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フリー(無料)ほど、高いものはなかったのかもしれない!? 超監視社会――私たちのデータはどこまで見られているのか?

超監視社会

――私たちのデータはどこまで見られているのか?

ブルース・シュナイアー 著 池村千秋 訳

◆無意識にネットに残した足跡の思わぬ使われ方

カーネギー・メロン大学の研究チームは、公共の場に置いたカメラの前を通りがかった人の個人データをリアルタイムでディスプレーに表示することに成功した。通行人の画像を顔認識ソフトウエアやフェイスブック上で公開されたタグづけされた写真データベースと照合しただけである−−。(第3章より)

 毎日、肌身離さず携帯電話やスマートフォンを持ち歩き、facebookのようなSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)、Google検索、ソーシャルゲームなどの無料サービスを利用するなかで、私たちは、日々の行動の足跡を位置情報とともにたくさん残しています。さて、それらのデータが、どのように扱われているか、じっくり考えたことがあるでしょうか?

◆情報セキュリティの世界的権威が放つ最新作

 すべてがネットにつながれる時代。私たちの詳細な個人情報は、 GoogleやAmazonといった巨大企業に握られ、それらのデータは、国家による個人の監視強化を促しています。アメリカ国家安全保障局(NSA)の元職員エドワード・スノーデンによる暴露は、その一端を浮き彫りにしたことは言うまでもありません。
 そのスノーデン事件も契機となり、2015年に情報セキュリティの大家ブルース・シュナイアーが発表した本書は、私たちがネットに残した履歴が企業、国家により、どのように利用されているかを克明に描き、個人のプライバシー侵害の実態について警鐘を鳴らします。各種の履歴は、マーケティング目的で転売され、他方、私たちに確認をとられることなく諜報活動のために政府に引き渡されているのです。

◆まずは、ネットの履歴を消さずにはいられなくなる

 著者のシュナイアーは、巨額の税金が投入されて国家が公然とプライバシー侵害を行ったところで、テロの予防などに何の成果も出ていないことを強烈に批判します。自身は、一切インターネットに個人の履歴を残さないようにし、小売りのポイントカードの類も利用しないのだとか。それでもGmailアカウントの人とやりとりすればその段階で個人情報はネットに残るため、プライバシーは守りきれないと絶望的な嘆きの声を綴っています。
 プライバシーへの意識は、個人の価値観しだい。しかし、私たちは、かつてない「超監視社会」に生きていることは、間違いありません。そのことを自覚したうえで、あなたは、これからどのように自分や家族のプライバシーを守りたいでしょうか? 読み始めると本を脇に置いて、ひとまず、ネットの履歴を消さずにはいられなくなる、衝撃的な一冊です。
(担当/三田)

本書の目次から 
第1部 私たちの超監視社会 (第1章 情報化時代の「排ガス」/第2章 監視されるデータ/第3章 分析されるデータ/第4章 監視ビジネス/第5章 国家の監視と統制/第6章 官民監視パートナーシップ)
第2部 なにが脅かされるのか? (第7章 政治的自由と正義/第8章 公平で平等なビジネス/第9章 企業の競争力/第10章 プライバシー/第11章 安全)
第3部 超監視社会への対抗策 (第12章 原則/第13章 国家に関する提案/第14章 企業に関する提案/第15章 私たちができること/第16章 新しい社会規範)

著者紹介

ブルース・シュナイアー(Bruce Schneier)

世界的な暗号研究者であり、コンピュータ・セキュリティの権威。発行するニューズレターやブログの読者は世界中で25万人を超える。ハーバード大学法科大学院のフェロー、レジリエント・システムズ社最高技術責任者(CTO)も務める。著書に『信頼と裏切りの社会』(NTT出版)、『セキュリティはなぜやぶられたのか』(日経BP社)ほか。

訳者紹介

池村千秋(いけむらちあき)

翻訳者。訳書に『ライフ・シフト――100年時代の人生戦略』(東洋経済新報社)『年収は「住むところ」で決まる』(プレジデント社)ほか多数。

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