草思社のblog

ノンフィクション書籍を中心とする出版社・草思社のブログ。

さまざまな文化的背景を背負う日本各地のシャーマンを訪ね歩き、貴重な肉声を多数採録したユニークな記録!『日本最後のシャーマンたち』ミュリエル・ジョリヴェ著 鳥取絹子訳

日本最後のシャーマンたち

ミュリエル・ジョリヴェ 著 鳥取絹子

 本書(原題Les Dernières Chamanes du Japon)の著者ミュリエル・ジョリヴェさんは日本に住んですでに半世紀、長年にわたって大学で教鞭をとってきましたが、来日以来ずっと、日本人が親しい関係になるととてもカジュアルに「霊感はあるほうですか?」といった質問を投げかけてくることが不思議だったそうです。また教えていた大学の授業でも、超自然現象の話題になると学生たちの会話が思いのほか活発になることに気づきました。
 そういう経験をするうちに、著者は「日本人の死生観においては、霊がきわめて身近な存在なのだ」ということがわかってきたといいます。ならば、実際に「見えない世界」とつながりながら生きる人たちに会って、話を聞いてみたい――。この本は、そういう好奇心からはじまった長い探求の成果ともいうべき一冊で、欧米の知識人が、北海道から沖縄まで時代の波に押されて消えつつある「シャーマンたち」を訪ね歩いた貴重な記録です。明治の日本にやってきたラフカディオ・ハーンは日本各地に残されている多彩な幽霊話のなかに日本人独特の感受性を見出しましたが、本書も日本という国に対する温かな視点も含め、同じような枠組みの本といえるかもしれません。
 本書では、「シャーマン」という言葉をかなり広い意味でとらえていて、恐山のイタコや沖縄のユタ、ノロといった、よく知られた伝統的な存在だけでなく、超感覚的な知覚能力があるとされている人すべてを「シャーマン」として扱っています。たとえばタロット占いや催眠療法チャネラー……といったことをおこなっている人たちも、そのなかに含まれます。
 著者はフェアに彼女たちの言葉を紹介し、そこに自身の率直な考察を加えています。ベースとなっているのは、「訪ねてくる人々の心を楽にする」という点では伝統的なシャーマンも彼女たちも同じことをしているのだという考え方で、この立場に立つことによって本書はきわめて懐の深い文化論になっているようにも思われます。文明の黎明期からずっと、私たちは「見えない世界」との媒介者を必要としてきたわけですが、伝統的なシャーマンたちが姿を消しつつあるなかでも、生きることに苦悩が付きまとうかぎり、そして私たちが「この世を去る確率」が百パーセントであるかぎり、シャーマン的なるものの必要性が失われることはなさそうに思えます。その意味で本書は、生きることの不思議さに気づかせてくれる一冊であるといえそうです。

 

〔本書より〕
 私はジャーナリストのステファン・アリックスの視点に全面的に賛同する。シャーマンの調査で世界を飛びまわったあとで彼がたどり着いた結論は、霊能者たちは従来の方法では得られない方法で情報を得ているということだった。彼はまた、自分は分析的な脳で話を聞いていたが、しかし、彼らが言ったことで自分が変えられたとも言っている。
「シャーマンの問題は、一つの真実がないということだが、しかしそれぞれが体験した経験があり、そこからそれぞれ自身が情報を引き出している……。結局のところ、私は何一つ確信していない……量子力学を例にするとよくわかるが、確実とされていたのは、本当は、はっきりしない仮説だったということだ。(……)私の仕事は、その世界にどっぷり浸っている人たちの現実をできるだけ忠実に書き写すことだ」
 これがまさに私のやってきたことだった。

(担当/碇)

 

著者紹介

ミュリエル・ジョリヴェ

ベルギー生まれの日本学者、1973年から日本在住。早稲田大学東京大学社会学を勉強、東洋学博士。上智大学国学部フランス語学科の教授を34年間務めたあと、2017年から名誉教授。日本社会に関する著書多数。うち邦訳は『子供不足に悩む国、ニッポン』(大和書房)、『ニッポンの男たち』(筑摩書房)、日本向け書き下ろしに『フランス新・男と女』(平凡社新書)、『移民と現代フランス――フランスは「住めば都」か』(集英社新書)などがある。

訳者紹介

鳥取絹子(とっとり・きぬこ)

