草思社のblog

ノンフィクション書籍を中心とする出版社・草思社のブログ。

ウイルスも寄生生物。どこで生まれて、どう進化したの?『寄生生物の果てしなき進化』トゥオマス・アイヴェロ 著 セルボ貴子 訳

寄生生物の果てしなき進化

トゥオマス・アイヴェロ 著 セルボ貴子 訳

いまだに収束が見えないコロナウイルス、近年日本でも発見され警戒されている人獣共通感染症のエキノコックス。これらは、他の生物 を搾取して生きる「寄生生物」という点で同じ仲間です。寄生生物 には私たちを脅威に陥れるものもいれば、腸内細菌のように生きていくうえで役に立ってくれる種もいます。しかし、「その生存を他の生物に委ねる」という一見いびつに見える営みは、一体いつから始まったのでしょうか。また、その脆弱にも見える生存戦略が、今日まで途絶えることがないのも考えてみると不思議です。本書は、寄生生物たちがその誕生から現在、そして未来まで、どのように発展してきたのかを進化と人類との関わりの観点から語ります。

・こんなところにも寄生生物。深い人類との関わり

人類との関わりで、いくつか興味深いエピソードを紹介します。メジナ虫は、人間に感染する長い紐状の寄生虫ですが、ギリシャ神話のアスクレーピオスが持つ蛇が巻き付いた杖は、実はメジナ虫を巻き付けて取り除いたことを象徴しているという説があります。また、モーセ五書のうち四番目の『民数記』では、エジプト人たちを困らせた毒蛇についての記述がありますが、この毒蛇もメジナ虫だったと考えられています。そして進化という観点で見ると、結核はもともと先史時代には潜伏期間が長い病気だったのですが、中世になり欧州、中国、インドという人口の多い国にたどり着いたことで、次から次に他の人に飛び移れることになり、現在のように潜伏期間が短いものになっていったのです。

・「人類の健康」から、「生態系の健康」へ

本書は、目黒寄生虫館の館長である倉持利明氏に解説を寄せていただきました。その中で、本書の以下の部分を象徴的な箇所として引用しています。「感染症は医学だけの問題ではない。生態学も、文化も、都市計画も、歴史的な側面も関わる」。これは、 人間、家畜、または野生動物の健康についてはすでに個別に語る段階ではないことを意味します。著者は、この生態系全体の健康を考える重要性を説き、それを「ワンヘルス」と呼んでいます。未曾有の寄生生物である感染症の危機を経験しているいま、このより大きな視点での健康を真剣に考えるべき時が来ています。本書の進化生物学の広大な視点が、寄生生物とのより未来志向な共生について考える一助となれば幸いです。

(担当/吉田)

著者紹介

トゥオマス・アイヴェロ

1984年生まれ。新進気鋭の生態学、進化生物学者。自称“ネズミと寄生虫”通。現在、ヘルシンキ市のネズミの分布、寄生虫、人間のネズミに対する態度の分野横断的研究グループ主任。科学雑誌 Tiedeのオンラインブログ「すべての背後には寄生生物がいる」は、同国で最も読者数の多いブログで本書の元となった。

訳者紹介

セルボ貴子(せるぼ・たかこ)

広島県出身、2001年よりフィンランド在住、夫とWaConnection 社にて、通訳・翻訳 &コンサルティング業を営む。軸はサステナビリティ、訳書に『世界からコーヒーがなくなるまえに』(青土社)、『ムーミンの生みの親、トーベ・ヤンソン』(河出書房新社)などがある。

解説者紹介

倉持利明(くらもち・としあき)

公益財団法人目黒寄生虫館館長。1955年生まれ。博士(獣医学)。京急油壺マリンパーク、第32次日本南極地域観測隊夏隊、日本歯科大学、国立科学博物館を経て、2021年4月より目黒寄生虫館館長。専門は寄生虫の分類学と動物地理学で、中でも海産魚に寄生する吸虫類の研究を行っている。

