草思社のblog

ノンフィクション書籍を中心とする出版社・草思社のブログ。

尹錫悦・新大統領は韓国を正常化できるか。どう考えても無理だろう。『韓国の大統領はなぜ逮捕されるのか 北朝鮮対南工作の深い闇』西岡力著

韓国の大統領はなぜ逮捕されるのか

――北朝鮮対南工作の深い闇

西岡力

 韓国の大統領選が3月に行われて、この5月に新大統領・尹錫悦(ユン・ソギョル)が誕生した。文在寅(ムン・ジェイイン)・前大統領の悪夢の五年間が終わって、韓国は正常化できるのではないかという日本の一部に期待があるが、それは無理だろうと著者は言っている。0・7ポイント差という僅差での勝利は、いまだに社会に分断があり、極左的勢力が根強く勢力を保っている証拠である。しかも肝心の尹氏に保守の気概があるわけでなく、文在寅政権で検事総長に任命されて保守派粛清(朴槿恵弾劾逮捕など)を行った当事者であり、ただ権力闘争で追われ下野して対立候補になっただけの人間だ。
 ただし、文憎しの思いがあるなら、文の在任中の不正を暴いて逮捕ぐらいはしてくれるのではないかと支持者は思っているだろうが、いまのところそういう動きもないようだ。
 韓国の大統領は、全斗煥盧泰愚から始まり最近の李明博朴槿恵まで、とくに保守系の大統領はことごとく退任後逮捕されてきた。また盧武鉉のような革新系でも、退任後に親族の汚職を追求され自殺に追い込まれることもあった。権力の移行期に過去の遺恨が噴き出して報復的な訴追が行われることが多かった。
 尹大統領の今後の施策については予断を許さないが、ウクライナ侵攻が勃発後、米国は米韓日の三国の結束を固めようとし、中ロ北朝鮮への備えを強くしているので、従来の親北反日反米政策を当面は軌道修正してくるのは間違いない。かといって、北朝鮮の工作が社会の隅々まで行き渡っている現状、いつ親北的な南北連邦国家が生まれて来るかもわからない。本書は朴槿恵文在寅政権下のこの10年でどのように親北(韓国風に言うと従北)化が進んだかをつぶさにたどり、いま韓国社会が直面している危機の構図を、韓国問題の第一人者が最新情報をもとに描いた韓国論である。
 韓国大統領はいつ何時、逮捕されるかもしれないという、危ういパワーバランスの上に立っている。そのことを思い出させてくれる警世の書である。

(担当/木谷)

著者紹介

西岡力(にしおか・つとむ)

1956年、東京都生まれ。国際基督教大学卒業。筑波大学大学院修士課程修了。外務省専門調査員として在韓日本大使館勤務、『現代コリア』編集長、東京基督教大学教授などを経て、現在(公財)モラロジー道徳教育財団教授・歴史研究室室長。麗澤大学客員教授。「救う会」会長。歴史認識問題研究会会長。著書に『日韓誤解の深淵』(亜紀書房)『増補新版・よくわかる慰安婦問題』(草思社文庫)『でっちあげの徴用工問題』『日韓「歴史認識問題」の40年』(草思社)『わが体験的コリア論』(モラロジー道徳教育財団)など。

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60歳の西部邁と39歳の福田和也が縦横無尽に語り合う『論語清談』西部邁 著 福田和也 著 木村岳雄 監修

論語清談

西部邁福田和也 著 木村岳雄 監修

 本書は2018年1月18日に自裁を遂げた西部邁氏が、2000年に福田和也氏と行った『論語』をめぐる対談を収めたものです。
 福田氏による「まえがき」には当時の混乱する世相の中、「自分の足元を見つめ直そうと始めたことの一つが『論語』の再読」であったとあります。
 漢の時代に孔子の弟子や孫弟子たちによってまとめられた『論語』は中国全土に広がっただけでなく、5世紀頃に初めての漢籍として日本に伝えられました。
 その後、飛鳥時代から江戸時代まで『論語』は日本人にとっての必須の教養として浸透して、明治以降の日本人の知性を形成する礎となりました。
 『論語』に詳しくない方でも「三十にして立ち、四十にして惑はず、五十にして天命を知る」をはじめとしたいくつかの言葉をご存知でしょう。
 本書では、漢学者・木村岳雄氏の監修の下、西部氏、福田氏の二人がこれぞという『論語』の言葉をピックアップし、字義の解釈から歴史の話まで、冗談まじりに縦横無尽に語り合います。
 大変楽しく読み通せば、『論語』のエッセンスが自然に理解できるという一冊です。
 毎年のように自然災害に脅かされ、疫病がはびこり、戦火が止むことのない現在こそ、『論語』の知恵にあらためて学びたいものです。

