草思社のblog

ノンフィクション書籍を中心とする出版社・草思社のブログ。

道路から見える、動物たちと人間の未来とは 『道路をわたる動物たち 道路生態学からみる生き物たちの未来』ベン・ゴールドファーブ 著 木高恵子 訳

道路をわたる動物たち

――道路生態学からみる生き物たちの未来

ベン・ゴールドファーブ 著 木高恵子 訳

道路は、物流を拡大し人類の文明に大きな進展をもたらしました。しかしその一方、動物たちから見れば、ロードキルや生息地の分断など、深刻な被害を与える存在となっています。
本書は、道路生態学という学問、つまり道路が生物や自然環境にどれほどの変化を与えてきたのかを浮き彫りにし、動物と人類にとってのあるべき道路の未来を模索します。

道路が生き物たちに与えてきた具体的な影響には、以下のようなものをあげることができます。
シカ:ドライバーの最大の脅威となっている
ピューマ:道路に囲まれた「孤島」は自然な繁殖ができず、過酷な生存競争を強いられている
カエル:数のうえで最大級の被害を被っている。人力でバケツリレーで救出している
カメ:1匹につき「間接的利用価値」で約3000ドルの損失を被っている
ワラビー:道路で死んだ親の袋から、子どもがしばしば見つかる
アリクイ:ブラジルでは悪い迷信があり多くの被害を被っている
シャケ:欠陥のある暗渠のせいで道路にまであふれかえる
チョウ:直接轢かれなくとも、車がすれ違う風ですら傷つく
ハゲワシ:道路沿いの死肉にむらがって繁殖している

動物たちにこれだけの甚大な影響を与えている一方で、人間の中にも、動物たちを救おうとする人たちが現れます。動物たちの移動のためだけの横断路を建設したり、道路を剥がして自然に戻したりする人々が登場しますが、なかでも動物孤児のケアラーについては、道路が人間の心も苦しめていることが痛切に語られています。

著者は、ビーバーとそのの熱烈なファンに取材した『ビーバー 世界を救う可愛い過ぎる生き物』で、ビーバーの驚くべき能力に迫りましたが、本書ではさらなる飛躍を見せていると言えます。

人間にとっても、動物にとっても、移動するということはほぼ生きていること同義といえるくらい大事なものであるということが本書を読むと分かります。そして、それぞれの道が交差する時に問題が生じるのです。それを私たちが意識的に解決していかない限り、問題がなくなることはありません。本書を読んで、あるべき道路の未来を考える一助となれば幸いです。

(担当/吉田)

 

著者紹介

ベン・ゴールドファーブ(Ben Goldfarb)
環境ジャーナリスト。イェール大学の林学・環境学大学院で環境経営学修士号を取得。アトランティック、ナショナルジオグラフィック、ニューヨークタイムズなどに執筆歴があり、ベスト・アメリカン・サイエンス&ネイチャー・ライティングにも作品が収録されている。著作に、PEN/E.O. ウィルソン リテラリー サイエンス ライティング アワードを受賞した『ビーバー 世界を救う可愛いすぎる生物』(草思社、2022年)がある。

 

訳者紹介

木高恵子(きだか・けいこ)

淡路島生まれ、淡路島在住のフリーの翻訳家。さまざまな職種を経て翻訳学校インタースクール大阪に通学し、英日翻訳コースを修了。訳書に『ビーバー 世界を救う可愛すぎる生物』(草思社)、『人間がいなくなった後の自然』(草思社、2023年)、『タコの精神生活 知られざる心と生態』(草思社、2024年)がある。

Amazon:道路をわたる動物たち 道路生態学からみる生き物たちの未来:ベン・ゴールドファーブ 著 木高恵子 訳:本

楽天ブックス: 道路をわたる動物たち - 道路生態学からみる生き物たちの未来 - ベン・ゴールドファーブ - 9784794228390 : 本

著者は「毎日新刊100冊見てる書店員」。読書と書店の“ちょうどいい距離”が見つかる本『書店に行くとだいたいイイコトが起こる』杉浦正人 著

書店に行くとだいたいイイコトが起こる

杉浦正人 著

「読みたいという気持ちはあるものの、スマートフォンを手に取っているうちに一日が過ぎてしまう」
「購入したまま積み重なった『積読』の本の山を前に、ため息をついてしまう……」
こうした経験をお持ちの方は、少なくないのではないでしょうか。
本書は、読書に対するそうした心理的なハードルをそっと取り除いてくれる、極めて穏やかで心地よい提案にあふれています。
著者は、日々膨大な数の本に接し続けている現役の書店員――まさに「本のプロ」。
そのプロが提案する読書法は、「速読」や「多読」を強いるような厳格なものではありません。たとえば、次のように極めてハードルの低いアプローチを推奨しています。

・1ページだけ読んで終了しても構わない  
・スマートフォンでゲームを操作するような軽い気持ちでページをめくる  
・書店は「歩くサプリメント」として、購入の有無に関わらず、ただ店内を歩くだけで十分

