草思社のblog

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真珠湾攻撃のニュースを知り、本書の刊行を決意した元大統領 『裏切られた自由【下】フーバー大統領が語る第二次世界大戦の隠された歴史とその後遺症』ハーバート・フーバー著

裏切られた自由【下】
――フーバー大統領が語る第二次世界大戦の隠された歴史とその後遺症
ハーバート・フーバー 著 ジョージ・H・ナッシュ 編 渡辺惣樹 訳

 本書は第31代アメリカ大統領ハーバート・フーバー(任期1929~33)が20年の歳月をかけて完成させた第二次世界大戦の記録“FREEDOM BETRAYED:Herbert Hoover’s Secret History of the Second World War and Its Aftermath”の全訳(下巻)です。原書は1000頁を超える大著で、日本語版では上・下巻に分割しての刊行になりました。日本語版の上巻(本年7月刊)では開戦前から1944年までの主要トピックスが、下巻ではヤルタ会談から戦後処理にいたるプロセス及び補足資料が収録されています。
 スターリン圧政下のソビエトと密接な関係を築き、真珠湾攻撃を奇貨として世界大戦に参入したルーズベルト外交を「自由への裏切り」と断罪した本書は、2011年にフーバー研究所から刊行されると大きな話題を呼びました。日本語版上巻も刊行以来、版を重ねています(4刷)。人類史上類をみない悲劇となった第二次世界大戦はどのような経緯で始まり、そしてどのように終わったのか。パワーポリティクスの現場を熟知した元アメリカ大統領が生涯をかけて完成させた記録は、類書にない説得力にあふれています。
 本書に収録された膨大な資料・証言は、私たちのこれまでの歴史認識に根本的な見直しを迫るものです。そして日本人として注目すべきは、フーバーが本書の刊行を決意した直接のきっかけとなったのが日本軍の真珠湾攻撃のニュースだったということです。フーバーは真珠湾攻撃の翌日、友人に宛てた手紙の中で「日本というガラガラヘビに(我が国政府が)しつこくちょっかいを出した結果、そのヘビが我々に咬みついた」という印象的な表現を使ってルーズベルト外交を批判しています(本書「史料1」p452)。さらに戦後、東京でマッカーサーと会談した際には「日本との戦いは狂人(ルーズベルト)が望んだもの」という点で意見の一致をみています(本書「史料9」p475)。「連合国の正義」を前提に語られ続けてきた第二次世界大戦に、新たな視点から光をあてるのが本書です。フーバーが丹念に記録した「歴史の細部」が、多くの読者の目に留まることを願ってやみません。

(担当/碇)

「訳者あとがき」より
 《「肩の荷が下りた」。これが本書の翻訳作業を終えた時の感慨であった。編者であるジョージ・H・ナッシュ氏も言っているように本書は歴史修正主義に立つ歴史書の傑作である。私は、三年前にもう一つの傑作である『ルーズベルトの開戦責任』(ハミルトン・フィッシュ下院議員)の翻訳上梓を終えていた。フィッシュ氏の著作の時もそうであったが、本書の原本を手にした時に、「隠されている史実を日本の読者に伝えてほしい」と訴える著者の声を聞いたような気がした。その託された願いを、ようやく果たすことができた。
 アメリカの元大統領(フーバー)と、対日宣戦布告を議会を代表して容認した共和党の重鎮(フィッシュ)が戦後そろって歴史修正主義に立ち、フランクリン・デラノ・ルーズベルト大統領の外交を厳しく批判している。この事実はあの戦争を考える際にけっして無視することはできない。
 ここで、本書の内容について私の思うところを書こうとは思わない。歴史の隠された細部に触れて多くの読者は驚いたに違いない。意図的な「隠蔽」があったのか、それとも歴史家の見過ごしなのか。それは読者の判断に委ねたい。ただ、本書を読了した読者が、真の歴史はその細部に宿るという私の主張に肯いてくれるに違いないと思っている。あの戦争がいかにして始まりそして終わり、そしてなぜいつ果てるともしれない冷戦が始まったのか。本書はそれを考える作業に信頼できる道標となるはずである。》

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