【「まえがき」より】
 西洋において最も広く読まれ、影響を与えてきた本といえば、聖書である。では東洋でそれにあたる本は何かといえば、『論語』である。
 考えてみたら不思議な話ではないだろうか。小国で多少重い位についたことはあったにしろ、無位無官に等しく人生を終え、何人かの弟子から尊敬を集めて、その内のほんの一握りと肝胆相照らした孔子という人間が、一文明圏と言われるようなものまで構成する思想家となり、彼の言葉をまとめた『論語』が時を超え、国を越えて受け入れられるようになったのだから。(福田和也

(担当/渡邉)

【目次】
まえがき 福田和也

第一章 日本人にとっての『論語
「中庸」の精神と孔子の哲学/『論語』の精神を継承した日本人/「朋(とも)有り、遠方より来たる、亦(また)楽しからずや」/「巧言令色、鮮なし仁」/朋としての友を持つということ/「終はりを慎み遠きを追はば、民の徳厚きに帰せん」/「三十にして立ち、四十にして惑はず、五十にして天命を知る」/「我仁を欲すれば、斯(ここ)に仁至る」/確信としての伝統、運命愛としての孝悌/「行ひて余力有らば、則ち以て文を学べ」

第二章 『論語』と価値基準
「己に如(し)かざる者を友とすること無かれ」/「君子は周して比せず、小人は比して周せず」/場をつくるという意識/「図らざりき。楽を為すことの斯に至らんとは」/「之を道(みちび)くに徳を以てし、之を斉(ととの)ふるに礼を以てすれば、恥ありて且(かつ)格(いた)る」/「関雎(くわんしよ)は楽しみて淫せず、哀しみて傷(やぶ)らず」/「女子と小人は養ひ難し」/「子は怪力乱神を語らず」/フランス哲学の「怪力乱神を語らず」

第三章 孔子の「俗」と「聖」
孔子の出自と儒教の血統崇拝/父の「現実主義」と母の「神秘主義」/「吾少(わか)くして賤(いや)し。故に鄙事(ひじ)に多能なり」/「学びて思はざれば則ち罔(くら)し。思ひて学ばざれば則ち殆(あやふ)し」/「憤せずんば啓せず」/驕気と多欲と態色と淫志/「下剋上」の賤しさと「長幼の序」/徳治と法治の関係/政治家孔子はなぜ急いだか

第四章 孔子の「死ぬ準備」
「帰らんか、帰らんか」/「吾行ふとして二三子と与(とも)にせざる者無し」/「博奕(ばくえき)なる者有らずや。之を為すは猶ほ已(や)むに賢(まさ)れり」/「異端を攻(をさ)むるは斯れ害あるのみ」/「知らざるを知らずと為す、是知るなり」/「甚だしいかな吾が衰へたるや」

あとがき 木村岳雄

著者紹介

西部邁(にしべ・すすむ)

1939年、北海道生まれ。思想家。東京大学教授、秀明大学教授・学頭、雑誌「発言者」主幹、「表現者」顧問を歴任。著書に『経済倫理学序説』(吉野作造賞)、『生まじめな戯れ 価値相対主義との闘い』(サントリー学芸賞)、『サンチョ・キホーテの旅』(芸術選奨文部科学大臣賞)、『ファシスタたらんとした者』ほか多数。2018年、自裁を遂げる。

福田和也(ふくだ・かずや)

1960年、東京都生まれ。批評家。慶應義塾大学名誉教授。著書に『日本の家郷』(三島由紀夫賞)、『甘美な人生』(平林たい子文学賞)、『地ひらく 石原莞爾と昭和の夢』(山本七平賞)、『悪女の美食術』(講談社エッセイ賞)、『福田和也コレクション1 本を読む、乱世を生きる』、『世界大富豪列伝 19‐20世紀篇』、『世界大富豪列伝 20‐21世紀篇』ほか多数。

監修者紹介

木村岳雄(きむら・たけお)

1963年、埼玉県生まれ。京都大学文学部卒業。発言者塾で西部邁氏に師事。現在は東洋大学で非常勤講師を務める。また個人で『論語』なとの講読会を主催。


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ウクライナ戦争でも感じた、自然界で弱者が生き延びるための知恵『ダマして生きのびる 虫の擬態』海野和男 写真と文

