草思社のblog

ノンフィクション書籍を中心とする出版社・草思社のブログ。

すべては台湾の未来のために『台湾からの亡命者 王育徳の矜持 一生を祖国の夜明けに捧ぐ』近藤明理 著

台湾からの亡命者 王育徳の矜持

――一生を祖国の夜明けに捧ぐ

近藤明理 著

台湾・頼清徳総統、推薦! 
「台湾独立運動の父」の波瀾の生涯を
実娘が繊細な筆致でつづる。

 本書は、戦後の日本において台湾独立運動のさきがけとなり、また台湾語研究の権威としても知られる王育徳(1924~1985)の生涯をたどるノンフィクションです。2011年に上梓された本人による青年期のメモワール『「昭和」を生きた台湾青年』に続き、今回の本では次女である著者が父親の日記や膨大な資料をもとに、20代で日本に逃れてからの「亡命者としての人生」を描いています。
 2.28事件で実兄・王育霖を虐殺されたのち、1949年に文字どおり命がけで日本にやってきた王育徳は、特に以下のような活動を通じて、台湾のための闘いを続けました。
1 台湾独立運動の組織化と啓蒙――1960年、黄昭堂氏ら留学生とともに「台湾青年社」を結成し、機関誌『台湾青年』を創刊。当時、戒厳令下の台湾ではタブーであった2.28事件を世界ではじめて詳細に報じるなど、台湾独立運動の理論的支柱となる。
2 台湾語の学術的研究――「言葉は民族の魂である。言葉を失ったら台湾人は滅ぶ」という信念にもとづき、台湾では禁じられていた母語の研究に没頭。私財を投じて『台湾語常用語彙』を出版し、1969年には東京大学で台湾語研究による初の文学博士号を取得。
3 台湾人元日本兵士への戦後補償運動――晩年の10年間は、日本政府に見捨てられた台湾人元日本兵士たちの権利回復に尽力。1987年の議員立法による弔慰金支給実現の礎を築くも、その成立を見ることなく1985年に急逝。

 また、1961年に王育徳が東京で李登輝氏(当時38歳)と秘密裏に面会した際、王は日記に「彼のような快男児が台湾に百人おれば理想郷の建設は夢物語ではない」と記していました。こうした、その後の台湾の歩みを予言するような言説を多数残していることにも、本書を読まれた方は驚くかもしれません。
 現在、台湾と日本の間には他の国同士にはない強いきずなが存在しますが、そこに至るまでに、故郷に帰ることも許されず闘いを続けた「亡命者」がいたという事実は、残念ながらあまり知られていません。王育徳という人物が戦後の日本社会の中で命を削って守り抜いた志が、多くの日本の読者に届くことを願ってやみません。

(担当/碇)

 

目次

はじめに 

第1章 亡 命
二・二八事件――国民党軍による武力弾圧/台南一中の教師生活/やむをえぬ決断/香港へ脱出/香港で見た「自由」/密輸船で日本へ/下関から神戸へ/偽の外国人登録証

第2章 東京大学再入学と台湾語の研究 
東京大学に復学/中河与一の門下生になる/台湾語の研究を志す/不法滞在者としての東京生活/左翼的な雰囲気の東大文学部/自首/邱永漢『密入国者の手記』による誤解/学者としての暮らし/家を売って辞書を出版

第3章 台湾青年社 
黄昭堂との再会/廖文毅の台湾共和国臨時政府/一九六〇年二月二十八日、台湾青年社発足/機関誌『台湾青年』の創刊/留学生たちの反応/自宅をアジトに/妻・雪梅の内助の功/四面楚歌の状況/「ここは工場だ。革命製造工場だよ」/史上はじめて二・二八事件を世に問う/李登輝との密会/月刊化と強力な助っ人の出現/資金調達に苦心惨憺/連日連夜の活動/台湾青年社加入者の覚悟/言論活動か実力行使か/新体制に移行/台湾青年会から離れる決心

第4章 言論活動の手応え 
『台湾――苦悶するその歴史』の執筆/時代を先取りしたビジョン――論考の紹介/博士論文執筆/大学教師として

第5章 台湾民主化への道のり 
組織名の変遷と機関誌『台湾青年』の役割/苦難の時代(一九六四年〜一九六八年)/投降――台湾独立運動者たちの挫折/事実と異なる証言について/育徳の組織への復帰/世界的な組織・台湾独立聯盟の発足/カンパ行脚の記録/最大の支援者・遠山景久/国連の「中国」代表権問題/封印された育徳の「国台合作論」