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61人の女性の美しさを捉えた写真と言葉『ワンピースのおんな』宇壽山貴久子 写真、すまあみ 文

ワンピースのおんな

宇壽山貴久子 写真 すまあみ 文

 本書は、ニューヨーク、カリフォルニア、そして日本各地に在住の50歳以上の女性61人をモデルにしたポートレート写真集です。「暮しの手帖」誌に11年間にわたって連載された作品をもとに、一冊にまとめました。
 彼女たちはそれぞれお気に入りのワンピースを身にまとっています。フェミニンなもの、シンプルでリラックスできるもの、形の面白さと色に惹かれたもの、着るとワンランクアップした気分になれるもの、自分でデザインしたもの、体のラインをきれいに見せるもの、主張のあるもの、踊りやすいもの、気分が晴れやかになる鮮やかなもの、夫がプレゼントしてくれたもの、母から譲り受けたもの……。
 宇壽山貴久子氏が「あとがき」で述べるように、「皆その一着を大切にしていて、自分に似合うものを身に着けて」、「はたから見て似合わない、変だと思われても、好きなものを着ているからそれでよい、という方もいた」。芯に強さを持つ、凛とした女性の美しさを、それぞれの写真が捉えています。
 そして本書のもう一つの魅力は、女性たちの語る言葉です。「不幸や困難は、人生において誰にでも、公平に起こりうることだと思う。/起きたことを受けとめていけばいい。そしてなぜだかそういう状況は、人と人との繋がりを深くする」「女だからといってできないことはない。/ただもし子どもがいて、ともに人生を歩めていたら、なお良かったと思うこともある」「自分で自分を楽しませること、それが人生を謳歌する秘訣だと思う」「本当にやりたいことがあるなら、歯を食いしばってふんばる。死ぬまでそうありたいと思っている」など、一人一人が人生で大切にしてきた信条を、すまあみ氏が印象的な文章にまとめました。
 やさしさと温かさが溢れる本書を、是非お楽しみください。

(担当/渡邉)

【目次】
小花柄の黒いワンピース ビクトリア・ヘレラさん
白いギャザーワンピース 吉田真弓さん
麻のAラインワンピース ジュリエット・ホーンさん
インド綿のブロックプリントワンピース スーザン・ハーンさん
オレンジ色のアシメトリーワンピース ロンダ・ラドミンさん
パンダのワッペン付きストライプのワンピース 寺本美樹さん
ターコイズ色のAラインワンピース ダイアン・ポーターさん
緑色のワンピース 坂本ミリアムさん
グレージャージーのワンピース レナーテ・シュバルツさん
リネンとコットンのコートワンピース ナカムラユキさん
アマゾン柄のワンピース 中山千寿さん
黒いワンピース 小竹由美子さん
ニットのノースリーブ・ワンピース ケイティー恩田さん
18世紀頃の麻のワンピース バーバラ・バイクさん
フォグリネンワークのワンピース シェリー・オルセンさん
刺繡を施したシルクコットンのワンピース 坂井ミドリさん
グラフィティープリントのジャージードレス アンキー・スペッツさん
チェックのサックドレス 高田節子さん
バティック柄のワンピース マライカ・アデロさん
蝶のグラフィックプリントのワンピース デボラ・ウィリアムスさん
赤いツイードのワンピース 桐島かれんさん
貫頭衣のような鹿の子地のワンピース 三宅治子さん
刺繡入りのチュニックワンピース ジューン・テイラーさん
キャス・キッドソンの花柄のワンピース スベタラナ・サリュコワさん
東セルビアの手刺繡のジャンパースカート 山崎佳代子さん
シルクジャージーのラップドレス 田川公子さん
フラワープリントのワンピース ジャッキー・タルモさん
麻のロングワンピース 岡本恵子さん
黒いニットのベビードールワンピース コジママサコさん
黄色いボレロワンピース ユゲット・グラシャノクさん
インドネシアのロングワンピース イーダ・メランキーさん
赤いチェックのコットンワンピース 武久眞理さん
綿麻の白いワンピース 中川清美さん
タイダイのワンピース カーラ・エルナンデスさん
黒のギリシャ風ロングワンピース バーバラ・コイルさん
ヴィンテージの水玉模様ワンピース 斎藤真理子さん
黒いシフォンのエンパイアドレス ペナイン・ハートさん
コットンのスタンドカラーワンピース 中村夏実さん
チャコールグレーのプリーツドレス ロナ・エルロイさん
直線裁ちのコットンワンピース 坂井より子さん
ターコイズブルーのインド調ワンピース 小泉あや子さん
黒いウールのワンピース ジェーン・W・オズボーンさん
刺繡のロングワンピース 安久井千穂子さん
紺色のエプロンワンピース ミュリエル・ファバロさん
ブルーグレーの麻のワンピース クリスティーナ・マケラーさん
黒いカクテルドレス ジュディーアン・マネリーノさん
サーモン色のコットンワンピース パトリシア・レーガンさん
ブロックプリントのワンピース クリスティーナ・ギッティさん
シルクのリバーシブルドレス エレン・バーケンブリットさん
手編みのニットワンピース 大平玲玲さん
白いアシメトリーワンピース スザンヌ・ゴールデンさん
コットンのシフトドレス 小前洋子さん
グラフィックプリントのグラデーションドレス メリー・シンダーさん
コットンのバルーンワンピース 浅野千里さん
ペイズリー柄のワンピース キャシー平野さん
花柄のフレアワンピース 冨永粒さん
チェックのコクーンワンピース 岡本敬子さん
ネイビーのシルクワンピース メアリー・アレキサンダーさん
編み込み模様のサマーニットドレス 黒津由子さん
ジェフリー・ビーンのヴィンテージワンピース デブリエル・デ・モンフォールさん
水玉模様のフレアワンピース 大谷由美子さん
あとがき