ダマして生きのびる 虫の擬態

海野和男 写真と文

 この本は作2021年の夏休みに伊丹市昆虫館で著者が行った講演(オンライン)が好評だったので、それをもとにまとめられた本である。著者は50年近く昆虫写真家として努めてきたが、追いかけてきた得意のテーマの一つが「昆虫の擬態」である。1993年に『昆虫の擬態』という写真集をまとめて、その年の自然科学写真協会の年度賞を受賞して以来、日本でのこの分野の第一人者である。本書にはこれまで撮りためた写真から最新の成果まで、昆虫の不思議な生態「擬態」を考えるための格好の写真、典型的な写真、精細な動画(QRコード入り)がまとめられており、それを見ているだけでも楽しい本になっている。
 「擬態」というのは昆虫だけに限らないが、草や花や樹木など周囲の何かにそっくりの真似をして身を隠す(カムフラージュ)、あるいは逆に突然目立つ格好をして目くらましをする(攻撃的擬態)などの生物の生態で、いずれも鳥や爬虫類などの捕食者から逃れ、自然界で生き延びるための各種の方法である。
 いちばん有名なのは本書の表紙写真や序章に詳述しているオオコノハムシという木の葉っぱにそっくりの虫である。この写真を見ていると、何でそこまで葉っぱに似る必要があるのかと驚くほどの擬態である。また25ページのムラサキシャチホコという蛾が、枯れて丸まった葉っぱのように他の葉の上に止まっている写真は、まるでエッシャーのだまし絵のように見えて見事である(平面なのに立体に見える)。ここまでやると本当に捕食者を避けるためだけに進化したとも思えないような不思議感がある。
 この本では、弱者が身を守るために「1章 よくあるものにまぎれる」「2章 目立たないようにする」「3章 強いヤツの真似をする」「4章 驚かせてチャンスをつかめ」「終章 死んだふりをする」という章立てになっていて、虫たちの涙ぐましい、それぞれの進化上の工夫を示している。
これは先のウクライナ戦争でも感じた自然界の摂理のようでもある。日本という国防上の弱者が生き延びるためには、目立たないように身を潜めて、アメリカという強者の威を借りて、最後は「死んだふり」までして生きのびよという教訓なのかもしれない。

(担当/木谷)

著者紹介

海野和男(うんの・かずお)

1947年東京生まれ。東京農工大学卒。昆虫写真家。著書『昆虫の擬態』(平凡社)は日本写真協会年度賞受賞。ほかに『蝶の飛ぶ風景』(平凡社)『世界のカマキリ観察図鑑』『世界でいちばん変な虫 珍虫奇虫図鑑』『増補新版 世界で最も美しい蝶は何か』『蝶が来る庭』(いずれも草思社)『虫は人の鏡 擬態の解剖学』(養老孟司と共著、毎日新聞出版)など。日本自然科学写真協会会長、日本動物行動学会会員など。2021年度日本動物行動学会日高賞受賞。海野和男写真事務所主宰。公式ウェブサイトに「小諸日記」がある。

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夜、寝る前に心の宇宙旅行をしてみませんか?『夜、寝る前に読みたい宇宙の話』野田祥代 著

夜、寝る前に読みたい宇宙の話

野田祥代  著

■目を閉じて、想像の力で地球を飛び出そう

 私たち人間は、ついささいなことで落ち込んだり、イライラしたり、目の前の現実に一喜一憂しがちです。とりわけ今は長引くコロナ禍により、心理的にもストレスが大変大きい時代です。心穏やかに日常を送ることが難しくなっているという方が増えているのではないでしょうか。
 そこで本書は、夜、寝る前のほんの一時、遠い宇宙に思いをはせ、「宇宙からの視点」で、地球や私たち人間を俯瞰することで、煮詰まってしまった心を解きほぐし、静かに「自分」を見つめ直すことを促すものです。