第6章 台湾人元日本兵士の補償請求運動 
台湾人元日本兵・中村輝夫の発見/元同胞を切り捨てた日本政府/「一度でいいから日本に行ってみたかった」/「台湾人元日本兵士の補償問題を考える会」発足/「考える会」の活動/国を相手に訴訟に踏み切る/「議員懇談会」の発足と台湾からの圧力/非情の判決を乗り越えて/東京高裁裁判長による異例の「付言」/突然すぎる旅立ち/議員立法成立/「考える会」解散

結び 一寸の虫にも五分の魂 

娘としてのあとがき 

巻末資料一 台湾語の研究 
巻末資料二 台湾青年に告ぐ│発刊の言葉にかえて│ 
巻末資料三 主張「中国代表権問題について」 

王育徳著作一覧 

関連年表

 

著者紹介

近藤明理(こんどう・めいり)

王育徳次女。1954年、東京生まれ。慶應義塾大学文学部英米文学科卒。王育徳紀念館名誉顧問。台湾独立建国聯盟日本本部前委員長(2011-2021年)。全日本台湾連合会顧問。日本李登輝友の会常務理事。日本詩人クラブ会員。著書:詩集『ひきだしが一杯』(創造書房)、『故郷的太陽花』(玉山社)編著:『「昭和」を生きた台湾青年』(草思社)、『王育徳全集』(前衛出版)『Taiwan: A History of Agonies』(前衛出版)等、共訳書:『本当に「中国は一つ」なのか』(草思社)

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16年かけて解明したセンス不要の「おしゃれの正解」を全公開!『「おしゃれ」を言語化します!誰がやっても再現性のある「大人のあか抜け」法則』井川真弓 著

「おしゃれ」を言語化します!

――誰がやっても再現性のある「大人のあか抜け」法則

ファッションコンサルタント 井川真弓 著

●おしゃれな人は、なぜおしゃれなのか

「シンプルなのに、なぜか素敵」身のまわりに、そんな女性はいませんか? 
決して派手ではないのに、どこか凜としていてさわやかで余裕がある。一方、自分はといえば、一生懸命頑張っているはずなのに、なぜか「野暮ったい」感じがする。 
実は、かつての著者もまさにその一人でした。
新卒でアパレル会社に入社した著者は、ファッションが大好きで、年間100万円近くを服代に投じていた時期もありました。それでも「自分だけが野暮ったいのではないか」という不安が消えず、周囲のセンス溢れる人たちを見ては「自分とは生まれ持った才能が違うんだ」と絶望していたと言います。

●センスは「後天的に身につけられるスキル」だった

しかし、16年にわたり「センスがいい人」を観察・分析し続けて、ようやく真実に気づきました。そこにあったのは「センスの差」ではなく、単に「知識とプロセスの差」だったのです。おしゃれのセンスは、後天的に身につけられるスキルでした。
特に、体型やライフスタイルが変化するアラフォー世代の女性が「おしゃれ迷子」になってしまうのには、明確な理由があります。多くの人が、よかれと思って「逆効果な選択」を無意識に選んでしまっているからです。 
 • 体型を隠そうとして、逆に膨らんで見える 
 • 若い頃と同じ「かわいい」を選んでかえって老けて見える 
 • 失敗を恐れて「無難」な服を積み重ね、地味すぎて存在感が消えてしまう 
心当たりはありませんか? これらは決してセンスがないからではありません。ただ、「大人のあか抜け法則」を知らなかっただけなのです 。 

●誰でも再現できる「あか抜けの黄金の方程式」とは

あか抜けるために必要なのは、溢れる情報の中から「正解」を探し回ることではありません。一刻も早く自分が映える「型」を見つけることです。アラフォーになったら、色々な服を着回す必要はなく、究極のワンパターンがあればいいのです。 
本書で紹介する「あか抜けの黄金の方程式」は、驚くほどシンプルです。
 ①ワントーンコーデ: 同系色でまとめ、色の濃淡で立体感を作る
 ②体型補正: 隠すのではなく「Iライン」のシルエットに体を沿わせる
 ③小物づかい: アクセサリーやバッグで奥行きと引き締めを作る 
この方程式を知るだけで、「何を買うか」よりも「どう着るか」の基準が明確になります。自分の中に一つ基準ができると、毎日の服選びは驚くほど簡単で、楽しくなります。 

●おしゃれは人生を豊かにするツール

おしゃれは単なる外見の装飾ではありません。「今日の私、なんかいい感じかも」と思える自信は、行動を前向きに変え、人生をより豊かにしてくれる強力なツールになります。
みなさんの中にある魅力を引き出すための「型」を、ぜひこの本で手に入れてください。

(担当/吉田)

 

