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日本人は雑草や自然とどう向き合ってきたのか? 『文庫 雑草と日本人 植物・農・自然から見た日本文化』稲垣栄洋 著

雑草と日本人

――植物・農・自然から見た日本文化

稲垣栄洋 著

「しなやかで強い日本人」を育んだ背景を探る

「そんなことをしている暇があったら、草取りでもしていろ」
著者はサラリーマン時代に、そんなふうに怒られたことがあるそうです。
この台詞は皮肉だったのでしょうが、
実際、日本では、歴史的に「草取り」が非常に重んじられてきました。
雨が多く高温多湿な日本では、農作物がよく育つ一方、雑草の繁殖もいちじるしい。
日本人にとって、草取りをしない=怠け者、であり
隣近所の目を気にしながら、皆が競い合うように草取りや草刈りに勤しんだのです。
また、日本の水の豊かさは、豪雨、洪水、土砂崩れなどの自然災害も繰り返しもたらしてきました。
自然が豊かな日本では、生き物も豊富で、中でも、害虫は種類も数も多く、農業にとっては大敵でした。
こうした豊かすぎる自然と、日本人はどう付き合ってきたのでしょうか? 本書は、その歴史・歩みから日本人固有の心性を浮き彫りにする、異色・出色の日本文化論です。

ここでは、本書の「プロローグ」を抜粋・紹介いたします。

 

◎プロローグ

私は「雑草学」を専門にしている。

そう言うと、「雑草学なんてあるんですか」「ずいぶんと変わった研究をされているんですね」などと言われることが多い。

農業生産を行う上で深刻な問題となるのが、害虫、植物病害、雑草の三つである。日本には日本雑草学会という研究者の集まりがあって、一〇〇〇人以上の研究者が所属しているし、世界の国々にも雑草学会があって、世界中の研究者が日夜、雑草の研究に取り組んでいるのである。

ところが、害虫や植物病害の研究をしていると「役に立つ研究ですね」と言われるのに、どういうわけか雑草だけは「変わった研究ですね」と言われてしまうのである。

どうしてだろうか。

日本には「雑草魂」という言葉がある。また、「雑草は、踏まれてもくじけない」という生き方の見本にされることも多い。そのためだろうか。おそらく多くの人たちは「雑草学」という言葉を聞いたときに道ばたで踏まれながら頑張っている雑草を思い描いてしまう。そして、そんな雑草を研究しているなんて、ずいぶんと変わった人だと思ってしまうのである。

しかし、「雑草」という言葉にこのような反応をするのは、私が知る限りでは日本人だけである。

雑草は農業を行う上で深刻な課題である。そのため、海外で「雑草学の研究をしている」と言えば、害虫や植物病理と同じように農業にとって役に立つ研究だと受け入れられる。

「日本人は雑草が好きな国民である」

誤解を恐れずに言えば、私はそう思う。

海外の国々では、雑草は邪魔者である。

もちろん、日本でも雑草は邪魔者である。しかし、「雑草魂」のように、日本語では雑草を良い意味に使うのである。

小学校の卒業の寄せ書きには、必ずと言っていいほど「雑草のように」と書く生徒がいるという。あるいは、無名の努力家や苦労人たちは「雑草のごとくたくましく」と称えられる。日本では、「雑草のようなたくましさ」は良い意味で使われる。

「あなたは雑草のような人ですね」と言われると、どこかほめられたような気になる。もちろん、「雑草」と言われて嫌な思いをする人もいるだろうが、「あなたは温室育ちの人ですね」と言われるよりも、雑草と言われたい人のほうが多いだろう。温室育ちの作物は、とても良い環境で大切に育てられたエリートの植物である。しかし、日本人はエリートであるよりも雑草であることを好むのである。

「雑草」がほめ言葉に使われたり、「雑草」と呼ばれて喜んだりするのは、私が知る限り日本人くらいのものだろう。

たとえば、英語の「ウィード(雑草)」という言葉には良い意味はない。英語には「雑草は死なない(Weeds never die.)」や「悪い雑草はすぐ伸びる(Ill weeds grow apace.)」ということわざがあるが、これは「憎まれっ子世にはばかる」(人に憎まれるような人が、かえって世間では幅をきかせる)という意味である。

欧米人に「あなたは雑草のような人だ」と面と向かって言ったとしたら、間違いなく怒られることだろう。

そんな話を聞くと、欧米の雑草は生育が旺盛で、日本の雑草よりもやっかいな存在なのではないかと思う人がいるかもしれない。しかし、実際は逆である。

日本では、草取りをサボれば、あっという間に雑草だらけになってしまう。

日本の雑草は世界に比べてもずっとやっかいな存在なのだ。

それなのに、どうして日本人は雑草に愛着を持っているのか。

これが本書の大きなテーマである。

「雑草」という言葉に対する日本と西洋(欧米)の考え方は、ずいぶんと異なる。

日本は、西洋と比較されることが多い。西洋の文化や考え方は日本とはずいぶん異なる。正反対と思えることも多い。ゆえに西洋と比べることによって日本の特徴がより際立つのであろう。

もちろん、ヨーロッパと一口にいっても、地中海に面した南ヨーロッパと冷涼な北ヨーロッパでは気候や風土はずいぶん異なるし、西洋の中にもさまざまな国がある。また、「欧米」とひとくくりにするが、ヨーロッパとアメリカでは気質はずいぶん違う。

