草思社のblog

ノンフィクション書籍を中心とする出版社・草思社のブログ。

2時間で読める西欧哲学入門『フランスの高校生が学んでいる10人の哲学者』シャルル・ペパン 著、永田千奈 訳

フランスの高校生が学んでいる10人の哲学者

シャルル・ペパン 著、永田千奈 訳

 本書は、映画にも出演するフランスの人気哲学者シャルル・ペパンが、西欧哲学者10人をコンパクトかつ通史的に紹介したベストセラー教科書です。
 取り上げられるのは、プラトン、アリストテレス、デカルト、スピノザ、カント、ヘーゲル、キルケゴール、ニーチェ、フロイト、サルトルの10人。
ギリシャ時代から近代までの哲学の流れが、面白いように理解できます。
思想家の内田樹氏は「2時間で読める西欧哲学入門。よほどの覚悟がないと書けない本だ」との推薦文を寄せてくださいました。
 そもそもフランスの高校では哲学が必修、バカロレアと呼ばれる大学入学資格試験では文系理系を問わず哲学の筆記試験が課されます。これは欧米の特にエリートにとって、哲学は不可欠な教養であるとの歴史的に根付いた考えがあってのことです。本書はフランスの老舗出版社フラマリオンが刊行している学生向けコレクションの一冊で、本国ではベストセラーになりました。
 現代の若者の悩みにそれぞれの哲学者の言葉を用いてアドバイスしたり、現代から見るとアウトな発言をあえて紹介するといった趣向もこらされています。
 哲学的教養が身に着けられるのはもちろん、「10人の哲学者」の別の可能性を想像してみるなど、知的好奇心を刺激させられる本書を、是非ご一読ください。

【目次】
まえがき

1 プラトン
2 アリストテレス
3 デカルト
4 スピノザ
5 カント
6 ヘーゲル
7 キルケゴール
8 ニーチェ
9 フロイト
10 サルトル

訳者あとがき

著者紹介
シャルル・ペパン(Charles Pépin)
1973年、パリ郊外のサン・クロー生まれ。パリ政治学院、HEC(高等商業学校)卒業。哲学の教鞭をとる一方、教科書、参考書のほか、エッセイや小説を多数執筆。映画館で哲学教室を開いたり、テレビやラジオ、映画に出演している。邦訳に『考える人とおめでたい人はどちらが幸せか 世の中をより良く生きるための哲学入門』『賢者の惑星 世界の哲学者百科』がある。

訳者紹介
永田千奈(ながた・ちな)
東京都生まれ。早稲田大学第一文学部フランス文学専修卒業。主な訳書にルソー『孤独な散歩者の夢想』、ペパン『考える人とおめでたい人はどちらが幸せか 世の中をより良く生きるための哲学入門』、ヴェルヴィッシュ 『スター・ウォーズ 善と悪の哲学』がある。

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濃厚接触を生業にする女性たちの「コロナ前」「コロナ後」を 濃密に描く出色のルポルタージュ!『コロナと風俗嬢』八木澤高明 著

コロナと風俗嬢

八木澤高明 著

 新型コロナウイルスは日本社会に多大な惨禍をもたらしましたが、とりわけ痛ましいのは女性の自殺が急増していることです。長引く「自粛」によって、飲食やサービス業など女性の比率が高い非正規雇用の仕事が失われたことが原因とされています。では、かねてより追いつめられた女性が当座の収入を得る最後の場所とされてきた風俗の世界は、このコロナ禍によってどのような状況になっているのでしょうか。本書は多年にわたって日本の色街を歩いてきたノンフィクションライターが、風俗の世界で働くさまざまな立場の人々に取材した迫真のルポルタージュです。
 2020年~21年にかけて、著者は吉原、鶯谷、ススキノ、伊香保温泉、梅田、飛田新地、和歌山・天王新地……といった場所を訪ね歩き、さまざまな年齢・立場の女性たちに話を聞きました。そして、各地で出会ったのは、思いのほかしたたかに危機に対峙する女性たちでした。コロナを機に風俗の世界から足を洗い、「デリヘルが私のことを救ってくれましたね。そこでいろんな人に出会って人生経験を積めたから、いまも昼間の仕事ができているんだと思っています」と前向きに語る女性がいるかと思えば、「『昼間の仕事がなくって大変だろう』とお金を送ってくれる人がいるんです。……(5人分)合わせると月75万円になります」と告白するソープ嬢もいます。長年SMクラブを経営している女性は売り上げの激減に悩みながらも、「(持続化給付金などの)国の補助金はいっさい受け取るつもりはないから関係ないです。そういうお金を受け取るとね、結局、税務署から目をつけられることになるから。極力目立たないようにやるのがいちばんだと思っています」と、この世界で長く生きてきた者としての矜持を口にしています。
 令和の時代にあっても、夫の暴力や家族の借金など本人の意思とは関係のないところで人生の濁流に巻き込まれ、風俗の世界の住人になることを選んだ女性は少なくありません。ですが、「人間は逆境のなかにあっても、その宿命に流されているだけの弱い生き物ではない」(本書「はじめに」より)ことを、彼女たちの知られざる戦いが証明しているようにも思えます。あたりまえだった日常が失われたとき、人はどう生きていくのか。保証なき日常を生きる女性たちの人生行路から、いくばくかの手がかりが見えてくるかもしれません。
(担当・碇)

