草思社のblog

ノンフィクション書籍を中心とする出版社・草思社のブログ。

ビル・ゲイツ絶賛。「啓蒙の理念」の重要性を説いた全米ベストセラー!『21世紀の啓蒙(上・下)』スティーブン・ピンカー著 橘明美+坂田雪子訳

21世紀の啓蒙(上・下)

理性、科学、ヒューマニズム、進歩

スティーブン・ピンカー 著 橘明美・坂田雪子 訳

 ビル・ゲイツ氏が「生涯の愛読書となる、新しい一冊」と激賞した全米ベストセラー、『21世紀の啓蒙』(原題:Enlightenment Now)の邦訳がついに刊行となります。ハーバード大学心理学教授である著者、スティーブン・ピンカーは、これまで数多くのベストセラーを著し、とくに前著『暴力の人類史』(青土社刊)は日本でも高く評価されました。そのピンカーが新作で中心に据えたテーマは「啓蒙主義の理念」。その背景にはポピュリズムの台頭や、社会の二極化があります。
 啓蒙主義の理念(理性、科学、ヒューマニズム、進歩など)は、今、かつてないほど大きな成功を収め、人類に繁栄をもたらしています。多くの人は普段、気に留めないかもしれませんが、世界中から貧困も飢餓も、戦争も、暴力も減り、人々は健康・長寿になり、知能さえも向上して、安全な社会に生きています。どれも、人類が啓蒙主義の理念を実践してきた成果です。
 にもかかわらず、啓蒙主義の理念は、今、かつてないほど擁護を必要としています。右派も左派も悲観主義に陥り、進歩の否定や科学の軽視が横行、理性的な意見よりも党派性を帯びた主張のほうが声高に叫ばれています。たとえば、過去を理想化して進歩を否定、自国の衰退を嘆いてみせ、自分こそが再び国を偉大にすると主張した政治家。環境問題を科学技術の発展で解決することを不可能と決めつけ、極端なまでの自己犠牲を人々に強いる活動家。さまざまなところに例を見出すことができるでしょう。

◆世界は決して、暗黒へ向かってなどいない

 このような誤った現状認識は、著者が専門とする心理学の言葉で言えば「認知のゆがみ」「認知バイアス」の一種です。ゆがんだ認知にもとづき判断・行動すると、悲惨な結果を招きます。私たちはどうすれば、正しく世界の現状を認識できるでしょうか。答えは「数えること」と著者は言います。「今生きている人が何人で、その中の何人が暴力の犠牲になっているのか」といったことを数え、それが過去から現在に向かい減っているのか増えているのかを見ること――。すなわち「データ」で世界をとらえ直すこと、それによって啓蒙の理念の実践が確実な成果を上げていると知ることが本書の目的です。本書は70以上のグラフで、さまざまな領域の過去から現在に至るデータを示していますが、そこに見られる改善ぶりに驚くとともに、そのために人類が傾けてきた努力の積み重ねに敬服することでしょう。
 世界は良くなってきたし、これからも良くなると考える十分な理由がある。このことを正しく認識し、世界を良くしてきたものは何かを知れば、世界をさらに良くする方法を正しく考えられるようになります。「世界は暗黒に向かっているから一度完全に壊れた方がマシだ」とか、「社会を悪化させているあいつらを排除しろ」といった煽動からも、距離を置いて考えることができるようになるでしょう。本書では、このような煽動を行う「反啓蒙主義者」の系譜や現状についても詳しく論じ、強く批判しています。本書はすべての読書人が読むべき、事実に基づいた「希望の書」です。

著者紹介

スティーブン・ピンカー

ハーバード大学心理学教授。認知科学者、実験心理学者として視覚認知、心理言語学、人間関係について研究している。進化心理学の第一人者。主著に『言語を生みだす本能』、『心の仕組み』、『人間の本性を考える』、『思考する言語』(以上NHKブックス)、『暴力の人類史』(青土社)、『良い文章とは(The Sense of Style)』(未邦訳)があり、最新の『21世紀の啓蒙』が10冊目になる。研究、教育ならびに著書で数々の受賞歴があり、2004年には米タイム誌の「世界で最も影響力のある100人」に、2005年にはフォーリンポリシー誌の「知識人トップ100人」に選ばれた。米国科学アカデミー会員。『アメリカン・ヘリテージ英語辞典』の語法諮問委員会議長も務めている。

訳者紹介

橘明美(たちばな・あけみ)

