村弘

親切、真摯、辛辣……
近代短歌を楽しむ最良のイヤホンガイドです! 
――俵万智

近代歌人15人の代表歌550首に、
丁寧な鑑賞を付した決定版アンソロジー。
従来、取り上げられづらかった女性歌人も紹介。

近代短歌はおもしろい。ただ、おもしろさを感じるにはちょっとしたコツが要る。
楽しく読むためには、近代の文語に慣れたり、
彼らの経験してきた社会を知ったりする必要がある。
本書は、まだ近代短歌に不慣れな読者のために、入口となるべく書かれたものである。
一般にアンソロジーといえば、短歌作品だけ並べるものだ。
けれども本書では、すべての歌に鑑賞を付した。
鑑賞では、単純な現代語訳ではなく、
文語のニュアンスも含めた印象が伝わるように意識した。
――「はじめに」より

 

【本書で取り上げる近代歌人15人】

石川啄木
島木赤彦
三ヶ島葭子
若山牧水
岡本かの子
与謝野晶子
北原白秋
今井邦子
前田夕暮
斎藤茂吉
釈迢空
片山広子
吉井勇
窪田空穂
土屋文明

 

編者紹介

髙良真実(たから・まみ)

一九九七年、沖縄県生まれ。歌人、文芸評論家。「沖縄タイムス」タイムス歌壇選者を務める。早稲田短歌会出身。第四〇回現代短歌評論賞、第四回BR賞受賞。同人誌「Tri」、「滸」、短歌結社竹柏会「心の花」所属。著書に『はじめての近現代短歌史』。

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ネコの言語コミュニケーションについて、最新科学で明らかに!『ネコの言葉を科学する』サラ・ブラウン 著 清水由貴子 訳

ネコの言葉を科学する

サラ・ブラウン 著 清水由貴子 訳

ネコ好きなら誰もが一度は、「うちの子が何を考えているのか知りたい」と思ったことがあるでしょう。本書は、そんな願いを叶えてくれる一冊です。ネコは鳴き声のほか、すりすりやしっぽの動作、アイコンタクト、毛づくろいなど、多彩な「ことば」でのコミュニケーションを発達させてきました。本書では、人間とネコがパートナーとなってきた進化の過程をふまえつつ、ネコの豊かなことばの世界を科学的に解き明かします。

本書には、最新の知見を踏まえた、驚くべき事実が書かれています。たとえば、ネコは人間の会話を聞き分ける能力を持っており、「人と人が話しているのか」「自分に話しかけられているのか」を理解していることが分かってきています。また、「ネコが目をじっと見るのはケンカのサイン」とよく言われますが、実際にはそうとは限りません。たとえば、餌が出てこないなど自分では解決できない問題に直面したとき、ネコは人間の目を見つめて「助けてほしい」という意志を伝えている可能性があるのです。つまり、ネコの視線には敵意だけでなく、期待の意味も込められているのです。
さらに、ネコと人間の関係性に目を向けると、ネコの性格は「神経症傾向」「衝動性」「支配傾向」「外向性」「協調性」という5つの要素に分類できるとされています。そして多くの場合、人は自分と似た性格のネコを選んだり、自身を投影している可能性が高いことも示唆されています。このような最新の知見を踏まえていくと、ネコの「ことば」の解像度があがって見えてくること間違いなしです。ネコの最高の相棒になるための、ネコ愛好家必読の一冊です。

(担当/吉田)

 

著者紹介

サラ・ブラウン(Sarah Brown)

イギリス・サウサンプトン大学の人類動物学研究所で働きながら、避妊手術を受けたイエネコの社会的行動に関する研究で博士号を取得。以来、フリーの猫行動カウンセラー、猫用玩具業界のコンサルタントとして活躍する一方で、イギリスの動物愛護団体に協力し、調査も行う。著書『The Cat: A Natural and Cultural History』(『ネコの博物図鑑』、原書房)は三カ国語に翻訳されているほか、共著書に『The Behaviour of the Domestic Cat』(第二版)、寄稿書に『The Domestic Cat: The Biology of Its Behaviour』(第三版)がある。家族、愛犬のレジー、愛猫のブーツィとスマッジとともにロンドンで暮らしている。

訳者紹介

清水由貴子(しみず・ゆきこ)

翻訳者。上智大学外国語学部卒。おもな訳書に『執行長日記 THE DIARY OF A CEO』(サンマーク出版)、『あらゆる問題を解決できるシャーロック・ホームズの思考法』『How to Be Perfect 完璧な人間になる方法?』(ともにかんき出版)、『初めて書籍を作った男 アルド・マヌーツィオの生涯』(柏書房)、『トリュフの真相 世界で最も高価なキノコ物語』(パンローリング)、『ニール・ヤング 回想』(河出書房新社)などがある。

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12の分岐点に整理すると、日本国の形がよくわかる。『日本史の分岐点』齋藤孝 著

日本史の分岐点

齋藤孝 著

 齋藤孝さんは『声に出して読みたい日本語』(草思社刊)以来、日本語の問題に関心を抱いてきました。日本語の美しさや、習得することの教育的意味などです。しかし本書では「日本語」を超えて「日本」というものに関心を広げています。おそらく作今の日本国の危うさを感知したからでしょう。本書では歴史の12の分岐点を上げて、日本がこれまで歩んできた道を振り返ります。その分岐点で、どの道を選んだことが今日の日本を形成したか。日本を今の日本にあらしめた重要なポイントを指摘しています。12の分岐点とは以下のようなものです。

1.藤原不比等の天皇をめぐる知恵。権威と権力の分離。
2.征夷大将軍という侍の発祥。木曽義仲や鎌倉幕府の話。
3.江戸という立地を選んだこと。江戸・東京というメガロポリスの誕生。
4.渋沢栄一の「論語と算盤」の統一。資本主義の倫理の問題。
5.秀吉の「伴天連追放令」。西欧による植民地化を防いだこと。
6.韓国との不和の一因に最初の「日朝修好条規」の不平等がある。
7.日英同盟破棄から戦争への道が始まる。
8.日米安保条約の功罪の罪の面。
9.仏教も儒教も日本化されて独自のものに。
10.漢字を仮名交じりにして日本語にカスタマイズドした卓見。
11.儒教と寺子屋が培った日本人の教育。
12.夜這い文化の喪失が少子化を生んだ?

 齋藤先生は歴史の専門学者ではないのですが、多くの文献を読みこんで独自の歴史観を作ってきました。どれも面白い指摘で、歴史好きが読んでも十分に読みごたえがあります。たとえば6の韓国との現在の不仲の遠因は明治の「日韓修好条規」の不平等条約に始まる、などというのはあまり誰も言わない面白い指摘です。いろいろな今日の問題、移民問題や安全保障、少子化対策などを考えるときに、こうした歴史的視点は役に立つはずです。今日、再び歴史の分岐点である。そう思って「分岐点思考」をすることが肝要であるというのが本書の主張でもあります。

(担当/木谷)

 

著者紹介

齋藤孝(さいとう・たかし)

1960年、静岡県生まれ。東京大学法学部卒。同大学大学院教育学研究科博士課程を経て、現在、明治大学文学部教授。専門は教育学、身体論、コミュニケーション技法。著書に『宮沢賢治という身体』(宮沢賢治賞奨励賞)『身体感覚を取り戻す』(新潮学芸賞)など多数、『声に出して読みたい日本語』(毎日出版文化賞特別賞)がベストセラーになり、日本語ブームの火付け役になる。テレビ出演も多い。

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