草思社のblog

ノンフィクション書籍を中心とする出版社・草思社のブログ。

ワシントンハイツの中の野球場から生まれたジャニーズ『新宿・渋谷・原宿 盛り場の歴史散歩地図』赤岩州五 著

新宿・渋谷・原宿 盛り場の歴史散歩地図

赤岩州五 著

 2020年の東京オリンピックを控えて、会場の建設がようやく進みつつある。選手村の建設は東京湾の晴海あたりに高層ビルとして作られるようだが、かつて前回の1964年オリンピック時には今の代々木公園が選手村としてあてられていた。ここは戦前には代々木練兵場で軍の施設だったが、戦後は占領軍の家族等の住宅地になり、日本人オフリミットの場所だった。ワシントンハイツという名で戦後ずっと、オリンピック直前の1961年ぐらいまで接収されていた。学校、プール、ゴルフ練習場、野球場、ホールなどを備えた豊かで洗練された別天地であり、厳重な警戒で守られていた。
 このワシントンハイツの野球場で許されて野球をやっていた渋谷周辺の少年野球チームが「ジャニーズ」である。アメリカ大使館に勤める軍属のジャニー喜多川が小中学生たちを集めて野球をやっていたのである。朝鮮戦争でも通訳官をやっていたというジャニー喜多川(日本名喜多川擴)が米軍との関係を利用して野球場を使わせてもらっていたのである。ちなみにジャニーという呼び名は本来ならジョニーであるが、アメリカ訛り風に読むとジャニーである。当時『大砂塵』(原題ジャニーギター)という映画がペギー・リーの歌とともにヒットしたが、歌のタイトルも映画も「ジャニーギター」と呼ばれていた。「ジャニー」のほうがかっこいい呼び方だったのだ。
 少年野球チームの監督という立場が曲者で、そこから発展して今の芸能事務所「ジャニーズ」が生まれ、現在一大隆盛を極めている。1963年公開の映画『ウエストサイド物語』を少年たちと見に行ったことがきっかけで、初代ジャニーズ「あおい輝彦、飯野おさみ、真家ひろみ、中谷良」が誕生した。最後の中谷良がのちに『ジャニーズの逆襲』というジャニー喜多川氏の性癖をあばいた暴露本を出した人である。
 本書113ページの元ワシントンハイツに接した坂上の角地にあったレストランナカタニと喫茶中谷が中谷良の実家ではないかと著者は推測しているが本当だろうか。
 このレストランはしゃれた造りで、当時まだ閑散としていたこの通りは自動車も止めやすく、のちの自動車評論家徳大寺有恒氏はこのあたりに車を止めて、レストランナカタニで食事をすることが多かったと語っている。 
 1950年代後半から1960年代前半の渋谷のはずれの風景である。
 本書は戦後の東京の発展史を語る上で欠かせない各種視点を見せてくれるとても刺激的な地図帳である。

 (担当/木谷)

著者紹介

赤岩州五(あかいわ・しゅうご)

昭和23年(1948)、長崎県に生まれ、金沢に育つ。同志社大学卒業。卒業後は上京してずっと東京に住む。雑誌「トランヴェール」、地図雑誌「ラパン」の編集長を務める。編集プロダクション「アイランズ2」を主宰。地図関連の著書として「アイランズ2」名義で『東京の戦前 昔恋しい散歩地図1・2』『考える力がつく子ども地図帳 日本・世界』(以上草思社)、個人名義で『東京懐かし散歩』(交通新聞社)『銀座 歴史散歩地図』(草思社)など、ほかに『藩と県』(共著、草思社)『ことわざ生活 あっち篇・こっち篇』(ヨシタケシンスケと共著、草思社)など多数。

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自然保護の世界にもあった「昔はよかった論」 『「自然」という幻想 多自然ガーデニングによる新しい自然保護』エマ・マリス 著岸由二+小宮繁 訳