翻訳家、ジャーナリスト。主な著書に『「星の王子さま」隠された物語』(ベストセラーズ)など。訳書に『崩壊学』『感染症の虚像と実像』(以上、草思社)、『私はガス室の「特殊任務」をしていた』『ウクライナ現代史――独立後30年とロシア侵攻』(以上、河出書房新社)、『巨大化する現代アートビジネス』(紀伊國屋書店)、『地図で見るアメリカハンドブック』『地図で見る東南アジア』(以上、原書房)などがある。

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昔の日本映画はどのように残ってきたか。それはどこかに眠っている。『映画を追え フィルムコレクター歴訪の旅』山根貞男 著

映画を追え

山根貞男

 戦前の日本映画で残っているものは10パーセント以下、一説によると4パーセントぐらいだと言われている。小津安二郎監督の初期短編、溝口健二のサイレント期の作品、伊丹万作山中貞雄の名作と言われる時代劇もほとんど残っていない。貴重な文化遺産の喪失である。なぜかというと映画は娯楽であり、消費され捨てられてきた大衆商品だったからだ。
 アメリカでは映画を自国の大事な産業・文化と位置づけていたから、かなり組織的に残されている。フランスは有名なアンリ・ラングロワという映画狂の個人の頑張りでシネマ―テーク・フランセーズが多くの貴重な作品をコレクションしている。
 日本では可燃性フィルムということもあって実際に焼失したり(日活の二度の火事など)、フィルムを再利用して別の工業資源に使ったりした(化粧品など)。また契約上、上映期限が切れたフィルムはジャンクしなければならなかったし、第一に映画会社に貴重な知的所有物という意識がなかったから、多くの量産される娯楽作品の扱いはぞんざいで、廃棄することに誰も気に留める人はいなかったのだ。持っていても倉庫代もかかるし、税金もかかるから捨ててしまえということになった。その結果、映画史に名のみ残る天才山中貞雄監督の処女作で名作時代劇『抱寝の長脇差』(だきねのながどす)は永遠に失われてしまったのだ。
 この本は1988年に著者の友人のフィルムコレクター岡部純一さんという人が小津監督の初期のサイレント短編映画『突貫小僧』を9・5ミリのパテベビーのおもちゃフィルムで所有していることを知って(古道具屋から買ったらしい)、大々的に上映会を開き、古い日本映画発掘の機運を1990年代に大いに盛り上げたことから始まり、とくに日本国中のフィルムコレクターという映画愛にあふれた「オタク的」趣味の人びとを訪ね歩いた30年にわたる回想録であり、保存発掘の回顧である。
 実はこうした収集活動は従来、国立フィルムセンターが担ってきたし、「無声映画愛好会」のような趣味の会で行われていたが、このころ(20世紀末から21世紀初頭にかけて)小津映画の世界的な再評価ブームや日本の古典映画の世界的な評価の高まりと相まって日本映画発掘・探求ブームが起こっていた。そこに呼応して著者の活動は大いに評価され、各種映画祭や研究活動において、著者は第一人者と見なされる存在となっていった。一昨年、三省堂出版から刊行された『日本映画作品大事典』という本は戦前からのすべての作品を解説した事典で(存在しないものも含めて)、この監修者をつとめた著者は、その功績によって日本映画ペンクラブ賞を受賞している。
 この本のハイライトは「生駒の怪人」と言われた幻の映画コレクターのもとに朝日新聞記者や蓮實重彦さんなどと二十年ぐらいのあいだ何度も通い、その膨大なコレクションを発掘しようとした経緯である。そこには所蔵フィルムのリストや膨大なフィルム缶があり、いかにもありそうな雰囲気が漂っていた。マキノ正博の『浪人街』三部作も小津監督の『懺悔の刃』も伊藤大輔の『新判大岡政談』も何でもあるとリストは告げていた。これは結局「生駒の怪人」の死によってすべてが暗闇の中に消えてしまった。しかし著者は私が見たものは絶対嘘ではなかった。「それはどこかに眠っている」と確言している。
 じつにこれまで発掘された日本映画も、地方の素封家の蔵の中に隠されていたり、廃工場の倉庫に埋もれていたり、古道具屋のその他のがらくた的道具の中から見つかったという場合がほとんどなのだ。過去何百年、何千年と続いてきた日本文化の遺産はさまざまな形で残ってきたが、日本映画も社会の片隅で不思議な作用で残って来たとも言える。本質的に日本のある種オタク文化はすごいと気づかされるエピソードではないか。

