草思社のblog

ノンフィクション書籍を中心とする出版社・草思社のブログ。

人工知能による脅威は、あまりに過大評価されている。 『シンギュラリティは怖くない―ちょっと落ちついて人工知能について考えよう』 中西崇文著

シンギュラリティは怖くない

――ちょっと落ち着いて人工知能について考えよう

中西崇文 著

◆この上なく腑に落ちる、人工知能論

 昨今、人工知能に注目が集まり、数々の「人工知能本」が出版されています。しかし、そのほとんどが「人類滅亡の脅威となるか」「職を奪われる恐怖」「ディープラーニングなどの技術解説」という3点に終始しています。つまり、「人工知能は技術的に何が可能で、どんな脅威を発生させうるか」という論点です。でも、人工知能を考えるとき、それだけが大事なことでしょうか。そのような「脅威」は、本当に起こるのでしょうか。

 本書の著者は、ごく近い将来に、人工知能は、普通の人にとってもありふれた「ツール」になり、現在人々が人工知能についてぼんやり抱いている「近寄りがたい超越的なもの」というイメージは払拭されてしまうと言います。そうなったとき重要なのは、人々が製品やサービスとしての人工知能を使って「どう感じるか」「どうあってほしいと思うか」です。

 考えてみれば当たり前の話ですが、技術的には実現可能であっても、経済的・社会的理由で実現不可能なものは現在においても数多くあります。だれだって、危ないツールや、信頼性の低いツール、うるさいツールは使いたくありませんよね。それは人工知能においても同じです。どんなに高度な人工知能技術を使った製品・サービスでも、人々が「危ない」「いらない」「気持ち悪い」などネガティブな評価を下したら、受け入れられず、淘汰される運命にあります。人工知能においても、経済的・社会的理由により排除・淘汰されるものがたくさんあるはずです。

 前述のように、これまでの人工知能本は「技術的に何が可能か・脅威か」ということばかりを議論してきましたが、人々は「危険な人工知能」を受け入れないため、その脅威は現実のものとはなりにくいといえます。

 人工知能普及前夜にあるいま、本当に重要なのは「人間は人工知能をどのように受け入れるか」「人間はなぜ、人工知能を欲するのか」という視点です。本書はこの視点に立って議論することにより、既存の人工知能本にない、新鮮な指摘・未来予測をいくつもしています。


◆「シンギュラリティはもう起きているが、人間はそれに気づかない」

 本書の指摘・予測をいくつか列挙してみましょう。「シンギュラリティはもう起きているが、人間はそれに気づかない」「人間を困らせる人工知能は存在できない」「人工知能は人間の意識を生産活動から解放する」「人工知能で『モバイル』の時代は終わる」「人工知能は『合議制』を取るようになる」。また、人工知能が普及していく過程で「人工知能と人間の役割分担をどうすべきか」「人工知能と人間のインタフェースをどうすべきか」ということが大きな問題になるとも指摘しています。

 結論だけ聞くと意外なものも多いのですが、そこにいたる議論は、過去の技術の進展とそれを人間がどのように受け入れてきたかという歴史や事例、先駆的議論を踏まえており、どれも腑に落ちるものばかり。

 初めて人工知能の本を読む人だけでなく、何冊も人工知能本を読んだという方にも、新鮮な発見がある一冊です。

(担当/久保田)

著者紹介

中西崇文(なかにし・たかふみ)

国際大学グローバル・コミュニケーション・センター准教授/主任研究員。デジタルハリウッド大学大学院客員教授。1978年、三重県伊勢市生まれ。2006年3月、筑波大学大学院システム情報工学研究科にて博士(工学)の学位取得。独立行政法人情報通信研究機構にてナレッジクラスタシステムの研究開発、大規模データ分析・可視化手法に関する研究開発等に従事。2014年4月より現職。専門は、ビッグデータ分析システム、統合データベース、感性情報処理、メディアコンテンツ分析など。著書に『スマートデータ・イノベーション』(翔泳社)がある。

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シリーズ累計50万部突破! その基本の3冊がリニューアル 『考える力がつく算数脳パズルなぞぺー①②③改訂版』 高濱正伸 著

