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北海道新幹線(東京─新函館北斗間)は「3時間30分台」を目指せ!――『全国鉄道事情大研究 青函篇』

全国鉄道事情大研究 青函篇

川島令三著   

◆北海道新幹線の所要時間「4時間2分」は大幅に短縮できる

 「全国鉄道事情大研究」シリーズでこれまで関東、東海、関西、北陸、中国、四国、九州と、各地の鉄道事情を解説してきた著者の7年ぶりの続編、『青函篇』が誕生しました。

 本書『青函篇』では北海道長万部以南、青森、岩手、秋田の計15路線を解説していますが、その中の最重要路線が、この春に開業した新青森─新函館北斗間の北海道新幹線です。旭川までの全線のうち3分の1程度ですが、東北新幹線から直通しており、青函エリアに住む人々にとっては福音といえます。
 しかし問題もあります。ひとつは所要時間です。
 東京─新函館北斗間での最速列車の所要時間は4時間2分。余裕時間の切り詰めなどによって、スーパーの値付けのように3時間58分とすることは可能でした。なのに、4時間の壁を突破することは無理だといわんばかりの4時間2分です。
 北海道新幹線は途中に新中小国信号場─木古内間が貨物列車との共用区間となっており、この区間での最高速度は140キロに制限されています。これがネックなのですが、貨物列車との擦れ違いを避けるなどの工夫によって所要時間は3時間30分台に短縮することは可能だと著者は言います。

◆新函館北斗駅の混雑と接続の悪さは、これで解決

 もうひとつの問題は、新函館北斗駅で在来線に乗り換える際の混雑や接続の悪さです。
 現在、到着列車は12番線を使います。在来線ホームへ行くには2階のコンコースを経由しますが、階段もエレベーターも1か所しかなく、ひどく混雑します。また在来線との接続も30分も空くことがあります。到着ホームを11番線にすることは可能で、そうすれば、在来線との乗り換えは平面移動だけですみます。速やかに改善すべきだと著者は提言します。

◆快速の増発やバス会社との提携により観光開発を

 今回取り上げた15路線のうち観光路線として人気が高いのはJR五能線です。車窓からの景色が風光明媚なため、行楽期には快速「リゾートしらかみ」の指定席券は取れないことが多い。増発すべきですが、その際は弘前に寄らずに直接、青森から川部に行くのがいいと、著者は提言しています。観光するにあたって無駄な時間を省くためです。
 北海道新幹線の開業により、津軽半島周遊といった観光コースも生まれました。中小民鉄の津軽鉄道の出番です。著者はJRやバス会社との提携による観光開発を提言しています。
このエリアの鉄道全般について著者が強く提言しているのは、快速の設定、増発、定期化などの積極策です。便利にすることによって利用増が図れると確信しているからです。
鉄道ファンの方にはぜひともお読みいただきたい一冊です。

*著者は現在、シリーズ続編の『北海道篇』を執筆中で、その後『東北篇』(仮題)も刊行予定です。こちらもご期待いただければ幸いです。

著者紹介

川島令三(かわしま・りょうぞう)

1950年、兵庫県生まれ。芦屋高校鉄道研究会、東海大学鉄道研究会を経て「鉄道ピクトリアル」編集部に勤務。現在、鉄道アナリスト、早稲田大学非常勤講師。小社から1986年に刊行された最初の著書『東京圏通勤電車事情大研究』は通勤電車の問題に初めて本格的に取り組んだ試みとして大きな反響を呼んだ。著者の提起した案ですでに実現されているものがいくつかある。著書は上記のほかに『全国鉄道事情大研究(シリーズ)』『関西圏通勤電車徹底批評(上下)』『なぜ福知山線脱線事故は起こったのか』『東京圏通勤電車 どの路線が速くて便利か』『鉄道事情トピックス』『最新東京圏通勤電車事情大研究』(いずれも草思社)、配線図シリーズ『全線・全駅・全配線』、『日本vs.ヨーロッパ「新幹線」戦争』(いずれも講談社)など多数。

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