【目次】
第1章 コロナとデリヘル女性経営者
売り上げが半減したSMクラブ
コロナのおかげで見つかった初のパート仕事
「数学の天才」がデリヘル嬢になったわけ
金魚を食べる困窮生活からキャバクラ、ソープ、AVへ
コロナに阻まれた風俗復帰
鶯谷の「その後」を見据える優子
一回八万円の超高級ソープ嬢の遍歴
…ほか

第2章 吉原の陰影
灯の消えた色街吉原
現役ソープ嬢が語る吉原のいま
コロナでソープを辞め、また戻ってきた真理子
ソープ三〇万、デリヘル四五万、男たちから一〇五万円
梅毒とコロナ
十歳から体を金に替えてきたフーミン
…ほか

第3章 クラスター発祥地、ススキノの夜
コロナの猛威がはじまった街
コロナ感染の疑いから一年、ふたたびススキノへ
最後の脱法売春地帯
北のアニキときしめん屋
自衛隊出身の人妻ヘルス従業員
水商売を支える花屋
元銀行員のソープ嬢めぐみ
…ほか

第4章 伊香保温泉とタイ人娼婦
売春を強いられたカンボジア人女性
外人通りの「スナック夢」
新潟から来た遊女、タイから来た娼婦
大学出の元ホテル従業員と元教師
離婚をきっかけに海外をめざしたメイ
休業するホテルと常連客が支えるスナック
…ほか

第5章 天王新地の娼婦と梅田のたちんぼ
地方の風俗街はどうなったのか
天王新地の娼婦アヤと座敷童
大阪の待ち合わせスポットで客をとる女性
マッチングアプリでたちんぼに会う
妖怪と女子高生の売春グループ、そして杏梨の場合
飛田新地、松島新地と兎我野の夜
…ほか

著者紹介

八木澤高明(やぎさわ・たかあき)

1972年神奈川県横浜市生まれ。ノンフィクションライター。写真週刊誌カメラマンを経てフリーランスに。『マオキッズ 毛沢東のこどもたちを巡る旅』で第19回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。2000年代初頭から日本各地の色街を追いつづけ、『黄金町マリア 横浜黄金町 路上の娼婦たち』『娼婦たちから見た日本』『色街遺産を歩く』『青線 売春の記憶を刻む旅』『日本殺人巡礼』など著書多数。

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気分はいつまでも「おじさん」、でも身体の内外では確実に老化が進行していた!?『自分がおじいさんになるということ』勢古浩爾 著

自分がおじいさんになるということ

勢古浩爾 著

■思いのほか愉しい「老いのリアルな日々」が綴られる

 自分の身体が老いていく不安、老後のお金の不安、老後の孤独の不安…高齢化が進む中、老後に対する不安を数え上げればきりがありません。
 本書は、そうした老後に対する不安を抱えている人たちに向け、実際に74歳という押しも押されもせぬ“おじいさん”になった著者が、自分が老いていくリアルな過程を通して、年寄りになったらなったでそう悪くもなく、思いのほか毎日結構楽しいものだということを伝える一冊です。
 本書の中で著者は、「いまこの歳になって、わたしは『ただ生きているだけで楽しいんだよ』という感覚を、ほんとうに手にいれた」と断言し、「いまでは晴れても雨が降っても楽しい。歩くことも、自転車に乗ることも楽しいのである」と、毎日の瞬間瞬間を「生きている」実感が、そのまま充実感や幸福感につながっていることを教えてくれます。