考える力がつく算数脳パズルなぞぺー①②③ 改訂版
高濱正伸 著

 面白くて、子どもが自分からやりたがると評判の問題集『なぞぺー』シリーズが、2006年の刊行開始以来、累計50万部を突破しました! 『なぞぺー』シリーズはこれまで、算数と国語の分野で、のべ15タイトルを刊行※。15タイトルという小規模なシリーズでの累計50万部達成は、まさに快挙と言ってよいでしょう。『なぞぺー』シリーズは、実は隠れた大ベストセラーなのです。
 その中でも、最初に刊行され、シリーズの基本となってきた3冊『考える力がつく算数脳パズル なぞぺー①~③』(対象:5歳~小学3年)がこのたび改訂されました。実績ある問題は、2006年に刊行されたときそのままに、図版を描き直したリニューアル版です。
 『算数脳パズルなぞぺー①~③』は、著者の高濱正伸さんが主宰する大人気学習塾「花まる学習会」で教材として使われている算数パズルの傑作選。算数パズル作成の達人である高濱さんが作成、それを実際に子どもたち出題して、もっとも子どもたちが喜んで挑んだ問題、解けたときに大きく喜んだ問題などを選ぶなど、教育の現場で鍛えられてできた問題集です。
 本書の第一の目的は、子どもたちに考えることを好きになってもらうことです。自分で問題に挑み、解けたときの喜びをいったん経験すると、考えることが好きになり、次からも「どうしても自分で解きたい」という学習の意欲が育ちます。『なぞぺー』の問題は、ちょうどそのような経験ができる面白さ・難易度になるよう、長年の教育現場での経験によって設定された珠玉の良問ばかり。実際、子どもたちは嬉々として問題に取り組み、自分から次の問題、次の問題と、どんどんやりたがる、魔法のような問題集なのです。
 学習に対する「やる気」や「意欲」、「自信」などの非認知能力を身につけさせることの大切さに注目が集まる昨今、『なぞぺー』は実践的にこの問題に取り組み、成果を上げている教材として、特筆すべき存在といえるでしょう。ぜひ、親子で取り組んでいただきたい教材です。

※『なぞぺー①~③改訂版』を含めるとシリーズは、のべ18タイトルです。累計50万部は『なぞぺー①~③改訂版』を含まずに達成しています。

(担当/久保田)

著者紹介

高濱正伸(たかはままさのぶ)
1959年、熊本県生まれ、東京大学大学院修士課程卒業。93年に、学習教室「花まる学習会」を設立。算数オリンピック委員会理事。著書に『小3までに育てたい算数脳』(健康ジャーナル社)、『考える力がつく算数脳パズル』シリーズの『なぞぺー1~3 改訂版』『新はじめてなぞぺー』『空間なぞぺー』『整数なぞぺー』『迷路なぞぺー』『絵なぞぺー』(以上、草思社)などがある。

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考える力がつく算数脳パズルなぞぺー② 改訂版<5歳〜小学3年生> | 書籍案内 | 草思社

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きちんと伝わる! ネイティブに一目置かれる! 『一気に英語力がグレードアップする100の英単語――「話す」「書く」のバリエーションがどんどん広がる』

一気に英語力がグレードアップする100の英単語

――「話す」「書く」のバリエーションがどんどん広がる

パトリック・フォス/酒巻バレット有里 著

◆幼稚な英語はネイティブからバカにされます!

 英語を書いたり話したりするとき、いつも同じ単語ばかり使ってしまうことはありませんか? 本来は、年齢や経験を重ねるにつれて、言語レベルもグレードアップしていくのが望ましいのですが、実際には大人になって仕事で英語を使っているという人でさえ、中学や高校のときに習った単語を使いまわしている、という人も多いかもしれません。しかし、ネイティブの評価はシビアで、使える英単語が幼稚なものにとどまったままだと、せっかくのアイデアも、あまり洗練されたものではないと思われたり、ひどいときには知性まで疑われたりしかねません。
 そこで、本書では限られた学習時間内で英語力を効率的にグレードアップさせるため、ネイティブの使用頻度が高い単語(約1~3000位相当)の中からレベルアップに最適な100語を厳選して紹介します。
たとえば、

soon→shortly   finally→ultimately   advice→suggestion
think→suppose   famous→prominent   change→convert