こうした提案に触れると、「今日からでも実践できそうだ」と感じられるのではないでしょうか。

本書は全5章構成で、読書に苦手意識をお持ちの方でも無理なく読み進められるよう配慮されています。
特に第2章「本屋に行くだけで生活が整う」では、「何かを買わなければならない」というプレッシャーから解放され、ただ棚を眺めるだけで心が整い、軽い運動にもなるという、書店の新しい価値を再発見できます。第5章の「チャートテスト」は特にオススメ。ご自身の読書傾向や現在のレベルを簡易に把握できるため、自分に最適な「ちょうどよい本との付き合い方」が明確に見えてきます。
本書を読み終える頃には、自然と次のような思いが浮かんでくるはずです。
「帰宅途中に、ふと書店に立ち寄ってみようか」
「特に目的がなくても、棚をゆっくり眺めてみようか」
そんなおだやかでかろやかな一歩を、自然に踏み出せる気持ちになれるでしょう。
「最近、本との距離が少し遠くなってしまった」と感じていらっしゃる方に、ぜひ手に取っていただけたら幸いです。
人気イラストレーター・ヤギワタル氏によるポップでかわいいイラストも必見です。

(担当/五十嵐)

 

目次

はじめに

第1章 読書する人、実はとってもすごい人!
読書する自分の“鬼教官”になりすぎないで! 
01 脳がバグッてる時は、読書が一番効く
02 読書スピードは遅くていい。むしろそれが普通
03 謙遜せずに「読書が趣味」と言おう 
04 読みたい本が3冊以上浮かべば、かなりの読書家 
05 同時に何冊も本を読めるのは、上級レベルの技!
06 今の時代に、あえて読書を楽しめるということ
07 家で本を読む人が丸腰で敵陣を攻める武将よりすごい理由 
08 芥川賞を知っているって!? はい、〝読書家〞決定です!
09 書店に30分以上いる人、ほぼ住民説
10 電車で本を読んでいる人って、知的に見える
第1章 理解度Check List 
special column 1  もっと見せます! 書店員的X投稿ギャラリー

第2章 書店に行くだけで、生活は少し整う
本屋は心と体に効くサプリみたいな場所 
11 本棚を見ると、その人のことが分かる
12 本屋は、アルゴリズムを完全に無視してくる場所
13 本屋に行くと、なぜか体も元気になる 
14 何か始めたいなら、本を買うのが一番早い
15 本屋は、毎日やっている無料の花火大会
16 本屋は、お風呂と同じくらい落ち着く場所
17 月曜日の憂鬱は、本でだいたいなんとかなる 
18 年に3冊読めば、雑談はかなり楽になる 
19 インターネットを見すぎたら読書でカバー 
20 〝インターネットにつながらない〞は最強の機能 
第2章 理解度Check List 
special column 2  もっと見せます! 書店員的X投稿ギャラリー 

第3章 書店員は楽しい!
21 店内をじっくり見てくれると、書店員はうれしい
22 買うものがなくても、本屋に入ってほしい
23 面白いと思った本をおすすめできるって幸せ 
24 工作力が高すぎる書店員がうらやましい
25 欲しい本を届けられることは、どんな喜びにも勝る
書店員の実態① 書店員 1日の仕事 密着!! すごろく 
書店員の実態② 書店員的 本 にまつわる失敗談11連発!!
第3章 理解度Check List 
special column 3  もっと見せます! 書店員的X投稿ギャラリー 

第4章 読書がもっと楽しくなる! 書店員が教える「超実用的ライフハック」
積読と上手に付き合うための考え方
1日5分から始める! 『隙間時間読書術』 
「面白くない」と思ったら、いつでも読むのをやめていい
「本から次の本へ!」 読書が自然につながる考え方 
目的なく書店を歩く『散歩読書』のススメ 
POPには、書店員の本音が込められている 
実は話しかけてOK! 書店員に声をかけるコツ 
名作の見つけ方と距離感の取り方 
チャートテストで読書レベルをCHECK!!

第5章  書店員が本気で考えてみた! タイプ別「楽しい読書」の見つけ方
面白くて便利! 満を持して作った“読書界隈のティア表”
ベッド脇に1 冊でも積めば予備軍入り!? 積読家の知られざる生態に肉薄!!【積読量 ティア表 】
目的は本探しじゃない 書店を楽しむこと! 書店探検家が必ず押さえる書店のツボ  【書店探検家 ティア表 】
家で読む時より読書スピード2倍速!? カフェ読書を成功に導くコツを伝授!! 【カフェ読書 ティア表 】
本棚を見れば人となりが丸分かり 本棚の住人の楽しすぎる読書ライフ  【本棚の住人 ティア表 】
第5章 理解度Check List 
special column 4  もっと見せます! 書店員的X投稿ギャラリー 

おわりに――極限状態でも、本を読む手は止まらない!