著者紹介

宇壽山貴久子(うすやま きくこ)/写真
写真家。宮城県出身。早稲田大学卒業後に渡米し、Fashion Institute of Technologyで写真を学ぶ。2002年「犬道場」で写真新世紀奨励賞。雑誌や広告などで活動しながら様々な作品を制作発表している。主な作品に「SAME TIME NEXT YEAR」(2019)など。

すまあみ/文
壁画ペインター。東京都出身。17年間をニューヨークで過ごす。学生時代に出会った宇壽山氏に誘われ「ワンピースのおんな」のテキストを担当。ライターを経て、こども部屋のカスタムペインターに転身。現在は拠点を東京に移し、保育施設の壁画制作や、こどもと作るパブリックアートの制作に力を入れている。

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多数の指導経験から編み出された、画期的美文字練習法!『誰でも確実に美文字になる るいとも練習法』川南富美恵 著

誰でも確実に美文字になる るいとも練習法

川南富美恵 著

◆書き方が似た字をまとめて練習するから、効率よく学べる。画期的美文字練習法

 「もう少しうまく字が書けたら……」。そう思って、ペン字の練習をはじめても、なかなか上達しない、だから続けられない、という方は少なくないようです。もしかしたら、それは、その方の学び方が悪いせいではなく、「教え方」のほうに原因があるのかもしれません。
 本書は、自らペン字教室を主宰し、生徒さんに教えてきた著者の経験から編み出された、非常に効率的で実践的なペン字練習法「るいとも練習法」についてまとめた本です。

◆「るいとも練習法」って何? どこが画期的?