 など、メールや会話などでついつい使ってしまいがちな単語をちょっと言い換えるだけで、子どもっぽい英語が一気に洗練されます。
 こうしたネイティブがよく使う単語が会話で自然に出たり、自分の考えを表すことができると、「よく勉強しているな」とネイティブから評価が上がることは間違いありません。会議や交渉の場でも、対等に話ができる相手として一目置かれるはずです。

◆ストーリー形式の例文だから自然に身につく

 本書はこの100単語を効率的に覚えられるように、ストーリー形式の例文を使っています。英単語が文中で実際にどう使われているかを見ることで、単語の使い方も自然と身についていきます。ハラハラドキドキするネコたちの楽しい冒険物語を読み進めるうちに、知らぬ間に100単語の意味と使い方まで身につくという画期的な英語学習書なのです。
 英語を今すぐレベルアップしたいと思う人に、ぜひおすすめの一冊です。

◆本書で紹介する100単語

accompany/accomplish/acknowledge/adopt/agenda/aside/assign/barely/bear/beside/besides/

blame/briefly/broad/bunch/candidate/capable/characterize/comprehensive/conduct/conflict/

confront/considerable/consideration/consistent/convert/criteria/criticize/debt/determine/disorder/

distinction/diverse/drag/efficient/engage/evaluate/expand/expect/facility/familiar/generate/grab/

grant/immigrant/imply/impose/incentive/incorporate/ingredient/initiative/insight/intense/internal/

invest/involve/issue/literally/longterm/loose/multiple/objective/ongoing/personality/perspective/

phase/physician/portion/predict/priority/prominent/prospect/pursue/reflect/regardless/relevant/

represent/retain/revenue/roughly/rural/shortly/solid/specifically/spot/stake/struggle/substantial/

suggestion/suppose/tendency/tremendous/ultimately/vary/via/vital/waste/whereas/withdraw/

witness/yard/ 

●本書には姉妹編『日本人に足りないネイティブの英単語100』(単語レベル:ネイティブの使用頻度ランキング約2000~3000位相当)、『いきなり英語がうまくなる100の英単語』(単語レベル:ネイティブの使用頻度ランキング約1~1999位相当)があります。併せて学習することで、語彙力をさらに鍛えましょう。

(担当/吉田)

著者紹介

パトリック・フォス
東京医科歯科大学教養部の英語分野准教授。ニュージーランド、ビクトリア大学ウェリントン校にて応用言語学博士号(Ph.D.)取得。研究テーマはコーパス言語学および英語学習者の語彙使用状況と学習過程。日本人の英語教育に20年以上携わっている。

酒巻バレット有里(さかまきばれっとゆり)
米国カリフォルニア州立大学ベーカーズフィールド校およびベーカーズフィールド・カレッジ、英語・日本語講師。関西学院大学社会学部卒業、米国カリフォルニア州立大学ベーカーズフィールド校教育学部修士課程修了。主な共著書に『日常レベルで使う数の英語表現』(ジャパンタイムズ)、『アメリカで車を運転するための完全ガイド』(三修社)などがある。

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『2017年版間違いだらけのクルマ選び』刊行記念イベント開催のお知らせ

刊行記念イベント開催します!


『2017年版間違いだらけのクルマ選び』刊行を記念して、著者・島下泰久さんによる、ゆるめのクルマ語らいイベントを開催します。

島下さんのトークを楽しみ、クルマに関してイロイロ質問もできる、交流イベントです。ふるってご参加下さい!

場所:湘南T-SITE(神奈川県藤沢市辻堂元町6丁目20番-1)

日時:1月15日 午前10時10分~11時30分

申し込み方法などは、下記リンクから。
http://real.tsite.jp/shonan/event/2016/12/2017-kurumaerabi.html

※刊行記念イベント直前には、テーマに沿ってクルマが集まる「モーニングクルーズ」も開催されます。そちらもお楽しみ下さい。詳しくは下記リンク参照下さい。
http://real.tsite.jp/shonan/event/2017/01/morning-cruise-170115.html
 

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まじめなる口上――『稀代の本屋 蔦屋重三郎』開板によせて

稀代の本屋 蔦屋重三郎

増田晶文 著

あとがきのあとのあとがき 増田晶文(ますだ・まさふみ)