目次

はじめに――おしゃれの「正解」を一冊にまとめました
1 色んな服を着こなさなくていい――必要なのは自分が映えるワンパターン 
服をいくら買ってもおしゃれになれない根本原因
服がありすぎて「自分に似合う」服が見つけにくくなる悪循環
着回し思考を捨て、服の「選択肢」を極限まで減らす
クローゼットから追放すべきアイテム
大人の女性にこそおすすめのアイテムを充実させる 
いつ誰と会っても自信を持てる服を着る
おしゃれも筋トレも毎日の習慣がものをいう
「おしゃれな服」は売ってません、服を「どう着るか」が重要
おしゃれへの一歩は「試着」から――試着の正しいやり方
ふつうの人の「組み合わせ」とおしゃれな人の「着こなし」の違い

2 おしゃれに見えるのは「シルエット」のせい――あか抜けるための方程式
洋服の第一印象を決める「シルエット」とは?
おしゃれに見える4つのシルエット、A・Y・X・I
日本人が最も美しく見えるのは、Iラインシルエット
あか抜けるための黄金の方程式
ボディラインを強調しないIラインシルエットには着物のような品がある
体型コンプレックスもIの縦ラインで自然と補正
小物づかいで最後にコーディネートに「立体感」を生み出す

3 かんたんワントーンコーデのつくり方――最小限の服で最大限のおしゃれ効果を生む
コーディネートは3STEP、主役→脇役→小物
アイテム同士に「連続性」をつくる
色数よりもトーン、同系色でまとめればこなれて見える
ワントーンコーデ向きの6つのベーシックカラー
ひと味違うおしゃれ感を演出できるのがグレージュ
季節ごとのグレージュの取り入れ方
ワントーンコーデのポイントは「素材」と「差し色」
ワントーンコーデ応用編、カーディガン、柄入り、ゴールドとシルバー

4 体型は隠さず、補正する――コンプレックス解消10のテクニック
体型コンプレックスは「隠す」とおしゃれになれない
自分の体型の良い点を引き出す視点を持つ
Tips1 ウエスト総ゴムをクローゼットから追放する
Tips2 もも下からのタイトスカートでIラインをつくる
Tips3 丸みのある部分を直線に見せる
Tips4 構築的なシルエットの服を味方につける
Tips5 横のラインと縦のラインを意識する
Tips6 ウエストの境目をぼかす
Tips7 潔くノースリーブ
Tips8 トップスは1枚でなんとかしない! トップス2枚であか抜ける
Tips9 ボトムスと足元の境目をぼかす
Tips10 靴の先をとがらせると足元が決まる

5 「小物づかい」をマスターする――奥行きのある美しさをつくる
ほとんどの人は「小物づかい」の意義をわかっていない
小物の効果は、「奥行き」と「引き締め」
小物選びでは「機能性」と「あか抜け」を意識すべし
「アクセント」か「なじませ」か、目的を明確に決める
「アクセント」としての小物づかいとは?
「なじませ」としての小物づかいとは?

 この8足をそろえればいい
1.スウェード素材のポインテッドトゥパンプス
2.黒のバーサンダル
3.黒のきれいめスポーツサンダル
4.白ベースのスニーカー 
5.黒のローファー 
6.黒のショートブーツ
7.黒のレインブーツ
8.レインローファー

バッグ 3つのシーンで使い分ける
1.お仕事シーン:なじませカラーのトートバッグ
2.休日シーン:アクセントになるショルダーバッグや小さめ巾着バッグ
3.お出かけシーン:ワンハンドルの四角いバッグ
一生もののバッグは幻想!? 目安は5年
ハイブランドとの付き合い方

アクセサリー 3cm以上のピアス/イヤリングは必須
ネックレスは上半身の余白を埋めるアイテム
手元は意外と見られている
ゴールドかシルバーか問題は、服との相性で選ぶのが正解
「太さ」をそろえればアクセサリーは自然とまとまる
盛りすぎ注意! 耳+2ヵ所で抜け感を

スカーフ シンプルにひとさじのアクセント
色柄選び
大きさ
巻き方

小物セットをつくっておく
バッグと靴は色よりも「テイスト」でそろえる
リップも肌もアクセサリー、赤リップとヘルシーな肌見せ

眉毛 メイクの最重要ポイント  

 おすすめは、究極のひとつ結び  

めがね ウェリントン型一択

おわりに

 

著者紹介

井川真弓(いかわ・まゆみ)

1986年生まれ。神戸在住。ファッションコンサルタント・行政書士。愛知県立大学卒業後、アパレル会社に新卒入社、販売員となる。出産を機に退職。年間100万円を洋服代に費やす生活から、専業主婦になり使えるお金がゼロになる。育児うつになりかけていたときに西松屋で見知らぬ人から洋服をほめられたことをきっかけに、ファッションの世界での再起を志し、現在に至る。「品よく、ナチュラルに」をモットーにコーディネート数およそ6000件。集英社Marisol公式読者ブロガー「美女組」としてブログ執筆。