 ペン字の練習がなかなか続けられないのは、練習した成果がすぐ実感できないからではないでしょうか。また、最初から難しい課題に突き当たって、行き詰まるからかもしれません。著者は、生徒さんが効率よく学べるように、成果を実感しながら継続できるようにと、指導の方法に工夫を重ね、次のような「るいとも練習法」を考案しました。

①文の7割は、ひらがなが占めています。だから、ひらがなから練習します。よく使う字から上手になっていくので、すぐに成果が実感できます。

②書き方が似た字をまとめて練習します。だから、ばらばらに練習するより、ずっと効率よく学べます。

③画数の少ない簡単な字から練習をはじめます。だから、挫折しづらく継続しやすくなります。

④漢字はコツの組合せで上達していきます。だから、すべての漢字を練習する必要はありません。コツを一つ一つ教えます。

 たとえば、一般的な指導法だと、ひらがなは五十音順に「あ」から学ばせることが多いですが、じつは「あ」は画数も曲線も多く、難しい字です。そこで「るいとも練習法」では、画数が少なく書き方が似ている「く」「へ」のペアから学ぶ、といった具合です。似た字をまとめて学ぶので、「類は友を呼ぶ」から「るいとも練習法」と名づけられました。
 本書のもう一つの特長は、学ぶ人の視点に立って丁寧に解説する著者の語り口です。注意するべき点を詳しく、読者に語りかけるように優しく教えます。
 宛名書きや、署名、ちょっとしたメモや一筆箋など、デジタル化が進んだ現代でも、文字を書く機会は案外多いものです。ぜひ、本書のメソッドで成果を実感しながら、ペン字を学んでみてください。

(担当/久保田)

著者紹介

川南富美恵(かわみなみ・ふみえ)

青山一丁目ペン字筆ペン教室主宰。幼少期より、書道師範の父から字の指導を受ける。早稲田大学卒業。国会議員秘書、出版社広報部などを経て、書写講師資格を取得、2016年青山一丁目ペン字筆ペン教室スタート。きれいなだけでなく、自分に自信を持てる字の書き方、手紙のマナー、季節の挨拶や言葉の使い方などの指導が好評。月に100名以上が通う人気の教室に。よみうりカルチャー自由が丘、日本橋三越でも講座を持つ。新聞紹介、テレビ出演も多数。著書に『字がきれい!はいいことづくし』(評言社)がある。

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数千万年前の出来事を、地層は教えてくれる。『楽しい地層図鑑』小白井亮一 写真・文

楽しい地層図鑑

小白井亮一 写真・文

◆ゼロから地層の面白さを解説する本格的入門図鑑、遂に登場

 地層や地質を扱うテレビ番組が人気になったり、2020年には地質年代として「チバニアン」が承認されたことが大きく報道されたりと、いま、地層に注目が集まっています。また日本各地に「ジオパーク」という、地球の活動の営みを体感し学ぶ場所も整備され、観光地として賑わうようになってきました。
 にもかかわらず、前提知識なしで読み始められる入門的な地層図鑑はあまりなく、初学者が地層の知識を得ることは、なかなか難しい状況が続いてきました。本書は、そこに登場した本格的入門図鑑です。「地層のシマシマはなぜできるのか」「地層の年代はなぜわかる?」のような素朴な疑問から、大地の成り立ちまで、著者自ら撮影した約240点の美しい写真を使ってわかりやすく解説します。本書を読めば、見慣れた崖の地層も、どのようにできたのかを推理したくなり、以前とはまったく違って見えることでしょう。

◆日本は地層の大展示場!? 多彩な地層が観察できる特別な場所

 日本は世界有数の地震国ですが、その原因となっているのは、たくさんのプレートが日本周辺に集まり、沈み込んでいるからです。そのせいでたくさんの火山もあります。これは裏を返せば、日本では多種多様な地質活動が非常に長い期間にわたり起こり続けてきたということで、結果的に多彩な地層が形作られることとなりました。つまり、日本は、数多くの種類の魅力的な地層が観察できる、実に恵まれた立地にあるのです。
 本書は「地層とは何か」「どうやって地層はできるか」「岩石にはどんな種類があるか」「化石はどのようにできるか」のような事柄を、基礎から順を追って写真で解説していくのですが、その写真に出てくる地層は、ほとんどすべてが日本のもの。地層に関するあらゆる事柄が、日本で見られる地層で語れてしまうというのも驚きですし、写真を見ればその美しさ・奇妙さに魅了され、実際にその場に行ってみたくなるでしょう。 千葉県銚子市の犬吠埼や、宮崎県日南海岸の「鬼の洗濯岩」などの著名な景勝地だけでなく、城の石垣に使われた珍しい岩石や、さらには都内を流れる神田川河床の露頭(地層などが露出している場所のこと)なども紹介、なぜそこにそのようなものができたのかについても、詳しくわかりやすく解説しています。
 知識を持って地層を見れば、数十万年前、数千万年前、あるいは数億年前に、その場で何が起きたのかを知ることができます。本書を読んで、地層を見に行って、地球の歴史に思いをはせる体験を、是非味わってみてください。