英語・フランス語翻訳家。お茶の水女子大学卒。訳書にドミトリ・チェルノフ+ディディエ・ソネット『大惨事と情報隠蔽』(草思社、共訳)、ジェイミー・A・デイヴィス『人体はこうしてつくられる』(紀伊國屋書店)、フランソワ・ヌーデルマン『ピアノを弾く哲学者』(太田出版)ほか。

坂田雪子(さかた・ゆきこ)

英語・フランス語翻訳家。神戸市外国語大学卒。訳書にドミトリ・チェルノフ+ディディエ・ソネット『大惨事と情報隠蔽』(草思社、共訳)、ロバート・I・サットン『スタンフォードの教授が教える 職場のアホと戦わない技術』(SBクリエイティブ)、クリストフ・アンドレ『はじめてのマインドフルネス』(紀伊國屋書店)ほか。

(担当/久保田)

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目次は続きから

 

●『21世紀の啓蒙』目次
◎上巻

序文

第一部 啓蒙主義とは何か
    人が生きる意味と、啓蒙主義の理念
    啓蒙主義の理念は今こそ擁護を必要としている
    啓蒙主義の理念は繰り返し語られねばならない

 第一章 啓蒙のモットー「知る勇気をもて」
    啓蒙とは何か。啓蒙主義とは何か
    「理性」とは本来、交渉や駆け引きとは無縁のもの
    「科学」による無知と迷信からの脱却
    感覚をもつ者への共感が「ヒューマニズム」を支持する
    啓蒙主義の「進歩」の理念とは何か
    いかに富は創造され、「繁栄」が実現するか
    「平和」は実現不可能なものではない

 第二章 人間を理解する鍵「エントロピー」「進化」「情報」
    人間を理解する第一の鍵「エントロピー」
    人間を理解する第二の鍵「進化」
    人間を理解する第三の鍵「情報」
    三つの鍵で人類は呪術的世界観を葬った
    認知力と規範・制度が、人間の不完全さを補う

 第三章 西洋を二分する反啓蒙主義
    西洋生まれの啓蒙主義を批判したのも西洋
    現在もなお続くロマン主義による抵抗
    所属する集合体の栄光を優先する人々
    進歩あるいは平和を批判する衰退主義
    科学批判による反啓蒙主義

第二部 進歩

 第四章 世にはびこる進歩恐怖症
    世界が良くなっていることを認めない人々
    ニュースと認知バイアスが誤った悲観的世界観を生む
    世界を正しく認識するには「数えること」が大事
    前著『暴力の人類史』への反論の典型
    過去の進歩の実績を認識することはなぜ重要か
    悪いことを想像するほうが簡単なのはなぜか
    知識人とメディアが過度な悲観論に傾く理由
    事実、世界は目を瞠る進歩を遂げてきた

 第五章 寿命は大きく延びている
    平均寿命は世界的に延びている
    乳幼児死亡率と妊産婦死亡率は著しく低下
    長生きする人も増加、健康寿命も延びている
    寿命が延びることに文句をつける人たち

 第六章 健康の改善と医学の進歩
    医学の進歩が一つずつ問題を解決してきた
    疾病制圧の功労者たちを忘れてはならない
    今も感染症根絶の努力が続けられている

 第七章 人口が増えても食糧事情は改善
    飢餓は長いあいだ当たり前の出来事だった
    急激な人口増加でも飢餓率は減少した
    科学技術の進歩がマルサス人口論を無効化した
    農業の技術革新は不当に攻撃されている
    二〇世紀の飢餓の最大要因は共産主義と政府の無策

 第八章 富が増大し貧困は減少した
    世界総生産は二〇〇年でほぼ一〇〇倍に
    実は総生産の増大以上に我々は豊かになった
    貧困からの大脱出を可能にした三大イノベーション
    「極度の貧困」にある人の比率も絶対数も減少
    「毛沢東の死」が象徴する三つの貧困削減要因
    グローバル化が貧しかった国を豊かにした
    科学技術の発展がより良い生活をより安く実現

 第九章 不平等は本当の問題ではない
    不平等は過度に注目され問題視されている
    所得格差は幸福を左右する基本要素ではない
    「不平等が悪を生む」という考えは間違っている
    不平等と不公正を混同してはならない
    経済発展に伴い格差はどう推移するか
    二〇世紀以降の格差縮小の最大要因は戦争
    資本主義経済の発展とともに社会移転は増えた
    先進国の空洞化した中間層とエレファントカーブ
    エレファントカーブは事態を過大に見せている
    先進国の下位層・下位中間層も生活は向上した
    「中間層の空洞化」という誤解が生じる理由
    実はアメリカの貧困は撲滅されつつある
    優先課題は経済成長、次はベーシック・インカム
    所得格差は人類の後退の証拠ではない

