草思社のblog

ノンフィクション書籍を中心とする出版社・草思社のブログ。

自然科学

感染症でもっとも恐ろしいのは、 それによって引き起こされる社会的パニックである!『感染症の虚像と実像』ディディエ・ラウト著 鳥取絹子訳

感染症の虚像と実像 ーーコロナの時代を生きるための基礎知識 ディディエ・ラウト 著 鳥取絹子 訳 本書は感染症の分野で世界的に著名なフランス人医師で、現在マルセイユ大学病院研究所の所長をつとめているディディエ・ラウト教授が、今回のコロナ禍に際し…

蝶は視覚動物なので、あんなに奇麗なのだ。『増補新版 世界で最も美しい蝶は何か』海野和男 写真・文

増補新版 世界で最も美しい蝶は何か 海野和男 写真・文 人間が歴史的に惹きつけられた自然にある美しいものには、宝石の結晶や夜空の星や植物の花などともに、空に舞う蝶がある。とくに熱帯の大型の蝶には18、19世紀の欧米の博物学者や収集家が夢中になった…

リニア中央新幹線に「ちゃぶ台返し」はありうるか? 『超電導リニアの不都合な真実』川辺謙一著

超電導リニアの不都合な真実 川辺謙一 著 ◆JR東海は、もうリニアを諦めている? 2027年に品川-名古屋間の開業を目指して建設が進められている「リニア中央新幹線」は、超電導リニア方式の車両が走ることが前提となっています。しかし、その超電導リニアモ…

生殺与奪の権は、数学が握る『生と死を分ける数学』キット・イェーツ 著 冨永星 訳

生と死を分ける数学 人生の(ほぼ)すべてに数学が関係するわけ キット・イェーツ 著 冨永星 訳 ◆重大事のウラに必ず数学あり。新型コロナにも、BLM運動にも! 数学を知らなかったり、誤用したりしたために、命を落とし、財産を失い、無実の罪を着せられ…

なぜミツバチは、あらゆる文化に「住み着く」のか?『ミツバチと文明』クレア・プレストン著 倉橋俊介 訳

ミツバチと文明 宗教、芸術から科学、政治まで 文化を形づくった偉大な昆虫の物語 クレア・プレストン著 倉橋俊介 訳 ◆キリスト教もガウディもミツバチの影響を受けている 近年、日本でも都心で養蜂が行われるなど、注目が増しているミツバチですが、人類と…

いま、都市こそが生物進化のフロンティアだった!『都市で進化する生物たち』メノ・スヒルトハウゼン 著 岸由二 訳 小宮繁 訳

都市で進化する生物たち ―― “ダーウィン”が街にやってくる メノ・スヒルトハウゼン 著 岸由二 訳 小宮繁 訳 進化といえば、「手つかずの自然で、何千年もかけて起こるもの」。こう考えている人が多いのではないでしょうか。実はそうではありません。人間が、…

文明発展の基礎たる「砂」は、いま密かに姿を消し始めている 『砂と人類 いかにして砂が文明を変容させたか』ヴィンス・バイザー 著 藤崎百合 訳

砂と人類 ーーいかにして砂が文明を変容させたか ヴィンス・バイザー 著 藤崎百合 訳 今年のオリンピックのメイン会場として注目される新国立競技場は、木をふんだんに利用したように見える外観が話題だが、その化粧の下にある実態は鉄と大量のコンクリート…

大いなる謎への驚きと、人間の生き方への示唆 『世界でいちばん変な虫 珍虫奇虫図鑑』海野和男 写真と文

世界でいちばん変な虫 珍虫奇虫図鑑 海野和男 写真と文 昆虫は名前をつけられたものだけでも120万種ぐらいいて(一説には100万種ともいう)、毎年、新種が発見され続けており、地球上でもっとも繁栄した生物といわれている。多種多様で無限に近い変容、変種…

鉱物書の金字塔が、より鮮明に、より美しくなって登場 『愛蔵版 楽しい鉱物図鑑』堀秀道 著 門馬綱一 監修

愛蔵版 楽しい鉱物図鑑 堀秀道 著 門馬綱一 監修 鉱物書の金字塔にして、堀秀道氏の代表作である『楽しい鉱物図鑑』①②巻。本書は、これを1冊に合本、大判化し愛蔵版にしたものです。原書に使用したフィルムを高解像度スキャンし、判型を120%以上拡大した写…

現在の文明はどのような形で崩壊するのか? フランスでベストセラーとなった警世の書! 『崩壊学 人類が直面している脅威の実態』パブロ・セルヴィーニュ/ラファエル・スティーヴンス著

崩壊学ーー人類が直面している脅威の実態 パブロ・セルヴィーニュ著 ラファエル・スティーヴンス著 鳥取絹子訳 異常気象を伝えるニュースで「数十年に一度の」というフレーズが頻繁に使われ始めたのはいつごろからでしょうか。いまや異常が「通常」となった…