 

著者紹介

杉浦正人(すぎうら・まさと)
2005年に大手書店に入社。文芸書からビジネス書まで幅広く担当し、地方店から大規模店舗まで多様な現場を経験してきた。「本はあらゆるエンターテインメントの土台になる存在」だと信じ、その魅力をより多くの人に届けることをライフワークとしている。SNSでも「普段あまり本を読まない人にも本の楽しさを伝えたい」と日々発信中。好きな本は「小さくて値段が高い本」。理由は「自分の部屋で場所を取らないから」という建前と、「本屋として小さな土地でも最大の売り上げを出せるから」という本音の両方。そんなユーモラスな視点も交えつつ、本を〝特別なもの〞ではなく〝日常の楽しみ〞として広めていくことを目指している。モットーは「本と人との出合いを作ること」。寝る時間を3時間削ってまで読みふけったあの時のような体験を、読者にも味わってほしいと願っている。
X:honyasugiura

Amazon:書店に行くとだいたいイイコトが起こる:杉浦正人 著:本

楽天ブックス: 書店に行くとだいたいイイコトが起こる - 杉浦 正人 - 9784794228376 : 本

「無理が通れば道理が引っ込む」のは、建築でもそうなのか?『なぜ建築家は無茶をするのか』吉田研介 著

なぜ建築家は無茶をするのか

吉田研介 著

しばしば著名な建築家が手掛けた奇抜に見えるデザインが、物議をかもすことがあります。近年でいえば、隈研吾の馬頭広重美術館における、木製ルーバーの腐食をめぐる報道が最たるものでしょう。
「無理が通れば道理が引っ込む」、という言葉がありますが、はたして奇抜な建築には「道理」は全くないのでしょうか。利用者や施主の目線から離れて、建築家の視点や建築の歴史を踏まえてみると、普通の意味とは別の「道理」が見えてくるかもしれません。
本書は、自身も建築家である吉田研介氏が、8人の建築家について、作品に触れながら、さまざまな「無茶」のあり方を、歯に衣着せぬ口調で語ってゆきます。彼らの建築の考えや人生観を知ってゆくと、ただ無茶であるだけではないことが見えてくるでしょう。
たとえば、先述の隈氏の建築では、『「目立つ建築をつくろう、目立たないと建築家になれないと思っていた。」「形は普通でも『特別なもの』は作れると気づいた」それが木だったのだ。』と吉田氏が指摘するように、これまで現代建築の巨匠が用いてこなかった、木という素材を使うことそれ自体が彼にとって何よりも重要だったのであり、いまの「木の巨匠」としてのポジションをみればその先見性は見事だったというほかありません。

そこに絶壁があるから山に登る、という人がいるように、困難な建築だからこそ作りたいという建築家もいるのです。
そんな建築家という生き物の性(さが)を見つめる、批評的な建築エッセイです。

(担当/吉田)

 

<紹介する建築家>
隈研吾 負ける建築を標榜していたら、ほんとに負けた?
安藤忠雄 夏は暑く冬寒い、便所は外を通って行く家でも学会賞をとった住宅
ザハ・ハディド 国際コンペで磯崎新が強引に通したのに、途中で中止になった計画
ヨーン・ウツソン 無名で未経験の建築家が一等に当選した国際コンペ
清家清 間仕切りが全然無い家、子供たちは何処で寝て何処で勉強したの?
東孝光 6坪の土地でもいいから都心に住みたいという建築家の根性
菊竹清訓 子供ができたら床下にカプセルをぶら下げた「スカイハウス」
吉阪隆正 吉阪のすべてがストレートに出た自邸

 

著者紹介

吉田研介(よしだ・けんすけ)

1938年、東京生まれ。早稲田大学の学部、修士にて建築を学ぶ。その後2年間、竹中工務店設計部に勤務。1967年、東海大学専任講師と同時に吉田設計室開設。2004年に東海大学を退職し、2024年に事務所を閉設。主な著書 に『デザインテクニック』(建築知識)、『建築設計競技選集』(メイセイ出版)、『建築家への道』(TOTO出版)、『建築家の住宅論』(鹿島出版会)、『コルビュジエぎらい』(WADE)などがある。

Amazon:なぜ建築家は無茶をするのか:吉田研介 著:本

楽天ブックス: なぜ建築家は無茶をするのか - 吉田 研介 - 9784794228369 : 本

膨大な資料と取材で未解決事件の実相に迫る。『秘録 警察庁長官銃撃事件』上法玄 著

秘録 警察庁長官銃撃事件

上法玄 著

31年前の3月30日、警察史上最悪の事件発生

1995年3月30日、地下鉄サリン事件のわずか10日後。日本警察のトップ、國松孝次警察庁長官が自宅前で銃撃を受ける。そして2010年3月、公訴時効を迎えた。この警察史上最悪のテロ事件は、なぜ15年の歳月を費やしながら未解決に終わったのか。

本書は、事件直後から捜査の壁となった「二つの影」を浮き彫りにする。一つは、現職警察官でありながらオウム真理教の信者でもあった「X巡査長」の存在だ。彼は一度「自分が撃った」と自供しながら、二転三転と供述の変遷を繰り返して、事件の真実を蜘蛛の巣のように覆い隠した。

もう一つの影は、オウムとは無関係の銀行強盗犯だった。彼は事件から数年後、「警察の目をオウムに向けさせるための督戦行動」として自らの犯行を詳細に自供する。アメリカでの銃器購入歴や現場の下見など、犯人でしか知り得ない「秘密の暴露」を多数含んでいたが、いくつもの矛盾点から結局立件には至らなかった。

本書は、フジテレビ解説委員の上法玄氏が、20年の歳月を費やして関係者への取材を行い、入手した数千ページにおよぶ捜査資料を詳細に検証、時効を迎えてなお消えない「不可解な事実」を抱え持つ「警察庁長官銃撃事件」に向き合おうとする渾身の捜査ドキュメントである。