■「宇宙からの視点」が、あたりまえの日常を根本から変える

 著者は、現実に何か困った問題が起こったら、一呼吸して「心だけ宇宙に緊急避難」することをすすめています。大きさも時間の流れも“マックス”の宇宙からの視点で見てみれば、1人ひとりの人間の存在が、いかにかけがえがなく、はかなく、そして愛すべきものだということがわかるからです。
読みながら、宇宙誕生から現在にいたるまでの悠遠な時の流れを体感することで、私たちが本当に大切にすべき「あたりまえの日常」に気付かされることでしょう。
 この本は、宇宙について興味はあるけれど、科学知識があまりないという方にも気楽に読んでいただけるよう、全編にわたり平易な表現が使われています。
 もれなく宇宙の基礎知識も身に付きます。
夜のまったり時間にぜひ、興味を持ったところから自由に読んでいただければ幸いです。

(担当/吉田)

内容より

【宇宙に出て大地を思う】
宇宙へ―星空に出かけてみたら
水と空気と命のあたりまえ1―水
水と空気と命のあたりまえ2―空気と生命

地上の星空】
夜空に描くイラスト―星座は深い世界の手前で輝く

【太陽と月のある世界】 
地球のこと―年齢は、太陽のまわりを旅した回数
月のこと1―月の意外な生い立ち
月のこと2 ―月の満ち欠けと月食
太陽のこと―日の昇る惑星

【宇宙の時間割】
遠くを見て、過去を知る―猛ダッシュ編―
遠くを見て、自分を知る―宇宙カレンダー編

【空からのおくりもの】
流れ星にねがいを―暗闇で自分と出会う時間
空から岩が落ちてくる1―宇宙をただよう巨大岩
空から岩が落ちてくる2―あなたにできること

【人生はあなたが主人公の物語】
宇宙から見た自分―科学がくれた俯瞰術

【星のふしぎ 地球のふしぎ 命のふしぎ】
 星のさだめ―ほどよい太陽、ほどよい地球、本を読む私
地球と人のさだめ―地球と人の未来
星と人の往還―星は死んで人になる?

【縦方向への旅】
現実と空想の月旅行―誰とどんな旅をしましょうか

【心の宇宙旅行
広い世界へ(前編)―太陽系の外への旅
広い世界へ(中編)―銀河系への旅
広い世界へ(後編) ―未知への旅

【それでもまわる地球の上で】
星の下でつなぐ知恵と工夫―知恵のリレー
ひとつ空の下で―Under One Sky

著者紹介

野田祥子(のだ・さちよ)

1971年生まれ、愛知県春日井市出身。名古屋大学理学部物理学科卒、同大学院修了、博士(理学)。国立天文台天文データセンター勤務後、2018年より「あいプラネット」代表。理系文系の垣根をゆるやかにつなぐ「体験型リベラルアーツ™講座“はてなアカデミー”」エグゼクティブ。親子グループ「やとっこ天文あそび」、立場を越えて身近な宇宙を知ってもらう「西東京から宇宙を見よう」などのプロジェクトを手掛ける。「つたえよう 宇宙のふしぎ 星のふしぎ 地球のふしぎ 命のふしぎ」を合言葉に親子向け、大人向けの宇宙イベントを各地へ届けている。

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「未知の世界」に挑み続けることはなぜ重要なのか?『越境と冒険の人類史 宇宙を目指すことを宿命づけられた人類の物語』アンドリュー・レーダー著 松本裕訳

越境と冒険の人類史

――宇宙を目指すことを宿命づけられた人類の物語

アンドリュー・レーダー著 松本裕訳

 この本の著者はSpaceXでミッションマネジャーを務めている宇宙工学者です。原書のタイトルは“Beyond the Known”、つまり本書は「未知の世界へ」と誘われて歴史を刻んできた人類の壮大な旅の物語です。アフリカを出た人類の祖先は世界各地にどのように到達したのか、イヌイットがヴァイキングを滅ぼした可能性、貧しいヨーロッパが繁栄するアジアに出た大航海時代の裏事情、歴史を変えることになったコロンブスの誤解、飛行機が「もっとも安全な交通手段」になるまでの試行錯誤、そして宇宙開発競争の実態……など、めくるめく冒険の物語が、それぞれの時代の躍動感とともに綴られていきます。
 著者は本書を「歴史が何か教訓を与えてくれたとすれば、それは人類がまだ誰もなしとげていない何かに挑戦すると、驚くようなことが起こるというものだ。祖先がリスクを取ることを恐れていたら、人類はいまだにアフリカの大地溝帯の中に閉じこもる、興味深いが取るに足らない生き物のままだっただろう。だが、人類には探検家の血が流れている。自分たちと子孫のために未来を創造するべく、決然として不可能に挑んだ人々の血だ。人類には驚異的なことをなしとげる能力がある。必要なのは、挑戦しようという意思だけだ」という言葉でしめくくっています。
 誰かが無謀で過酷な長い旅に出たことで、イノベーションが起こり、新たな繁栄の足掛かりとなったことが、この本を読んでいただければご理解いただけるかと思います。その過程にはさまざまな悲劇や過ちもありましたが、それらを克服しながら人類は歩み続けています。歴史や宇宙に関心のある方にはもちろん、「過酷な旅や宇宙旅行になんの意味があるのか?」というような疑問を持つ方にもぜひ読んでほしい一冊です。                                              (担当/碇)