かつては動物より植物の方が、移動が得意だった?『脚・ひれ・翼はなぜ進化したのか 生き物の「動き」と「形」の40億年』マット・ウィルキンソン著 神奈川夏子 訳

脚・ひれ・翼はなぜ進化したのか 生き物の「動き」と「形」の40億年 マット・ウィルキンソン 著 神奈川夏子 訳 ◆人間の直立歩行の起源を探るヒントが、カンガルーにあった!? 人間の直立二足歩行はどのように始まったのか? ひれはいかにして肢(あし)になっ…

遺伝子操作で賢いサルは作れる?――たぶん「イエス」 『すごく科学的:SF映画で最新科学がわかる本』リック・エドワーズ/マイケル・ブルックス 著

すごく科学的ーーSF映画で最新科学がわかる本リック・エドワーズ/マイケル・ブルックス 著 藤崎百合 訳 ◆絶滅種再生や人工知能、ブラックホールにゾンビまで、映画から科学の最先端が見える! 映画「猿の惑星」のように、賢いサルを遺伝子操作などの手法…

「データの力」が選挙を左右する――どころではなかった! 『操られる民主主義――デジタル・テクノロジーはいかにして社会を破壊するか』ジェイミー・バートレット著 秋山勝訳

操られる民主主義――デジタル・テクノロジーはいかにして社会を破壊するかジェイミー・バートレット著 秋山勝訳 「トランプ大統領」を誕生させたケンブリッジ・アナリティカとは? 今年(2018年)5月、イギリスのデータ分析会社「ケンブリッジ・アナリティカ…

自然保護の世界にもあった「昔はよかった論」 『「自然」という幻想 多自然ガーデニングによる新しい自然保護』エマ・マリス 著岸由二+小宮繁 訳

「自然」という幻想――多自然ガーデニングによる新しい自然保護エマ・マリス 著 岸由二・小宮繁 訳 ◆人気TV番組に見る外来種駆除の困難さ。駆除の労力は別のことに使った方が… ため池の水を抜き、外来種を駆除するというテレビ番組が人気になっています。あの…

「生産性を上げるには、従業員を幸せにすればいい」という話 『文庫 データの見えざる手 ウエアラブルセンサが明かす人間・組織・社会の法則』矢野和男著

文庫 データの見えざる手 ――ウエアラブルセンサが明かす人間・組織・社会の法則 矢野和男 著 ◆コストゼロで生産性が13%も向上できた! ビッグデータとAIを駆使した、新時代の生産性研究の名著『データの見えざる手』が文庫化されました。本書の単行本版は…

スマートフォンで蝶をうまく撮るには? 『海野和男の蝶撮影テクニック』海野和男著

海野和男の蝶撮影テクニック 海野和男著 本書の最終頁(124~125ぺージ)にスマートフォン(iPhone)で撮った蝶の写真が載っている。兵庫県で撮ったアサギマダラと都内自宅近くで撮ったアオスジアゲハだ。iPhoneでもこんなにきれいな蝶の写真を撮れるのだと…

ギャンブルで儲け続ける科学者が、存在する!  完全無欠の賭け――科学がギャンブルを征服する アダム・クチャルスキー 著/柴田裕之 訳

完全無欠の賭け ――科学がギャンブルを征服する アダム・クチャルスキー 著 柴田裕之 訳 ◆ギャンブルで儲け続ける科学者が、存在する! 宝くじ、ルーレット、競馬からポーカー、果てはサッカー、バスケットボールなどを対象とした「スポーツベッティング」ま…

風で旅する、動物にくっつく、数千年も発芽の時を待つ……子孫繁栄を願い、タネたちはがんばっている! 『スイカのタネはなぜ散らばっているのか』稲垣栄洋 著 西本眞理子 絵

スイカのタネはなぜ散らばっているのか――タネたちのすごい戦略稲垣栄洋 著 西本眞理子 絵 著者の稲垣氏は、過去に草思社で「身近な雑草のゆかいな生き方」(2003)、「身近な野菜のなるほど観察記」(2005)、「蝶々はなぜ菜の葉にとまるのか」(2006)を刊…

なぜ「情報隠蔽」は悪いことなのか? 『大惨事と情報隠蔽』ドミトリ・チェルノフ+ディディエ・ソネット著/橘明美+坂田雪子訳

大惨事と情報隠蔽――原発事故、大規模リコールから金融崩壊まで ドミトリ・チェルノフ+ディディエ・ソネット 著 橘明美+坂田雪子 訳 ◆人はなぜ情報を隠したがり、それはなぜ大惨事を引き起こすか。徹底検証し対策を示す 「こんなこと上司に報告すると、また…