現場住民たちの目撃証言

3月30日、小雨降る朝、4発の銃声が響き國松長官が倒れた。現場には北朝鮮のバッジや韓国硬貨が遺留され、偽装工作の存在を予感させた。空前絶後の規模で設置された特別捜査本部は、膨大な聞き込み(地取り捜査)を開始。住民からは「自転車で走り去る黒っぽい服装の男」や「双眼鏡で覗く不審者」など、複数の有力な目撃情報が寄せられる。鑑定の結果、凶器は希少なコルト・パイソン8インチと、殺傷能力の高いホローポイント弾であることが判明し、犯人の強い殺意と銃への熟知が裏付けられた。

現職警察官「自分が撃った」

事件から1年、激震が走る。オウムの諜報担当・井上嘉浩の供述から、現職の警視庁巡査長Xが信者であり、報道前に井上へ事件発生を伝えていた疑いが浮上する。Xはサリン事件の捜査本部にいながら教団に機密を漏洩していた。極秘の取り調べでXは「自分が長官を撃った」と自供を始めるが、その内容は重要局面で事実と食い違う。警視庁最高幹部はXの存在を秘匿しようとしたが、その状況を暴露する匿名のハガキで存在が露見する。

オウム真理教の関与なのか

捜査の矛先は、Xが「実行犯」だと発言する教団幹部へ向かう。Xのコートから火薬残渣が検出されるなど、物証はオウムの関与を強く示唆する一方、狙撃の瞬間を見た唯一の目撃者は、Xの体格が犯人と「100%違う」と断言する。時効が迫るなか、捜査は「オウムによる組織的犯行」という結論ありきの呪縛と、決定的な直接証拠の欠如の間で迷走。最終的に、Xや教団幹部4人は逮捕されるも、供述の変遷と矛盾を突かれ嫌疑不十分で不起訴となってしまった。

もうひとりの男「自称真犯人」

こうした状況のなかで、自分が真犯人だという男の捜査が続いていた。男は過去に警察官を殺害した経歴を持つ銃器のスペシャリストで、アメリカでコルト・パイソンを購入した記録も発見された。彼の供述は、犯人しか知り得ない詳細を含んではいたが、4発目の着弾地点や現場下見の状況に事実との矛盾があった。男は自らを「正義の士」と誇示したりしたが、特捜本部は彼を真犯人と断定できず、結局時効を迎えたのだった。

膨大な捜査資料、関係者の発言、「自称犯人」発言録

警察による捜査は空前の規模で展開されたが、実行犯だという自供者が二人も出てくるという奇妙な事実だけを残し、真実は永遠に闇へと葬られることになった。

著者は事件にかかわった警察関係者などへの取材を続け、二人の容疑者の供述調書や詳細な捜査報告書、二人目の男の奇妙な「叙事詩」など膨大な資料を精査し随時引用しつつ、謎におおわれたこの事件の実相に迫っている。

*本書は「FNNプライムオンライン」で2025年1月から7月まで連載された『【秘録】警察庁長官銃撃事件』を単行本に編集したものです。

(担当/藤田)

 

著者紹介

上法玄(じょうほう・はるか)
フジテレビ解説委員。ワシントン特派員、警視庁キャップ、社会部デスクを歴任。これまで警察庁、厚労省、宮内庁、防衛省など担当。20年にわたる警察取材を通じ多くの事件特番に携わる。プロデュースした『新証言×新事実 世田谷一家殺害事件「解決への鍵」』(2024年12月放送)が2025年Asian Academy Creative Awards最優秀賞受賞。

Amazon:秘録 警察庁長官銃撃事件:上法玄 著:本

楽天ブックス: なぜ建築家は無茶をするのか - 吉田 研介 - 9784794228369 : 本

日本には100年続く「奇跡の映画館」があった。まさにこれは昭和のシネマパラダイス!『百年映画館』藤井克郎 著

百年映画館

藤井克郎 著

かつて映画館は、街のあちこちで地域文化の鼓動を伝える心臓部でした。時は流れ、シネコンや配信が当たり前になった今も、日本各地にはひっそりと、けれども力強く息づく「百年映画館」が存在します。
著者の藤井克郎さんは、長年映画界を見つめてきたベテラン記者。「実は、創業100年を超える映画館が今も全国に残っているんです」……ご本人から聞いたときは、少々驚いてしまいました。戦争、そして新型コロナ禍。幾多の困難を乗り越え、令和の光を浴びるその姿は、まさに奇跡と呼ぶにふさわしいものです。
「堅苦しい論文ではなく、私的な旅の感想として綴りたい」
著者のそんな想いから始まった本書は、まるで一編のロードムービーを見ているかのよう。閉館の危機を何度も乗り越え、「ここだけは守りたい」と地域の人々がつないできたバトンの重みが、行間から伝わってきます。
映画館のみならず、旅先で出合う旨い酒やご当地料理、そして街と映画をこよなく愛する方たちのさまざまな個性も魅力的。著者の撮影による写真と、ヤマザキゴービンさんのあたたかなイラストが、古き良き「百年映画館」の姿を鮮やかに引き立てます。
読み進めるうちに、配信では決して出合えない「カタカタと音を立てて回る映画の魔法の魅力」に包み込まれ、不朽の名作『ニュー・シネマ・パラダイス』を思い出す方も多いかもしれません。
映画好き、昭和好き、そして旅好きな方に、ぜひお手に取っていただきたい一冊です。

