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トランプはなぜ韓国を「物乞いのようだ」と言ったのか 『韓国は消滅への道にある』李度珩 著

韓国は消滅への道にある

李度珩 著

 八月末の北朝鮮のミサイル実験後、日米電話会談でトランプ大統領は韓国大統領を「物乞いのようだ」と批判したという。北朝鮮に対話と融和的政策を求める文在寅大統領がアメリカに不信感もたらしていることがわかる。本書の冒頭で、退任する在韓米軍の司令官が著者に自分の命令は北のもう一人の司令官(金正日)に筒抜けだったことを述懐するエピソードが出てくる。韓国は米との同盟軍から作戦司令の権限を返還させることを目標にしているし、ソウル周辺の大規模の米軍基地を南に下げるように交渉している。また究極には米軍の韓国からの撤収ももくろんでいる。
 朝鮮戦争は1950年6月、米軍の軍事顧問団が撤退したすきを狙って、北からの侵攻で始まった。1953年、中国人民軍と北朝鮮軍と米軍との間で休戦条約が結ばれた。韓国は一方の当事者ではなかった。それから64年、この休戦状態は本質的に変わっていない。「自由民主主義」を国是として米国の支援の下に誕生した韓国と、「共産主義一党独裁」の北朝鮮が38度線で対峙しているのだ。軍事的空白が生まれるとたちまち北は南を飲み込みかねない。
 韓国の現在の国民はかなり親北・容共的な傾向を示している。トランプはこの韓国の北との対決姿勢を示さない(核実験後は変わってきたとはいえ)対応に苛立っているのだ。
 北朝鮮の核による恫喝の末、この先、朝鮮半島はどうなるのか。すでに南北合意した連邦制の統一国家ができるのか。著者はその時は北朝鮮の主導のもとに共産主義的国家になると見ている。一つは長年の朝鮮労働党による地下工作活動が功を奏して、韓国は司法、教育、メディアまで北に浸食されているからだという理由である。もう一つは韓国人の性質、気質からくるものという理由。
「韓国人、朝鮮人の心の底にはウエグックノム(外国の奴)の影響を受けずに、水入らずの同族同士で平和に暮らしたいという切望が潜んでいるのかもしれない」。そういう意味で「自力で核兵器やミサイルを開発して米日を脅かしている金正恩は『偉い』となって北を支持するということになってしまう」(P169)。
 民主主義という国是を忘れた韓国と強固な意志による共産党独裁を貫く北朝鮮、もう目の前に韓国崩壊と北朝鮮による統合が見えている。核兵器を持った反日的な統一朝鮮が、半島に生まれたら日本はどうなるだろうか。それを考えるための格好の評論書である。

(担当/木谷)

著者紹介

李度珩(イ・ドヒョン)

1933年、ソウル生まれ。50年、ソウル工高在学中に軍隊に入隊。53年、陸軍中尉任官。アメリカ陸軍広報学校修了、陸軍政訓学校教官。64年、予備役編入、陸軍大尉。この間、62年、建国大学国文科卒業。64年、朝鮮日報社入社。ベトナム特派員、外信部長、日本特派員、論説委員を経て、92年退社。75年~76年、慶應義塾大学新聞研究所留学。金大中政権以来、最も厳しい言論の締めつけを加えられながら、これに抗して、鋭い批評活動を展開。現在、、四百三十余名の会員を擁する新聞・放送ウォッチャーの会Argus会長。会誌「現象と真相」(月刊)発行人。韓国戦略問題研究所顧問。韓日協力委員会常任理事、英国戦略問題研究所元会員、日本国際文化会館会員。著書に『韓国人が見た日本』(共著)『金大中 韓国を破滅に導く男』『ソウル発信 日本検証』『北朝鮮化する韓国』ほか多数。

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