「自然」という幻想
――多自然ガーデニングによる新しい自然保護
エマ・マリス 著 岸由二・小宮繁 訳

◆人気TV番組に見る外来種駆除の困難さ。駆除の労力は別のことに使った方が…

 ため池の水を抜き、外来種を駆除するというテレビ番組が人気になっています。あの番組を観てよくわかることの一つは、外来種の駆除に多大な労力を割いても、成果はあまりにも少ないということです。日本中から外来種を根絶して「過去の自然」を取り戻すのは、現実的な予算ではもはや不可能と考えざるを得ません。限られた地域で特に有害な種だけをねらい、その減少を目指す、というのが現実的なところでしょう。本書によれば、世界中で外来種駆除の費用対効果の悪さは明らかになっています。さらに、外来種の種類によっては環境や人間の生活に何ら悪影響を与えていない場合や、在来種の成育を助けている場合さえあることを報告する研究もあるといいます。手当たり次第の外来種駆除よりは、その労力や予算を別の自然保護施策に使ったほうがよさそうです。
 本書は、人間の影響を排除して「過去の自然」を取り戻すことや「手つかずの自然」を守ることばかりに固執してきた従来の自然保護を批判し、もっと多様で現実的な目標を設定する自然保護のあり方を提案する本です。では「多様な現実的な目標設定」とはどのようなものでしょうか。

◆人間が改変してしまった自然は、人間が介入して守るべきだ

 たとえば、「温暖化による絶滅の回避」です。動植物はそれぞれの種にとって好適な気候のところに生育していますが、温暖化に伴い、極方向や高地へ移動する必要に迫られています。しかし、温暖化があまりに急激なため、移動を自然に任せていると、多くの種が絶滅する危険があります。この危険に対し、市民ナチュラリストや林業関係者の一部が立ち上がり、樹木を寒冷な地へ人の手で引っ越しさせる「管理移転」を開始しました。しかし、移転先の土地ではそれらの樹木は「外来種」です。この行為を目前にし、生態学者たちは「自然への介入を許容するか」「絶滅を容認するか」というジレンマに陥りました。ところがいまや、この管理移転の指針づくりに協力するなど、生態学者たちも温暖化による絶滅回避に向け動き始めています。これは「過去の自然」の再現や「手つかずの自然」の防衛ではなく、「絶滅の回避」という目標を掲げて自然への積極的な介入を行う、新たな自然保護の形と言えます。
 本書は、「手つかずの自然」の崇拝はアメリカで生まれた文化的信条で、それが世界中に輸出されたものであることや、「過去の自然」は安定していて環境保全などの機能も優れていたという仮説が研究により否定されていることを指摘しています。「過去の自然を取り戻せば、さまざまな問題が解決する」という考えは幻想に過ぎないのです。さらにいえば、自然そのものが持つ大きなゆらぎと、人間による環境破壊により、どの時代の過去であれ、過去の自然の回復は不可能です。盲目的に過去を取り戻そうとするのでなく、「絶滅を回避する」「鳥や蝶の渡りを助ける」「在来種の繁殖を促進する」などの現実的で多様な目標を持って、積極的に自然に介入する自然保護が今こそ必要であると著者は提案しています。自然環境の行く末に少しでも興味のある方には、是非とも読んでいただきたい一冊です。

(担当/久保田)

著者紹介

エマ・マリス

サイエンスライター。自然、人々、食べ物、言語、書籍、映画などについて執筆。数年間記者として勤務していたネイチャー誌のほか、ナショナルジオグラフィック、ニューヨークタイムス、ワイヤード、グリスト、スレート、オンアースなどの雑誌・新聞に寄稿している。ワシントン州シアトル出身、オレゴン州クラマスフォールズ在住。

訳者紹介

岸由二(きし・ゆうじ)

慶應義塾大学名誉教授。生態学専攻。NPO法人代表として、鶴見川流域や神奈川県三浦市小網代の谷で〈流域思考〉の都市再生・環境保全を推進。著書に『自然へのまなざし』(紀伊國屋書店)『リバーネーム』(リトル・モア)『「奇跡の自然」の守りかた』(ちくまプリマー新書)など。訳書にドーキンス『利己的な遺伝子』(共訳、紀伊國屋書店)ウィルソン『人間の本性について』(ちくま学芸文庫)ソベル『足もとの自然から始めよう』(日経BP)など。国土交通省河川分科会、鶴見川流域水委員会委員。

小宮繁(こみや・しげる)

 慶應義塾大学理工学部講師。慶應義塾大学文学研究科博士課程単位取得退学(英米文学専攻)。専門は20世紀イギリス文学。1989~91年、ケンブリッジ大学訪問講師。2012年3月より、慶應義塾大学日吉キャンパスにおいて、雑木林再生・水循環回復に取り組む非営利団体、日吉丸の会の代表をつとめている。訳書にステージャ『10万年の未来地球史』(岸由二監修、日経BP)。