(担当/五十嵐)

 

目次

第1章    時は春、いざいにしえのシネマの旅へ 
上田映劇 長野県上田市 
薄くなっていたピンクの壁 
帝国劇場からの書状 
小津安二郎、黒澤明もロケ地に 
各店秘伝の美味(おい)だれ焼き鳥 
映画館に登校する子どもたち 
日本中を旅する「映劇はんこ」 
柳並木の枝を切り落とした巨匠 
「現世利益」をお願いして 

高崎電気館 群馬県高崎市 
ソウルフィルムは「ここに泉あり」 
キャバレーも入居する箱に建て替え 
たっぷりおしゃべりも魅力の映画祭 
町の文化拠点「シネマテーク」の誕生 
カトリーヌ・ドヌーヴと握手 
歌舞伎町にも佐世保にもなり切る 
絶品「絶メシ」焼きまんじゅう 
日本三大名段の温泉街でもロケ数々 

高田世界館 新潟県上越市 
令和最初の日の夫婦旅行 
ひっそりとピンク映画を上映 
あの落語家が「残さなあきまへんで」 
大林宣彦の来館時に起きた奇跡 
日本スキー発祥の地が育む地酒 
入場料500円で世界を見学 
SNSでバズったカルト映画の雪像 
雪国のぬくもりにじむ「虹の彼方に」 

第2章 初夏、カタカタカタとフィルムは回る 
ロイヤル劇場 岐阜県岐阜市 
柳ヶ瀬は歌もシネマも昭和風 
夢に見たゴジラ対ガメラ 
終戦翌月にはバラック建てで興行 
映写技師の心配は雷の位置 
青雲館で映画を学んだ篠田正浩 
長良川の稚鮎を肴に濃姫を一杯 
新京極や千日前にも匹敵するにぎわい 
名古屋に息づく四十年映画館 

本宮映画劇場 福島県本宮市 
「ほんとの空」の下のピンクの映画館 
ローマの次はハワイへの旅? 
「警察日記」のロケにぎゅうぎゅう 
眼科がきっかけで45年ぶり活気 
「もぎりさん」との遭遇 
ぎしぎしざわざわカタカタカタ 
木戸銭を払うだけで異世界体験 
日の目を見た桃色秘宝フィルム 

第3章 猛暑の夏、真っ暗闇の涼やかな空間で
豊岡劇場 兵庫県豊岡市 
コウノトリならぬ不死鳥のごとく 
リム・カーワイがほれ込んだ欧風の景観 
恩返しではなく「恩送り」 
コロナ禍で直面した2度目の試練 
大好きなロビーに響くジャズの調べ 
顔が見える町の手伝いたくなる場所 
お風呂も食事もはしごの城崎温泉 
未来の子どもたちへ「ペイ・フォワード」 

大黒座 北海道浦河郡浦河町 
戦後初の三冠馬、シンザンとの対面 
ほぼ年中ストーブをたいている 
娘婿が営むバインミーのキッチンカー 
映画を見る人生の方が豊かです 
5年ぶり活動弁士がうなる阪東妻三郎 
道内のどこかで獲れたホタテの刺し身 
クラス全員で「セロ弾きのゴーシュ」鑑賞 
「石にかじり付いても守る」はない 

長野相生座・ロキシー 長野県長野市 
まずは一箸、何もつけずに食す 
善光寺門前の歓楽街、権堂のブランド力 
今も創建時のまま、明治の木造梁構造 
133年の歴史の一部分にいるだけ 
狭い路地の奥にたたずむ扇情の宿 
QRコード付きのチケットで入場 
話しかければ返してくれる心地よさ 
ご本尊と結縁しても「明かりはつけない」 

第4章 収穫の秋、映画をことほぐお祭りに
森文旭館 愛媛県喜多郡内子町 
天井からこぼれ落ちる一つ星 
木蠟で栄えた面影を残す町並み保存地区 
トタン板の修理で止まった雨漏り 
山あり川ありで空港からも近い 
映写機を切り替えるチェンジマークの緊張 
映画祭の開幕を告げる水戸黄門 
来館はかなわなかった高倉健からの手紙 
下駄履きで来ることができる気安さ 

萬代舘 岩手県二戸郡一戸町 
全車満席の新幹線に奥の手で乗り込む 
全面改修でも残ったテケツ跡 
ピンク映画の音声に小学生が聞き耳 
ギャラの出ない日本一の貧乏映画祭 
可動式座席を取っ払えば打ち上げの懇親会場に
サバ缶で出汁を取った「ひっつみ汁」 
5円玉2枚を「10円に両替してくれや」 
国鉄の機関区が去った後に残ったものは 

ここにも百年映画館が……

おわりに

映画タイトル索引 

 

著者紹介

藤井克郎(ふじい・かつろう)