(担当/木谷)

著者紹介

山根貞男(やまね・さだお)

1939年大阪生まれ。映画評論家。大阪外国語大学フランス語科卒。加藤泰マキノ雅弘など日本の大衆映画を評価。1986年以来キネマ旬報に日本映画時評を連載。2001年~2008年東海大学文学部文芸創作科教授。内外の映画祭の企画に携わる。2021年『日本映画作品大事典』(三省堂)を編集して、日本映画ペンクラブ賞受賞。著書・編書に『映画渡世』(マキノ雅弘著、山田宏一聞き書きちくま文庫)『増村保造 意志としてのエロス』(筑摩書房)『映画監督 深作欣二』(深作欣二と共著、ワイズ出版)『加藤泰、映画を語る』(安井喜雄と共編、ちくま文庫)『日本映画時評集成1~3』(国書刊行会)など。近著に『東映任俠映画120本斬り』(ちくま新書)など。

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『それホントに体にいい?無駄? 「健康神話」を科学的に検証する』生田哲 著

それホントに体にいい?無駄?

「健康神話」を科学的に検証する

生田哲 著

■あらゆるところにニセ情報が潜んでいる!

 世の中には真偽のわからない「健康神話」が多数流布しています。
たとえば、健康に必要不可欠というイメージの強いカルシウム。健康のために牛乳やサプリなどで積極的にカルシウムを摂取している人も多いのではないでしょうか? 実はこうした行為がかえって危険なのです。
 本書によれば、カルシウムが足りているのに必要以上にカルシウムを摂取することが、心臓病や脳卒中などの血管系の病気のリスクを高めることは、すでに科学的な研究では明らかにされています。また健康に良いイメージのある牛乳ですが、「1日3杯以上牛乳を飲むと死亡率が上がる」というのも科学的研究では明らかな事実だというのです。
 間違った健康神話を妄信して、かえって健康被害を受けては身も蓋もありません。

■科学的根拠に基づいた健康の最終結論を提供

 本書は、氾濫する健康情報に惑わされず自分の身を守るために、様々な「健康神話」を取り上げ、その真偽を一つひとつ科学的に判定し、科学的根拠にもとづく健康知識を提供していきます。
 科学的検証の際に著者が採用した文献のほとんど全部が、海外の一流科学・医学雑誌に掲載された論文であり、企業がスポンサーになっていない(公正な)研究によって得られた論文です。つまり、本書が提供する健康情報は、非常に信ぴょう性が高いものばかりです。
 幅広い健康情報を扱う本書を読むことで、健康リテラシーが上がり、おのずと人生の質も上がること間違いありません。ぜひ多くの方に知っていただければと願っております。

(担当/吉田)

 

