草思社のblog

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「孫子の兵法」をしのぐ最強古典「鬼谷子(きこくし)」! 「はじめに」を公開。 『鬼谷子―100%安全圏から、自分より強い者を言葉で動かす技術』

鬼谷子―100%安全圏から、自分より強い者を言葉で動かす技術

高橋健太郎 著 

 孫子に兵法を授けたとされる伝説の賢人・鬼谷子による最強古典を、現代にも役立つ「言葉の技術」として実戦的に読み説いた初の解説書『鬼谷子――100%安全圏から、自分より強い者を言葉で動かす技術』。「鬼谷子」の魅力や特徴を、古典初心者にもわかりやすくまとめた「はじめに」を公開します。

はじめに─『鬼谷子(きこくし)』、ここに解禁
 本書では、『鬼谷子』という二千数百年前に書かれた中国の古典を扱っています。
『鬼谷子』は、中国戦国時代に各国の王を弁舌で動かしてきた「縦横家(しょうおうか)」と言われる遊説家たちの、命がけの言葉の技術と理論が書かれた唯一の古典です。

なぜ『鬼谷子』は知られてこなかったか?
 とは言っても、この本を手にとってくださった皆さんのほとんどは、『鬼谷子』などという本は、見たことも聞いたこともないでしょう。
 日本では、今でも様々な中国古典が愛読されています。
儒教の開祖・孔子の言行録である『論語』、今でも人気の兵法書『孫子』、「無為自然」の教えを説いたタオイズムのバイブル『老子』、英雄たちの活躍を描いた歴史書である『史記』や『三国志』などなど。
 しかし、それに比べ、この『鬼谷子』は圧倒的に無名です。それもそのはず。日本で
は、研究論文を別にすれば、その内容を紹介した書籍が数冊あるだけで、戦後、翻訳自
体、単行本として出版されたことがないのです。
 それには、様々な理由があるでしょうが、主には、次の二つが挙げられます。
 一つは、一般に好まれる中国思想のイメージから言えば、「異端的」な書であること。
 そして、二つ目として、内容が抽象的かつ難解で、一般向きではないと誤解されてきたこと。

絶対安全圏から自分より強い人間を動かす技術
 まず、一つ目の理由ですが、たしかに『鬼谷子』は、ある面から見れば「異端的」な書かもしれません。
 この本の歴史的な出自に関しては本論冒頭で扱いますが、著者とされる鬼谷子は、本名を王詡(おうく)と言い、今の河南省にある雲夢山(うんぼうさん)に住んでいた古の賢人です。中国では、始皇帝に不老不死の霊薬を教え、「孫子」こと孫臏(そんぴん)に兵法を授けた人物としても知られています。しかし、これらの経歴は、本名を含め、すべて言い伝えや伝説の類の話。本当かどうかは分かりません。
 つまり、『鬼谷子』という書は、著者からして、神秘のベールの向こうにあるのです。
 そして、そこで書かれているテーマは、言葉を駆使し、他人を動かす技術。もっと言えば、王という自分より強い立場の人間を、自らの身を守りつつ言葉で動かす「策謀」の技術です。
 これから本書を読み進めていただければ分かりますが、その内容は恐ろしく実戦的。それだけに、中国古典と言えば、円満な道徳や穏当な人生訓をイメージしがちな日本人には、今まで注目されなかったのかもしれません。ここで展開されているのは、道徳すら武器として利用する善悪や美醜を超越した教えだからです。
 しかし、本来であれば、だからこそ現実に立ち向かう武器として、この「異端的」古典に触れておくことも必要だったのではないでしょうか?

『鬼谷子』は難しくない
 次に、『鬼谷子』が注目されてこなかった二つ目の理由ですが、たしかに『鬼谷子』の文章はそれ単体で読んだときに、難解に見えます。
「捭闔(はいこう)」「内揵(ないけん)」「飛箝(ひかん)」「抵巇(しぎ)」といった章の名前だけでも、『鬼谷子』を読まなければ、一生お目にかからないような漢語ですし、文章自体も素朴で意味をくみ取りにくいところが多いのも事実。
 そのせいか、一部で「言葉の技術について書かれている」とは知られていても、じゃあ実際にどんな弁論術、言葉の技術が書かれているか、という段になるとあやふやになってきたのです。
 しかし、今ではこうした古典についての研究も進んでいますし、それを踏まえ、また
「言葉の技術について書かれている」という当たり前の意識を中心にすえて読んでいけば、意外なほどすっきりと明快に内容が浮かび上がってきます。
 そして、そうした内容を紹介することこそ、本書の意図なのです。

『鬼谷子』の技術、本邦初公開
 本書は、『鬼谷子』を純粋に「言葉の技術書」として実戦的に読み説き紹介する、おそらく本邦初の本です。したがって、ここに書かれた技術もまた、本邦初公開のメソッドであると言って差し支えないでしょう。
 現在では、コミュニケーションに関する本、弁論術に関する本は多数出ています。
 しかし、これから本書で見ていく、陰陽の原理に従い、身を守り、強者を動かす『鬼谷子』の策謀の技術は、おそらく今までにないもの。大いに刺激的だと思います。
 では、前置きはこれくらいにして、そろそろ本論に入ることとしましょう。まずは、『鬼谷子』とはどういう本なのか、からです。

※本書「はじめに」より抜粋

 二千数百年前の書とは思えない、人間心理を鋭くとらえた「鬼谷子」は、今読んでもまったく古びることがないどころか、日常に役立つリアルな技術に驚かれることでしょう。この続きはぜひ本書を手に取ってご覧ください。

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