草思社のblog

ノンフィクション書籍を中心とする出版社・草思社のブログ。

幸福を求めるほど不安になるのは、なぜ?

ネガティブな感情が成功を呼ぶ

トッド・カシュダン/ロバート・ビスワス・ディーナー 著 高橋由紀子 訳

◆心のダークサイドには、よいところがある

 気持ちが前向きでポジティブであることは、心身の健康や人間の幸福感(ハピネス)に一定の相関を持つことがポジティブ心理学などの研究で検証されています。ところが、幸福であることを深く追求する人や企業ほど、不平や不満などのネガティブな感情を取り除けないという問題に直面して悩んでしまうという皮肉も生じています。

 当たりまえのことですが、人間は100%ポジティブな感情だけで生きているわけではなく、怒りや嫌悪、後悔、恐怖、不安、悲しみといったネガティブな感情はつねに私たちの心のダークサイドで渦巻いています。幸福学研究の精鋭らが書き下ろした本書は、極端なポジティブ追求の弊害を取り除き、ネガティブな感情を解放する方が豊かな日常生活を送れるようになることをさまざまなデータや事例から明らかにしていきます。

◆どんな感情にも意味がある

 各章ごとに、「『自分は幸福だ』と考えている人ほど、よい気分を維持しようとして、嘘を見破る能力が阻害され、判断ミスを起こしやすい」「幸せな気分になろうとして、映画を観たり、音楽を聴くとかえって内容を楽しめず、幸福感が下がる」といった「幸福」のもたらす反作用や、「欧米人に比べて、アジア人はネガティブな感情に耐性があり、やみくもに幸福追求しない傾向にある」といった興味深い調査結果や事例が紹介されています。

 幸福や成功だけを追求することは、むしろ人を弱くし、不幸にしかねない。自分の心の中に湧き上がるすべての感情には意味がある。目先のことや他者との比較に心をすり減らしていると忘れてしまいがちな部分に気づかせてくれる得がたい一冊です。

(担当/三田)

著者略歴

トッド・カシュダン(Todd B. Kashdan)

ジョージ・メイソン大学教授、同校ウェルビーイング促進センター上級研究員、オーストラリア・カソリック大学ポジティブ心理学・教育研究所上級研究員。パーソナリティ、ウェルビーイング、人間関係などの分野を専門とし、その研究は高く評価されている。

ロバート・ビスワス=ディーナー(Robert Biswas-Diener)

40点以上の学術論文を発表し、六大陸において何千人もの知的職業人たちに心理学の研修を行っている。アーミッシュの農夫、コルカタの売春婦、マサイ族、グリーンランド辺境のアザラシ漁師など、普通の心理学者が研究対象にしないような人たちを対象に研究を続けてきており「心理学界のインディ・ジョーンズ」という異名を持つ。『ジャーナル・オブ・ポジティブ・サイコロジー』誌編集委員。著書に『「勇気」の科学 一歩踏み出すための集中講義』(大和書房)。

 訳者略歴

高橋由紀子(たかはし・ゆきこ)

翻訳家。慶應義塾大学文学部卒業。訳書に『幸福優位7つの法則』(徳間書店)『成功が約束される選択の法則』(同)『ポジティブな人だけがうまくいく3:1の法則』(日本実業出版社)ほか多数。

 

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