アジアといっても、東南アジアや南アジアまで広大であるし、東アジアの日本と中国、韓国を比較しても、さまざまである。

しかし、「日本」という国の特徴を明らかにする上では、ユーラシア大陸の反対側で発達を遂げて、キリスト教という基層の上に成立してきたヨーロッパと比較することは、非常にわかりやすい。また、グローバル化が叫ばれているが、グローバル化とは、欧米の文化やルールを取り入れる欧米化であることが多い。そのため、世界と日本を比べる場合には、やはり西洋(欧米)との比較という観点がわかりやすい。

そのため、本書でも西洋(欧米)という大きな括りと、日本との比較をしていきたいと思う。

どうして日本人は雑草を愛するのだろうか。そして、雑草を愛する日本人とは、いったいどのような国民なのだろうか。

雑草や農業、自然といった視点から日本人を見てみることにしよう。

 

目次

プロローグ

第1章 植物にも仏性を感じてきた日本人

西洋と日本でこれほど違う「雑草観」
日本の雑草は手ごわい
「ヨーロッパには雑草はない」
「芝生に入るな」の背景
雑草を育む日本の気候と水資源
草取りという宿命
「小僧泣かせ」「小僧殺し」という名の雑草
上農は草を見ずして草を取る
西洋人が見た江戸・明治時代の日本の畑

イネ科植物の進化と文明
狩猟民族だった日本人 
農業はどのような場所で発達するか 
農業発祥の地で最初に発達したのは「牧畜」 
イネ科植物の草原での進化──葉を硬くし、栄養価を下げる 
イネ科植物の草原での進化──「成長点」を低くする 
イネ科の種子が人類を救った 
「種子が熟しても落ちない」という大発見 
種子という「富」の誕生 
農業という麻薬 
古代の東日本に稲作が広まらなかった理由 
農業の技術が軍事力を生む 
古代日本で稲作が広まっていった背景 

日本の自然には神が宿る 恵みと脅威の源泉
自然信仰が今なお残る日本 
自然豊かな地における神と、乾燥地における神 
西洋の神と日本の神 
日本の神と祟り 
日本人はなぜ誰もいない場所に礼をするのか 
日本の近代化とアミニズム 
自然の豊かさは脅威でもある 
硬軟あわせ持つ日本の神

日本人固有の「自然」意識
江戸時代まで日本には「自然」がなかった 
「自然」を認識できる条件 
「豊かな自然」に甘える日本人 
日本人はなぜ環境意識が低いのか 
管理や保護が難しい日本の自然 
台所にハエのいる欧州、いない日本 
日本人にとって自然は良きライバル

日本の無数の生き物たちと田んぼ
虫を愛でる国、日本 
虫の音を認識し、楽しむ日本人 
人も虫も神さえも、自然の一員 
日本と西洋における「生物多様性」の違い 
田んぼに集まる弱い生き物たち 
田んぼという豊かな「二次的自然」 
田んぼの生き物はどこから現れたのか

仏教の殺生思想と日本人の生命観
「いただきます」「ごちそうさま」という日本文化 
肉食と捕鯨に見る、日本と西洋の自然観の違い 
すべてのものに仏性を見る日本人 
日本人の植物供養と精進料理 
仏教者の罪滅ぼしとしての「肉食禁止」 
仏教が説く動物と草木の違い 
インド・中国の植物観 
日本で受け入れられた「草木国土悉皆成仏」という思想 
庶民までが肉食禁止を受け入れた国、日本 
日本の針供養と人形供養

第2章 農と自然が育んだ日本人気質

世界の農地荒廃と日本の田んぼのすごさ
整然とした西洋の風景、雑多な日本の風景 
日本と西洋の土地の生産力の違い 
江戸の大人口を支えた「土地力」 
日本の農業の面積あたりの食糧生産力は世界一 
日本の食料自給率が低いと言われる理由 
衣類も住まいもエネルギーも植物から作る日本 
じつは輸入に依存している西洋の農業国 
世界で急速に進む農地の土壌浸食 
農業が招く塩類集積と水不足 
砂漠化しない日本の農地 
毎年イネを作れる奇跡 
世界の食糧不足に貢献できていない日本の農業 
水田は日本人の知恵の結晶 
雑草が日本の水田稲作を発展させた

日本と西洋の「植物分類学」の違い
日本特有の「お婆さんの植物学」 
西洋の植物学と日本の本草学 
日本人は「用途」で植物を区別する 
日本の植物分類法は使いやすい 
西洋の植物分類学の限界 
自然界は本来、境界のない世界 
日本で緑を青と呼ぶのはなぜか 
西洋科学は物事を細分化し、比較する 
単純な比較によって現実を見誤る 
部分に分けない東洋の考え方 
利用しないものは「その他大勢」 
「雑」という分類

雑草を悪とみる西洋人、雑草を活かす日本人
「雑草」の学術的定義のあいまいさ 
悪魔が雑草の種子を蒔く 
西洋から輸入された「雑草=悪」という概念 
善と悪を明確に区別しない日本人 
日本では自然も獣も鬼も、脅威であり恵み 
田の草取りを変えた「田打車」という大発明 
雑草は皆が欲しがる貴重な肥料だった

日本の豊かな自然と「引き算の文化」
西洋の庭園の直線美 
直線的な西洋、循環的な東洋 
自然に近い姿を美とする日本庭園 
自然を切り取り、自然を活かす 
日本で「引き算の文化」が生まれた背景 
「何もない」のが美しい 
日本の雑草と減点主義

取りと日本人の人生観
日本人の勤勉性と草取り 
怠けを許さない日本の雑草 
草取りと生産性 
休むことが下手な日本人 
農地を休ませる西洋、農地を働かせ続ける日本 
日本人は趣味や遊びにも「道」を求める 
日本の農業が育んだ「道」の哲学 
「遊び」が大好きな日本の神々 
働くことが遊ぶことだった日本人