■老後は自分の「楽しい」ことだけすればいい

 3年前に脳梗塞で倒れ、大好きだったタバコを止め、きちんと薬を飲む日々を送っている著者。病気と付き合いながらも、自分なりに究めた「小さな楽しみ」「小さな幸せ」を多数紹介します。
「もう多くの人とワイワイガヤガヤやりながら、交流を楽しみたいという欲求がまったくない」と言うだけあって、著者の好きなものは、自転車、散歩、一人旅、DVD映画鑑賞、喫茶店、読書…など、基本的に一人で楽しめるものばかり。
 本書を読めば、老後はもう誰憚ることなく、自分の自由に生きていいんだと、背中を押される気持ちがして、老後不安のモヤモヤが払拭されること間違いありません。
 ぜひ多くの方に手に取っていただければ幸いです。

(担当/吉田)

■目次より
第1章 「生きているだけで楽しい」という老年
「末期の目」から生を見返してみる    
息をするだけでこんなにも嬉しい        
「生きる元素」としての自然元素    
自然元素と人間元素は人間の理想郷        
養老孟司のMoreとHere & Now     
物欲は人間をしあわせにしない        
根本は「自然元素」、その他は全部おまけ    
「生きているだけで楽しい」は年寄りにとって盤石の土台    
    
第2章 それでもやはり健康一番、お金は二番
思いどおりの凡庸な人生    
求めるのは心の平安        
白内障でわかった「白」のすごさ    
健康一番、お金は二番とわかってはいるが    
歳をとって病気になると、生きること自体が仕事になる 
自分の死、人の死        

第3章 ワクワク自転車、ウキウキ歩き
自転車は年寄りに最適の乗り物    
わたしが自転車に乗る理由        
伊藤礼の『大東京ぐるぐる自転車』    
新しい自転車に感動した        
逆にママチャリに感謝    
あわや大惨事        
ウォーキングは「8000歩/20分」+自己流で    
町の達人にどうしても追いつけない        
八十歳の石川文洋の日本縦断歩き旅    

第4章 またときめきの奈良へひとり旅
定年退職者のありふれたセンチメンタルジャーニー 
母親の故郷の奈良    
うましうるわし奈良へのひとり旅        
映像作家・保山耕一氏の「時の雫」は最良の癒やしである    
沢木耕太郎の『江戸近郊道しるべ』を歩く    
荷物は少なく、生活は小さく    
ああ、青春の欧州ヒッチハイク旅        

第5章 映画と写真と絵画と
半年間、映画を見つづけた    
食わず嫌いには理由がある        
韓国映画に度肝を抜かれる    
カメラ好き? 写真好き?        
もうコンパクト・デジカメで十分だ    
ソール・ライターの写真        
一番好きなワイエスの絵画    

第6章 喫茶店で音楽を聴きながら外を見る
好きでなかった「ジャズ」を聴く        
わたしの十五パーセントはポピュラー音楽でできている
だんだん世間の流行り事に興味がなくなっていく
コンテンツも容器も品質が低劣    
中島みゆきの「ベスト10」をつくる        
喫茶店から外を見るのが好きだ    

第7章 死ぬまで読書
最高の「心の元素」としての読書        
いまや作家も主人公もみんな年寄りばかり    
後続作家に期待する        
読みたい本が続々出てくる    
わたしはわたしに従う        
楽しくなければ「しなくて」いいのだ    
なんと幸運な人生

著者紹介

勢古浩爾(せこ・こうじ)

1947年大分県生まれ。明治大学政治経済学部卒業。洋書輸入会社に34年間勤務ののち、2006年末に退職。市井の人間が生きていくなかで本当に意味のある言葉、心の芯に響く言葉を思考し、静かに表現しつづけている。1988年、第7回毎日21世紀賞受賞。著書に『定年後のリアル』シリーズ、『結論で読む幸福論』(いずれも草思社)、『最後の吉本隆明』(筑摩書房)、『ウソつきの国』(ミシマ社)、『定年バカ』(SBクリエイティブ)、『人生の正解』(幻冬舎)など多数。

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車種別徹底批評。国産車の小改良・新型を網羅。定番バイヤーズガイドが今年も刊行。『2022年版間違いだらけのクルマ選び』島下泰久著

2022年版間違いだらけのクルマ選び

島下泰久著

2021年12月24日ころ発売!