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珍品から傑作まで一挙に上映する仮想映画館。『山田宏一のとっておき二本立て映画館』山田宏一 著

山田宏一のとっておき二本立て映画館

山田宏一 著

映画史にうごめく珍品・絶品をわしづかみにして一挙に上演する夢の仮想映画館。

 現在ウエブ上に連載中の毎月二本立て映画紹介エッセイに加筆して単行本化した本。一昔前、街の映画館は一年中暦に合わせた二本立て興行を組んでいたものだが、ここでも仮想映画館として季節や話題にあった二本立て(邦画洋画二本立て)を考え、おすすめ作品を紹介してみようという映画ファン向けのエッセイ。どの作品を取り上げるかは無数の映画作品の中から著者愛着の作品、知られざる名作、忘れられた作品など、絶妙の選択により繰り出されるラインナップが楽しい。古今東西の映画の中から、面白い映画を見つけることでは当代一流の老練映画評論家が教えてくれる作品たちは今ネットで見ても楽しく味わい深いものばかり。
 まずクリスマスには毎年これを見よ、と言ってフランク・キャプラ監督『素晴らしき哉、人生!』から始まる。人生に絶望したジェイムス・スチュアートがクリスマスの日に2級天使に救われるというヒューマンコメディだが、懐かしきハリウッドの定型にのっとったストーリーながら笑いと涙は今でも十分堪能できる。毎年年末は邦画としては「忠臣蔵」が各社競作だったが本書では溝口健二監督の忘れられた『元禄忠臣蔵 前編・後編』を紹介している。戦時中に作られた本格時代劇だが、再見してその良さがわかったなどと著者は書いている。
 春は木下恵介監督の『春の夢』やハリウッド喜劇の『春の珍事』、夏は山本薩夫監督の『牡丹灯籠』とロシア映画の『妖婆死棺の呪い』などのホラーや怪奇もの。秋はロバート・マリガン監督『九月になれば』や小津安二郎監督の『浮草』…、名作と娯楽作品がごっちゃに推薦されているところが著者の評論の特徴である。本書はネット配信社会になって何でも見られる映画受容の時代にも、いまだ有効な映画ガイド書でもあり、読むと今すぐにでもその作品を見たくなるという著者の映画評論の特徴が横溢している。また各作品についてのエピソード、見識は映画の歴史についての著者の幅広い知識がもとになって語られているので説得力充分であり面白い。
 ゴダールからアラン・ドロンまで、日々どんどん亡くなっていく映画黄金時代のスター、監督の追悼文や作品選定も往年の映画ファンたちには感慨深いだろう。木下恵介監督作品(『お嬢さん乾杯』『新釈四谷怪談』など)、高峰秀子作品(『あらくれ』『秀子の車掌さん』など)、若尾文子作品(『刺青』『女は二度生まれる』など)を多く取り上げているのが本書の特徴。86本紹介、周辺作品を入れると100本以上の案内。

(担当/木谷)

 

著者紹介

山田宏一(やまだ・こういち)

映画評論家。今年88歳。根強い人気を誇る。一貫して一映画ファンの立場として評論を書いてきた。1938年、ジャカルタ生まれ。東京外国語大学フランス語科卒。1964~1967年パリ在住、その間「カイエ・デュ・シネマ」誌同人。著書に「友よ映画よ〈わがヌーヴェル・ヴァーグ誌〉」「何が映画を走らせるのか?」「映画 果てしなきベスト・テン」「ハワード・ホークス映画読本」「ヒッチコック映画読本」日本映画について私が学んだ二、三の事柄」/Ⅱ「ゴダール/映画誌」など。訳書に「映画術 ヒッチコック/トリュフォー」(フランソワ・トリュフォー著 蓮實重彦と共訳)など。1991年、第1回Bunkamura ドゥマゴ文学賞(「トリュフォー ある映画的人生」)に対して)。2007年、第5回文化庁映画賞(映画功労表彰部門)。2017年、第35回川喜多賞。2022年度日本映画ペンクラブ賞(功労賞)。

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謎に満ちた「人体の仕組み」を対話形式でやさしく解き明かす!『アスリートのための運動生理学』榎木泰介 著