【目次】

第1部 起源 
 第1章 ゆりかごを出て 
複数の「人類」が存在する世界/ネアンデルタール人の痕跡/農業がもたらした大転換
 第2章 初期の放浪 
オーストラリアへの到達/南北アメリカ大陸への到達/イヌイットがなしとげた偉業/ネイティブアメリカンを襲った災禍
 第3章 海の人々 
広大な海洋文化圏の成立/「偶然の発見」か「意図された旅」か/ポリネシア人の航海心得/南への冒険、東への冒険/古代の船乗りたちによる香辛料貿易
 第4章 古代世界の探検者たち 
文化の「高速道路」としての地中海/古代エジプト人が目指した場所/パピルスに記された冒険譚/フェニキア人の広大な海運王国/最初の世界地図
 第5章 越境するギリシャ・ローマ 
すべてはクレタ島から始まった/西洋文明を生み出した力/ギリシャ人対ギリシャ人の大海戦/アレクサンドロス大王の冒険/ギリシャ文化を軸につながった東西/画期的な発明・発見/「蛮族」の地を旅したピュテアス/一般市民による科学的発見の旅/ローマを強国にした「好奇心」/史上最初の100万都市/「インドがローマ帝国から搾りとる」/「大秦」への使節団

第2部 世界の再発見 
 第6章 北からやってきた「蛮族」たち 
カエサルを苦しめた造船・航海技術/アイルランド人修道僧の航海/バイキング時代の始まり/文化の中心的存在としての船/侵略から定住へ/西方への拡大/グリーンランドの発見/北米への入植活動/アメリカで生まれた最初のヨーロッパ人/バイキングの北米入植はなぜ失敗したか
 第7章 初期の遭遇 
サツマイモ、ココヤシ伝播の謎/太平洋を航海したインカの皇帝/〈コンチキ号〉〈ラー号〉の挑戦/「接触」を示唆する数々の手がかり/流れ着いていた人々
 第8章 もう一つの地中海 
世界の中心だったインド洋/ルクソール神殿に落書きしたインド人/東南アジアに拡大したインド文化/東南アジア史上最大の帝国の出現/イブン・バットゥータの壮大な旅/インド洋の共通語としてのアラビア語/過去の栄光を呼び覚ます香辛料/遅れてきたヨーロッパ人の挑戦/ポルトガル対オスマン帝国
 第9章 中国の大航海時代 
革新的な大型海洋船舶ジャンク/モンゴル帝国の勃興/破壊者の功績/『東方見聞録』のインパクト/フビライ・ハーンの知的欲求/マルコ・ポーロの時代の旅人たち/後進地域としてのヨーロッパ/発明大国としての中国/中国が世界の覇権を握った可能性/鄭和の巨大艦隊/内向きになった大国の運命
 第10章 インドへの航路 
イタリア諸都市の覚醒/コグ船、カラック船、カラベル船/エンリケ「航海王子」の慧眼/「危険の父」を越えて/アフリカ大陸に立てられた十字架/世界を二分する境界線/バルトロメウ・ディアス、「最果て」への旅/「すべての海の提督」バスコ・ダ・ガマ/ポルトガル人の日本上陸が意味すること
 第11章 略奪と黄金 
コロンブスの確信/歴史を変えたコロンブスの錯誤/スペイン王室の思惑/「陸だ!」/「高潔な野蛮人」の発見/凱旋/それからのコロンブス/新大陸に移植された奴隷制度/「征服者」たちの出自/コルテスはなぜ成功したか/ピサロと182人の男たち
 第12章 世界一周 
事実誤認から生まれる大発見/マゼラン船団の不穏な航海/マゼランの死/世界一周の遺産