目次より
01・バイ菌についての4つの神話
神話1:公衆トイレの便座に座るとバイ菌がつく 
神話2:バイ菌はお湯で流すと殺菌できる 
神話3:寒い季節はカゼを引きやすい 
神話4:抗生物質がカゼの原因とされるバイ菌を殺す      
02・コーヒーについての6つの神話
神話1:コーヒーは健康によい 
神話2:コーヒーは依存を引き起こす
神話3:コーヒーを飲むと脱水が起こる 
神話4:コーヒーの浅煎りは、深煎りにくらべ、カフェインが少ない
神話5:妊娠中にコーヒーを飲むと胎児に悪影響がある    
神話6:発育が妨げられるのでティーンエイジャーは、コーヒーを飲まないほうがいい  
03・チョコレートについての5つの神話  
神話1:チョコレートにはカフェインが非常に多く含まれている
神話2:チョコレートをたくさん食べると中毒になる
神話3:チョコレートは性欲を高める   
神話4:ホルモンレベルが不安定になると、チョコレートを無性に食べたくなる
神話5:ダークチョコレートはスーパーフードである 
04・アルコールについての4つの神話
神話1:ワインとビールをちゃんぽんで飲むと悪酔いや二日酔いする 
神話2:少しの飲酒はまったく飲まないよりも健康にいい 
神話3:二日酔いには「迎え酒」が効果的 
神話4:適量のお酒なら休肝日がなくても大丈夫 
05・ビタミンサプリについての6つの神話
神話1:ビタミンのサプリを飲んだ効果は証明されていない 
神話2:食事でビタミンを十分に摂っていれば、サプリを摂る必要はない 
神話3:ビタミンを買う際にブランドを気にする必要はない 
神話4:グミ状のサプリでも錠剤のサプリでも効果は同じ
神話5:基準量のビタミンを摂取しているから、大丈夫 
神話6:水溶性ビタミンは排泄されてしまうから、たくさん摂っても意味がない
06・砂糖についての5つの神話
神話1:甘味料にはアガベシロップ、メープルシロップ、ブラウンシュガー、ふつうの砂糖などがあるが、ある種の砂糖は健康によい 
神話2:砂糖は摂取しないほうが体にいい 
神話3:砂糖には依存性がある 
神話4:健康のためには清涼飲料水よりも100%果汁のジュースを飲むほうがいい 
神話5:ケーキ、チョコレートなどの甘いものをやめればニキビが消える 
07・人工甘味料についての5つの神話
神話1:人工甘味料は「ニセ砂糖」である 
神話2:ゼロカロリー甘味料を使えば、太らない  
神話3:人工甘味料は虫歯ができにくい 
神話4:人工甘味料の摂り過ぎは、がんを引き起こす 
神話5:政府が承認した人工甘味料は安全である
08・水についての5つの神話
神話1:ペットボトルの水は水道水よりも美味しくて体にいい 
神話2:水をたくさん飲むほど皮膚が健康になって、肌がきれいになる 
神話3:レモン水は健康にいい  
神話4:健康を維持するには、1日にコップ8杯の水を飲むべきだ 
神話5:水はいくら飲んでも体に悪影響はない
09・がんについての6つの神話
神話1:がんは遺伝子の病気である 
神話2:がんの主な原因は食事とタバコである 
神話3:新しく発見された抗がん剤が生存期間を延ばし、QOL(生活の質)を高める 
神話4:抗がん剤は新たながんを発生させ、転移を促進する 
神話5:がんになったので人生、もうお終いだ 
神話6:日本で、がんによる死者数が増え続けている 
10・抗生物質についての5つの神話
神話1:ある抗生物質新型コロナウイルスにも効く  
神話2:抗生物質は細菌を殺すことで効果を発揮する   
神話3:感染症の特効薬、抗生物質はこれからも効く 
神話4:黄色か緑色の鼻水やタンが出れば、細菌による感染なので抗生物質を服用すべきだ 
神話5:畜産業において健康な動物を病気から守るために、抗生物質をエサに混ぜるのがいい 
11・牛乳についての6つの神話
神話1:昔から日本人は牛乳を飲んできた 
神話2:牛乳は健康にいい 
神話3:子どもが牛乳を飲むと背が高くなる 
神話4:牛乳は骨を丈夫にし、骨粗しょう症を防ぐ
神話5:1日3杯以上の牛乳を飲むと死亡率が高くなる
神話6:牛乳はある種のがんの発症を防ぐ
12・カルシウムについての5つの神話
神話1:食事からより多くのカルシウムを摂取したり、カルシウムをサプリで摂取したりするのは健康にいい
神話2:日本人はカルシウムが不足している
神話3:すべての骨粗しょう症の人はカルシウムが不足している
神話4:カルシウムサプリを摂取すれば骨折を防ぐことができる
神話5:骨密度が高くなると、骨が強くなる
13・肥満・代謝についての6つの神話
神話1:私は太る体質なので、食べなくても太る
神話2:代謝は遺伝で決まっている
神話3:カロリー制限を厳格に実践すると効果的にやせられる
神話4:厳格なカロリー制限+激しい運動で効果的にやせられる
神話5:運動によって基礎代謝が上がる
神話6:サプリメントの摂取で代謝が上がる
14・糖尿病についての5つの神話
神話1:糖尿病は太った人だけの病気である  
神話2:糖尿病になるのは糖質の摂取が多いからである 
神話3:子どもの糖尿病は1型だけである  
神話4:糖尿病を発症したらインスリン注射が欠かせない 
神話5:インスリン注射は体重を増やす
15・瞑想についての5つの神話
神話1:瞑想は宗教的な感じがするので嫌だ 
神話2:マインドフルネス瞑想は、ストレスの軽減だけに効果がある
神話3:瞑想を行うときは姿勢が大事 
神話4:短時間の瞑想ではあまり効果がない      
神話5:瞑想は腹式呼吸で行うのが正しい
16・ビタミンDについての4つの神話
神話1:かつて日光浴は結核の治療に用いられていた
神話2:ビタミンDを摂取すれば乳がんの半数を予防できる 
神話3:大腸がんの3分の2はビタミンDで予防できる
神話4:ビタミンDサプリを摂取すれば体重が低下する