 女は『稀代の本屋 蔦屋重三郎』を手にしてペラペラとめくった。
「蔦屋重三郎ってあのTSUTAYAのご先祖でしょ?」
 さかしらをいう、その女を私は嘆息まじりでみつめる。アラフォーの、美魔女と呼ばれ、社会的地位もあるベッピンさん。
「蔦屋とあそこはぜんぜん関係ないです。とはいえ、創業者の増田宗昭サンは重三郎に敬意を抱いてらっしゃるようですが」
 ちなみに増田晶文と増田宗昭氏の間にも姻戚関係はなく懇意な間柄でもない(もっとも、二度ほど彼にお逢いしたことはある)
「意外に蔦屋重三郎って知られてないんだな」
 いや独り言ちしている場合ではない。ここはひとつ、重三郎になりかわって彼をご紹介いたしましょう――。

 蔦屋重三郎は18世紀半ばの江戸の本屋。
 当時の本屋は出版社と卸、書店を兼ねていた。蔦屋は耕書堂と名乗り、黄表紙に洒落本なんていう草双紙や浮世絵、ときには春画も扱う地本問屋だったとご理解いただきたい。
 地本がカバーするのは高尚にあらず難解にあらず。思いっきり庶民向けのうえ、カウンターカルチャー色の濃い出版物だ。ざっかけ、卑俗といえばそれまでだけれど、今でいう雑誌やコミック、ポスターという感じ。これがまたバカスカ売れに売れた。
 そんな、江戸の本屋で群を抜いた存在が重三郎だったのだ! 美女も相づちをうつ。
「蔦重って、本の値打ちを変えた男なのね」

 そして、重三郎ほどカタカナ職業にふさわしい人物はいない。
 エディター、パブリッシャーはもちろんプロデューサーにディレクター、プランナー。メディアミックスにコラボレーション。デザインやコピーライティングのセンスも豊か。
 なによりマーケティング戦略にたけていた。
 彼が刊行物の挿絵や文にたびたび登場していたのは、マスコミで露出するメリットを熟知していたからだろう。
「メディアの力をフルに活用していたんだ」

 才能を見つけ育てるエデュケーションの手腕は類例をみない。天才絵師の喜多川歌麿に美人画を描かせ一世風靡し、東洲斎写楽なる怪物には役者絵で江戸を驚愕せしめた。
 山東京伝、恋川春町ら戯作者は蔦屋でベストセラーを連発。大田南畝なんていう日本史の教科書に出てくるような御仁だって、蔦屋で大いに名を売った。
 重三郎の没後、江戸文化を背負った滝沢馬琴、十返舎一九、葛飾北斎らも彼の世話になっている。
「超一流のパトロンってことね」

 遊廓吉原を出版物でイメージアップさせた功績だってすごい。重三郎はランドスケープって言葉を知っていたかのよう。
 細見という吉原のタウンガイドを独占販売、ゴージャスな遊女のスタイルブックを仕掛け、吉原を江戸でいちばんクールな街へとイメージアップさせた。春をひさぐ女どもを、時代のファッションリーダーにまでまつりあげてみせた手腕はさすが、お見事。
「なーるほど、花魁を最新モードのアイコンにしたのか」

 だが重三郎は決して順風満帆な本屋人生を送ったわけではない。
 持ち前の反骨心を発揮し幕府から睨まれ、きついきつい仕打ちを受けた。
 手塩にかけた絵師は、名を成したとたんに籠をこじ開け飛んでいってしまった。
 それでも重三郎は絶対にメゲない。あの手この手で再起を図り、出版メディアの荒海に出帆してみせた。
 江戸の本屋が抱いた野望は実現するのか。クリエイターたる重三郎の最後にして最大のアクションとは?
「もったいぶらずに早く教えて」
 おっと、こいつは『稀代の本屋 蔦屋重三郎』を読んでのお愉しみ!