第3部 近代 
 第13章 貿易の帝国 
ヨーロッパの興隆の一因となった自然条件/印刷技術の普及は文字数の違い/オランダ興隆の理由/オランダの時代/英仏の角逐/奴隷制度
 第14章 開かれる大陸 
ハドソンの悲劇/マッケンジー/ルイス・クラーク探検隊/太平洋に到達/ベーリングの偉業
 第15章 科学のフロンティア 
略奪から科学的な調査へ/クック船長はなぜタヒチに向かったのか/南方の巨大大陸を探して/北西航路の発見/旅する科学者フンボルト/女性として世界初の海外旅行作家
 第16章 氷と雪の大地 
北極圏の氷に閉ざされた2隻の船/近代技術でも征服できない未踏の北極点/原子力潜水艦が北極点で浮上する/シャクルトンの偉大な救出劇/国際的な管理責任となった南極大陸
 第17章 空へ 
飛行機はもっとも安全な移動手段/必要以上の安全性で設計される/大西洋を横断した初の女性飛行士/「空の女王」イアハート/太平洋上に消えたイアハート
 第18章 宇宙競争 
宇宙旅行の基礎を築いた世捨て人/ナチスのロケット研究チームが戦後アメリカの宇宙計画を担う/世界を変えた〈スプートニク〉/宇宙競争に先行するソビエト/撮影された「地球の出」/月面に降り立ったアームストロング
 第19章 ロボットの目を通じて見た世界 
ロボットが月面を探索する/灼熱の金星と呪われた火星/私たちは火星人かもしれない/銀河の終わりまで旅する〈ヴォイジャー〉/NASAが別世界の生命探索に乗り出した/太陽系外惑星を発見するケプラー宇宙望遠鏡

第4部 『スタートレック』への道 
 第20章 未来へ 
超知性を持つAIの時代/人工知能は人類に悪意を抱くか/ブラックホールと腫瘍を発見する天体分光/宇宙への探求が新たなイノベーションを生む/宇宙に乗り出す人類
 第21章 火星への道 
地球に落下しないために超高速で移動する/予算不足でかろうじて生きているNASA/スペースシャトルは最悪のコストパフォーマンス/アポロ計画は冷戦時代の産物/宇宙飛行でもっとも成功している民間企業SpaceX/ロケットの再利用/最適な目的地は、月か火星か/火星の豊富な水資源/火星移住計画
 第22章 宇宙旅行者への道 
人類の二つの未来/宇宙の豊富な資源とエネルギー/惑星間の宇宙旅行は安くて簡単/宇宙採掘は莫大な利益を生む/宇宙で野菜を育てる/宇宙に豊富なヘリウム3を燃やして電力を生成する/金星の雲の中に浮かぶ都市/もっとも魅力的な土星の衛星タイタン/温室効果を生み出して火星を地球化する/太陽系に地球の子孫があふれる
 第23章 星間を旅する 
史上最高速の探査機でも6500年かかるプロキシマ/ロケットに適用されるニュートンの第三法則/宇宙船の推進力に核爆弾を使う「オリオン計画」/核融合ロケットは可能か/宇宙を「ワープ」させて移動する/人類は銀河系を横断できるか/「世代宇宙船」あるいは多世代にわたる旅/人類は探検家の血筋を引き継いでいる
 第24章 異世界の生命 
地球外生命体の可能性/衛星の闇の海を泳ぐ微生物/火星に生命体は存在するか/生命の起源はRNA(リボ拡散)の鎖から/多様な生物の化石/ヒトの祖先「ピカイア」/「目」を進化させた地球の生物/知的生命体の身体的特徴/コミュニケーションを取る知的生命体/人類のような奇跡の進化を遂げた地球外知的生命体/高度な文明の宇宙人との遭遇
 第25章 最終目的地 
宇宙史の分岐点に立つ人類/確実に進歩している文明/特定の星に適応する進化/不老不死への道筋/世界がシミュレーションである可能性/探険に挑み続ける人類

著者紹介

アンドリュー・レーダー

SpaceXでミッション・マネジャーを務める航空宇宙工学者。マサチューセッツ工科大学でPhDを取得(宇宙工学)したのち、いくつかの宇宙関連企業を経て現職。著作に“Leaving Earth: Why One-Way to Mars Makes Sense”(未邦訳)がある。

訳者紹介

松本裕(まつもと・ゆう)

翻訳家。ミアーズ『VIP』(みすず書房、2022)、ヴァイディアナサン『アンチソーシャルメディア』(ディスカヴァー・トゥエンティワン、2020)、コリンガム『大英帝国は大食らい』(河出書房新社、2019)、ブラウン『カミングアウト』(英治出版、2018)ほか訳書多数。