 

著者紹介

生田哲(いくた・さとし)

1955年、北海道に生まれる。薬学博士。がん、糖尿病、遺伝子研究で有名なシティ・オブ・ホープ研究所、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)、カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)などの博士研究員を経て、イリノイ工科大学助教授(化学科)。遺伝子の構造やドラッグデザインをテーマに研究生活を送る。現在は日本で、生化学、医学、薬学、教育を中心とする執筆活動や講演活動、脳と栄養に関する研究とコンサルティング活動を行う。著書に、『遺伝子のスイッチ』(東洋経済新報社)、『心と体を健康にする腸内細菌と脳の真実』(育鵬社)、『ビタミンCの大量摂取がカゼを防ぎ、がんに効く』(講談社)、『よみがえる脳』(SBクリエイティブ)、『子どもの脳は食べ物で変わる』(PHP研究所)、など多数。

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プーチンはなぜ「ネオナチ」という言葉を多用するのか。『ウクライナ・ショック 覚醒したヨーロッパの行方』三好範英 著

ウクライナ・ショック 覚醒したヨーロッパの行方

三好範英 著

 プーチンウクライナを侵攻した当初、侵攻はウクライナを「非武装化するため」、「ネオナチ化を防ぐため」であると強弁していた。プーチンのこの相手への決めつけ、「ネオナチだ」「ファシズムだ」というのは一貫している。それはなぜなのか。
 本書は読売新聞でベルリン特派員として10年近く、ドイツに暮らした著者によるウクライナ戦争の背景や原因を探ったノンフィクションである。著者は今回のウクライナ戦争を見るとき、特にドイツとロシア、そしてそこに挟まれた国々の歴史を見ることから始めている。この領域に狭義の意味でのウクライナ戦争の原因も影響も詰まっているということだ。
 とくに第二次大戦の独ソ戦の影響は甚大で、死者は一説には5000万人とも言われているから、簡単にはその傷は癒えていない。ウクライナは第二次大戦では最初、ナチスに協力したが、最後はソビエト・ロシアと一緒に戦ってナチス・ドイツを倒した。だからロシアは東ヨーロッパの諸国に「ファシストのナチを一緒に戦って破った我々は団結しよう」というプロパガンダで西側に対抗しようとする。プーチンの「ネオナチ」という言葉は単純なレッテル張りを何回も言うプロパガンダの常道である。実際には「ネオナチ化」などは起こっていないのに、「反ロシア的なもの」「ロシアへの敵意」にはすべて「ネオナチ」というのである。
 このドイツ、そしてポーランドバルト三国フィンランドスウェーデンなどの各国の微妙な立ち位置と、恐露病ともいうべき歴史の重さを描く著者の筆には納得できる。
 もう一つこの本で巧みに描かれているのは、ドイツの「平和ボケ」からの覚醒についてである。著者は戦闘地そのものには入っていないが、4月から5月ウクライナ西部の国境近くの街リヴィウポーランド、ドイツに取材に入っている。ここで見たことは、侵略の恐ろしいばかりのインパクトである。そして侵略にびっくりしたものの、すぐに一致団結して対応に入れたことは各民族のDNAにロシアへの恐怖が組み込まれていることを示している。
 さて慌てふためくドイツの大胆ともいえる政策転換は見事であったが、それまでリベラル志向の強い政権がエネルギー政策を中心に対ロシア融和策の甘い夢にふけっていた経緯があり、この問題は潜在的には変わっていない。最近になっては、ドイツは本当に覚醒したのかという危惧もいだく。もともとドイツ内にあるロシアとの親和性の要素は残っているし、またEUといっても一枚岩ではなくポーランドハンガリーのような非リベラル志向の国家もあり、移民政策、環境問題、LGBT問題、ナショナリズムなどをめぐる対立もある。これらの民主国家内の分断は、民主主義の弱点でもあるが、それが自由のコストでもある。プーチンはあるインタビューで西洋のリベラル思想への批判を語っているが、それを受けて著者はこう書いている。
プーチンには、西側世界、特に西欧社会をリベラリズムの文明と見て、その堕落に対抗するのがロシア文明という意識があるのだろう。西側世界が混乱に陥っているとの認識を持ち、侮ったことが、ウクライナに侵攻した一つの背景だろう」(296ページ)
 プーチンは民主国家内にある分断に乗じて侵略を企てたと見ることもできる。この指摘に今の日本が学ぶべき点は多いだろう。

