楽しい溶岩図鑑
小白井亮一 文・写真
◆溶岩を知ることは、地球を知り、日本列島を知ること
本書は、著者自ら撮影した日本各地の溶岩の迫力あるカラー写真約200点を用いて、溶岩・マグマの科学をわかりやすく解説する、初めての溶岩図鑑です。でも、溶岩って、1冊の図鑑にするほど、重要なものなのでしょうか。
火山が溶岩でできていることはよく知られていますが、実は、海底の基盤=海洋プレートも、溶岩やマグマが固まったものでできています。また、火山以外の山も、地中のマグマの作用により生まれます。そして、日本は111もの活火山がある世界有数の火山国。山も多く、海に囲まれています。ですから、日本列島の成り立ちも、その多くが溶岩やマグマと深く関係しています。溶岩を知ることは、火山を知り、海と山を知り、日本列島の成り立ちを知る上で、欠かせないもの。溶岩の基礎知識を学べば、地球について、実に多くのことが見えてくるのです。
◆溶岩はこんなに壮大で美しく、おもしろい!
それだけでなく、溶岩はなんと言っても、見た目が美しく、おもしろいものです。富士山や伊豆大島の三原山などから流れ出た荒々しい溶岩の姿は、多くの人がイメージするものでしょう。そのほかにも溶岩にはさまざまな種類があり、著者は自ら日本各地で撮影してきた写真を使って紹介しています。その幅広さは、空前絶後と思えるレベル。これほどまでに日本各地の多種多様な溶岩を写真で紹介する書籍は、今後、現れないのではないでしょうか。
中でも特に著者が熱心に紹介しているのが「枕状溶岩」です。これは、数千万年もの昔に海底で噴出した溶岩で、それが海洋プレートに載って日本列島に運ばれてきたものです。枕のような形状に固まっていることからこのように呼ばれ、それらが積み重なって独特の景観を生み出します。著者は枕状溶岩が見られる多くの場所を紹介、さらに独断により「日本三大枕状溶岩」を選出しており、これも本書の見所です。
お察しの通り、本書は、著者の溶岩への並々ならぬ愛情、熱量によってできあがった図鑑です。初学者にもわかりやすく解説されており、また専門家が読んでも、数々のフィールドを撮影した写真に唸ることでしょう。多くの方に溶岩のおもしろさ・魅力が伝わることを願っています。
(担当/久保田)
目次
まえがき
第1章 流れる溶岩 伊豆大島
マグマと溶岩はどこが違う?
粘りけの低い溶岩は玄武岩
伊豆大島の三原山に残る3つの時代の溶岩
粘りけの少ない溶岩はどう流れるか
塚や空洞ができることも
状況が変わると表面がガサガサに
溶岩以外にも噴火の痕跡はある
伊豆大島の噴火のあらまし
もっと知ろう1 いろいろな岩石
岩石は鉱物の集まり では鉱物とは?
岩石はでき方により3つに分類される
火成岩は火山岩と深成岩に分けられる
火山岩はSiO2の含有量により分類される
SiO2の少ないマグマはさらさら流れる
深成岩の分類を対応する火山岩で見る
マグマのふるさとにある岩石、かんらん岩
かんらん岩は地下で水に出会うと変身
蛇紋岩化からエサを得ていた貝?
蛇紋岩化から水素エネルギーが?
第2章 流れる溶岩 富士山
富士山は玄武岩質マグマによりできた
大きな湖が溶岩で分断され西湖・精進湖に
湖岸では溶岩の姿がよく見える
溶岩が流れ去ってできる空洞、溶岩トンネル
溶岩トンネル内のさまざまな造形物
樹木の跡が溶岩樹型として残る
溶岩樹型の縦断面? 不思議な構造
富士山の大まかな噴火史
第3章 ちょっと流れにくい溶岩 羊蹄山
もう少し粘りけの高い塊状溶岩
蝦夷富士と呼ばれる山、羊蹄山
ねちっこい羊蹄山の溶岩の流れ方
羊蹄山を形成した噴火の歴史
もっと知ろう2 火山から噴出するもの
火山からはどんなものが噴出するのか
火山砕屑岩は火成岩? 堆積岩?
大きさによる火山砕屑物の分類
色合いや形などによる火山砕屑物の分類
巨大噴火の堆積物が見られる場所
第4章 もっちりとした溶岩 樽前山
溶岩の粘性の違いに1億倍もの幅
溶岩ドームをつくる火山、樽前山
火口内にそびえ立つ溶岩ドーム
溶岩ドームができるまでの噴火史
溶岩ドームの出現、目撃者はいなかった
溶岩ドームの断面の撮影に成功!