 

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努力が「結果」に直結する働き方・学び方とは? マウスコンピューターを傘下に持つMCJ社長による唯一無二のキャリア論! 『極端のすすめ』安井元康 著

極端のすすめ

――やることは徹底的にやる、やらないことは徹底的にやらない

安井元康 著

 本書の著者は、20代にして上場企業2社の役員をつとめ、ケンブリッジ大学でMBAを取得後に入社した有名コンサルティング会社では30代半ばで幹部に昇進、そして30代後半でMCJ(東証2部)の社長に就任して現在にいたる、という仰天すべきキャリアの持ち主です。
 こういう経歴から、絵に描いたようなエリートを想像される方も多いかもしれませんが、著者は決して世間一般でいうところの「エリートコース」を歩んできた人物ではありません。都立高校から中堅私大と呼ばれる大学を経て、就職氷河期のどまん中にベンチャー企業に入社――。それが著者のキャリアの出発点です。
 そんな著者が急激なキャリアアップをなしとげることができた理由、それこそが「極端に振りきるマインド」を一貫して持ち続けたことでした。本書は著者がこれまで実践してきた極端な働き方・学び方を紹介するとともに、その背景となる考え方についてもていねいに解説した本です。たとえば、オール5志向を捨てて自分のコアとなるスキルを「極限値」まで高めること。自分の目の前にある課題に「最高レベル」の努力で挑むクセをつけること。そうしたマインドを育むことが何より大切なのだと著者は述べています。先が見えない時代を生きている私たちに、これ以上はない明快さで指針を与えてくれる一冊といえます。

【本書より】
〇魅力的な社会人とは「できること」がはっきりしている人。そのためには極端に振りきって自分のスキルを磨きあげる必要がある。
〇人材をマネジメントする側からいえば、極端な社員とは「何が頼めるか」が明快で頼もしい存在。
〇失敗を避けようとしてはいけない。失敗は「軌道修正」するためのきっかけにすぎない。
〇「人に認めてもらうこと」をゴールにしてはいけない。承認欲求は棚上げしよう。
〇自分が仕事をしている業界の「極端人」を研究して、そこからエッセンスを学ぶ。
〇会社の飲み会には出なくていい。
〇わからないことを「質問する」という行為は生産性の高い行為。
〇学習時間は24時間から最初に「天引き」して強引につくる。
〇「T字型」スキルの人間ではなく、「傘型」スキルの人間をめざせ。
〇一つのことを完全になしとげる経験によって、マルチタスクをこなす能力が身に付く。
〇自分の仕事の中で、「付加価値を生まない業務」はギリギリまで仕組化・効率化し、付加価値が生まれる業務に最大限の労力を注ぐ。

(担当・碇)

著者紹介

安井元康(やすい・もとやす)

MCJ社長。1978年東京生まれ。都立三田高校、明治学院大学国際学部卒業後、2001年にGDH(現ゴンゾ)に入社。2002年に株式会社エムシージェイ(現MCJ)に転職し、同社のIPO実務責任者として東証への上場を達成、26歳で同社執行役員経営企画室長(グループCFO)に就任。その後、ケンブリッジ大学大学院に私費留学しMBAを取得。帰国後は経営共創基盤(IGPI)に参画。さまざまな業種における成長戦略や再生計画の立案・実行に従事。同社在職中に、ぴあ執行役員(管理部門担当)として2年間事業構造改革の他、金融庁非常勤職員等、社外でも活躍。2016年にMCJに復帰、2017年より同社社長兼COO。2014年より東洋経済オンラインで「非学歴エリートの熱血キャリア相談」を連載中。著書に『非学歴エリート』『下剋上転職』(ともに飛鳥新社)、『99・9%の人間関係はいらない』(中公新書ラクレ)などがある。

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『マツダの魂――不屈の男 松田恒次』著者からのコメント:中村尚樹