稲作・自然災害と、日本人の協調性
個人より集団を重んじる日本人 
「苦しみを分かち合う」という日本文化  
明治期に日本に輸入された「個人」という概念 
チームプレーにも優れる西洋人 
日本人の協調性と稲作 
幾たびもの自然災害が日本人の気質を作った

日本の豊かな植物と日本人の「新しもの」好き
石造りの西洋建築、植物を多用する日本建築 
「新しいもの」に価値を見出す日本人 
木の文化を育んだ日本の自然 
「初物」ものは「おいしい」 
豊かで再利用もできる日本の植物資源 
新しいものへの「変化」を尊ぶ日本人

せっかちで辛抱強い日本人を生んだ背景
電車の遅れを許せない日本人 
変化が激しい日本の自然 
相乗効果で日本人も雑草もせっかちに 
はかなさに価値を見出す 
外圧を受け入れ発展してきた日本 
日本人の順応性と雑草

第3章 雑草のように、しなやかに

雑草が持つ「弱さという強さ」
日本人は雑草と似ている 
雑草の「強さ」とは何か 
日本人の「判官びいき」 
「弱者の強さ」をこそ愛する 
戦国武将はなぜ雑草を家紋にしたのか 
紋章に見る、西洋と日本での「強さ」の違い

逆境こそ雑草の生きる道
弱者が強者に勝つ条件 
逆境こそ突破口 
逆境を味方に変える雑草たち

雑草の「戦わない戦略」
日本タンポポの賢明さ 
強者とは戦わない日本の生き物 
雑草は「変化」を生きる糧とする

雑草にとって「変化」は最大の好機
植物のCSR戦略と雑草の生きる道 
植物最大の苦境「攪乱」を活かす 
雑草の特徴と重なる日本人

しなやかな強さで生きていく
水の力を逃す信玄堤 
ヨシ(葦)の強さこそ日本人の強さ 
日本人の卓越した受容・活用能力 
外圧に逆らわないという強さ 
日本人が培ってきた「あきらめる心」と「あきらめない心」 
雑草は「変えられるものを変える」 
変化していくために「不変の核」を持つ

エピローグ

著者紹介

稲垣栄洋(いながき・ひでひろ)

1968年静岡県生まれ。静岡大学農学部教授。農学博士。専門は雑草生態学。岡山大学大学院農学研究科修了後、農林水産省に入省、静岡県農林技術研究所上席研究員などを経て、現職。著書に、『生き物の死にざま』『生き物の死にざま はかない命の物語』『スイカのタネはなぜ散らばっているのか』『身近な雑草のゆかいな生き方』『身近な野菜のなるほど観察記』『蝶々はなぜ菜の葉にとまるのか』(いずれも草思社)、『身近な野の草 日本のこころ』『はずれ者が進化をつくる』(筑摩書房)、『弱者の戦略』(新潮社)、『徳川家の家紋はなぜ三つ葉葵なのか』(東洋経済新報社)、『世界史を大きく動かした植物』(PHP研究所)など。 

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旅は私をほんの少し成長させてくれる 人気エッセイストによるひとり女子旅のススメ『ひとり旅で見つけた小さな幸せ』有川真由美 著

ひとり旅で見つけた小さな幸せ

有川真由美 著

自由に気ままに、自分の気持ち次第で動けるのが「ひとり旅の醍醐味」。ひとりならまわりを気にせず、「初めて」のことにもたくさん挑戦できます。ざっくりと目的を決めて、あとは気の向くまま。ノリと感覚を大事にする旅は、人生経験を重ねてきた大人にこそ最適ではないでしょうか。
本書では女性向けエッセイの第一人者が、日常から解き放たれた国内外の場所で得たさまざまな気づきと経験を紹介。旅先での感動の出会いと交流、ロストバゲージや大きな忘れ物などの思わぬアクシデント、なかなか出会えない絶景・その土地ならではの絶品料理体験など、著者の等身大のエピソードをリアルに綴っています。旅の前に押さえておきたいスケジュールの立て方、安全対策、情報収集、オススメの持ち物など、実用的なお役立ち情報もたっぷり披露! ひとり旅デビューを目指す人も、ひとり旅上級者も、ひとり旅が気になるどんな世代も満足していただける内容になっています。
(担当/五十嵐)

 

本文より抜粋

「あっという間の出来事でも、あの旅のことは数十年経ったいまも鮮明に覚えている。
“小さな幸せ”は心の奥に残っていて、いまも私を支えてくれる」(「はじめに」より)

「どんな場所でも、動物も鳥も人間も懸命にいまを生きている。一人ひとりの人生の物語もある。私は旅をすればするほど、人が好きになる」(「北海道 思いきりひとりドライブ」より)

「旅をしていると、ひょっこりだれかの人生と交差して、なんらかのシンパシーでつながる瞬間が、私はたまらなく幸せ。ほとんどの人が交わることなく流動して行くなかで、旅先で会って話したいと思う人は、やはり縁のある魅力的な人だ」(「奄美大島 きれいな空と星をずっと眺めていたい」より)

 

目次

台湾
人が親切、わりと安全
音楽イベントは他民族で盛り上がる
久しぶりの台湾女子会
金運アップの廟でお金を燃やす⁉︎
高雄駅まわりの散策とひとり小吃
日常使いの服を買いに行く
長距離バスはマッサージチェアで快適⁉️
友人宅にホームステイ
海外のPCR検査、初体験