激動のクルマ業界動向もレポート。脱炭素への各社の対応に変化は?

揺れに揺れた2021年のクルマ界。ニューカーも大量にデビューし、話題満載。

半導体をはじめとした部品不足、「EVシフト」を促す政治からの圧力の急上昇など、2021年のクルマ界は大きく揺れ、メーカー各社は対応を迫られました。クルマはこの先どうなるのか、将来がさらに見えづらくなった1年といえるでしょう。一方で、今年のニューカーは大豊作。とくにスポーツカーとSUVに魅力的なモデルが大量にデビューしました。いろいろあって大変だった業界動向と、良いクルマがたくさん出て難しくなったクルマ選び。その両方がわかる定番ガイドが今年も発売。例年にも増して、マストな1冊です!

 

著者YouTubeチャンネルと連動、記事内のQRコードから動画が閲覧可能!

 

◎第1特集:ホンダはどうなるのか?

脱エンジン宣言、多数の車種の終了…。一連の決定は英断か? 迷走か?

◎第2特集:スポーツカー大国ニッポン

ZにWRX、GR86/BRZも。気づけば、よりどりみどり。こんな国、ほかに無い!

◎第3特集:やっぱりVWゴルフ

EVシフトの逆風のなか、登場した史上最高のゴルフ。「今こそ」の1台を徹底批評。

 

2022年版の指摘

・「EVにすれば問題解決」は考えが甘い!

・2022年から始まるマツダの再攻勢に注目

・EV充電の面倒は、解消どころか悪化する?

・課題山積のホンダ。今こそトップの声が必要

・「脱炭素」でもスポーツカーは無くならない

 

※カバー画像のダウンロードが下記リンクより可能です。

https://tinyurl.com/2022machigaidarake

 

2022年版の論評より

VWゴルフ
またも半歩先行く存在に。脱帽…

ソリオ
ライバルに惑わされ美点喪失。ガッカリ

ヴェゼル
広さ・乗り心地・走り・先進装備。どれも◎

bZ4X/ソルテラ
「EV遅れてる」論を一蹴か。相当な意欲作

ノート・オーラ
新しさも走りも◎。ただ価格戦略が…

WRX S4
先代との差は歴然。格段に楽しめるクルマに

GR86/BRZ
理想的な進化遂げた。味付けの違いも楽しい

カローラクロス
ライバルが太刀打ちしがたい出来と価格

NX
新機軸満載、渾身の新型。レクサスの新章開く

シビック
原点回帰の良さ◎。HEVやタイプRにも期待

アウトランダーPHEV
持てる力を結集した新型。価格も意欲的

 

著者紹介

島下泰久(しました・やすひさ)
1972年神奈川県生まれ。立教大学法学部卒。国際派モータージャーナリストとして自動車、経済、ファッションなど幅広いメディアへ寄稿するほか、講演やイベント出演なども行なう。2021-2022 日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。『間違いだらけのクルマ選び』を2011年から徳大寺有恒氏とともに、そして2016年版からは単独で執筆する。YouTubeチャンネル「RIDE NOW -Smart Mobility Review-」の主宰など更に活動範囲を広げている。

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ウイルスも寄生生物。どこで生まれて、どう進化したの?『寄生生物の果てしなき進化』トゥオマス・アイヴェロ 著 セルボ貴子 訳

寄生生物の果てしなき進化

トゥオマス・アイヴェロ 著 セルボ貴子 訳

いまだに収束が見えないコロナウイルス、近年日本でも発見され警戒されている人獣共通感染症のエキノコックス。これらは、他の生物 を搾取して生きる「寄生生物」という点で同じ仲間です。寄生生物 には私たちを脅威に陥れるものもいれば、腸内細菌のように生きていくうえで役に立ってくれる種もいます。しかし、「その生存を他の生物に委ねる」という一見いびつに見える営みは、一体いつから始まったのでしょうか。また、その脆弱にも見える生存戦略が、今日まで途絶えることがないのも考えてみると不思議です。本書は、寄生生物たちがその誕生から現在、そして未来まで、どのように発展してきたのかを進化と人類との関わりの観点から語ります。