マツダの魂 ―― 不屈の男 松田恒次

中村尚樹 著

著者からのコメント

 昭和ひと桁世代の私の父は、山陰地方の海岸沿いにある小さな町で生まれ育ちました。戦後の物資不足の時代に運送業を始めた父は、木炭などの代用燃料を使ったトラックを運転し、朝早くに漁港で水揚げされた魚を積んで大きな町まで毎日、運びました。その頃は食糧難だっただけに、お客さんからは喜ばれ、いい稼ぎにもなったと、懐かしそうに話してくれました。
 高度経済成長の時代に入ると少しずつ、トラックの台数も増えていきました。私のまだ幼かった頃、会社の二階が自宅、一階が事務所という家族経営の環境のなかで、私の遊び場は、トラックが数台入るターミナルでした。そこで私の目を惹いたのが、マツダの三輪トラックだったのです。ひとつしかない前輪が、おちょぼ口のように見えて、なんとも愛嬌のある表情が印象に残っています。
 小学生になると、テレビ放送された「帰ってきたウルトラマン」で、MATの隊員が乗るコスモスポーツは、憧れの的でした。
 私が成長してクルマを買えるようになると、1600ccの初代ユーノス・ロードスターを購入しました。マツダの誇るロータリーエンジンではなく、レシプロエンジンでしたが、まさに“人馬一体”という表現がぴったりする走りの楽しさは、何回乗っても薄れることはありませんでした。それまで400ccのオートバイに乗っていた私ですが、マツダのすごさを体感しました。

 ところで私は、職業としてジャーナリストを選んだのですが、30年以上になる記者人生で一貫して取材し続けているのが、被爆者と核問題です。アメリカが広島、長崎に投下した原子爆弾で、核時代が始まりました。核というパンドラの箱を開けてしまった人類に、福島の原発事故や、北朝鮮の核問題など、難問が次々と押し寄せます。
 そんな私が注目したのが、被爆地広島で発展を遂げたマツダでした。これまでロータリーエンジンをめぐる開発秘話については、“ロータリー四十七士”と呼ばれた技術スタッフの努力がたびたび語られてきました。しかし、なぜ廃墟と化した広島の地でマツダが復興し、なぜ地方の後発メーカーであるマツダがロータリーエンジンを開発しえたのか、その理由について、十分に納得のいく説明が得られる文献は見当たりませんでした。そこで私なりに資料を収集し、状況証拠を積み重ねながら、マツダの歴史を再構成したのが本書です。

 主人公の松田恒次氏は、父親から社長職を引き継ぎましたが、単なる世襲社長ではありません。病気で片脚を切断した障害者であり、被爆して弟を亡くし、専務時代には会社を事実上追放されるという挫折も味わいましたしかし、そのたびに立ち上がった、“敗れざる者”なのです。
 私は障害者に関する本を何冊か書いていることもあって、恒次氏のものの見方に共感するところが、多々ありました。“作る側の論理”よりも“使う側の論理”、“組織の論理”よりも“個人の論理”に重きを置いている。それが恒次氏の自然体なのです。
 同時に、人間関係に悩んだ恒次氏が犯さざるを得なかった過ちも、首肯することはできませんが、理解することはできました。つまりは、とても人間くさい人物なのです。その恒次氏の個性が確かに、マツダのクルマづくりに今でも反映されている。私にはそう感じられるのです。
(中村尚樹・ジャーナリスト)

著者紹介

中村尚樹

1960年、鳥取市生まれ。九州大学法学部卒。NHK記者を経てジャーナリスト。専修大学社会科学研究所客員研究員。九州大学大学院、法政大学、大妻短大等で「平和学」「地方分権論」「多文化コミュニケーション」等担当非常勤講師を歴任。著書に『占領は終わっていない――核・基地・冤罪そして人間』(緑風出版)、『最重度の障害児たちが語りはじめるとき』、『認知症を生きるということ――治療とケアの最前線』、『脳障害を生きる人びと』(いずれも草思社)、『被爆者が語り始めるまで』、『奇跡の人びと――脳障害を乗り越えて』(共に新潮文庫)、『「被爆二世」を生きる』(中公新書ラクレ)、『名前を探る旅――ヒロシマ・ナガサキの絆』(石風社)。共著に『スペイン市民戦争とアジア――遥かなる自由と理想のために』(九州大学出版会)、『スペイン内戦とガルシア・ロルカ』(南雲堂フェニックス)、『スペイン内戦(1936~39)と現在』(ぱる出版)ほか。

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高学年以降は伸びづらい「見える力」を育む 『考える力がつく算数脳パズル 図形なぞぺー<小学1年~3年>』高濱正伸ほか著

