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「ギリシア哲学」の「ロゴス」が再び我々には必要ではないか 『こどもギリシア哲学』齋藤孝 著 オフィスシバチャン 絵

声に出して読みたい・こどもシリーズ
こどもギリシア哲学

―― 汝自身を知れ!

齋藤孝 著 オフィスシバチャン 絵

 中沢新一氏が最近提唱しているのが西洋的な「ロゴス」に対してインド的な「レンマ」という概念である。「群像」2月号から氏は「レンマ学」という連載を始めて一部で注目されている。内容はなかなか難解だが、要は西欧的「ロゴス」が行き詰った現代ではそれと対立する「全体を一瞬で把握する直観的」思考「レンマ」が必要だということだ。

 ここで対比されている「ロゴス」というのは「ギリシア哲学」由来の「ロゴス」である。本書でも紹介しているヘラクレイトスの「ロゴスに従え」という有名な言葉がある。ロゴスはただ「理」(ことわり)と表記されたり、理論、理性、言語であったりする。西欧哲学や自然科学の根幹にあるものという意味では、われわれの近代文明にとっては最重要な概念の一つであるはずだ。中沢氏はこれを批判的にとらえて、最新の物理学や量子力学では、ロゴスが描いてきた世界観では理解できない現象があるとして、「ロゴス」から「レンマ」の時代へと、もはや世界は移りつつあるとも言っている。相変わらず人を煙に巻くことが得意の氏だが、はたしてそれは正しいのだろうか。

 「ロゴス」という理性や理論、物事の筋道、論理的に考え、論理的に他者を説得する手続きなどは、古来日本にもあったとはいえ、西洋から意識的に学んだものの一つだ。小学生にも有用であり、本絵本シリーズでも、東洋的な「論語」の教えに次いで「ギリシア哲学」をテーマに据えた。むしろ「ロゴス」がいまだ確立していないことのほうが問題であり、「ロゴス」を小学生の時期から徹底的に教育することのほうが重要ではないかと思うのだが、いかがだろうか。

(担当/木谷)

著者紹介

齋藤孝(さいとうたかし)

1960年、静岡県生まれ。東京大学法学部卒業、同大学大学院教育学研究科博士課程を経て、現在、明治大学文学部教授。専攻は教育学、身体論、コミュニケーション技法。著書に『宮澤賢治という身体』(世織書房、宮沢賢治賞奨励賞)『身体感覚を取り戻す』(日本放送出版協会、新潮学芸賞)『声に出して読みたい日本語』(草思社、毎日出版文化賞特別賞)など多数。近著に『語彙力こそが教養である』(角川書店)『こども孫子の兵法』(日本図書センター)『世界の見方が変わる50の概念』(草思社)など。NHK・ETV「にほんごであそぼ」企画監修など、マスコミでも活躍中。

オフィスシバチャン/絵

静岡県出身、東京都在住。グラフィックデザイナー、 Webデザイナーを経て、 フリーランスのイラストレーターとして独立。書籍、雑誌、広告をメインにイラストを制作。

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