・こんなところにも寄生生物。深い人類との関わり

人類との関わりで、いくつか興味深いエピソードを紹介します。メジナ虫は、人間に感染する長い紐状の寄生虫ですが、ギリシャ神話のアスクレーピオスが持つ蛇が巻き付いた杖は、実はメジナ虫を巻き付けて取り除いたことを象徴しているという説があります。また、モーセ五書のうち四番目の『民数記』では、エジプト人たちを困らせた毒蛇についての記述がありますが、この毒蛇もメジナ虫だったと考えられています。そして進化という観点で見ると、結核はもともと先史時代には潜伏期間が長い病気だったのですが、中世になり欧州、中国、インドという人口の多い国にたどり着いたことで、次から次に他の人に飛び移れることになり、現在のように潜伏期間が短いものになっていったのです。

・「人類の健康」から、「生態系の健康」へ

本書は、目黒寄生虫館の館長である倉持利明氏に解説を寄せていただきました。その中で、本書の以下の部分を象徴的な箇所として引用しています。「感染症は医学だけの問題ではない。生態学も、文化も、都市計画も、歴史的な側面も関わる」。これは、 人間、家畜、または野生動物の健康についてはすでに個別に語る段階ではないことを意味します。著者は、この生態系全体の健康を考える重要性を説き、それを「ワンヘルス」と呼んでいます。未曾有の寄生生物である感染症の危機を経験しているいま、このより大きな視点での健康を真剣に考えるべき時が来ています。本書の進化生物学の広大な視点が、寄生生物とのより未来志向な共生について考える一助となれば幸いです。

(担当/吉田)

著者紹介

トゥオマス・アイヴェロ

1984年生まれ。新進気鋭の生態学、進化生物学者。自称“ネズミと寄生虫”通。現在、ヘルシンキ市のネズミの分布、寄生虫、人間のネズミに対する態度の分野横断的研究グループ主任。科学雑誌 Tiedeのオンラインブログ「すべての背後には寄生生物がいる」は、同国で最も読者数の多いブログで本書の元となった。

訳者紹介

セルボ貴子(せるぼ・たかこ)

広島県出身、2001年よりフィンランド在住、夫とWaConnection 社にて、通訳・翻訳 &コンサルティング業を営む。軸はサステナビリティ、訳書に『世界からコーヒーがなくなるまえに』(青土社)、『ムーミンの生みの親、トーベ・ヤンソン』(河出書房新社)などがある。

解説者紹介

倉持利明(くらもち・としあき)

公益財団法人目黒寄生虫館館長。1955年生まれ。博士(獣医学)。京急油壺マリンパーク、第32次日本南極地域観測隊夏隊、日本歯科大学、国立科学博物館を経て、2021年4月より目黒寄生虫館館長。専門は寄生虫の分類学と動物地理学で、中でも海産魚に寄生する吸虫類の研究を行っている。

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61人の女性の美しさを捉えた写真と言葉『ワンピースのおんな』宇壽山貴久子 写真、すまあみ 文

ワンピースのおんな

宇壽山貴久子 写真 すまあみ 文

 本書は、ニューヨーク、カリフォルニア、そして日本各地に在住の50歳以上の女性61人をモデルにしたポートレート写真集です。「暮しの手帖」誌に11年間にわたって連載された作品をもとに、一冊にまとめました。
 彼女たちはそれぞれお気に入りのワンピースを身にまとっています。フェミニンなもの、シンプルでリラックスできるもの、形の面白さと色に惹かれたもの、着るとワンランクアップした気分になれるもの、自分でデザインしたもの、体のラインをきれいに見せるもの、主張のあるもの、踊りやすいもの、気分が晴れやかになる鮮やかなもの、夫がプレゼントしてくれたもの、母から譲り受けたもの……。
 宇壽山貴久子氏が「あとがき」で述べるように、「皆その一着を大切にしていて、自分に似合うものを身に着けて」、「はたから見て似合わない、変だと思われても、好きなものを着ているからそれでよい、という方もいた」。芯に強さを持つ、凛とした女性の美しさを、それぞれの写真が捉えています。
 そして本書のもう一つの魅力は、女性たちの語る言葉です。「不幸や困難は、人生において誰にでも、公平に起こりうることだと思う。/起きたことを受けとめていけばいい。そしてなぜだかそういう状況は、人と人との繋がりを深くする」「女だからといってできないことはない。/ただもし子どもがいて、ともに人生を歩めていたら、なお良かったと思うこともある」「自分で自分を楽しませること、それが人生を謳歌する秘訣だと思う」「本当にやりたいことがあるなら、歯を食いしばってふんばる。死ぬまでそうありたいと思っている」など、一人一人が人生で大切にしてきた信条を、すまあみ氏が印象的な文章にまとめました。
 やさしさと温かさが溢れる本書を、是非お楽しみください。