アスリートのための運動生理学

榎木泰介 著

 本書は最新のスポーツ科学の知見をもとに、「私たちが体を動かしているとき、体内ではどんな現象が起こっているのか」を解き明かす本です。心臓・肺・肝臓・腎臓・胃腸など基礎となる臓器の役割や仕組みを対話形式でわかりやすく解説するだけではなく、乳酸やホルモンが運動とどのように関わっているのか、人体のエネルギー代謝のしくみはどこまで解明されているのか、また、低酸素トレーニングにはどんな効果が期待できるのかといった注目すべきトピックスまで、やさしく明快に説明しています。乳酸悪玉論に代表されるような「かつての常識」と現在の知見のギャップを楽しみながら、スポーツ科学の最先端を知ることができる本です。
 著者は現在、大阪教育大学で応用健康科学、運動生理生化学等を専門に研究・講義を行なっているほか、同学のアメリカンフットボール部顧問も務めていて、医科学トレーニングや技術指導にも尽力しています。この本の冒頭で著者は「私がなぜ運動生理学を専門に学ぼうと思ったのか。それは、どうして同じ練習をしてもその能力に個人差が出るのか疑問に思い、そもそもヒトの『体力』 や『運動能力』とは何なのかということに興味が湧いたからです」と書いているのですが、これは少しでもスポーツに携わったことがある人なら誰しもが心に抱いたことがある疑問ではないでしょうか。
 こうしたきわめて根源的な問いをベースに、私たちの体の中で起こっている現象を個別具体的に詳説してくれるのが本書の特長といえます。「アスリートをはじめ多くの方にとって、運動生理学が実用的で有効で、それでいてとても奥が深い学問だと知ってもらえますように」という著者の思いが、多くの方に届くことを願ってやみません。

(担当/碇)

 

目次

Chapter0 今、運動生理学が面白い!
・運動生理学への誘い
・「運動生理学」ってどんな学問?

Chapter1 運動生理学の基礎・基本
・心臓を知る
・肺を知る
・肝臓を知る
・腎臓を知る
・胃腸を知る(胃)
・胃腸を知る(腸)
・脾臓・胆嚢・膵臓を知る
・ホルモンを知る

Chapter2 ヒトのからだの不思議を紐解く(エネルギー代謝を理解しよう)
・エネルギー代謝と競技特性
・練習の積み重ね=エネルギー代謝
・「限界」を探求する
・「限界」の観点から見たスポーツの面白さ
・乳酸は名脇役!?
・乳酸再考
・疲労を正しく理解する:その1 
・疲労を正しく理解する:その2 

Chapter3 スポーツ・健康と運動生理学
・フィジカルとパフォーマンスを「つなげ」「整える」
・長距離ランナーにおける筋トレの有効性
・高地・低酸素トレーニング最前線:その1
・高地・低酸素トレーニング最前線:その2
・スプリント持久力:高強度運動を反復する能力
・子どもとスポーツ:発育・発達期の適切な運動量とは
・運動生理学というフィルターを通して見た東京2025世界陸上
・何歳になっても健康でいるための取り組み:その1
・何歳になっても健康でいるための取り組み:その2

 

著者紹介

榎木泰介(えのき・たいすけ)

大阪教育大学准教授。1976年生まれ(大阪市阿倍野区)。1999年大阪教育大学卒業、2005年東京大学大学院総合文化研究科生命環境科学系修了。博士(学術)。2003年ゲルフ大学(カナダ)留学後、2004~08年国立スポーツ科学センター(JISS)スポーツ科学研究部研究員(生化学研究室)、2007~08年女子美術大学非常勤講師等を経て、2009年大阪教育大学講師。2016年より現職。JISS在職中はトップアスリートの生化学的分析、コンディション調整や体重増減の身体への影響などの国際競技力向上に貢献する調査、研究を行う。現在は応用健康科学、運動生理生化学等を専門に研究、講義を行うほか、同学アメリカンフットボール部顧問を務め、医科学トレーニングや技術指導にも尽力している。著書(共著)に『乳酸をどう活かすか』(杏林書院)、『トレーニング指導者テキスト理論編改訂版』(大修館書店)、『ミトコンドリアトレーニング』(市村出版)など。JATI認定トレーニング指導者(JATI-ATI)。

Amazon:アスリートのための運動生理学:榎木泰介 著:本

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誰とも勝敗優劣強弱を競わない。比較する対象があるとすれば「昨日の自分」だけ。『天下無敵をめざす生き方』内田樹 著

天下無敵をめざす生き方

内田樹 著

本書はこの数年間に内田樹氏が執筆した武道・修行・身体論を一冊に収めたものです。

昨年刊行の『どうしたらいいかわからない時代に僕が中高生に言いたいこと』では、人口減少と高齢化が進む前代未聞の状況下において、親や教師のこれまでの成功体験は役に立たないのだから、大人は子供たちに対して「好きなことをやりなさい」と言うのが一番いい、と内田氏は語ります。