(担当/久保田)

著者略歴

小白井亮一(こじろい・りょういち)

1960年、東京都生まれ。1986年3月、千葉大学大学院理学研究科(地学専攻)修了。国土地理院にて測量・地図作成や災害対応の業務に携わり、2021年3月退職。趣味で関心を持ち続けてきた“石の世界(地層・化石・岩石・鉱物のこと)”について、興味深く、わかりやすく伝える執筆活動を始める。これまでの著書に『わかりやすい測量の数学 行列と最小二乗法』、『わかりやすいGPS測量』(ともにオーム社)、『地形のヒミツが見えてくる 体感!東京凸凹地図』(分担執筆、技術評論社)などがある。

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新進気鋭の歌人が文学、哲学の深淵に迫る 『死にたいのに死ねないので本を読む 絶望するあなたのための読書案内』吉田隼人著

死にたいのに死ねないので本を読む

――絶望するあなたのための読書案内

吉田隼人 著

◆縦横無尽な筆致で誘う「書物への旅」

 ホフマン、ボードレール、マラルメ、ニーチェ、ハイデガー、バタイユ、藤原定家、上田秋成、波多野精一、九鬼周造、塚本邦雄、三島由紀夫……。
 十六歳で自殺未遂を犯してから、文学書、思想書は著者にとって唯一の心の拠り所でした。本書は角川短歌賞・現代歌人協会賞受賞の歌人・研究者が、古今東西の名著のエッセンスを、読書時の記憶を回想するとともに紹介する一冊です。
 巧みに引用を交えながら、ペダンティズムとナルシシズムをスパイスに、縦横無尽な筆致で古典的名作の読みどころを解説します。

◆定家からベルクソン、そして18禁ゲームまで

 第一部にフィクションの要素を含む小説風のもの、第二部に評論風のものをまとめた二部構成です。
 上田秋成『雨月物語』、塚本邦雄『定家百首』、ボードレール『パリの憂愁』、『マラルメ詩集』といった文学書から、ベルクソン『物質と記憶』、波多野精一『時と永遠』、九鬼周造『「いき」の構造』といった哲学・思想書まで、幅広い書物を取り上げます。数々の書物に加え、伝説的18禁ゲーム『さよならを教えて』の魅力も解き明かします。
 憂鬱、絶望、虚無、孤独、不安……。こうした感情に苛まれながらも、文学や哲学の深淵に迫る読書エッセイを是非お楽しみください。

(担当/渡邉)

【目次】
はしがき

Ⅰ 記憶――十二の断章
一行のボオド「レエル」――『パリの憂愁』
傍観者のエチカ――『エチカ』
存在と弛緩――『存在と時間』
記憶の周波数――『物質と記憶』
浅茅が宿の朝露――『雨月物語』
放課後の物騙り――『アクアリウムの夜』
コッペリウスの冬――『砂男』
雨はライプニッツのように――『形而上学叙説』
カフカと父親の話――『文学と悪』
かるてしうす異聞――『省察』
アナベル・リイ変奏――『美しいアナベル・リイ』
書かれざる物語――『二人であることの病い』