(担当/木谷)

著者紹介

三好範英(みよし・のりひで)

1959年生まれ。東京大学教養学部卒。読売新聞バンコクプノンペン、ベルリン特派員、編集委員を経て、現在フリーランスのジャーナリスト。著書に『特派員報告カンボジアPKO』(亜紀書房)、『戦後の「タブー」を清算するドイツ』(同)、『蘇る「国家」と「歴史」』(芙蓉書房出版)、『メルケルと右傾化するドイツ』(光文社)、『本音化するヨーロッパ』(幻冬舎)。『ドイツリスク』(光文社)で山本七平賞特別賞受賞。編著に外交官岡崎久彦氏の回想録『国際情勢判断・半世紀』(育鵬社)、同加藤良三氏の回想録『日米の絆』(吉田書店)がある。

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なぜ芭蕉はこの男を随行させたのか?『曾良の正体 『奥の細道』の真実』乾佐知子 著

曾良の正体

――『奥の細道』の真実

乾佐知子 著

日本最高の古典『奥の細道』の旅は、決して芭蕉一人の力で成し得たものではない。芭蕉に影のように付き添い、ある時は道案内の先導役を務め、ある時は旅の資金のやりくりに頭を痛め、宿の手配に奔走するといった仕事をやり遂げた河合曾良がいた。
彼が腰に下げていた小さな腰帳は、その日の天気や距離、人物などが詳細に記帳されており、その事務能力の高さに後世の人々は度肝を抜かれた。
みちのく出発直前に忽然と現れ、予定されていた路通に替わり、随行者に抜擢された曾良とはいったい何者か。
江戸時代中期は幕藩体制が整い、武家諸法度の強化された時代だ。商家の長男として生まれたにもかかわらず、曾良は次々と養子に出され、成人となるや伊勢長島の大智院で過ごしていたが、やがて久松松平家の家臣となる。商家の子供が武士になるなど当時は絶対にあり得ないことであった。
曾良第一の謎ともいえる武士誕生の陰には、幕府をも黙らせる大きな力が働いていたと考えるのが妥当であるだろう。ではその大きな力とは何か。
本書は、曾良の生涯を「家康の六男・松平忠輝の落し子」説に沿って辿ることで、旅の出立をはじめ、仙台藩での湯ざまし事件、村上に滞在した三日間など、これまで謎とされてきた旅の真相を解き明かす。
奥の細道』読解の参考としてはもちろん、曾良芭蕉が実人生での体験をいかに作品化したかを理解する一助として、広く俳句に興味のある読者に一読いただきたい一冊。

(担当/渡邉)

【目次】
第一章 曾良の実像
曾良の生い立ち/曾良の名前/家康の六男、松平忠輝松平忠輝の落し子としての曾良/伊勢長島、大智院での曾良/伊勢長島藩主、松平良尚/曾良と俳句との出合い/江戸へ出た曾良曾良吉川惟足

第二章 曾良芭蕉の出会い
芭蕉と藤堂藩/芭蕉曾良はいつ出会ったか/藤堂家の血筋を引く芭蕉甲州谷村での出会い/曾良が谷村を訪れた理由/谷村以降の曾良松平忠輝の死

第三章 『奥の細道』旅の目的
江戸に戻った芭蕉/『野ざらし紀行』、蛙合、『鹿島紀行』/路通から曾良へ/『奥の細道』旅の準備/旅の経費はいくら掛かったか/旅の資金はどこから出たのか/水戸光圀と松平良尚/綱吉と光圀との微妙な関係/松平定重と芭蕉/情報収集としての旅/『奥の細道』旅の真の目的/関係諸藩と伊奈家との関わり

第四章 『奥の細道』旅の真実
奥の細道』出立の謎/小菅の伊奈郡代屋敷/清水寺から預かった書状/杉風の訪問/日光大楽院の客/白河の関須賀川、福島、仙台/松島、瑞巌寺/湯ざまし事件/伊達騒動とは/『奥の細道』における奥州平泉/出羽越え、尿前の関/尾花沢、立石寺出羽三山/象潟と「みのの国の商人 低耳」/越後路、村上滞在の真相/村上での歓待の理由/絶海の孤島、佐渡佐渡大久保長安/金沢から山中温泉へ/山中温泉から敦賀、色の浜へ/水戸藩大垣藩に守られた旅/芭蕉、大智院を訪ねる/別行動をとった曾良