 かく熱っぽく語った私に、女はニヤリとしてみせた。
「まあ蔦屋重三郎ってそういう人だったの。マスダさんも早く彼みたいな出版社や編集者と出逢わないとねえ」
 ごもっとも。
 草思社が蔦屋耕書堂に伍せるか、私も恋川春町なみの人気作家になりおおせるか――。
 かくなるうえは、蔦重なみにこの場で、まじめなる口上を。
「それは皆さまのご購買、ご高覧いかんにかかっておりまする。どうかご愛顧のほど、よろしく、よろしくお願い申し上げます」


*もうひとつの「あとがきのあとのあとがき」は
→増田晶文ブログ http://www.showbun.com/

著者紹介

増田晶文(ますだ・まさふみ)

 作家。1960年大阪生まれ。同志社大学法学部卒業。人間の「果てなき渇望」を通底テーマに、さまざまなモチーフの作品を発表している。文芸作品に、新島襄と徳富蘇峰の軌跡を描いた『ジョーの夢』(講談社)、理想の小学校設立に奔走する若者たちが主人公の『エデュケーション』(新潮社)など。『果てなき渇望』で文藝春秋ナンバー・スポーツノンフィクション新人賞、『フィリピデスの懊悩』(『速すぎたランナー』に改題)で小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。その他『吉本興業の正体』『うまい日本酒はどこにある?』(ともに草思社文庫)などの著作がある。

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ネガティブな人に引きずられないために知っておきたいこと 『悪い知らせをうまく伝えるには?――幸せ拡散7つのルール』ミシェル・ギラン著

悪い知らせをうまく伝えるには?

――幸せ拡散7つのルール

ミシェル・ギラン 著 ショーン・エイカー 序文 月沢李歌子 訳 

◆誰もが情報発信する時代に知っておきたいコミュニケーション術

 本書の著者ミシェル・ギランは、米国の人気女性キャスターから幸福学の研究者へと転じたというユニークな経歴の持ち主。ギランは、テレビ報道に長く携わるなかで、さまざまな事件現場を取材して、悲惨な事件を煽りたてるように伝えるメディアの姿勢に大いに疑問を感じるようになりました。

 そこで、一念発起して大学院に入り直し、ポジティブ心理学を学び、幸福について研究するようになりました。本書では、自身の研究のほか最新の心理学や脳科学の知見を踏まえ、センセーショナルな悪いニュースばかりを伝えるのではなく、良いニュースをより効果的に伝え、それを拡散することで家庭や職場を活性化して幸せになる方法を実践的なステップとともに提案しています。

◆伝え方次第で結果は大きく変わる

 各種の研究結果によれば、伝え方をわずかに変えることで仕事の生産性、子どもの学業成績、営業成績は20~40%も伸び、ストレスレベルは20%以上減らせるとか。本書でも、心理学の技法に基づいて、悪い知らせを耳にしたとき、過剰にならずに要旨だけを冷静に伝える方法、極端に後ろ向きでネガティブな相手と精神的に消耗せずにやりとりする方法など、コミュニケーションの工夫がたくさん盛り込まれています。

 例えば、どうしようもなく後ろ向きな人とやりとりしなければならない時などは、そのまま交流すると相手のネガティブな論調に引きずり込まれて嫌な気分が長く続いてしまうこともあります。そんな時は、あえて一時的に撤退して自分の体制を立て直し、ネガティブな相手にこそポジティブな言い方で包み込むように接していくことが大切だと著者は、力説します。日常生活で思い当たる光景を思い浮かべながら、読み進めることで、そのまま実践につなげられそうな一冊です。

(担当/三田)

 

本書の目次から

日本語版によせて(ショーン・エイカー)

なぜ、幸せを拡散するべきなのか?

Part1 ポジティブの力を利用する

ルール1 パワーリードで脳が気持ちよくなる準備をする

ルール2 フラッシュメモリーで過去の成果を未来の成功の糧にする

ルール3 よい質問でポジティブ思考を引き出す

Part2 ストレスとネガティブな気持ちを克服する

ルール4 ファクトチェックで後ろ向きから前向きに

ルール5 戦略的撤退でネガティブな人と上手につきあう

ルール6 4つのCで悪い知らせをうまく伝える

Part3 ポジティブな拡散力を生み出す

ルール7 前向きな考え方を拡散する

 

著者紹介

ミシェル・ギラン(Michelle Gielan)

アプライド・ポジティブ・リサーチ代表、ペンシルベニア大学応用ポジティブ心理学修士。米CBS、FOXニュースのキャスターを経てビジネスコーチ、コンサルタントとなる。夫であるポジティブ心理学者ショーン・エイカーとともにコンサルティングを行う。

訳者紹介

月沢李歌子(つきさわ・りかこ)

津田塾大学卒。外資系投資顧問会社勤務から翻訳家に。訳書に『ポジティブ・リーダーシップ』(草思社)『最高の仕事ができる幸せな職場』(日経BP社)『ディズニー「感動」のプロフェッショナルを育てる5つの教え』(朝日新聞出版)ほか。

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フリー(無料)ほど、高いものはなかったのかもしれない!? 超監視社会――私たちのデータはどこまで見られているのか?