北海道
思いきりひとりドライブ 
日本でいちばん北に立つ
国境の町で宮沢賢治の足跡を辿る
マンツーマンのガイド&ヤムワッカナイ温泉
大湿原を大音量の音楽をかけてひた走る
横綱・大鵬が泊まったニシン御殿
日本で最古のコンビニで北海道を食す
白鳥の観測所で、地元の人の身の上話を聞く

宮古島
海が見える離島のホテルで深呼吸 
3つの大橋をドライブして制覇する
リゾートウエアを大人買いする
下地島空港の「17END」で着陸機を真上に仰ぐ
なんでも食べてみるもんだ
迷っても、間違っても、楽しい宮古島ドライブ

スウェーデン・デンマーク
幸せの国で、まったり〝ヒュッゲ〟
米・丁・端典・英在住の女友だちと集合!
人に頼る喜びと、ひとりで乗り越える喜びと
ロストバゲージ事件勃発
本場H&Mで本気のショッピング
『魔女の宅急便』の街で考えた持続可能な社会
友人夫婦がDIYした家に泊まる
『長くつ下のピッピ』との出会い
「デンマーク流働き方」を知る
「世界でトップクラスに幸せな国」の秘密
ロラン島で食文化と教育を考える
〝ヒュッゲ〟を体験
ヨーロッパ最大のプロジェクト
コペンハーゲンでぶらぶら
観光地ニューハウン地区
ゴミの山「コペンヒル」とストリートフード
帰国するまでスリル満点

奄美大島
きれいな空と星をずっと眺めていたい 
旅に出るタイミング
「ドアTOドア」で憧れの地へ
古民家にプチ移住
ピアノ・コンサートにどっぷり浸る
コンビニのお弁当とパンが美味しい
石窯で焼いた絶品メロンパンに出合う
田中一村の生き様を知る
ふたご座流星群で113個の流れ星を見る
西郷南州の暮らした家
「西郷松本舗」を発見
奄美女子会

マレーシア
スマホひとつでスマートに生活ができる 
空港のラウンジでゆったり
ピンクモスクと遊覧船観光
Grabを使いこなす
「暮らす」という視点で旅をする
高級中華で誕生日サプライズ
中華系マレーシア人と卓球交流
マレーシアで美味しかったもの
羽田空港のカプセルホテルに泊まる
そして日常の旅が始まる

 

著者紹介

有川真由美(ありかわ・まゆみ)

作家、写真家。鹿児島県姶良市出身。台湾国立高雄第一科技大学修士課程修了。化粧品会社事務、塾講師、衣料品店店長、着物着付け講師、ブライダルコーディネーター、フリー情報誌編集者など、多くの転職経験を生かし、働く女性のアドバイザー的存在として書籍や雑誌などで執筆。著書に『感情の整理ができる女(ひと)は、うまくいく』『30 歳から伸びる女(ひと)、30歳で止まる女(ひと)』『一緒にいると楽しい人、疲れる人』(以上PHP研究所)、『いつも機嫌がいい人の小さな習慣 仕事も人間関係もうまくいく88のヒント』(毎日新聞出版)など多数。

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楽天ブックス: ひとり旅で見つけた小さな幸せ - 有川 真由美 - 9784794227249 : 本

書評歴32年、日経夕刊「目利きが選ぶ3冊」でもおなじみの著者が、本の究極の楽しみを満を持して紹介!『本を読む 3000冊の書評を背景に』中沢孝夫 著

本を読む

――3000冊の書評を背景に

中沢孝夫 著(福井県立大学名誉教授)

探す楽しみ、読む楽しみ、評す楽しみ――
本の楽しみについて書き尽くす!

 本書は、書評歴32年、約3000冊の書評を書いてきた著者が、これまでにどんな本を読み、どう楽しんできたかを綴る自伝的エッセイです。
 著者の書評を書くときの基本姿勢は「自己の抑制」。大切なことは「自分が得をすることや、自分を輝かすことではなく、本を輝かすこと」と言い切ります。そこには本に対する深い敬意と愛情が表れています。それゆえ「自分を輝かすための書評」に対しては大いなる苦言を呈しています。
 ほめるためか? 批判するためか? 結局何のために書評があるのか、書評の意義についても改めて考えさせられることでしょう。

 本の中では、『福翁自伝』(福沢諭吉)、『ポーツマスの旗』(吉村昭)、『自省録』(マルクス・アウレーリウス)、『生きがいについて』(神谷恵美子)、『経済思想』(猪木武徳)、『読書論』(小泉信三)、『蟬しぐれ』(藤沢周平)など、著者が人生で感銘を受けた本が随所に紹介されており、古典から教養、娯楽の書までさまざまなタイプの本と出会えるブックガイドとしても楽しめるようになっています。
 今でも繰り返して読んで楽しんでいるという意外な本、週に一回は必ず書店に足を運び自分で本を探し、喫茶店でビールを飲みながら買った本を開くときのワクワク感……著者と本との長年の付き合い方を通して、自分の人生とともにある本を見つけることの幸いや豊かさが伝わってきます。

 本書によって、本の楽しみ方を再発見することにつながれば幸いです。ぜひ多くの方に読んでいただきたい一冊です。

(担当/吉田)

 

目次より

第1章 本を読む楽しみ  
本を読む楽しみ、本屋に通う楽しみ  
読書はときに苦役  
45歳で立教大学に入学  
書評の始まり  
書評を書くときの基本姿勢は「自己の抑制」  
ほめるための紹介か?  
本を読むことは楽しいこと  
近年の書評の事例  
選択肢としての書評  