 第一〇章 環境問題は解決できる問題だ
    環境問題の事実を科学的に認めることが必要
    半宗教的イデオロギー「グリーニズム」の誤り
    グリーニズムの黙示録的予言はすべてはずれた
    さまざまな面で地球環境は改善されている
    生活や生産活動の高密度化・脱物質化が重要
    間違いなく憂慮すべき事態にある「気候変動」
    気候変動予想に人々はどう反応してきたか
    自己犠牲の精神ではこの問題が解決しない理由
    解決のため途上国に犠牲を強いるのは間違い
    世界の「脱炭素化」はこれまでも進んできた
    「カーボンプライシング」が脱炭素化の第一の鍵
    脱炭素化の第二の鍵は原子力発電
    脱炭素化はエネルギー技術の進歩にかかっている
    大気中の二酸化炭素を減少させるにはどうするか
    「気候工学」の手法も条件付きでは使っていい
    悲観的にならず解決する方法を模索し実行する

 第一一章 世界はさらに平和になった
    『暴力の人類史』刊行以降、暴力は増加したか
    長期的な戦死率の減少傾向は続いている
    多くの内戦が終結、難民数も虐殺規模も縮小
    国際的商取引と国益重視が戦争を遠ざけた
    戦争を違法とする国際合意の功績は大きい
    ロマン主義的軍国主義の価値観から脱却
    かつての軍国主義を勢いづけた反啓蒙主義

 第一二章 世界はいかにして安全になったか
    事件・事故を低減する努力は軽視されがち
    「国家の統治」「商取引」は殺人を減少させる
    「根本原因の解決なしに暴力減少は無理」の噓
    「世界の殺人発生率を今後三〇年で半減」は可能
    殺人発生率を半減させるための方法
    自動車事故による死亡率は六〇年で六分の一に
    歩行者の死亡事故も大きく減少してきた
    火事・転落・溺死の減少率も非常に大きい
    薬物過剰摂取事故による死者は増えている
    かつて「進歩の代償」とされた労働災害も減少
    地震・噴火・台風などの被害緩和策も効果発揮
    事故も殺人も減らせる。その減少にもっと感謝を

 第一三章 テロリズムへの過剰反応
    テロの危険は非常に過大評価されている
    テロによる死者の大半は内戦地域に集中している
    テロの目的は注目を集めること。実際は無力だ
    テロへの恐怖は、世界が安全である証しでもある

 第一四章 民主化を進歩といえる理由
    民主化を進歩の証しと見なせるのはなぜか
    「世界の民主化は後退している」という悲観論の噓
    選挙こそ民主主義の本質、というわけでもない
    民主主義とは国民が非暴力的に政権を替えられること
    国家による人権侵害は徐々に減っている
    国家による究極の暴力行使、死刑の減少
    アメリカにおいても死刑は消滅前夜にある

 第一五章 偏見・差別の減少と平等の権利
    平等の権利獲得の輝かしい歴史は忘れられがち
    ネット検索の履歴データに表れた偏見減少の趨勢
    アメリカのヘイトクライムは減少傾向にある
    西洋以外の国々でも偏見と差別は減っている
    現代化が進むと「解放的な価値観」が根づく
    「先進国の価値観は保守化している」の噓
    先進国以外の国々も価値観は解放的になった
    アメリカでは子どもの虐待やいじめは減少
    世界の児童労働の比率は減少、教育機会は拡大

◎下巻
第一六章 知識を得て人間は賢くなっている
    教育は社会を豊かにし、平和で民主的にする
    教育は世界中に広まりつつあり、男女格差も縮小
    世界的なIQの上昇「フリン効果」の原因は何か
    フリン効果は世界を豊かにした要因の一つ
    「人間開発指数」の改善は進歩の実在を証明する
    
第一七章 生活の質と選択の自由
    好きなものを手に入れられるのは良いことだ
    労働に費やさなければならない時間が減少
    家事や生活維持のためにかかる時間も減少
    家族の時間は増え、遠くの人との交流は便利に
    食べ物が国際的になり食事の選択肢が増加
    文化に触れ学ぶことが簡単・便利・安価に
    