1960(昭和35)年、福井県生まれ。東京外国語大学卒業後、フジ新聞社入社。夕刊フジ報道部、産経新聞社会部を経て、同文化部で映画を担当。2019(平成31)年に退職し、フリーランスの映画記者として「週刊朝日」「週刊新潮」「キネマ旬報」「東京新聞」「しんぶん赤旗」などに執筆。共著に「戦後史開封」(扶桑社)、「新ライバル物語」(柏書房)など。

Amazon:百年映画館:藤井克郎 著:本

楽天ブックス: 百年映画館 - 藤井 克郎 - 9784794228383 : 本

中国が台湾に固執しつづける理由とは?『【文庫】「中国」という捏造 歴史・民族・領土・領海はいかにして創り上げられたか』ビル・ヘイトン 著 小谷まさ代 訳

【文庫】「中国」という捏造

――歴史・民族・領土・領海はいかにして創り上げられたか

ビル・ヘイトン 著 小谷まさ代 訳

 

*第7章「『領土』の捏造」より要約

中国が台湾に固執しつづける理由とは?

「境界の外側」から「不可欠な領土」へ
 現代において中国(中華人民共和国および中華民国)が主張する「台湾は古来より中国の不可分な領土である」という言説は、歴史的事実などではなく、20世紀に構築されたナショナリズムの産物であるという側面が強かった。そのことが、当時の公文書や知識人の言説から浮かび上がってくる。

清朝時代の認識は「危険な辺境」と放棄
 清朝にとって台湾は、長らく「統治の及ばない外側」の土地だった。1684年に台湾を部分的に併合した(清朝は台湾・澎湖に「台湾府」を設立、福建省の管轄下に置く)。その後も、清朝はこの島を「好戦的な原住民と死の病が蔓延する危険な辺境地域」と見なしていた。清朝が台湾を正式に「省」と宣言したのは1885年のことであり、併合から実に200年後のことだった。
 しかし、そのわずか10年後の1895年、日清戦争に敗北した清朝は下関条約によって台湾を日本に割譲する。この際、清朝政府は日本との衝突を避けることを優先し、現地で「台湾民主国」を宣言して抵抗したかつての臣民に対し、いかなる支援も行わないよう厳命した。当時の一般国民にとっても、台湾の喪失は威信を傷つけるものではあっても、実生活に支障のない「一棟二軒住宅」の一方を失うような感覚であったという。

革命家と初期ナショナリストの無関心
 清朝を打倒した孫文ら革命派や、近代中国の知の巨人である梁啓超らも、当初は台湾の奪還にまったく関心を示していなかった。
 孫文にとって日本統治下の台湾は、将来の中華民国の一部にするよりも、清朝打倒のための武装蜂起の足場としての価値の方が高かった。孫文が台湾を中国へ返還するよう要求した事実は一度もなかった。
 1907年、梁啓超(清朝末期の啓蒙思想家)は台湾の民族運動家に対し、「我々は祖先を同じくするが、今は異なる国にいる」と語り、日本政府に抵抗して命を無駄にするなと助言している。
 さらに、1912年に成立した「中華民国臨時約法(暫定憲法)」では、中華民国の領土を「二十二の省」と明確に定めていた。当時、台湾は二十三番目の省であったため、この定義は台湾に対する領有権を公式に放棄していたことの明確な証拠と言える。

地理学教育による「領土意識」の捏造
 1920年代から30年代にかけて、国民党政府は国家防衛のために「地理学」を政治利用しはじめた 。中国近代地理学の父と呼ばれる竺可楨やその教え子である張其昀らは、教育を通じて国民に愛国心を植え付ける任務を担った。
 張其昀が作成し、中国全土の学校で使われた教科書『本国地理』の地図には、驚くべきことに台湾が描かれていなかった 。当時の知識人にとって、中華民国の「自然な形」とは清朝崩壊時の境界線(台湾を含まない)を指していたからだ。
 その一方で、かつて列強に奪われた土地を強調する「国恥地図」が普及し、国民に「国土喪失の恐怖」と「恥の意識」を植え付けた。日本に奪われたものとして台湾も含まれている。これにより、実在しない「最大限の中国」というイメージが国民の頭の中に作り上げられていった。

1942年、地政学的戦略による劇的な転換
 台湾に対する認識が劇的に変化したのは、第二次世界大戦中の1942年頃だった。日本敗戦の可能性が高まる中、蔣介石は地政学的な観点から台湾の重要性を再発見する。
 蔣介石は台湾を「外国の侵略に対する防波堤」および「国恥を雪(すす)ぐ証」と定義し、国土の支配を取り戻すという意味の「光復」という言葉を用いて主張を一変させた。
 1943年の蔣介石の著といわれる『中国之命運』において、蔣介石は台湾、澎湖諸島、チベット、モンゴルなどを「国家存続のための砦」と呼び、民族構成に関わらずこれらを維持しなければ国家の防衛障壁が失われると説いた。