第2章 本の読み始め  
本を読む習慣  
本で大人の世界を垣間見る  
ほったらかしだったことの幸い  
読書環境の重要性  
吉本隆明・高坂正堯・マルクス  
文学学校のこと  
労組の専従時代の経験と出会い  
書き手になる  
本の良し悪しの基準  
大学教師のスタート  
大学の現実に愕然  
「紙の情報」の意味と他者の好意  

第3章 書評について  
時代の変化と書評  
自己啓発本と神谷美恵子などとの違いについて  
知の広がりは基礎知識が支えとなる  
楽しみで読む本の事例  
書評の対象は古典ではなく、新刊書  
書評の作法、選本について  

第4章 本と教養  
本とは「言葉」  
代表的な英語による本と知られざる本  
著者杉本鉞子について  
「暮らしのため」本を書くということ  
被引用率のこと  
何をどう読むか、「人間の顔とは何か」  
池田潔と小泉信三のこと  
書評の真髄  
トランプ大統領の登場の意味  

第5章 書評の事例  

終章 本を読む意味

 

著者紹介

中沢孝夫(なかざわ・たかお)

福井県立大学名誉教授。博士(経営学)。1944年生まれ。高校を卒業後、郵便局勤務から全逓労組専従を経て、45歳で立教大学法学部に入学、1993年卒業。2000年10月に姫路工業大学(現在の兵庫県立大学)教授に就任。2008年から福井県立大学経済学部教授。2014年から2018年3月まで福山大学教授。専門は、経営組織論、中小企業論、ものづくり論、人材育成論。2000社(そのうち100社は東南アジアの企業)以上の企業からの聞き取りをし、ミクロな領域で研究活動を行ってきた。「日本経済新聞」での「目利きが選ぶ3冊」や「週刊東洋経済」および 「週刊朝日」などに長く書評を寄稿。著書に『良質な社会と自己訂正能力』『起業家新時代』(以上平原社)、『働きものたちの同時代』(東京新聞出版局)、『中小企業新時代』『変わる商店街』(以上岩波新書)、『すごい製造業』(朝日新書)、『就活のまえに』(ちくまプリマ―新書)、『グローバル化と中小企業』(筑摩選書)、『転職のまえに』(ちくま新書)、『働くことの意味』(夕日書房)ほか。

Amazon:本を読む 3000冊の書評を背景に:中沢孝夫 著:本

楽天ブックス: 本を読む - 3000冊の書評を背景に - 中沢 孝夫 - 9784794227225 : 本

ドラフトでチームはここまで変わる! 『挫折と覚醒の阪神ドラフト20年史』小関順二 著

挫折と覚醒の阪神ドラフト20年史

小関順二 著

長年「失敗ドラフト」を繰り返してきた阪神は、いつ、どのようにして甦ったのか?

 昨シーズン、38年ぶりの日本一に輝いた阪神タイガースには、長く苦しい冬の時代がありました。即戦力として獲得したはずの投手はなかなか機能せず、スタメンには他球団から獲得したベテラン選手が目立つ――。そんなシーズンが長いこと続いていたのです。それが今やどうでしょう。スタメンにはドラフト上位指名の若手が並び、投打ともに12球団屈指のタレント集団へと変貌を遂げているのです。
 阪神はいつ、どのようにして生まれ変わったのでしょうか。本書は「ドラフトがチームを変える」をモットーに2000年以降、12球団の全指名選手について年度版『プロ野球 問題だらけの12球団』でレビューし、同時に各球団のチーム編成についても詳細に観察してきた著者が、当時の自身の記述を振り返りつつ阪神のチーム作りの変遷をたどる一冊です。
 ドラフトにおいては、即戦力(大学生・社会人)か将来性(高校生)重視か、投手か野手か、という究極の選択があるわけですが、著者はいずれにしても「ドラフト1位で将来の主軸を構成する」という方針をいかにブレずに貫けるかがチームの浮沈のカギを握る、と述べています。
 そして、この点において注目に値するのが、監督就任にあたって「ドラフトですぐ使える便利屋のような選手を多く取る球団の体質が、生え抜きが育たない要因」と喝破した金本知憲氏による「改革」なのです。監督として大きな結果を残すことはできませんでしたが、阪神のドラフト指名の傾向を検証したとき金本監督の功績は明らかです。本書では、同氏の監督就任以前と以後でどんな変化が起こったか、そしてチーム力がどうなったかを検証していますが、そのあまりの違いに驚かれる方も多いかもしれません。
 プロ野球チームという研ぎ澄まされた才能の持ち主が集う人間集団の編成において、「絶対的な正解」があるはずはありませんが、問題の根本に向き合って生まれ変わった阪神タイガースの軌跡は、やはり球史に残る歩みではないかと思えます。プロ野球をより深く楽しむために、ぜひお読みいただきたい一冊です。

(担当/碇)

 

【目次】

第1章 大転換――ドラフトでチームはここまで変わる 
金本知憲の監督就任を境に激変した阪神ドラフト 
「野手の1位指名」が意味するもの 
スタメンに名を連ねる「ドラフト1位の野手」たち 
大学生&社会人出身で形成された強力投手陣 
高校卒投手の活躍が少ないのは阪神の伝統か
レギュラー野手に高校卒は何人いればいいのか
ドラフト1位投手が主力になれないのはなぜか 
球界の流れに乗り遅れていた阪神とオリックス 
ウエイトトレーニングがもたらした変化 
常勝軍団を作るための土台 