「自分が生きたいように生きればいい。(中略)そして、周りにいる友だちがやりたいことをすることを支援する。そうすることによって君たちの世代全体の能力を高める」。

今回の新刊は、前著から一歩踏み込み、著者の人生経験に基づいた提言がなされます。それが「天下無敵をめざす生き方」です。

一見、誇大妄想的、もしくは中二病的な文言だと受け取られるかもしれません。しかし、この絶対に到達できない「無限消失点」のような目標をめざし、淡々と稽古を重ねるという姿勢は、内田樹氏が追い求めてきた思想の根底に位置する重要な概念でもあるのです。

そして、「誰とも勝敗優劣強弱を競わない。比較する対象があるとすれば『昨日の自分』だけ」という生き方は、武道修行者だけのものではありません。「どうしたらいいかわからない時代」だからこそ、社会の状況に惑わされることなく、自分の信じる道を究めていく生き方は、万人にとって魅力的なものでしょう。

困難な時代を生きる子供たちにはもちろん、身の処し方に迷う大人の読者にとっても切実に役立つ一冊です。是非ご高覧ください。

(担当/渡邉)

 

内容紹介

誰とも勝敗優劣強弱を競わない。
比較する対象があるとすれば「昨日の自分」だけ。

中高生のための武道・修行・身体論

「天下無敵」という無限に遠い目標をめざす旅程においては、
修行者は誰も「五十歩百歩」です。
無限の旅程の中で、
自分が他の修行者より何キロ先まで行ったとか、
単位時間内にどれだけ走破したとか、
そんな相対的な優劣を競うことには何の意味もありません。

 

本文より

武道では勝敗強弱巧拙遅速を競うということをしません。それが「居着き」を生み出すからです。居着きは武道の最大の禁忌です。居着いたら終わりです。居着きとは、具体的には足裏が地面に貼りついて身動きできない状態を指す言葉ですけれども、もう少し広義にとれば、行動の選択肢が限定されている状態、同一の動作を反復することもそうです。

他者との相対的優劣を競わないのは、それが人を居着かせるからです。勝負を争う場合、人は負けると「負けに居着き」ます。屈辱感や敗北感にいつまでも囚われて、次のフェーズに進むことができない。あるいは「次は勝つ」という限定的な目標に居着いてしまう。

逆に、勝てば勝ったで、「勝ちに居着く」ということが起きます。ある意味では「勝ちに居着く」ことの方が、「負けに居着く」ことよりも危険かも知れません。勝ったという成功体験に居着いてしまうからです。人は一度成功すると、その成功体験を手放すことに強い心理的抵抗を覚えます。同じ成功体験を繰り返そうとする。でも、修行とは「居着かないこと」です。「勝ちに居着く」者は「負けに居着く」者と同じく、連続的な自己刷新機会を放棄することで修行から脱落した者なのです。

 

目次

まえがき
武道的思考
(修行は競争ではない/武道の変質の歴史/道の場――道場/武道はストレスフリーである/畏怖と同調にむかう道)
凱風の思想
正中線
武道的身体運用の基軸
天下無敵
体軸と外部の力
身体の豊かな可能性
後手に回る
残心について
修行の半世紀
呼吸法について
円筒形の身体
『武道的思考』韓国語版序文
私の原点
あとがき

 

著者紹介

内田樹(うちだ・たつる)

1950年、東京都生まれ。思想家、武道家。神戸女学院大学名誉教授、凱風館館長。著書に『ためらいの倫理学』、『レヴィナスと愛の現象学』、『他者と死者』、『先生はえらい』、『私家版・ユダヤ文化論』(小林秀雄賞)、『日本辺境論』(新書大賞)、『前-哲学的 初期論文集』、『どうしたらいいかわからない時代に僕が中高生に言いたいこと』など多数。伊丹十三賞受賞。

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刑務所で医師が見つめた受刑者たちの心の傷。『プリズン・ドクター 英国の刑務所で働く女性医師の診察録』アマンダ・ブラウン 著 倉骨彰 訳

プリズン・ドクター

――英国の刑務所で働く女性医師の診察録

アマンダ・ブラウン 著 倉骨彰 訳

女性医師が飛び込んだ刑務所での任務

英国の刑務所の奥深くには、私たちが普段目にすることのない、剥き出しの人間ドラマが渦巻いている。一人の女性医師が綴った回顧録『プリズン・ドクター』は、成功したキャリアを捨てて「塀の中」へと飛び込んだ彼女が、そこで出会った魂の叫びを克明に記録した一冊である。

著者のアマンダ・ブラウンは、長年ロンドン郊外で地域密着型の総合診療医として活躍し、患者たちと深い信頼関係を築いてきた。しかし、キャリア継続を阻むある出来事が起こり、49歳にして自身のクリニックを去る決意をする。彼女が再出発の地に選んだのは、これまでの生活とは正反対の過酷な環境である「刑務所」であった。