(担当/渡邉)

【目次】
小花柄の黒いワンピース ビクトリア・ヘレラさん
白いギャザーワンピース 吉田真弓さん
麻のAラインワンピース ジュリエット・ホーンさん
インド綿のブロックプリントワンピース スーザン・ハーンさん
オレンジ色のアシメトリーワンピース ロンダ・ラドミンさん
パンダのワッペン付きストライプのワンピース 寺本美樹さん
ターコイズ色のAラインワンピース ダイアン・ポーターさん
緑色のワンピース 坂本ミリアムさん
グレージャージーのワンピース レナーテ・シュバルツさん
リネンとコットンのコートワンピース ナカムラユキさん
アマゾン柄のワンピース 中山千寿さん
黒いワンピース 小竹由美子さん
ニットのノースリーブ・ワンピース ケイティー恩田さん
18世紀頃の麻のワンピース バーバラ・バイクさん
フォグリネンワークのワンピース シェリー・オルセンさん
刺繡を施したシルクコットンのワンピース 坂井ミドリさん
グラフィティープリントのジャージードレス アンキー・スペッツさん
チェックのサックドレス 高田節子さん
バティック柄のワンピース マライカ・アデロさん
蝶のグラフィックプリントのワンピース デボラ・ウィリアムスさん
赤いツイードのワンピース 桐島かれんさん
貫頭衣のような鹿の子地のワンピース 三宅治子さん
刺繡入りのチュニックワンピース ジューン・テイラーさん
キャス・キッドソンの花柄のワンピース スベタラナ・サリュコワさん
東セルビアの手刺繡のジャンパースカート 山崎佳代子さん
シルクジャージーのラップドレス 田川公子さん
フラワープリントのワンピース ジャッキー・タルモさん
麻のロングワンピース 岡本恵子さん
黒いニットのベビードールワンピース コジママサコさん
黄色いボレロワンピース ユゲット・グラシャノクさん
インドネシアのロングワンピース イーダ・メランキーさん
赤いチェックのコットンワンピース 武久眞理さん
綿麻の白いワンピース 中川清美さん
タイダイのワンピース カーラ・エルナンデスさん
黒のギリシャ風ロングワンピース バーバラ・コイルさん
ヴィンテージの水玉模様ワンピース 斎藤真理子さん
黒いシフォンのエンパイアドレス ペナイン・ハートさん
コットンのスタンドカラーワンピース 中村夏実さん
チャコールグレーのプリーツドレス ロナ・エルロイさん
直線裁ちのコットンワンピース 坂井より子さん
ターコイズブルーのインド調ワンピース 小泉あや子さん
黒いウールのワンピース ジェーン・W・オズボーンさん
刺繡のロングワンピース 安久井千穂子さん
紺色のエプロンワンピース ミュリエル・ファバロさん
ブルーグレーの麻のワンピース クリスティーナ・マケラーさん
黒いカクテルドレス ジュディーアン・マネリーノさん
サーモン色のコットンワンピース パトリシア・レーガンさん
ブロックプリントのワンピース クリスティーナ・ギッティさん
シルクのリバーシブルドレス エレン・バーケンブリットさん
手編みのニットワンピース 大平玲玲さん
白いアシメトリーワンピース スザンヌ・ゴールデンさん
コットンのシフトドレス 小前洋子さん
グラフィックプリントのグラデーションドレス メリー・シンダーさん
コットンのバルーンワンピース 浅野千里さん
ペイズリー柄のワンピース キャシー平野さん
花柄のフレアワンピース 冨永粒さん
チェックのコクーンワンピース 岡本敬子さん
ネイビーのシルクワンピース メアリー・アレキサンダーさん
編み込み模様のサマーニットドレス 黒津由子さん
ジェフリー・ビーンのヴィンテージワンピース デブリエル・デ・モンフォールさん
水玉模様のフレアワンピース 大谷由美子さん
あとがき