地球が平らなら夕焼け雲はできないって、知ってた? 『地球は本当に丸いのか?―身近に見つかる9つの証拠』武田康男著

地球は本当に丸いのか?―身近に見つかる9つの証拠 武田康男著 ◆「えっ! これも地球が丸いせいだったの?」と驚く事実の数々 高層マンション最上階付近に相当する100mの高さに登ると、海抜0m近くに比べて日の出は2分も早くなります。このように、高いところ…

『ライト兄弟』「訳者あとがき」より――秋山勝  『ライト兄弟』デヴィッド・マカルー著 秋山勝訳

『ライト兄弟』「訳者あとがき」より――秋山勝 本書はデヴィッド・マカルーのThe Wright Brothersを全訳したものである。原書は2015年5月に刊行、発売されるや大反響を呼び、5月27日から7月5日の7週間、ニューヨークタイムズのベストセラーリスト(ノンフィク…

人工知能による脅威は、あまりに過大評価されている。 『シンギュラリティは怖くない―ちょっと落ちついて人工知能について考えよう』 中西崇文著

シンギュラリティは怖くない ――ちょっと落ち着いて人工知能について考えよう 中西崇文 著 ◆この上なく腑に落ちる、人工知能論 昨今、人工知能に注目が集まり、数々の「人工知能本」が出版されています。しかし、そのほとんどが「人類滅亡の脅威となるか」「…

東京が面白い理由は、道路にある?―『東京道路奇景』

東京道路奇景川辺謙一 著 ◆東京にはなぜアクロバティックな道路が多いのか? 「東京道路奇景」とは東京の道路が織りなす奇妙な風景のこと。この東京道路奇景は枚挙にいとまがありません。道路の上にも下にも道路があり、さらにその下の鉄道まで合わせると8層…

冬景色の中へ、探しに行きたくなる不思議な現象の数々。 『雪と氷の図鑑』

雪と氷の図鑑 武田康男 著 ◆雪と氷の不思議とその科学を170点あまりの写真で紹介・解説する初めての図鑑 「霜柱」と「霜」はどう違うのか? 池の水はどこから凍りはじめるのか? 美しい雪結晶ができる温度は? 本書はこのような雪と氷の不思議を美しい写真で…

嫌われ者のイメージは、こうして作られた?! ――外来種は本当に悪者か?

外来種は本当に悪者か? ―― 新しい野生 THE NEW WILD フレッド・ピアス 著 藤井留美 訳 ◆よそ者の生物たちがもたらす数々の効用 外来種と聞くと、「周囲の生物を食べつくす危険な存在」というイメージが浮かぶことでしょう。しかし、著名な科学ジャーナリス…

「石油」争奪の時代から「水」争奪の時代へ!?  地球規模の難題を克服する道を示す一冊。 『水危機を乗り越える!』

水危機を乗り越える! ――砂漠の国イスラエルの驚異のソリューション セス・М・シーゲル 著 秋山勝 訳 ◆日本は「水」の輸入大国だった! 「水ストレス」という言葉があります。人びとが利用できる水の量が減り、日常生活に不便を感じる状態を表す言葉。世界的…

妖気を吐いて楼台の幻を生む謎の生物とは?――『蜃気楼のすべて!』

蜃気楼のすべて! 日本蜃気楼協議会 著 ◆「なぜ見えるのか」から、その歴史や美術まで。あらゆる側面を網羅! 「蜃気楼(しんきろう)」という言葉の語源をご存じでしょうか。この言葉は、最初に司馬遷の『史記』に登場する古い歴史を持った言葉です。 蜃気…

文系不要論は的外れ。文系こそが大フロンティアだ! 『カルチャロミクス―文化をビッグデータで計測する』

カルチャロミクス―― 文化をビッグデータで計測する エレツ・エイデン ジャン=バティースト・ミシェル 阪本芳久 訳 ◆本をビッグデータとして扱い、研究に使う、新しい学問の登場 グーグル・Nグラム・ビューワーをご存じでしょうか。これはグーグル社がスキャ…

【近刊予告】『ビッグデータで文化を計測する―デジタル人文科学の誕生』(仮)

エレツ・アイデン&ジャン-バティスト・ミシェル著 阪本芳久訳 2016年2月発売予定/価格未定 原題:Uncharted: Big Data as a Lens on Human Culture 歴史学や語学、文学などの人文科学の研究にも、ビッグデータの波が襲いかかろうとしている! Googleがスキ…

「わたしとはわたしのコネクトームである」と脳科学は言う

コネクトーム 脳の配線はどのように「わたし」をつくり出すのかセバスチャン・スン 著 青木薫 訳 ◆脳の全神経細胞のネットワーク地図=コネクトームの取得という壮大な計画 わたしの心はなぜ他人と違うのか。記憶はどう蓄えられるか。心の病はなぜ起こるか――…