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Anazon:越境と冒険の人類史 宇宙を目指すことを宿命づけられた人類の物語:アンドリュー・レーダー著 松本裕訳:本

楽天ブックス: 越境と冒険の人類史 - 宇宙を目指すことを宿命づけられた人類の物語 - アンドリュー・レーダー - 9784794225788 : 本

オックスフォードの心理学者による、感覚刺激を操作して生産性を高める方法『センスハック 生産性をあげる究極の多感覚メソッド』チャールズ・スペンス著 坂口佳世子訳

センスハック

――生産性をあげる究極の多感覚メソッド

チャールズ・スペンス著 坂口佳世子訳

スマートフォンやPCなどにより、あまりにも多くの刺激に囲まれる現代社会。その一方、触れ合いに飢えている人が増えるなど、私達の感覚にかかる負荷はバランスを失っています。本書は、オックスフォードの心理学者がおくる、自分たちの環境の感覚を見直し、最適な刺激が得られる空間を構築する=センスハックすることで、「より生産性が高く」、「よりストレスレス」で、「より幸福な人生」を実現する、画期的な感覚改善の書です。

・アパレル店舗併設のカフェの本当の目的は?

住宅、オフィス、店舗、家電、車、恋愛、スポーツ、病院…センスハックできるシチュエーションはあらゆる場面にあります。いくつかの例をここで紹介します。
まず、基本ともいえる家についての章では、いかに嗅覚、色彩、光、植栽といった要素が、快適な生活にとって重要なものであるかをデモンストレーションします。
センスハックの王様とされる車では、ドアの重さ(重い=安全性との関連)、新車の匂い(インテリア材そのものではない合成された香り)、エンジン音(本当は車内に聞こえないほど静かになっているが、快適に感じるようにあえて合成音を社内に流している)など、無意識の感覚に訴えるいくつもの工夫が凝らされています。
ほかにも、ユニクロなどカフェが併設されているアパレルを見てみると、これは一見同伴者の買い物が終わるまでの暇つぶしのようにみえますが、実は人間は視覚と嗅覚というように、いくつかの感覚を組み合わせると刺激が強化されるということが判明しており、実際には購買意欲を上げるためにいい香りを漂わせるという戦略なのです。

・パンデミックの時代に、身の回りの環境改善を考える

そのほかにも、マッチングアプリのプロフィール写真には楽器を持った写真を載せるべき(楽器が弾ける=器用さは生存に有利であるという判断のバイアスがある)、アップルのディスプレイ角度は最適角度からずれている(角度を直したくなることで近づくよう仕向けている)、丸いテーブルのほうが会議がまとまりやすいなど、進化心理学や認知科学的な裏付けによる、多種多様なセンスハックが本書には満載です。人間の進化や認識に基づいたこれらの感覚刺激のデザインを理解することは、パンデミックにより身の回りの空間の大事さに改めて向き合わされている私たちにとって、劇的に環境を改善できるヒントをもたらしてくれるはずです。建築家、カーデザイナー、スポーツマン、マーケターほか、すべての人に読んでいただきたい1冊です。

(担当/吉田)

著者紹介

チャールズ・スペンス

オックスフォード大学教授。専門は実験心理学。トヨタ、ユニリーバ、ペプシコ、ネスレなど多くの多国籍企業で、多感覚デザイン、パッケージ、ブランディングなどのコンサルティング経験がある。著書に『「おいしさ」の錯覚 最新科学でわかった、美味の真実』(KADOKAWA)がある。

訳者紹介

坂口佳世子(さかぐち・かよこ)

筑波大学大学院博士課程単位取得退学。宮崎大学名誉教授。アメリカ文化論、現代アメリカ文学専攻。著書『〈法〉と〈生〉から見るアメリカ文学』(共著、悠書館、2017年)、『グローバル化の中のポストコロニアリズム』(共著、風間書房、2013年)、『ソール・ベロー研究――ベローの文学とアメリカ社会』(単著、成美堂、2003年)他。

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齋藤孝氏が満を持して世に問う「日本語論」『なぜ日本語はなくなってはいけないのか』齋藤孝 著