超監視社会

――私たちのデータはどこまで見られているのか?

ブルース・シュナイアー 著 池村千秋 訳

◆無意識にネットに残した足跡の思わぬ使われ方

カーネギー・メロン大学の研究チームは、公共の場に置いたカメラの前を通りがかった人の個人データをリアルタイムでディスプレーに表示することに成功した。通行人の画像を顔認識ソフトウエアやフェイスブック上で公開されたタグづけされた写真データベースと照合しただけである−−。(第3章より)

 毎日、肌身離さず携帯電話やスマートフォンを持ち歩き、facebookのようなSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)、Google検索、ソーシャルゲームなどの無料サービスを利用するなかで、私たちは、日々の行動の足跡を位置情報とともにたくさん残しています。さて、それらのデータが、どのように扱われているか、じっくり考えたことがあるでしょうか?

◆情報セキュリティの世界的権威が放つ最新作

 すべてがネットにつながれる時代。私たちの詳細な個人情報は、 GoogleやAmazonといった巨大企業に握られ、それらのデータは、国家による個人の監視強化を促しています。アメリカ国家安全保障局(NSA)の元職員エドワード・スノーデンによる暴露は、その一端を浮き彫りにしたことは言うまでもありません。
 そのスノーデン事件も契機となり、2015年に情報セキュリティの大家ブルース・シュナイアーが発表した本書は、私たちがネットに残した履歴が企業、国家により、どのように利用されているかを克明に描き、個人のプライバシー侵害の実態について警鐘を鳴らします。各種の履歴は、マーケティング目的で転売され、他方、私たちに確認をとられることなく諜報活動のために政府に引き渡されているのです。

◆まずは、ネットの履歴を消さずにはいられなくなる

 著者のシュナイアーは、巨額の税金が投入されて国家が公然とプライバシー侵害を行ったところで、テロの予防などに何の成果も出ていないことを強烈に批判します。自身は、一切インターネットに個人の履歴を残さないようにし、小売りのポイントカードの類も利用しないのだとか。それでもGmailアカウントの人とやりとりすればその段階で個人情報はネットに残るため、プライバシーは守りきれないと絶望的な嘆きの声を綴っています。
 プライバシーへの意識は、個人の価値観しだい。しかし、私たちは、かつてない「超監視社会」に生きていることは、間違いありません。そのことを自覚したうえで、あなたは、これからどのように自分や家族のプライバシーを守りたいでしょうか? 読み始めると本を脇に置いて、ひとまず、ネットの履歴を消さずにはいられなくなる、衝撃的な一冊です。
(担当/三田)

本書の目次から 
第1部 私たちの超監視社会 (第1章 情報化時代の「排ガス」/第2章 監視されるデータ/第3章 分析されるデータ/第4章 監視ビジネス/第5章 国家の監視と統制/第6章 官民監視パートナーシップ)
第2部 なにが脅かされるのか? (第7章 政治的自由と正義/第8章 公平で平等なビジネス/第9章 企業の競争力/第10章 プライバシー/第11章 安全)
第3部 超監視社会への対抗策 (第12章 原則/第13章 国家に関する提案/第14章 企業に関する提案/第15章 私たちができること/第16章 新しい社会規範)

著者紹介

ブルース・シュナイアー(Bruce Schneier)

世界的な暗号研究者であり、コンピュータ・セキュリティの権威。発行するニューズレターやブログの読者は世界中で25万人を超える。ハーバード大学法科大学院のフェロー、レジリエント・システムズ社最高技術責任者(CTO)も務める。著書に『信頼と裏切りの社会』(NTT出版)、『セキュリティはなぜやぶられたのか』(日経BP社)ほか。

訳者紹介

池村千秋(いけむらちあき)

翻訳者。訳書に『ライフ・シフト――100年時代の人生戦略』(東洋経済新報社)『年収は「住むところ」で決まる』(プレジデント社)ほか多数。

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楽天ブックス: 超監視社会 - ブルース・シュナイアー - 9784794222374 : 本

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