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草思社のblog

ノンフィクション書籍を中心とする出版社・草思社のブログ。

日本人は外交の真実を知らない。世界はワルで満ちているのだ。

ワルの外交――日本人が知らない外交の常識

河東哲夫 著

今月号(2014年12月号)の月刊文藝春秋に保守論客の櫻井よし子さんが巻頭エッセイに『「亡国の外務省」徹底批判』という一文を書いていました。北朝鮮との拉致問題や中国、韓国、ロシアとの関係など、外務官僚主導の現今の日本外交を、「譲歩」中心の軟弱外交であると決め付け、これでは何も解決できないという厳しい批判でした。

 本書はこうした一部にある外務省批判、日本外交批判への元外務官僚からの回答書といってもいい内容です。日本のような中級国家、しかも戦争放棄を国是とする国家が現在の世界の中で生きていくためにどうすべきかという外務官僚ならではの経験知を本音で披瀝した他に例を見ない貴重な一書です。冷戦崩壊、そしてアメリカの覇権力が弱まるなか、米中ロシアという大国はルール無視の行動に走りがちで、日本は一国ではそれに対処できず翻弄されるばかりです。

 本書の中で著者は外交とは力のバランスを作り出すことであると言っています。大きい、小さい、強い、弱いという、さまざまな国の間のバランスをとり、決定的な破局に至るのを避ける技術であるということです。そのためには権謀術数、あらゆる手を尽くして自国の主張を貫く技術はさまざまにあり、北朝鮮の錬金術のような外交から、中央アジアの小国の逆転の発想(弱者が強者を振り回す)まで、多くの事例を興味深く著者は紹介しています。

 この世界で起きている多種多様の外交を知るだけでも興味はつきません。

 では、なぜ日本外交はうまくいかないのか。うまくいかないというより、地勢的、歴史的に日本が置かれている状況が困難なのであり、そのことに日本人はもっと自覚的になるべきであり、マスメディアも言葉だけの理想論に走らず、そのことを自覚すべきだというのが著者の主張です。真の国際化に直面している現代日本人に今最も必要とされている知恵とは何か。それをこの本は教えてくれます。

著者略歴

河東哲夫(かわとう・あきお)

1947年東京生まれ。1970年東京大学教養学部卒、外務省入省。ハーバード大学大学院ソ連研究センター、モスクワ大学文学部などに留学。東欧課長、ボストン総領事、ロシア大使館公使、ウズベキスタン・タジキスタン大使などを歴任。2004年外務省を退職、日本政策投資銀行設備投資研究所を経て現在、フリーの評論家。日英中露の4カ国語で人気サイトjapan and world trendsを主宰。またメールマガジン「文明の万華鏡」を「まぐまぐ」から発行。著書に『ソ連社会は変わるか』『ソ連の試練』(いずれもサイマル出版会、筆名嵯峨冽)、『遥かなる大地』(草思社、筆名熊野洋)、『意味が解体する世界へ』『外交官の仕事』『米・中・ロシア 虚像に怯えるな』(いずれも草思社)、『ロシアにかける橋』(かまくら春秋社)など。

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