「塀の中の医師」としての葛藤と成長
少年刑務所での自傷少年との出会い

最初に赴任したハンターコム少年刑務所で彼女を待っていたのは、社会の底辺や機能不全家庭で育ち、暴力的な解決手段しか学んでこなかった少年たちである。自らの内面を守るために虚勢を張る彼らの姿に、彼女は当初戸惑いながらも、次第にその裏にある孤独や脆弱性に気づいていく。そこで出会った自傷を繰り返す少年ジャレッドの出会いが、彼女の内面にある大きな変化をもたらすことになる。

悪名高い男性刑務所での激務

次に彼女が挑んだのは、ロンドン西部に位置する悪名高いワームウッド・スクラブス男性刑務所である。そこは自殺未遂やリンチ、ドラッグが日常的に蔓延する、英国で最も過酷な“職場”といえる。毎日のように緊急アラームに駆り立てられる激務の中で、彼女はプリズンドクターとして鍛えられていく。そこで働く刑務官たち含め、葛藤や苦悩、ときには無力感を感じながらも、刑務所という職場には彼らをつなぎとめる「何か」があった。

受刑者との交流を通じて使命に目覚める

現在(執筆当時)、彼女が身を置くブロンズフィールド女性刑務所は、ヨーロッパ最大級の規模を誇り、社会から最も見捨てられた女性たちが集う場所である。
これまでの刑務所と異なり、ここに収容された女性たちの多くは、過去に凄絶な虐待を受け、その痛みを麻痺させるために薬物に溺れて犯罪に手を染めたという、悲劇的な背景を背負っていた。彼女たちの尊厳が踏みにじられてきた現実を知るにつれ、ブラウン医師は彼女たちの良き理解者となり、心に寄り添う覚悟を固めていく。

「思いやりこそが最高の薬である」という真理

本書を通じて著者が一貫して語るのは、「罪状や人格にかかわらず、目の前で苦しむ人間を助ける」という崇高な医療の原点である。刑務所での多くの受刑者との出会いは、どんなに荒廃した世界にも、心の交流が生まれ、そこから希望や喜びが生まれうることを証明している。刑務所という隔絶された世界で、彼女は「思いやりこそが最高の薬である」という真理にたどり着いたのだ。

アマンダ・ブラウンの物語は、不条理な社会の縮図である刑務所を通じて、私たちに本当の人間愛の価値を問いかけてくる。塀の向こう側にある現実は過酷で残酷だが、そこには確かな再生への希望が息づいていることを、この一冊は力強く示しているのである。

(担当/藤田)

 

本書内容より

ハンターコム少年刑務所:孤独な少年の才能
 18歳の少年ジャレッド/「思いを書き綴ること」/悲哀を綴った美しい詩/規則という壁・刑務所の厳しい現実

ワームウッド・スクラブス男性刑務所:暴力と絶望の日常
 喉を掻き切った青年/ドバイ出身の裕福と強迫性障害/石鹸の贈り物「心の宝物」

ブロンズフィールド女性刑務所:虐待の連鎖と尊厳
 欧州最大級の女性刑務所/25年にわたる薬物依存に苦しむ女性/性的暴行を受けた凄絶な過去/独居房での予期せぬ出産/母親の薬物依存や将来の母子分離の懸念

 

著者紹介

アマンダ・ブラウン(Dr. Amanda Brown)

英国の刑務所の総合診療医(GP)を務めた医師。長年、国民保健サービス(NHS)の一般総合診療医として勤務していたが、診療所を辞めて刑務所医療の世界に転身。青少年拘置所で働いた後、ワームウッド・スクラブス刑務所を経て、退職するまでの7年間、ヨーロッパ最大の女性専用刑務所であるブロンズフィールド刑務所に勤務。本書は初めての著書。サンデー・タイムズ紙で11週連続ベストセラーとなり、25万部を突破。

 

訳者紹介

倉骨彰(くらほね・あきら)

翻訳家。数理言語学博士。テキサス大学オースチン校大学院言語学研究科博士課程修了。同校で自然言語処理を研究。訳書にジャレド・ダイアモンド『銃・病原菌・鉄』『昨日までの世界』、ニック・ボストロム『スーパーインテリジェンス』、ダニエル・ヒリス『思考する機械 コンピュータ』など多数。

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インチキなAIに振り回されているわたしたちへの処方箋『AI過大評価社会 AIには何ができて、何ができないか』アルヴィンド・ナラヤナン、サヤシュ・カプール 著 的場知之 訳

AI過大評価社会

――AIには何ができて、何ができないか

アルヴィンド・ナラヤナン、サヤシュ・カプール 著 的場知之 訳

このところ、「AIで世界が滅びる」であったり、「AIですべての問題が解決する」など、AIの高性能さを無条件に前提したような主張が多く目に入るようになりました。それ以外にも、「そんなこともできるのか」と驚くようなAIの宣伝を見ない日はありません。しかし、実際のところ、それらはどのくらいの精度で有効なのでしょうか。もし「それ程有効でない」としたら、「なぜ」「だれが」過剰に性能を誇張しているのでしょうか。