最後の砦としての台湾
 1940年代後半、国共内戦で共産党に追い詰められた蔣介石に対し、地理学顧問の張其昀は「防御が容易で、インフラが整備され、共産党支持者が少ない台湾こそが最後の砦である」と進言した。蔣介石はこの助言に従い、1949年に台湾へ撤退した。
 このように、台湾は歴史的に「境界の外側」の存在であり、初期の中華民国や共産党(1941年頃までは独立を支持)にとっても自国領土とは見なされていなかった。しかし、20世紀のナショナリズム教育と、戦時下の生存戦略、そして冷戦構造における国民党の「砦」としての必要性によって、後天的に「中国の不可欠な領土」という定義が捏造され、定着していった。

「領土ノイローゼ」とも呼べる国民感情
 ではなぜ、国民党を追い出した中国共産党が台湾を「中国の一部」と主張するようになったのか。
 共産党政権において領土の完全性は「国家の復活(民族復興)」の絶対条件と見なされている。習近平政権下では、清朝末期以降の「国恥」を雪ぎ、失われた土地をすべて取り戻すことこそが、共産党による統治の正当性を証明するものとなっている。つまり台湾を「未回収の領土」として支配下に置くことは、彼らにとって歴史的使命そのものなのである。
 中国の近代教育において「国恥地図」などの地理教育により、たとえ歴史的に統治が及んでいなかった地域であっても、「本来は中国のものである」という強烈な領土意識が国民全体に浸透した。習近平政権はこの「領土ノイローゼ」とも呼べる国民感情を背景に、地図の表記一つにまで厳格な法的規制(測絵法など)を敷き、台湾を「神聖不可分の領土」として固定化することで、ナショナリズムを統治の動力源にしている。

習近平が台湾に固執する理由とは
 前述のように、1940年代に張其昀らが台湾を「外国の侵略に対する防波堤」や「中国の国防に不可欠な砦」と定義し直しているが、この地政学的な認識が現在の中国共産党にも引き継がれている。太平洋への出口を確保し、アメリカなどの外部勢力を牽制するうえで、台湾は「最後の砦」であり、ここを掌握しない限り、中国の安全保障上の完成はあり得ないという執着に繋がっている。
 習近平が台湾に固執するのは、それが単なる土地の所有権の問題ではなく、「屈辱の歴史を終わらせるという政治的象徴」、「国民の愛国心を繋ぎ止めるための装置」、そして「国家安全保障上の死活的な戦略拠点」という三つの側面を併せ持っているからだと言えよう。
(了)

(担当/藤田)

 

著者紹介

ビル・ヘイトン(Bill Hayton)

英国のシンクタンク王立国際問題研究所(チャタム・ハウス)のアジア太平洋プログラム研究員、BBCワールドニュースのジャーナリスト。著書に『南シナ海』(河出書房新社刊)など。

訳者紹介

小谷まさ代(こたに・まさよ)

翻訳家。富山県生まれ。富山大学文理学部卒業。主な訳書に、『中国共産党』(リチャード・マグレガー著、第23回アジア太平洋賞大賞)『中国「絶望」家族』『日本帝国の申し子』(以上、草思社)、『成功にはわけがある』(講談社)、『I LOVE YOU, MOM』(ぶんか社)、『心ひとつで人生は変えられる』『完全なる治癒』(以上、徳間書店)などがある。

Amazon:文庫「中国」という捏造 歴史・民族・領土・領海はいかにして創り上げられたか:ビル・ヘイトン 著 小谷まさ代 訳:本

楽天ブックス: 文庫 「中国」という捏造 - 歴史・民族・領土・領海はいかにして創り上げられたか - ビル・ヘイトン - 9784794227935 : 本

二千年を超えて、いま読むべき『荘子』 『真説 荘子 古代中国の賢者が説いた絶対的幸福論』高橋健太郎 著

真説 荘子

――古代中国の賢者が説いた絶対的幸福論

高橋健太郎 著

『荘子』が説く、不幸が存在しない「幸福の世界」

「どうすれば幸せになれるのか」
この問いは、時代や国を問わず、人間が繰り返し向き合ってきたテーマです。成功すれば幸せになれるのか。努力すれば報われるのか。現代では、その答えがSNSや自己啓発書、ビジネス書として無数に提示されています。
しかし、二千年以上前の中国に生きた思想家・荘子は、そうした問いにまったく異なる角度から向き合っていました。
哲学書『荘子』は、しばしば難解で、現実離れした思想書だと思われがちです。しかし本来の荘子は、「現実をどう生きるか」という、きわめて切実で実践的な問題を扱った書物でした。本書が読み解くのは、荘子が説いた〈絶対的な幸福論〉です。

現代人が陥る「不幸の罠」の正体

荘子が問題にしたのは、「幸福」と「不幸」を対立させて考える私たちの思考そのものです。幸福を求めれば求めるほど、かえって不幸への不安が生まれ、他者との比較や競争に巻き込まれていきます。その構造自体が、人を苦しめているのではないか——荘子はそう見抜いていました。
本書では、寓話や対話に満ちた一見抽象的な『荘子』の言葉を、現代の感覚に照らして、細かく読み解きながら、「不幸を前提としない幸福」とは何かを明らかにしていきます。努力や成功を否定するのではなく、それらに縛られずに生きるための視点が、見つかるはずです。
現実というものは、基本的には思い通りにならないものです。しかし、だからこそ、どう生きるかが問われます。
『荘子』は、二千年を経た今もなお、その問いに確かに答え続けているのです。 ぜひ多くの方に手に取っていただければ幸いです。