Ⅱ 書物への旅――批評的エセー
世界は一冊の書物――『マラルメ詩集』
ブライヤーは何の花?――『思想のドラマトゥルギー』
木漏れ日の哲学者――『喜ばしき知恵』
終る世界のエクリチュール――『渡辺一夫敗戦日記』
ある自伝の余白に――『闇屋になりそこねた哲学者』
美とは虚無のまたの名――『定家百首』
時間についてのエスキース――『時と永遠』
劇的人間と劇場型人間――『岬にての物語』
視ることのドラマトゥルギー――『内的体験』
ジル・ド・レ覚書――『異端の肖像』
一輪の花の幻――『夏の花』
翻訳の悪無限――『「いき」の構造』
さよならの不可能性について――『さよならを教えて』

あとがきにかえて――「早稲田の文学と私」

著者紹介
吉田隼人(よしだ・はやと)
1989年、福島県生まれ。県立福島高校を経て2012年に早稲田大学文化構想学部表象・メディア論系卒業。早稲田大学大学院文学研究科フランス語フランス文学コースに進み、2014年に修士課程修了、2020年に博士後期課程単位取得退学。高校時代より作歌を始め、2013年に第59回角川短歌賞、2016年に第60回現代歌人協会賞をそれぞれ受賞。著書に歌集『忘却のための試論』(書肆侃侃房、2015年刊)。

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いつか来る最愛のペットとの別れを、真正面から考えてみる『ペットが死について知っていること』ジェフリー・M・マッソン著

ペットが死について知っていること

――伴侶動物との別れをめぐる心の科学

ジェフリー・M・マッソン著 青樹玲訳

コロナ禍による巣ごもりの拡大でペットを飼う人が増えていることを「ペットノミクス」と呼ぶそうです。動物とかけがえのない時間を過ごす人が増えているのはとても素晴らしいことです。しかし、避けては通れない瞬間が、いつの日か必ず訪れます。最良の友人であるペットの最後に、私たちはどう向き合うべきでしょうか。また、動物たち自身は、死について何かを知っているのでしょうか。本書は、動物たち自身あるいは飼い主の「死」の認識について考え、そのうえで、私たちがどう彼らの最後に向き合うことができるかを考える、動物との絆についての書です。

命が尽きる直前に独特な表情でこちらをみつめる犬、飼い主の前から姿を消した死期の近い猫など、動物が自身の死を悟ったかのように特定の行動をとることは多く確認されています。また、オスカーという病院で飼われていた猫は、死期が近い患者を正確に見分けられたといいます。これらは、動物たちが何らかの形で死をとらえる能力がある可能性を示しています。そうであるならば、死に対して動物が抱きうる感情に寄り添って行動することが、飼い主として彼ら彼女らにできる最良のことなのかもしれません。
彼らの最後の瞬間を見続けるのはつらいという人も多くいます。しかし、彼らが最後の最後まで一緒にいてほしいと思っている可能性があるのなら、できるかぎりその時まで一緒にいてあげたほうが良いというのが著者の基本的な主張です。ですが、あくまでも最後の決断に正解というものはありません。自分自身の納得のいくように見送り、悲しみ、悼むことで、私たちが深い感情を味わうことができればよいのです。それは、動物たちが、私たちをより人間らしくしてくれた証だといえます。

その他にも、子どもに正直に現実を伝えるべきなのか、自分よりも早く逝ってしまうことについてどう考えるべきなのかなど、飼い主を悩ませる様々な問題に対して、本書は解決のための糸口となるような話題をたくさん提供しています。この難しい課題に向き合ったのは、『ゾウがすすり泣く時』で一躍動物の心に関する大家となったジェフリー・M・マッソン氏です。犬を中心に動物たちの感情について多くの書を世に送り出したジェフリー氏の、集大成ともいえる作品です。
本書が、ペットを飼っている方はもちろんのこと、動物と人間の心のつながりについて興味がある多くの方に手に取っていただければ幸いです。

(担当/吉田)