第2章 暗中模索からの起死回生――2000年からのチーム作りを再検証
チームを蝕む「伝統」の呪縛●2000年版の指摘● 
「小技の2番タイプ」を上位指名する伝統/投手は線の細いスレンダー志向

「名将」野村克也の挫折●2001年版の指摘● 
大物外様監督の明と暗/慢性的な攻撃力不足を招いた投手偏重ドラフト/「再生工場」は稼働せず、即戦力ドラフトも不発

「劇薬」投入●2002年版の指摘● 
監督就任直後から圧倒的なスカウト力を発揮/野村と星野、監督として何が違ったのか/井川慶の本格化で急激な新旧交代が勃発

引き継がれない「強さ」●2003年版の指摘● 
優勝監督・星野が遺した「負の遺産」/スタメンにドラフト上位指名選手が少なすぎる
分離ドラフトで失われた高校卒選手への「嗅覚」

「冒険心」なきチーム作り●2004年版の指摘● 
新戦力の抜擢が上手い岡田新監督/主力と同ポジションの大物アマ選手を獲得する伝統/少なすぎる「生え抜き高校卒」投手

阪神フロントの問題点とは?●2005年版の指摘● 
球界再編騒動の余波/進まない野手の世代交代/JFKの奮闘

岐路となった分離ドラフト●2006年版の指摘● 
広がるセ・パの戦力差/セ・リーグの低迷は高校生ドラフトの失敗から始まっている/セの低迷を象徴する阪神のドラフト下手

ドラフトとファームを軽視してはいけない●2007年版の指摘● 
「育成+抜擢」のサイクルが喪失/井川慶のメジャー流出で投手陣が弱体化

「急場しのぎ」の代償●2008年版の指摘● 
なぜ高校生を上位指名すべきなのか?/歴史的な「V逸劇」を演じて監督交代へ

失われたチーム像●2009年版の指摘● 
「ガス欠」を招いたビジョンなき編成/「育成する時間はない」という言い訳/思想が感じられないドラフト指名

「外人部隊」の役割とは?●2010年版の指摘● 
生え抜き選手はスタメンに2人だけ/3年連続で「即戦力投手」を1位指名

俎上にのぼった「編成の問題」●2011年版の指摘● 
坂井信也オーナーの「叱責」/統一球の登場で化けの皮が剝がれる/本塁打を打っているのは移籍選手と外国人

「守秘義務」を徹底すべし●2012年版の指摘● 
「本当は高橋周平を獲りたかった」/外れ1位で指名するのは「無難な技巧派」タイプ
/33年ぶりの大物、藤浪晋太郎の獲得

藤浪という「起爆剤」●2013年版の指摘● 
藤浪晋太郎賛歌/解消されないレギュラー野手の高齢化問題/ドラフトで3人の「成功選手」を獲得

育成か勝利か●2014年版の指摘● 
高校生に投資すると言った楽天トップ/ドラフト1位、2位、4位で社会人の投手を指名

慢性化した貧打●2015年版の指摘● 
鳥谷敬の後継者問題/「走攻守」という呪縛

ドラフト改革の始まり●2016年版の指摘● 
金本知憲監督の改革がスタート/大器・藤浪晋太郎の挫折/金本の「厳しさ」、その功罪

チーム作りの「理想と現実」●2017年版の指摘● 
「超変革」が意味していたもの/糸井嘉男獲得で露呈したフロントの不安/青柳晃洋の覚醒

新旧交代の狭間で●2018年版の指摘● 
ドラフト改革の成果が見え始めた/23年の日本一を呼び込んだ「18年ドラフト」

「金本路線」の継承●2019年版の指摘● 
「70点をめざす指名」への後退はありえない/建て直しも瓦解も「8年」が目安

将来を見据えた指名とは?●2020年版の指摘● 
育成ドラフトに対する姿勢/驚異の「20年ドラフト組」にも高校生は1人だけ

オリックスの変化から何を学ぶか●2021年版の指摘● 
新型コロナウイルスの余燼が燻る中での異例のシーズン/ドラフトでチームを変えるために必要な時間

スケール感を増すチーム●2022年版の指摘● 
大山悠輔の成長から生まれた好循環/記録的連敗でもCS出場まで持っていく地力

充実した戦力だが、課題も●2023年版の指摘● 
WBCの主力メンバーから見えてくる阪神の課題/ドラフトでチームを甦らせた阪神

第3章 未来の担い手 
2023年のドラフト1位指名から見えてくること 
独立リーグで野球をするメリット 
2人の高校卒遊撃手への期待 
下位指名「即戦力」投手の特徴 
育成指名2選手のポテンシャル 
受け継がれる「金本メソッド」 

阪神ドラフト〈成功選手〉年表 

 

著者紹介

小関順二(こせき・じゅんじ)

スポーツライター。1952年神奈川県生まれ。日本大学芸術学部文芸学科卒業。プロ野球のドラフト(新人補強)戦略の重要性に初めて着目し、野球メディアに「ドラフト」というカテゴリーを確立した。2000年より年度版として刊行している『プロ野球 問題だらけの12球団』シリーズのほか、『プロ野球 問題だらけの選手選び─あの有名選手の入団前・入団後』『甲子園怪物列伝』『「野球」の誕生 球場・球跡でたどる日本野球の歴史』(いずれも草思社)、『ドラフト未来予想図』(文藝春秋)、『野球力 ストップウォッチで判る「伸びる人材」』(講談社+α新書)、『間違いだらけのセ・リーグ野球』(廣済堂新書)、『大谷翔平 奇跡の二刀流がくれたもの』『大谷翔平 日本の野球を変えた二刀流』(いずれも廣済堂出版)など著書多数。CSテレビ局スカイ・A sports+が中継するドラフト会議の解説を1999~2021年まで務める。同会議の中継は20年度の衛星放送協会オリジナル番組アワード「番組部門中継」の最優秀賞を受賞。15年4~7月に、旧新橋停車場 鉄道歴史展示室で行われ好評を博した「野球と鉄道」展の監修を務める。