著者紹介

宇壽山貴久子(うすやま きくこ)/写真
写真家。宮城県出身。早稲田大学卒業後に渡米し、Fashion Institute of Technologyで写真を学ぶ。2002年「犬道場」で写真新世紀奨励賞。雑誌や広告などで活動しながら様々な作品を制作発表している。主な作品に「SAME TIME NEXT YEAR」(2019)など。

すまあみ/文
壁画ペインター。東京都出身。17年間をニューヨークで過ごす。学生時代に出会った宇壽山氏に誘われ「ワンピースのおんな」のテキストを担当。ライターを経て、こども部屋のカスタムペインターに転身。現在は拠点を東京に移し、保育施設の壁画制作や、こどもと作るパブリックアートの制作に力を入れている。

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多数の指導経験から編み出された、画期的美文字練習法!『誰でも確実に美文字になる るいとも練習法』川南富美恵 著

誰でも確実に美文字になる るいとも練習法

川南富美恵 著

◆書き方が似た字をまとめて練習するから、効率よく学べる。画期的美文字練習法

 「もう少しうまく字が書けたら……」。そう思って、ペン字の練習をはじめても、なかなか上達しない、だから続けられない、という方は少なくないようです。もしかしたら、それは、その方の学び方が悪いせいではなく、「教え方」のほうに原因があるのかもしれません。
 本書は、自らペン字教室を主宰し、生徒さんに教えてきた著者の経験から編み出された、非常に効率的で実践的なペン字練習法「るいとも練習法」についてまとめた本です。

◆「るいとも練習法」って何? どこが画期的?

 ペン字の練習がなかなか続けられないのは、練習した成果がすぐ実感できないからではないでしょうか。また、最初から難しい課題に突き当たって、行き詰まるからかもしれません。著者は、生徒さんが効率よく学べるように、成果を実感しながら継続できるようにと、指導の方法に工夫を重ね、次のような「るいとも練習法」を考案しました。

①文の7割は、ひらがなが占めています。だから、ひらがなから練習します。よく使う字から上手になっていくので、すぐに成果が実感できます。

②書き方が似た字をまとめて練習します。だから、ばらばらに練習するより、ずっと効率よく学べます。

③画数の少ない簡単な字から練習をはじめます。だから、挫折しづらく継続しやすくなります。

④漢字はコツの組合せで上達していきます。だから、すべての漢字を練習する必要はありません。コツを一つ一つ教えます。

 たとえば、一般的な指導法だと、ひらがなは五十音順に「あ」から学ばせることが多いですが、じつは「あ」は画数も曲線も多く、難しい字です。そこで「るいとも練習法」では、画数が少なく書き方が似ている「く」「へ」のペアから学ぶ、といった具合です。似た字をまとめて学ぶので、「類は友を呼ぶ」から「るいとも練習法」と名づけられました。
 本書のもう一つの特長は、学ぶ人の視点に立って丁寧に解説する著者の語り口です。注意するべき点を詳しく、読者に語りかけるように優しく教えます。
 宛名書きや、署名、ちょっとしたメモや一筆箋など、デジタル化が進んだ現代でも、文字を書く機会は案外多いものです。ぜひ、本書のメソッドで成果を実感しながら、ペン字を学んでみてください。

(担当/久保田)

著者紹介

川南富美恵(かわみなみ・ふみえ)

青山一丁目ペン字筆ペン教室主宰。幼少期より、書道師範の父から字の指導を受ける。早稲田大学卒業。国会議員秘書、出版社広報部などを経て、書写講師資格を取得、2016年青山一丁目ペン字筆ペン教室スタート。きれいなだけでなく、自分に自信を持てる字の書き方、手紙のマナー、季節の挨拶や言葉の使い方などの指導が好評。月に100名以上が通う人気の教室に。よみうりカルチャー自由が丘、日本橋三越でも講座を持つ。新聞紹介、テレビ出演も多数。著書に『字がきれい!はいいことづくし』(評言社)がある。

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