考える力がつく算数脳パズル 図形なぞぺー<小学1年~3年>

高濱正伸 著/川島慶 著 /新山智也 著

◆子どもが自分からやりたがる! シリーズ60万部突破の人気問題集に新作登場

 シリーズ累計60万部突破した人気の問題集『なぞぺー』シリーズに、図形・幾何問題の基礎力を育む『図形なぞぺー』が加わりました。『なぞぺー』シリーズは、著者が主宰する大人気学習教室・花まる学習会で使われてきた問題集を書籍化したもの。花まる学習会は、幼児や小学生の数理的思考力を伸ばすことに定評がある学習塾ですが、『なぞぺー』はそのコアとなる教材です。掲載されているのは、子どもたちが自分から楽しみ、夢中で取り組めるよう、教育の現場で子どもたちの反応を見ながらつくられ、改良されてきた面白い問題ばかりです。『なぞぺー』シリーズは保護者の方々からも「子どもが自分からやりたがる問題集」と、高い評価をいただいてきました。

◆高学年以降は伸びづらい図形・幾何の基礎力「見える力」が身につく

 著者の高濱正伸さんは、教育の現場での長年の経験から、子どもの数理的思考力の成長には臨界期があり、小学校3年生くらいまでに伸ばせるかどうかで、その後に大きな違いが生まれると感じてきました。とくに、高濱さんが「見える力」と呼ぶ能力には、その傾向が強いようです。「見える力」とは、「補助線」が思い浮かぶ力や、図形の中の必要な線だけを選択的に見る力、図を描くなど試行錯誤して答えを見つける能力のこと。子どもが将来挑むことになる、図形の証明問題、面積や角度を求める問題といった幾何学の領域では、問題にどこから手をつけてよいかが一様でなく、マニュアルが通用しないため、「見える力」が非常に重要です。そのため、この能力の有無が、学力の伸びに大きな差を生むことになるのです。
 本書『図形なぞぺー』はこの「見える力」をテーマとした問題集で、しかも子どもたちが遊びのように取り組める「パズル」としてつくられています。実際に解いてみるとわかりますが、大人もすぐには答えにたどり着けないのに、子どもでも解くことができる絶妙な難易度で、解けたときに「できた!」と声に出したくなるような、心地よい達成感が得られるようつくられています。
ぜひ、親子で「できた!」と声に出しながら、数理的思考力を育んでください。

(担当/久保田)

著者紹介

高濱正伸(たかはま・まさのぶ)
1959年、熊本県生まれ、東京大学大学院修士課程卒業。93年に、学習教室「花まる学習会」を設立。算数オリンピック委員会理事。著書に『小3までに育てたい算数脳』(健康ジャーナル社)、『考える力がつく算数脳パズル』シリーズの『なぞぺー1~3 改訂版』『空間なぞぺー』『整数なぞぺー』『迷路なぞぺー』『絵なぞぺー』(以上、草思社)などがある。
川島慶(かわしま・けい)
1985年神奈川県生まれ。栄光学園高校・東京大学・同大学院卒。2011年、花まる学習会入社。2014年、株式会社「花まるラボ」を設立。2016年、思考力教材アプリ「Think! Think!」を一般公開。2017年、同アプリが米Googleにより子ども向けアプリの世界ベスト5に選出(Google Play Awards 2017)。高濱との共著に『考える力がつく算数脳パズル 迷路なぞぺー』、同シリーズの『新はじめてなぞぺー』『整数なぞぺー』『論理なぞぺー』『絵なぞぺー』(以上、草思社)など。
新山智也(にいやま・ともや)
1989年山口県生まれ。東京大学理学部卒。株式会社 花まるラボの問題作成を担当。花まる学習会の進学部門にて、最難関中学をターゲットにした授業の教材開発や指導をしながら、思考力教材アプリ「Think!Think!」の問題作成などを行う。

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流れゆく時間を慈しむ感受性から生まれてきた魅力的な言葉を多数、収録! 『一日の言葉、一生の言葉』白井明大著