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初めての大人向け「ナナフシのすべて」。これはすごい。 『不思議の虫ナナフシ ヘンな虫のヘンな暮らし』海野和男 写真 伊地知英信 文

不思議の虫ナナフシ

――ヘンな虫のヘンな暮らし

海野和男 写真 伊地知英信 文

 本書はナナフシという虫についての本である。枯れ枝そっくりの細い身体を持ち、樹木や葉っぱの中に紛れ込んでいるのでよく見えない。一種の擬態の名人である。
 ナナフシというのは通称で、正式にはナナフシモドキとかカレエダナナフシというのが種名である。これまでナナフシについて書かれた本は2、3の児童向けのものはあったが(絵本のような)、本格的な大人向けの本は本書が初めてである。
 実はナナフシは日本に普通にいるし、身近にもよくいる虫なのである。日本に20種ぐらい、世界には2000種ぐらいいる。この本には内外100種ぐらいの写真が収められている。目立たないのであまり着目されていないだけで、面白い形態、面白い生態を持った昆虫である。昆虫写真家としては第一人者の海野和男氏によるカラー精細写真160点が収められている。日本及び世界各地で撮影された驚くべきバリエイションのナナフシ類の写真が先ず驚異である。日本では地味で目立たないと言ったが、東南アジアやニューギニアではとんでもない形のナナフシがいる。マレーシアに棲むセラティペスオオトビナナフシという種は手足を伸ばすと50センチを超え、世界最長の昆虫である。パプア・ニューギニアで見つけたゴライアスオオトビナナフシなどは世界最重量の昆虫である。世界最長も世界最重量もナナフシなのである。
 生態は単為生殖でオスが見つかっていないものも多い。死んだふり――擬死が得意、危機になると足を切り離す自切をするがまた生えてくる。一般に翅はないのだが、ときに突然大きな派手な翅を広げる種もあり、威嚇のためという。体に大きなとげとげを持つ種もある。熱帯の種は、おとなし気な日本のナナフシに比べ総じて派手である。
 基本、植物をエサにして隠れている平和的な昆虫である。動作ものろい。実は先年、世界のナナフシ類を網羅した図鑑がヨーロッパで出たのだが、日本でよりもヨーロッパでのほうが人気ある昆虫かもしれない。本書には共著者・伊地知英信氏によるナナフシ飼育法が終章に収められているが、飼いやすく、面白いペット昆虫として有名である。
 伊地知英信氏はサイエンスライターというか、自然に関する記事や書籍に寄稿しているベテランのライターである。本書にはナナフシの軽妙な解説、またナナフシ文化史ともいうべきエピソード、例えば学名が「ミカド」というのはなぜかなど興味深い話題を提供している。まずは本書を開いてその昆虫の驚くべき姿に刮目すべし。

(担当/木谷)

 

写真家紹介

海野和男(うんの・かずお)

1947年東京生まれ。東京農工大卒。昆虫写真家。『昆虫の擬態』(平凡社)で日本写真家協会年度賞。『世界のカマキリ観察図鑑』『増補新版 世界で最も美しい蝶は何か』『蝶が来る庭』『ダマして生きのびる蝶の擬態』(いずれも草思社)ほか多数。伊地知英信氏と共著に『ファーブル昆虫記 誰も知らなかった楽しみ方』(草思社)。ウェブサイト「小諸日記」運営。

著者紹介

伊地知英信(いじち・えいしん)

1961年東京生まれ。北里大学卒。自然科学書や博物館展示物の編集者・ライター。自然観察のインタープリター。集英社版『完訳ファーブル昆虫記』10巻20冊の編集および脚注・訳注の執筆に関わる。『しもばしら』(岩崎書店)で第58回児童福祉文化賞など。

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なぜ1970年を境にゴダールはつまらなくなったのか。 『ゴダール/映画誌』山田宏一 著

