草思社のblog

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音楽業界を壊滅的状況に陥れたコロナ禍、二年半の記録『戒厳令下の新宿 菊地成孔のコロナ日記 2020.6-2023.1』菊地成孔 著

戒厳令下の新宿

――菊地成孔のコロナ日記 2020.6-2023.1

菊地成孔 著

「あなたにとってコロナとは何だったのか?」――音楽家、文筆家である著者・菊地成孔氏は「あとがき」でこのように問い掛けます。
著者が主戦場とする音楽業界は、新型コロナウイルス感染症によって、壊滅的状況に陥れられました。本書に収められた最初の日記は、2020年6月25日に記された「『Sings, Plays & Scats』ブルーノート東京公演前口上」。コロナ禍での最初のライブは、客数は制限され、ステージ上の「密」が避けられ、観客は声を出すことも拍手も禁じられました。「会員制の秘密クラブ」「非合法のパーティー」のようだと形容されます。
本書にはまたいくつかの追悼文が含まれます。いずれも読者の胸に迫るものですが、特に上島竜兵氏の自死がいかに堪えたかを綴り、無念に打ちひしがれる心情を率直に綴った文章は、死を悼むという行為の美しさをも感じさせ、本書のハイライトといっても過言ではないでしょう。
沖至、志村けん、神田沙也加、瀬川昌久、上島竜兵各氏への追悼、ライブでの口上、伊勢丹新宿店での買い物、高島忠夫氏の思い出、12歳で書いた「タミヤニュース」掲載原稿、芸人批評、抜歯の顚末、村上春樹氏との邂逅、コロナ感染記、育ての母と過ごした正月……。
抑鬱感を伴うことが基調とならざるを得ない日々の描写の中に、時折訪れる、強い快感を伴った祝祭的な瞬間。本書を読むことによって、読者一人一人にとってもコロナ禍の時間の特別な一瞬が甦ってくることでしょう。是非ご堪能ください。

(担当/渡邉)

 

目次

まえがき「今までで一番凡庸なタイトル」

「Sings, Plays & Scats」ブルーノート東京公演前口上
沖至逝去
「生きていて良かった」と思わせること
感傷と爆笑のモスチキン
ウルフギャング丸の内店のシャトーディケム
トリキの植木等
ウォーキングシューズを買う
ローストビーフ、サラダ、ツィトローネンクーヘン、グレンファークラス
10年後の3月11日
「菊地成孔とペペ・トルメント・アスカラール」オーチャード公演アンコール挨拶
浮気相手はいつでもポップス
「DC/PRG」ラストツアー梅田バナナホール公演
「DC/PRG」ラストツアー新木場USEN STUDIO COAST公演MC
優香は素晴らしい。そして矢沢をもっと好きになった
ラ・ボエムに溢れる性欲と食欲
ウルフギャング青山店で派手に金を使う
伊勢丹6階子供用品売り場でベビーカーを買う
高島忠夫ファミリーコンサート
「もっと負けて。すごくすごく素敵」
打楽器を買う時が、僕の人生が変わる時だ
追悼・神田沙也加
あなたは今日、誰とどんなクリスマスを過ごされるのだろうか?
追悼・瀬川昌久先生
元旦に再会した真っ黒い生き物
葬列のための音楽
浅草で銅鑼を買う
「また作ればいいでしょ、プラスチックモデルぐらい」
上島竜兵さん、お疲れ様でした
芸人批評
ワークショップ「〈みんなおなじ〉と〈みんなべつべつ〉」
59歳の誕生日
短期連載「菊地成孔の抜歯日記① 7月1日(手術当日)」
短期連載「菊地成孔の抜歯日記② 7月2日(手術翌日)」
今、村上春樹さんに会って話してきた
コロナ感染記①
コロナ感染記②「追加修正と続編」
〈菊地成孔とペペ・トルメント・アスカラール〉を御愛顧いただいている、大阪、大阪近郊、京都、京都近郊、全国、全世界の皆様へ
ドキドキすんなよ海賊ならよ
「それでは発車いたしやす」
あらゆる今日と明日の連続
「こいつぁ春から~。あ、縁起があ~。あ、良いわあああああ~」

あとがき「あなたにとってコロナとは何だったのか?(今までで一番凡庸なあとがきのタイトル)」

 

著者紹介

菊地成孔(きくち・なるよし)

1963年、千葉県生まれ。音楽家、文筆家。菊地成孔とペペ・トルメント・アスカラール、菊地成孔クインテット、ラディカルな意志のスタイルズ、新音楽制作工房を主宰するほか、ジャズ・ドミュニスターズ、Q/N/Kとしても活動。著書に『ユングのサウンドトラック』『時事ネタ嫌い』『レクイエムの名手 菊地成孔追悼文集』『次の東京オリンピックが来てしまう前に』『菊地成孔の粋な夜電波 シーズン13-16 ラストランと♂ティアラ通信篇』など多数。

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