溶岩ドーム上の独特の景観
第5章 もっちりとした溶岩 雲仙岳と有珠山
平成時代に噴火した火山、雲仙岳
平成の噴火で溶岩ドームはどうできたか
溶岩ドームの崩落と火砕流の発生を目撃
洞爺湖近くにある有珠山の昭和新山
詳細に記録された昭和新山の成長
2000年の噴火活動で60m以上も隆起
第6章 地上に出た潜在ドーム 礼文堂、桃岩
礼文島にある小山のような岩、桃岩
地上に露出し断面も見える洗剤ドーム
桃岩はいつごろできたのか
桃の種
第7章 白い溶岩・黒い溶岩 神津島と白滝
流紋岩の溶岩を出す火山、神津島
大噴火でできた神津島の溶岩ドーム
流紋岩質マグマからできた黒曜石の露頭
黒曜石のでき方にはまだ謎がある
球顆が密集する場所「球顆の沢」
黒曜石と流紋岩の噴出のあらまし
もっと知ろう3 マグマのでき方
多くのマグマはマントル上部でできる
「溶ける」を氷-水の場合で考える
岩石は溶けやすい成分が優先的に溶ける
溶けやすい成分がマグマになり上昇
圧力が高いと溶けづらいことも考える
水が加わると岩石は溶けやすくなる
火山が地球上に偏って分布する理由
第8章 日本三大枕状溶岩 根室
地層を調べて海で噴出した溶岩を知る
噴出直後にバラバラになる場合
シート状溶岩か枕状溶岩になる場合
本書の主役、枕状溶岩のでき方
北海道の根室車石周辺の枕状溶岩
枕状溶岩の形状で上下方向を推定
枕状ローブから新たなローブが流出
放射状節理が美しい“完全車石”
枕状ローブ断面に見られる節理と結晶
コンパクトで美しい断面の枕状ローブ
枕状ローブ表面の模様や凹みのでき方
車石の正体は?
この溶岩は比較的珍しいアルカリ玄武岩
車石を訪れたらぜひ枕状溶岩も
第9章 日本三大枕状溶岩 父島
黄色と黒の模様を描く枕状溶岩
砂浜から見ることができる露頭
枕状ローブの色と気泡、ガラス質、形状
枕状溶岩ばかりの壮観な露頭
日本発祥の珍しい岩石、ボニナイト
ボニナイトは特別な出来事で生じた?
小港海岸の枕状溶岩はボニナイトか
ボニナイトの枕状溶岩は初寝浦に
ボニナイトが風化し「うぐいす砂」に
ボニナイトはアクセス容易な釣浜にも
もう1つ珍しい枕状溶岩を
第10章 日本三大枕状溶岩 佐渡
佐渡島の景勝地、小木海岸の枕状溶岩
独特の白っぽい網目模様の枕状溶岩
形状も節理も縁取りもじっくり観察
枕状溶岩でできた「たけのこ岩」
たけのこ岩付近にある、かんらん石の砂
立体的な枕状溶岩もある
日本海形成の名残? 非常に珍しい岩石
記念すべき「枕状溶岩発祥の地」
もっと知ろう4 マグマの発生とプレートテクトニクス
プレートテクトニクスという考え方
海洋プレートを生む「離れ合う境界」
プレートの下からマグマが上昇する場所
海洋プレートの終着地、海溝とトラフ
海洋プレートの沈み込みと付加体
第11章 枕状溶岩めぐり 新しい時代編
枕状溶岩はまだまだたくさんある
千葉県鴨川市の海岸に枕状溶岩がある
鴨川の枕状溶岩は海嶺で生まれた?
破格な扱いの「三浦枕状溶岩」
なぜ丹沢山地に枕状溶岩があるのか
現代アートのような丹沢の枕状溶岩
丹沢より奥の山地にも枕状溶岩はある
静岡県大崩海岸周辺の枕状溶岩
大崩海岸の枕状溶岩の来歴と“由緒”
日本海の形成に関係した枕状溶岩
男鹿半島海岸のかぶき岩の枕状溶岩
日本海形成の前触れの火山活動?
上田市の温泉地近くの枕状溶岩
枕状ローブ流出時の表面構造残す枕状溶岩
粘性やや高かった忍路半島の枕状溶岩
第12章 枕状溶岩めぐり 古い時代編
日本列島の土台をつくる付加体中の枕状溶岩
日本三大清流・長良川の枕状溶岩
ペルム紀に噴出、ジュラ紀に付加体へ
白亜紀に付加された沖縄の枕状溶岩
枕状溶岩の変成岩はどんな感じか
岩場一面に広がる変成した枕状溶岩
もっと知ろう5 日本列島の下はダイナミック?
プレート沈み込みでなぜマグマ発生?
火山の特徴的な分布
マントルに水が供給されてマグマが発生
マグマ発生には水のほかに熱も必要
マントルが動くことで高温領域が発生
あとがきにかえて 測量技術と火山噴火
地質年代表
活用ウエッブサイト・参考文献
索引
著者紹介
小白井亮一(こじろい・りょういち)
1960年、東京都生まれ。1986年3月、千葉大学大学院理学研究科(地学専攻)修了。国土地理院にて測量・地図作成や災害対応の業務に携わり、2021年3月退職。現在は、地層・化石・岩石・鉱物のこと、簡単にいえば“石の世界”について、興味深く、わかりやすく伝える執筆活動に取り組んでいる。たとえると“石の世界”の案内人。これまでの著書に『楽しい地層図鑑』、『すごい地層の読み解きかた』(ともに草思社)、『わかりやすい測量の数学 行列と最小二乗法』、『わかりやすいGPS測量』(ともにオーム社)、『地形のヒミツが見えてくる 体感!東京凸凹地図』(分担執筆、技術評論社)などがある。