(担当/吉田)

 

目次

1章 『荘子』という古典  
1-1 荘子とは誰か? 
荘周の生涯/戦国時代の庶民/権力者の悲惨な最期/誰もが翻弄されるこの世界で  

1-2 言葉にできないものを言葉にした「まともでない」書物  
『荘子』のプロフィール/「寓言」とは何か?/「まともでない世界」の思想/人の「いいね」が自分の幸福なのか?/自分自身の「いいね」を手にするために  

1-3 『荘子』の絶対的幸福論 ――「一」に従って生きる
道家思想とは何か?/諸子百家について/「二」に分かれた世界で/『荘子』の方法論  

2章 「風」の音を聞け ――『荘子』の説く理想の生き方  
2-1 幸福とは何か?  
「不幸」の元凶/『荘子』の語る幸福/「天」は目の前にある/天地を以て春秋と為す  

2-2 「風」の音を聞け  
「天」と「人」/「人籟」を聞く境地とは何か?/「地籟」を聞く境地とは何か?/「天籟」を聞く境地とは何か?/「地籟」は「二」の世界で鳴っている/『荘子』の矛盾

2-3 「思い通りにならない世界」について ――「命」とは何か?
風は物事の連続として吹く/「命」は分からない/現実は不確実/人の行いに意味はないのか?
補説 イーロン・マスクを例に 

3章 世界の真相 ――「言葉」という元凶  
3-1 世界は言葉でとらえられない
感情はどこから来るか?/「胡蝶の夢」/「物化」という錯覚/「大覚」とは何か?

3-2 言葉という元凶  
言葉の性質① ――「言葉は正しく世界を言い表さない」/言葉の性質② ――言葉は増殖する/「無」から「有」への言葉の増殖/「有」から「有」への言葉の増殖

3-3 議論が人間を不幸にする  
議論では「正しさ」に近づけない/議論の勝敗は判断できない/「二」はお互いの言葉を台無しにする

3-4 人は誰も「議論」を理解していない  
「議論をすれば正しさに近づく」という信仰/議論の積み重ねが言葉の意味を見失わせる/人は結論を信じているだけ/「道」が隠れ、「議論」が生まれた  

3-5 世界を「両行」で見よ  
朝三暮四/意味の相対的な決定/「道枢」をとらえる/「両行」は言語化された聖人の心  /「両行」では身動きが取れない?

4章 「内なる何か」を目覚めさせる  
4-1 庖丁、牛を割く  
「命」の二重構/庖丁の説く生き方の極意/「命」に相対する/上達とは対象が意識から消えていく過程/「遊」とは何か?/刀は人間 

4-2 「内なる何か」を目覚めさせよ  
無我夢中の境地/わざとの意識が「内なる何か」を妨げる

4-3 知恵とモチベーションが台無しにする  
極限の課題設定/知恵と名誉欲/「二」の意識が現実との摩擦を生む 

4-4 「虚」になるために ――顔回の答え  
顔回の暴君攻略法① ――「端にして虚、勉めて一」/顔回の暴君攻略法② ――「内直、外曲、上比」/「心斎」とは何か?/『荘子』の説く「空虚」の境地  

4-5 「忘」とは何か?  
「坐忘」へのステップ/「忘」とは何か?/「内なる何か」は「その先にあるもの」への意識を開く/「坐忘」への三段階とは何か?  

4-6 「内なる何か」を目覚めさせる方法  
南伯子葵と女偊の問答/「内なる何か」を目覚めさせるために/『荘子』の理想の生き方  
付録 孔子・顔回「心斎」問答全文  

5章 「一」と「二」を往復する  
5-1 「二」の世界は「一」の世界である  
「一」はどこにあるのか?/「一」に対して違った表現があるということ/「二」の世界とは「一」の世界である/「道」は「一」と「二」を往復する/ではどう生きるか?  

5-2 「一」と「二」を往復して生きる  
庖丁もまた「二」の意識を使っている/「機械」と「機心」/「機械」もまたよし/「一」と「二」の間を往復する
5-3 「遊」について
「遊」の真の意味/「天の筋道」を「遊」ぶ/最後に残った二つの疑問/「絶対的な幸福」で感じる幸福感とは?/すでに変わった「二」の世界

 

著者紹介

高橋健太郎(たかはし・けんたろう)

作家。横浜市生まれ。上智大学大学院文学研究科博士前期課程修了。国文学専攻。専門は漢文学。古典や名著を題材にとり、独自の視点で研究・執筆活動を続ける。近年の関心は、幸福論、謀略術、弁論術や古典に含まれる自己啓発性について。著書に『真説 老子』『鬼谷子』『鬼谷子 全訳注』(いずれも草思社)、『どんな人も思い通りに動かせるアリストテレス 無敵の「弁論術」』(朝日新聞出版)、『言葉を「武器」にする技術――ローマの賢者キケローが教える説得術』(文響社)、『哲学ch』(柏書房)など多数。

Amazon:真説 荘子 古代中国の賢者が説いた絶対的幸福論:高橋健太郎 著:本

楽天ブックス: 真説 荘子 - 古代中国の賢者が説いた絶対的幸福論 - 高橋 健太郎 - 9784794228321 : 本