なぜ日本語はなくなってはいけないのか

齋藤孝 著

日本語は意識的に守らなければ消滅してしまう――。本書は長年、日本語教育に心血を注いできた齋藤孝氏の抱く、このような強い危機感から執筆されました。
日本人にとって日本語とは、水や空気のように存在し、当たり前のように使用しているもの。ところがこの日本語は、先人たちの努力によって少しずつ形を変えながら継承されてきたものであり、私たちはこれを次の世代へと伝えていく責務がある、と齋藤氏は訴えます。
本書の冒頭で取り上げられるのは、中国の新疆ウイグル自治区や内モンゴル自治区で行われている言論圧殺問題です。中国では少数民族の弾圧・同化政策が進められており、世界中から非難を浴びていますが、これはまさに特定の民族の言語を暴力的かつ強制的に奪い取ろうとする行為にほかなりません。歴史的にはこのようにして失われてしまった言語が多数存在します。
また日本企業が英語を社内公用語にするなど、普遍語としての影響力を増す英語に対して過剰なまでに同調する趨勢にも疑問を呈します。
「日本語なくして日本人なし」。本書では日本語が置かれた現状に警鐘を鳴らすとともに、ではどうすれば日本語を守ることができるのか、見事な日本語の実例を豊富に挙げながら論じられます。齋藤孝氏が、満を持して世に問う「日本語論」を是非ご一読ください。

(担当:渡邉)

 

【目次】

はじめに

第一章    努力しなければ日本語は守れない

失われてしまった言語たち/日本では取り上げられない言論圧殺問題/あるカザフ人女性の痛切な訴え/再教育施設のおぞましい内実/繰り返された「文化大革命」/中国各地で同様の問題が起きている/言語を守ることは人権を守ること/言語が奪われるとはどういうことか/消滅の危機にあるアイヌ語の美しさ/さまざまな言語を認め合う時代/多様性と逆行する英語の圧力/世界言語=優れた言語ではない/日本の総理は海外で英語を話すべきか/英語ができなければビジネスはできない?/英語コンプレックスに立ち向かったガンジー/日本語はいつまでも「当たり前なのか」/日本語を守るために必要なこと

第二章 日本の精神文化が失われつつある

『日本語が亡びるとき』の問題提起/日本語の水準と誇りをいかにして保つか/古文・漢文はオワコン?/失われつつある文語体の魅力/かろうじて日常に残る文語体だが……/文豪の語彙力が失われつつある/素読世代が生み出した傑作『渋江抽斎』/素読で日本語の精神を身体化する/福沢諭吉のユーモアあふれる日本語/方言が失われつつある/日本語で先人と感覚を共有する/「日本人に生まれてよかった」と思えるか/漢字が教えられていないという大問題/小学校の国語の教科書は薄すぎる/『声に出して読みたい日本語』が誕生した理由/『にほんごであそぼ』に関わって気づいたこと

第三章 日本語はなぜ貴重なのか──その特徴と魅力

謎に包まれた日本語の起源/日本語に革命をもたらした言文一致運動/日本語には主語がない/日本語文は三種類の述語で構成される/日本語と主客未分の哲学/「こと的な世界観」に生きる日本人/「お茶が入りました」のメンタリティ/省略を重んじる日本語の美学/「省略の美」は海外にも受け入れられている/「あいうえお」の語感と独自の意味/日本語と身体感覚のつながり/海外から見た日本語の特徴/日本語の特徴は柔軟性にある/西田幾多郎の「国語の自在性」

第四章 日本語を守るためにはどうすればいいのか

幼児期から名文に触れさせる意味/日本語が言葉の感性を高める/子どもは名文に感応する力を持っている/暗誦文化の復活がカギ/多様なニュアンスの込められた文学日本語/読書体験の重要性/「精神の継承」という奇跡を味わう/文学は「奥行きのある解釈」を可能にする/翻訳書で日本語を楽しむ/俳句ブームは一つの希望である/英語しか認めないのは時代遅れ/企業が英語力よりも大切にすべきこと/英語力と世界的な才能は無関係/日本の文化を守ることも大切/吉田松陰の徹底した無私の姿勢/日本の精神をどう受け継ぐか

おわりに

 

著者紹介

齋藤孝(さいとう・たかし)

1960年、静岡県生まれ。東京大学法学部卒、同大学大学院教育学研究科博士課程を経て、現在、明治大学文学部教授。専門は教育学、身体論、コミュニケーション技法。著書に『宮沢賢治という身体』(宮沢賢治賞奨励賞)、『身体感覚を取り戻す』(新潮学芸賞)、『声に出して読みたい日本語』(毎日出版文化賞特別賞)、『難しい本をどう読むか』など多数。

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