著者紹介

ジェフリー・M・マッソン

1941年、シカゴ生。ハーヴァード大学でサンスクリット学、トロントの大学で精神分析学を学ぶ。『ゾウがすすり泣くとき』(河出書房新社)は世界的ベストセラーに。『猫たちの9つの感情』『犬の愛に嘘はない』(河出書房新社)など、動物の感情世界に関する著作多数。

訳者紹介

青樹玲(あおき・れい)

翻訳者。立教大学文学部英米文学科卒業。海外小説、英語学習誌、英語教材書籍の編集者、英語教材の開発者を経て、翻訳者になる。

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「将来役に立つ?」「始めるなら小さいうち?」 幼児期の勉強や習い事に悩むすべての人へ『子どもの英語教育はあせらなくて大丈夫!』ピーター・フランクル著

子どもの英語教育はあせらなくて大丈夫!

――12ヵ国語を操る、世界的数学者が、今伝えたい、子育てで本当に優先すべきこと

ピーター・フランクル著

■幼児期の英語教育で、本当に将来グローバルに活躍する力が身に付くの?

 グローバルな時代の本格的な到来が叫ばれる中、子どもが将来大きくなったときに少しでも有利になるよう、英語の早期教育に俄然注目が集まっています。 
 あちらこちらで幼児向け英語教室やインターナショナル保育園や幼稚園を見かけるようになり、最近ではバイリンガル環境が用意されたインターナショナル学童まで登場し、大変な人気のようです。 
 でも小さい頃からの英語偏重の教育で本当にグローバルに活躍する力が身に付くのでしょうか? 本書はこうした疑問や不安に答えるべく、世界110ヵ国を訪れた経験を持ち、12ヵ国語に堪能な世界的数学者である著者が、自らの学習体験をもとに、いかにしてグローバル時代を生き抜く能力を身に付け、自分で考え自発的に学んでいく力を育んでいくかのコツと方法をあますところなく伝授するものです。

■小さいうちは子どもの自己肯定感を高め、人間としての土台づくりを優先しよう!

 まず著者は小学校低学年までは英語などの具体的な勉強はさせなくていいと断言します(実際、著者が初めての外国語であるドイツ語を習得したのは中学3年生になってから)。むしろ幼児期は人間としての基盤をつくる大切な時期であり、そのためには母国語をしっかり身に付け、自分のルーツを確立することが最重要であると説きます。
 自分のルーツを確立することが安心感を生みだし、心の安定や自己肯定感をもたらし、それがその後の健やかな成長と学力や能力を伸ばしていく上で欠かすことができない土台となっていくからだと言います。
 また、母国語の確実な習得に加え、カードゲームやチェスやパズルなどの遊びを通じて、小さいうちから自然と論理的に考える力や算数・数学に対する関心を高めていった著者の子ども時代の経験談は、どうすれば頭の良い子が育つのか知りたいという人にとって大変参考になる内容となっています。

 本書の存在が、子どもの英語学習について迷っている方、子育てそのものに悩んでいる方の一助となりましたら、これほどうれしいことはありません。
 ぜひ多くの方に手に取っていただければ幸いです。

(担当/吉田)

 

第1章 子どもの英語学習、いつから始めるのが正解? 
第2章 小さな子どもの「好奇心」と「考える力」を大事にしよう 
第3章 英語はあとから、算数は小さいうちが良い理由 
第4章 英語はスキルではなく、コミュニケーション 
第5章 僕が出会った真の国際人 
第6章 親が人生を楽しめば、子どもも人生を楽しめる

 

著者紹介

ピーター・フランクル

1953年ハンガリー生まれの数学者で大道芸人。国際数学オリンピック金メダリスト。世界各国で暮らした後、1988年より日本に定住。算数オリンピック委員会理事、ハンガリー学士院メンバー、日本ジャグリング協会名誉顧問。12ヵ国語を話せ、110ヵ国以上を訪れた経験を持つ。講演活動、テレビ出演、執筆活動など多彩な活動を通じて、日本人に人生をより豊かにするコツを伝えようと尽力している。

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