草思社のblog

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江戸時代に累計100人もの男たちが漂着した驚異の島、鳥島(とりしま)の物語 ――漂流の島

漂流の島 ――江戸時代の鳥島漂流民たちを追う

高橋大輔 著  

◆水さえない絶海の孤島で十数年も生きた日本人たち

 『ロビンソン漂流記』の主人公・ロビンソンの実在のモデルの住居跡を2005年に発見し世界的に注目を集めた探検家・高橋大輔さんが、今度は、江戸時代の日本人漂流民の壮絶な生をテーマに選びました。
 その舞台、鳥島は東京から南に600キロに位置する直径2.7キロほどの無人島で、アホウドリの生息地として知られていますが、ここは17世紀末から幕末にかけての百数十年の間に、記録に残るだけでも15回ほど、累計約100人もの男たちが漂着した「漂流の島」でもあります。鳥島は火山島で、湧き水さえなく、食料は貝、魚、アホウドリの肉程度。この極限状況の中で、遠州の甚八は19年3ヵ月、土佐の長平は12年4ヵ月など、途方もない超長期生存を果たし、奇跡の生還を遂げています。『ロビンソン漂流記』の実在のモデルの漂流期間が4年4ヵ月ですから、鳥島漂流民たちのサバイバルがいかに驚異的なものだったかがわかります。

◆著者、ついに鳥島に上陸、そして漂流民たちの洞窟を発見! 

 鳥島漂流民については、昭和期に、井伏鱒二『ジョン万次郎漂流記』、織田作之助『漂流』、吉村昭『漂流』(いずれも小説)が書かれ、研究書もわずかに存在しますが、現地鳥島に行って、漂流民たちの足跡をたどった人は過去に一人もいません。鳥島はアホウドリの保護区で、かつ火山活動度が極めて高いため、一部の関係者以外、上陸を禁止されているからです。著者の高橋さんは鳥島関係者とコンタクトをとり、千載一遇の機会を得て鳥島に渡り、漂流民たちの住居跡である洞窟を発見します。史料によると、代々の漂流民たちは同じ洞窟に住み、島を脱出する際には、のちの漂流民を想って鍋釜などの生活具やメッセージを洞窟に残していったといいます。代々の漂流者が同じ洞窟に身を寄せた例は世界でも見当たらず、洞窟の発見は、『ロビンソン漂流記』の実在のモデルの住居跡発見に匹敵するニュースといえます。
 本書では、漂流民たちの生涯のほか、明治の鳥島開拓民たちのアホウドリ乱獲や、現代の鳥類学者・火山学者たちの奮闘など、鳥島で連綿と続く人間ドラマも描かれています。知られざる日本、知られざる日本人を描いた渾身の一冊を、一人でも多くの方にお読みいただければと願ってやみません。

(担当/貞島)

著者紹介

高橋大輔(たかはし・だいすけ)
一九六六年、秋田市生まれ。探検家、作家。「物語を旅する」をテーマに、世界各地に伝わる神話や伝説の背景を探るべく、旅を重ねている。二〇〇五年、米国のナショナル ジオグラフィック協会から支援を受け、実在したロビンソン・クルーソーの住居跡を発見。探検家クラブ(ニューヨーク)、王立地理学協会(ロンドン)のフェロー会員。著書に『12月25日の怪物』(草思社)、『ロビンソン・クルーソーを探して』(新潮文庫)、『浦島太郎はどこへ行ったのか』(新潮社)、『間宮林蔵・探検家一代』(中公新書ラクレ)、『命を救った道具たち』(アスペクト)などがある。
探検家高橋大輔公式Facebookページ https://www.facebook.com/tankenka

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