本書は、TIME誌が選ぶ「AI分野で最も影響のある100人」に選ばれたAI研究のエキスパートが、これらのAIをとりまく社会を冷静に分析し、AIの性能を過剰に謳う社会を批判し、AIに本当にできることを見極め、あるべきAI社会を問うものです。本書は、「AI SNAKE OIL」というなんとも変わった原タイトルですが、この蛇の油とは、効能がないのにあるかのように謳って売られていた「インチキ」薬で、AI SNAKE OILとはそのAI版という意味になります。

まず、AIの現実的な性能について検証するのですが、本書にはAIに関する研究について、衝撃的なデータがあります。
ノルウェー科学技術大学のオッド・エリック・グンデルソンとシグビョルン・クイェンスモは、AI分野の主要誌に掲載された400本の論文を対象に、第三者の研究者が再現実験をおこなうのに十分な詳細情報が含まれているかどうかを検証したところ、400本の論文のなかに、再現性基準(コードとデータの共有など)をすべて満たすものは、なんと「ひとつも」なかった のです。その他にも、再犯リスクを予測するAIや、医療系の予測系AIなどで、実際には6割程度の正確さ(つまり、コイントス=50%より少しマシな程度)であることが述べられています。このように、AIの性能に関する数字には、多くの誇張が含まれているという事実があるのです。

では、なぜこのようなことが起こるのでしょうか。そこには、以下の4つの点において、さまざまな要因を挙げることができます。

①研究者
資金や注目を集めようとするインセンティブが働き、厳密さよりも有用性を大きく喧伝してしまいます
②企業
研究データが公開されておらず、先の研究の再現性の問題のようなことが生じていたり、
数値が実際よりも効果的に操作されている可能性がある
③メディア、著名人
メディアや著名人はクリック数や視聴率を稼ぐため、プレスリリースの焼き直しや、ロボットのような誤解を招く画像を使ってAIを神格化・神秘化して報じます 。
④人間の認知バイアス
自動化バイアス(AIが出した結果に対して、過度に信頼を置いてしまう傾向 )や、ハロー効果、アンカリングバイアスなどのさまざまなバイアスが、
AIについてより顕著に作動している。

このように見るとき、重要なのは、AIの現実的な現状の性能と、人間の認識のゆがみを冷静に認識したうえで、正しいAIの未来を描いていくことだとわかります。
本書には、人工知能開発の歴史についての記述もあり、ここまでの道程の困難さを考えると、そうAIがすぐに人間を超越したり、亡ぼしたりすると考えるのはやや早計で、それよりも人間のAIの認識の方を改めるのがはるかに先決であると言えるでしょう。
加熱するAI報道に惑わされないために、今こそ読んでほしい1冊です。

(担当/吉田)

 

著者紹介

アルヴィンド・ナラヤナン(Arvind Narayanan)

プリンストン大学教授(コンピューターサイエンス)、およびプリンストン大学情報技術政策センター(CITP)所長。同大の「ウェブ透明性・説明責任プロジェクト」を率いて企業による個人情報の収集と利用の実態解明にあたる。機械学習が文化的ステレオタイプを反映することをいち早く実証した。2017年、米連邦政府が若手研究者に授与する最高の栄誉であるPECASE賞を受賞。共著に『Bitcoin and Cryptocurrency Technologies』『Fairness and Machine Learning』がある。

 

サヤシュ・カプール(Sayash Kapoor)

プリンストン大学情報技術政策センター(CITP)でコンピューターサイエンスを専攻する博士課程大学院生。研究テーマはAIの社会的影響。コロンビア大学、スイス連邦工科大学ローザンヌ校(EPFL)、フェイスブックでAIの研究・開発に携わった経験をもつ。2019年、情報技術と倫理に関する国際学会「ACM FAccT」で最優秀論文賞を受賞。『TIME』誌が選ぶ2023年版の「AI分野でもっとも影響力のある100人」にナラヤナンとともに選出された。

 

訳者紹介

的場知之(まとば・ともゆき)

翻訳家。東京大学教養学部卒業。同大学院総合文化研究科修士課程修了、同博士課程中退。訳書に、ローズ『生物学を進化させた男 エドワード・O・ウィルソン』(草思社)、ロソス『ネコはどうしてニャアと鳴くの?』(化学同人)、マイバーグ『空飛ぶ悪魔に魅せられて』(青土社)、カーシェンバウム『まじめに動物の言語を考えてみた』(柏書房)、コクラン『政治理論と動物』(みすず書房)など。

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