一日の言葉、一生の言葉 旧暦でめぐる美しい日本語
白井明大 著

 本書は、『日本の七十二候を楽しむ』(東邦出版)で旧暦ブームを呼びおこした詩人が、流れる時間をいつくしむ旧暦の世界観の中から生まれた味わい深い言葉・表現の数々を「一日の言葉」「一月の言葉」「一年の言葉」「一生の言葉」に分けて紹介する本です。
 一日という小宇宙を彩る言葉。月の動きとともにめぐる一月(ひとつき)の言葉。一年、また一年と暮らしていくための言葉。そして、今ここに生きている命を肯定する一生の言葉。
 「時というのはふしぎで、一年があっという間に過ぎることもあれば、ほんの一瞬が永遠のように感じられることもある。だからこそ昔の人は、そのときそのときを愛おしむように、目の前に現れるものごとに、こまやかに名前をつけて呼んできたのかもしれない」と著者は書いています。
 言葉を知ることは、この世界をより深く理解する手掛かりであり、それはまた、より良く生きるためのよすがにもなります。本書に収められた味わい豊かな言葉が、読んでいただいた皆様の心に暖かな灯をともすことを願ってやみません。

【一日の言葉】明けぐれ(あけぐれ) かぎろい 糸遊(いとゆう) ほがらほがら 夕凪(ゆうなぎ) 彼は誰(かわたれ) 日にち薬(ひにちぐすり)…ほか

【一月の言葉】月旦(げったん) 待宵(まつよい) 十五夜(じゅうごや) 雨月(うげつ) 満月(まんげつ) 星月夜(ほしづくよ) 地球照(ちきゅうしょう)…ほか

【一年の言葉】春隣り(はるとなり) 花筏(はないかだ) 桃始めて笑う(ももはじめてわらう) 白南風(しろはえ) 夏ぐれ(なつぐれ) 白雨(はくう) 金風(きんぷう)…ほか

【一生の言葉】息吹き(いぶき) 手児(てご) 幸う(さきわう) ぬちぐすい 草の縁(くさのゆかり) 手六十(てろくじゅう) 有涯(うがい) 常しえ(とこしえ)…ほか

◇本書より一部抜粋◇
日にち薬【ひにちぐすり】
月日が経つことが、心身を癒してくれる何よりの薬、という言葉が、日にち薬。…過ぎゆく日々が薬になる、というのは、人間を包むこの世のやさしさだと信じたい。

白南風【しろはえ】
梅雨のさなか、どんよりと黒い雨雲の下で吹く南風のことを、黒南風という。…いつしか雨雲を吹き払い、梅雨明けを運んでくる南風が、白南風。夏の到来を告げる風。 

有涯【うがい】
限りがある人の一生のことを、有涯という。人には、たしかに寿命があり…死があり、別れがある。それなのに有涯という言葉を目にすると、なんだか心が鼓舞される気がする。…一生を生き抜いた人の生涯というものが、一人一人に厳然と有ると、この言葉に告げられているかのよう。    

(担当 碇)

著者紹介

白井明大(しらい・あけひろ)

詩人。1970年東京生まれ。詩集に『心を縫う』(詩学社)、『くさまくら』(花神社)、『歌』(思潮社)、『島ぬ恋』(私家版)、『生きようと生きるほうへ』(思潮社、丸山豊記念現代詩賞)。2012年に刊行した『日本の七十二候を楽しむ ─旧暦のある暮らし─』(東邦出版)が旧暦への静かなブームを呼び起こす。そのほか『季節を知らせる花』(山川出版社)、『暮らしのならわし十二か月』、『七十二候の見つけかた』(ともに飛鳥新社)、『島の風は、季節の名前。旧暦と暮らす沖縄』(講談社)など、季節や旧暦に関する著書多数。

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試し読み 『勝海舟 歴史を動かす交渉力』山岡淳一郎著

第四章「大江戸開城の大交渉」より抜粋

 勝は、西郷を圧倒する気魄で談判(江戸開城交渉)に臨むために恐るべき戦術をたてていた。もしも交渉が決裂して官軍が攻撃に移ろうとしたら、即座に四方八方へ秘かにしらせ、「江戸市街を焼き、敵の進退を断ち切り、焦土となす」作戦の準備をしていたのである。火炎の壁で官軍の進軍を阻む「江戸焦土作戦」は、一八一二年にナポレオン・ボナパルトがロシア遠征でモスクワに侵入したときに炎上する街をあとに退却した史実を参考にしていた。
 現代のビジネスにおける「交渉学」では、しばしば「BATNA(Best Alternative To a Negotiated Agreement)=合意が成立しなかったときの最善策」が重要だといわれるが、百五十年も前に途方もない規模で、勝はそれを用意していた。