第五章 『奥の細道』以降の曾良芭蕉
江戸に戻った曾良近畿地方を巡った曾良/晩年の芭蕉/『奥の細道』の成立/芭蕉の臨終/芭蕉没後の曾良曾良が墓参できなかった理由

第六章 曾良の晩年
諏訪帰郷と芭蕉墓参/長島松平家断絶/六代将軍徳川家宣/幕府巡見使の御用人として九州へ/曾良が御用人になれた理由/壱岐へ/対馬藩とは/曾良の終焉/密命を帯びた曾良対馬を巡った曾良/本土生存説/河西浄西に学んだ生き方/榛名山に消えた仙人/故郷に集う「あぢさゐ忌」

著者紹介

乾佐知子(いぬい・さちこ)

1942年、神奈川県生まれ。日本大学文理学部国史科卒業。政治経済史学会で学ぶ。俳句結社「春耕」同人。俳人協会会員。著書に『句集 藻の花』がある。

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その土地のことは、窓を見ればわかる。アジアの窓の旅行譚『アジア「窓」紀行 上海からエルサレムまで』田熊隆樹 著・写真

アジア「窓」紀行

――上海からエルサレムまで

田熊隆樹 著・写真

窓は、室内を快適にするために外気や光を遮り、外と隔てるものでもあれば、逆に風を取り入れたり、外の景色を眺めたりと、外とつなげるものでもあります。また、地域特有の文化に基づいた豪奢な装飾が施されることもしばしばです。言うなれば、窓は環境的な風土と文化がもっともよく表れた部位であり、「窓を見ればその土地のことが分かる」といっても過言ではありません。そんな窓を見つめて、アジアを端から端まで旅したのが本書です。

上海の窓から生える謎の棒、鉢状の地形に密集した宗教都市の窓が圧巻のラルンガル・ゴンパ、シェムリ・アップの戸と庇を兼ねた窓ほか、日本あるいは西洋などの地域では見られないような魅惑的な窓が、写真のみならず建築家である著者によるスケッチや図面とともに語られます。どういった理屈でそれらの空間がつくられているのか、そのうえでどう窓を設けているのかをわかりやすく伝えています。

例に、中国の河南省にある張村を見てみましょう。この地域にあるヤオトンという地面に穴を掘ってできた住居形式は、かの習近平が暮らしていたものとしても有名です。もはや「建てる」という言葉を使うのがためらわれる住居は、無限に掘ればどこまでも広くできそうですが、入口と窓しか開口がなく奥に行くほど湿気がひどいため、「新聞紙貼り仕上げ」によって湿度の緩和が図られるなど、生活に根付いたユニークな知恵を垣間見ることができます。また、掘るのは非常に大変な労働であるために、窓を減らす工夫として、入口を2部屋で共有する場合があるのです。そのため、隅の部分では、イスラム風のアーチを用いた開口でありながらきれいなアーチになっていない場合があるのです。これはまさに、文化的な意匠と、機能がぶつかり合った細部としての窓なのです。

著者が「窓からのぞいたアジアは、たしかにひとつではないが、そんなにバラバラでもない」というように、多様な地域性とともに、人間のもっとも根源的な欲求に応えるという点で普遍性も同時に兼ね備える、奥深い装置が窓なのです。本書を読んでぜひ世界の窓を観察しに行っていただきたいところですが、コロナが終息せずかつてのような自由な旅はできない中でも、身近な窓から生活と文化、環境の関わり方を読みとる視点を持っていただけたら幸いです。

(担当/吉田)

著者紹介

田熊隆樹(たぐま・りゅうき)

1992年東京生まれ。早稲田大学大学院建築学専攻修了。大学院休学中にアジア・中東11カ国の建築・集落・民家を巡って旅する。2017年より台湾・宜蘭(イーラン)のFieldoffice Architectsにて美術館、公園、駐車場、バスターミナルなど大小の公共空間を設計している。ユニオン造形文化財団在外研修生、文化庁新進芸術家海外研修制度研修生。