ゴダール/映画誌

山田宏一 著

 本書は2022年9月に91歳で自死したジャン=リュック・ゴダール監督について書かれた山田宏一氏の映画評論集であり、氏のゴダール論の集大成である。と言っても書かれているのは1960年代のゴダールのみ。『勝手にしやがれ』(1959年)から『ウイークエンド』(1967年)までの15本の長編と9本の短編、いわゆるポーリン・ケイル女史の言う「豊穣の60年代ゴダール」についてだけである。さらに若干の追悼文が収められている(「キネマ旬報」と「ユリイカ」への寄稿文)のみ。なぜそうなっているのだろうか。
 山田宏一氏は処女評論集『映画について私が知っている二、三の事柄』(1971年、三一書房)の第一章「ゴダールについて私が知っている二、三の事柄」から評論活動を始めているように稀代のゴダール・ファンであった(この書のタイトル自体がゴダール映画『彼女について私が知っている二、三の事柄』のもじり)。
 追悼文の中で山田宏一氏はゴダールこそ映画表現の革新を促した一人であり、真の革新性を持った映画監督であったと述べている。ゴダールの「ジャンプ・カット」はグリフィスの「クローズ・アップ」、エイゼンシュテインの「モンタージュ」、オーソン・ウエルズの「パン・フォーカス」と並ぶ映画表現の4大革命だと述べたあと、ゴダールに夢中になったパリ留学の日々を懐かしんでいる。
 それが1968年パリの五月革命以後のゴダール作品についてはあえて触れていない。『勝手にしやがれ』が世界の若者と映画人に与えた大きな影響、山田氏のパリ滞在時代(1964年から1967年)に夢中になったアンナ・カリーナを主演にする一連のゴダール映画、それが急速に政治化し、高邁になり、抽象化し、輝きを失ってしまったことへの落胆がこの背景にはある。本書の巻末には盟友フランソワ・トリュフォーがパリ五月革命以降にゴダールに出した訣別状(手紙)を収めているが、そのトリュフォーのゴダールへの詰り方に山田宏一氏の思いが仮託されているというのはうがちすぎの見方であろうか。
 トリュフォーはゴダールの女性関係と金に汚いこと、自分が権力化したことに気づかない鈍感さなどを悲痛に訴え、弱いものに味方しないことへの裏切りを攻撃する。映画監督ジャン=ピエール・メルヴィルはヌーヴェル・ヴァーグとは「ゴダール・スタイル」のことだと喝破したが、その見方は一面正しいものの、トリュフォーと彼の仲間たちの支えがあってこその成果であり、独善的になった70年代以降のゴダールははるか高みに駆け上がり、一部信者だけの存在になってしまった。それにつれて神(GОD、ゴダールのもじり)格化されたゴダール作品は、映画が大衆娯楽的な要素を不可欠とし、彼もその映画ファン的世界から出てきただけに、それを捨ててしまえば表現がやせ細り、トリュフォーと決別するのも当然と言えば当然のことであった。世界中のインテリ映画ファンにはったり的手法でなぞかけをし、最後は孤立の中で自死を遂げたゴダール。「あとがき」の中で、著者は監督ベルナルト・ベルトルッチの言葉を引用している。「1960年代のゴダールは現実と直接、生に結びついていました。しかし、その後彼はある種の謙虚さを失ってしまったように思われるのです。…世界の涙にひたることもなく、世界の笑いにも参加することのないダイヤモンド、無色透明で自己完結し…美の宇宙の内部だけで生まれ、生きて、死んでいくように思われるのです…」。著者は追悼文の末尾で「さらばゴダール、さらば映画」と叫んでいます。こんなに豊かだった私のゴダールはどこへ行ったのかという悲痛な叫びでもあり、20世紀のある種の映画への惜別でもあるのでしょう。

(担当/木谷)

 

著者紹介

山田宏一(やまだ・こういち)

1938年ジャカルタ生まれ。東京外国語大学フランス語科卒業。1964~1967年フランスへ留学、その間映画雑誌「カイエ・デュ・シネマ」同人。ゴダール、トリュフォーなど多くのヌーヴェル・ヴァーグ監督たちと知り合う。映画評論家。著書に『友よ映画よ―わがヌーヴェル・ヴァーグ誌』『フランソワ・トリュフォー ある映画的人生』(ドゥマゴ文学賞)『何が映画を走らせるのか?』など多数。

Amazon:ゴダール/映画誌:山田宏一 著:本

楽天ブックス: ゴダール/映画誌 - 山田 宏一 - 9784794227218 : 本

レシピ考案・食材捕獲・調理・盛りつけをくまモンが担当!前代未聞の料理本『くまモンのりょうり男子』くまモン 著

くまモンのりょうり男子

――レシピ30品、全部自分で作ったモン!

くまモン 著

 

実は料理もデキるんです! くまモンの初のレシピ本、

2024年3月21日発売!!

 

これまで、様々なことにチャレンジしてきたくまモンが、ついにレシピ本を刊行。熊本県産の新鮮な食材などを使用した「たいぎゃうまか」(とてもおいしい)オリジナル料理を紹介するくまモンのレシピブックの登場です。おかずからスイーツまで、どなたでもチャレンジできる30品を掲載。そのほかに鯛をまるごと一匹をおろしたり、畑や海へ食材を捕獲に行ったりと、レシピ以外にも見どころがいっぱい。料理初心者やお子さんでも作れるレシピも紹介しています。毎日の食卓ではもちろんのこと、食育に、プレゼントに幅広くご活用いただける充実の内容です。

 

目次

Chapter1 出勤前の元気チャージ飯
Chapter2 お仕事終わりのお疲れごほうび飯
Chapter3 裏のないおもてなし料理
Chapter4 目指せマッチョ!筋肉増強飯
Chapter5 休日☆癒やしのあまあまスイーツ

 

「むぎゅカプレーゼ」(32~33ページ)より

 

著者紹介

くまモン

熊本県営業部長兼しあわせ部長。誕生日は3月12日。好奇心旺盛なやんちゃな男の子。2010年2月、翌年の九州新幹線全線開業を見据えた「くまもとサプライズ」キャンペーンのロゴと同時に「おまけ」として誕生。同年10月、くまもとサプライズ特命全権大使に就任。2011年9月、蒲島郁夫熊本県知事より、知事、副知事に次ぐ3番目の地位である営業部長に抜擢された。同年11月「ゆるキャラⓇグランプリ2011」で優勝し、快進撃が始まる。海外での人気も高く、これまで22の国(地域)を訪れている。2014年からは「しあわせ部長」を兼任。2016年「熊本地震」、2019年「令和2年7月豪雨」などの災害においては復興支援の旗振り役として県民を牽引してきた。関連グッズの売り上げは2022年までに累計約1兆2932億円に上る。

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