 

 焦土作戦を立てるに当たって、勝はごくしぜんに庶民を使おうとした。そのなかには最下層の人びともいた。そもそも江戸の治安維持は勝の変わらぬ役目であった。官軍の急迫で人心がかき乱され、江戸府下の不埒な輩が財物を強奪し、火を放って町が灰燼に帰すのを防ごうとした。まず勝はメモ用の帳面を持って、火消組の頭、博徒の長、非人の長、名望のある親分と言われる者たち三十五、六名の間を飛び回り、密かに火災を防ぐ組織をこしらえた。かれらを一堂に集め、「おれの指図で動いてくれ」と説き、納得させた。

 

理屈をこねるばかりではない。雑費として幾ばくかの金を与え、「めいめい勝手な行動は慎んでくれよ」と言い渡す。水面下で庶民の防災ネットワークをこしらえたのである。勝から直接頼まれた面々はいたく感激し、「あっしも男だ。勝先生に命を預けやす。子分に暴れさせたりは致しやせん」と誓った。組織のことは他言しないと誓い合い、勝の号令一下で一斉に火消しに奔走する態勢がつくられたのだった。

 

(中略)

 

 …組織した下層のネットワークを、勝は、西郷との談判をまえに「火消し」から一転「火つけ」に百八十度転換しようというのだから、強面の親分連中も驚いたのなんの。焦土作戦を話し合う寄合いで、火消組の頭は、「勝先生、あっしは親の代から火を消してめぇりやした。隣近所からも喜ばれ、纏を振ってきた者でございます。いまさら、火つけをしろと……ほんとうにやっちまっていいんでしょうか」と当惑した。
「そうだ。思いっきり、やってくれろ。火をつけて官軍のやつらを江戸市中に近づけねぇためだ。だがな、おれが合図するまで、早まっちゃいけねぇよ。何も、江戸の民を焼き殺そうってわけじゃねぇんだ。ここからが肝心だ。聞いておくれ。おい、船頭さんたち」
 と、勝は、少し離れて控えていた船方衆を話の輪に引き入れた。

 

「火を放つと決まったら、船頭さん、おめぇさんたちは、房総から江戸前あたりの大小の船を速やかに江戸に引き入れ、川の河岸という河岸、着船場、ありとあらゆるところで人を乗せて、運んでやってくれ。一人も残しちゃいけねぇよ。助けるんだ」
「へぇ。すぐに船は集めやしょう。どうぞご安心を」と船頭の親方が胸を叩いた。

 

 避難民の護衛は、魚河岸の兄さんたちに任される。武器は魚をさばく出刃包丁だ。
「よしきたッ。包丁でサツマイモ(薩摩軍)をぶった切りましょうかね」
「そんときゃ、頼むぜ。まぁいいや。焦土作戦は、最後の最後、奥の手だ。くれぐれも、早まるんじゃねぇよ。おれが合図をしたら、一気呵成にやるんだ」

 

 勝の肚は据わった。
 談判をまとめなければ、江戸が火の海となる。大悪行に手を染めてしまうのだ。もう後はない。退路を断った勝は、池上本門寺の西郷に面談を申し込む手紙を送った。

 

両雄は、高輪の薩摩藩下屋敷で、三月十三日に相まみえることとなった。

 

(以下、いよいよ歴史を動かす大交渉へ)

 著者紹介

山岡淳一郎(やまおか・じゅんいちろう)

1959年愛媛県生まれ。ノンフィクション作家。「人と時代」を共通テーマに近現代史、政治・経済、建築、医療など分野を超えて旺盛に執筆。時事番組の司会、コメンテーターも務める。著書に『後藤新平 日本の羅針盤となった男』『田中角栄の資源戦争』(以上草思社文庫)、『日本電力戦争』(草思社)、『神になりたかった男 徳田虎雄』『気骨 経営者土光敏夫の闘い』(以上平凡社)、『逆境を越えて 宅急便の父 小倉昌男伝』(KADOKAWA)、『成金炎上 昭和恐慌は警告する』(日経BP社)、『原発と権力』『インフラの呪縛』『長生きしても報われない社会 在宅医療・介護の真実』(以上ちくま新書)ほか。東京富士大学客員教授。一般社団デモクラシータイムス同人。

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