Amazon:アジア「窓」紀行 上海からエルサレムまで:田熊隆樹 著・写真:本

楽天ブックス: アジア「窓」紀行 - 上海からエルサレムまで - 田熊 隆樹 - 9784794226129 : 本

ほぼすべての国産車を詳細にレビュー!『2023年版 間違いだらけのクルマ選び』島下泰久 著

2023年版 間違いだらけのクルマ選び

島下泰久 著

※2022年12月24日ころ発売です。

ニューカー大量デビュー。さらに外見不変・中身激変の「隠れ大改良」も多数。

売れ筋のミニバン御三家、セレナ、ノア/ヴォクシー、ステップワゴンが揃って代替わり。クラウンが驚くべき大変身をとげて新型に。この時代に直6エンジン・FRシャシーを新開発、マツダのCX-60。今期も話題の新型車が大量デビュー! …ですが、その陰で、外観はほぼ不変で中身大刷新の大改良が多数あったのが今期の特徴。カローラ、キックス、フィット、エスクード、IS500…。これらの気づきづらい「隠れ大改良」はもちろん、小改良まで含め、国産車のほとんどを網羅する『間違いだらけ』ならではの詳細レビューが、今期は特に見逃せません。

見通しづらいクルマ業界の将来像、良いクルマがたくさん出て難しくなったクルマ選び。その両方がわかる定番ガイドが今年も発売。例年にも増して、マストな1冊です!

著者YouTubeチャンネルと連動、記事内のQRコードから動画が閲覧可能!

 

◎第1特集:新生! クラウン・シビック・Z

一斉に代替わりしたビッグネームの真価を問う。過去の『間違いだらけ』で各車の歴史も振り返る。

◎第2特集:マツダはなぜ元気なのか?

この時代に「直6・FR」を新開発し今期CX-60を発売。その裏にあるマツダの徹底的合理性とは。

◎第3特集:3大ミニバン頂上決戦

揃って新型となったミニバン御三家、セレナ、ステップワゴン、ノア/ヴォクシー。ベストはどれ?

 

  • 2023年版の指摘

・外見不変・中身激変の商品改良多数。見逃すな!

・国産メーカーのBEV戦略は真面目すぎないか?

・各社揃って言う「BEVの空間価値」って何だ?

・国産メーカーは新しいクルマの価値を模索せよ

SUVに様々な技術が展開。ますます面白い!

 

※カバー画像のダウンロードが下記リンクより可能です。

https://bit.ly/2023machigaidarake

またはhttps://drive.google.com/file/d/1aOaDLdBeRx1yYwevgVLyNiP7Df3P7H_V/view?usp=sharing

 

車種評より

◎新型プリウス

方向性はこれで良かったのか?

 

カローラ

驚愕の大幅アップデート。見逃すな!

 

◎ZR-V

特筆すべき操舵性。今度こそヒットか

 

◎エクストレイル

原点回帰と上級移行、大幅進化

 

◎RX

持ち前の快適性に走りの楽しさ加わった

 

◎サクラ/eKクロスEV

クルマは間違いなく良い。どう使われるか…

 

◎bZ4X/ソルテ

トヨタらしからぬ躓き。走り・乗り心地△

 

◎クラウン・クロスオーバー

驚嘆の大変身だが、これぞあるべき姿

 

シエンタ

外装の“アレ”に似ている感以外は見事

 

◎CX-60

内外装も燃費も素晴らしい。乗り心地は△

 

◎新型セレナ

プロパイロットと家族目線の細かな配慮

 

◎2023年版のニューカー

クラウン・クロスオーバー/シビックe:HEV/シビック・タイプR/フェアレディZ/CX-60/セレナ/ノア/ヴォクシー/ステップワゴン/クロストレック/ZR-V/エクストレイル/RX/プリウス/サクラ/eKクロスEV/アリア/bZ4X/ソルテラ/RZ/ムーブキャンバス/アルト/スペーシアベース/タントファンクロス/シエンタ/GRカローラシトロエンC5 X/テスラ・モデルY

 

著者紹介

島下泰久(しました・やすひさ)

1972年神奈川県生まれ。立教大学法学部卒。国際派モータージャーナリストとして自動車、経済、ファッションなど幅広いメディアへ寄稿するほか、講演やイベント出演なども行なう。2022-2023 日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。『間違いだらけのクルマ選び』を2011年から徳大寺有恒氏とともに、そして2016年版からは単独で執筆する。YouTubeチャンネル「RIDE NOW -Smart Mobility Review-」の主宰など更に活動範囲を広げている。

 

 

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