第一八章 幸福感が豊かさに比例しない理由
    わたしたちは豊かになっても幸福を感じないか
    客観的な意味での幸福を形づくるものは何か
    主観的な幸福はどのように測られるか
    人々の幸福感は本当に向上していないのか
    裕福でも幸福感が高くない国アメリカの実態
    現代人はより孤独になっているというのは誤り
    自殺率と不幸度の関係についても誤解が多い
    鬱病と診断される人が増えているのはなぜか
    本当に鬱病に苦しむ人は増えているのか
    自由の獲得が幸福感の伸びない理由の一つ
    神や権威から離れ自らの責任で生きる不安
    
第一九章 存亡に関わる脅威を考える
    科学者が提示する数々の「脅威」は本物か
    むやみに脅威を語ることが危機をつくり出す
    低確率事象のリスク評価は過大になりがち
    二〇〇〇年問題に見る科学者のバイアス
    科学技術は人間を災害から守っている
    人工知能は進化しても人間を滅ぼさない
    AIの暴走も人類への脅威とならない
    悪意ある個人が世界を滅ぼせるようになるか
    世界を滅ぼせるテロリストは存在しえない
    バイオテロは非常に困難で効率も悪い
    核の脅威は本物だが過大に喧伝されている
    核戦争を防いできたのは何かを考えるべき
    核は究極兵器でも究極の抑止力でもない
    世界の核兵器は近年減少しつづけている
    まずは核の運用法を安全にする必要がある
    
第二〇章 進歩は続くと期待できる
    この二世紀半のあいだにもたらされた進歩
    進歩は自動的にもたらされるものではない
    進歩の継続を信じる合理的理由は歴史に
    経済成長の停滞は進歩の継続を妨げるか
    将来の進歩をもたらしうる技術の数々
    ポピュリズムは進歩をはばむ脅威となるか
    ポピュリズムの支持層は「文化競争の敗者」
    ポピュリズムは老人の運動。衰退の可能性大
    進歩の継続を支持し、前向きに取り組む
    
第三部 理性、科学、ヒューマニズム
    
第二一章 理性を失わずに議論する方法
    理性や客観性を否定したら議論は不可能になる
    人間の理性を使う能力は進化によって磨かれてきた
    不合理な主張を信じるのは無知だからではない
    人は評判を気にして集団内の主流意見に同調する
    知識が深まるほどに意見が二極化することさえある
    知能が高くても偏見があると誤った結論に飛びつく
    左派の右派への、右派の左派への偏見を検証
    右も左もイデオロギーのせいで人類に貢献し損ねた
    右・左・中道で選ぶのではなく、合理性で選択する
    専門家を予測の正確さで評価すると多くが落第
    驚くべき精度で予測を当てる「超予測者」の特徴
    政治の二極化と大学の左傾化は確かに進んでいる
    政治と大学の二極化・偏向は何をもたらしたか
    「ファクトチェック」が理性的な人々に力を与える
    長期的に見れば理性は今まで真実を広めてきた
    認知バイアスに関する教育で「脱バイアス」は可能
    党派性の克服には理性的議論のルールも必要
    人間はたいていの状況下では十分に理性的
    物事が「政治問題化」すると人は理性を失う
    理性的な政治の実現をあきらめてはならない
    
第二二章 科学軽視の横行
    科学の偉業は否定しようもなく大きく普遍的だ
    アメリカの政治家による科学軽視の事例
    多くの知識人たちも科学を軽視・敵視してきた
    否定論者はどのように科学を非難してきたか
    科学支持者が広めたいと考える二つの理想
    「科学は領分を守るべし」という論の誤り
    科学や科学論の誤用・誤解・曲解が横行
    科学的人種主義の罪を科学は負うべきか
    科学の悪者扱いが大学でまかり通っている
    バイアスを正すには科学的知識が不可欠
    科学と人文学の協力は双方の得になる
    知の統合を妨げる「第二の文化」の警察官
    
第二三章 ヒューマニズムを改めて擁護する
    ヒューマニズムとは人類の繁栄を最大化すること
    道徳の非宗教的基盤は「公平性」だけでは不足
    道徳の基盤となる人間の身体・理性・共感
    功利主義的道徳は必ずしも悪いものではない
    ヒューマニズムの功利主義的主張がもつ利点
    ヒューマニズムを否定したがる二つの勢力
    有神論的道徳からのヒューマニズム批判の中身
    「基礎物理定数」は神の存在の証拠?
    「意識のハードプロブレム」は神の存在の証拠?
    有神論的道徳が抱える第二の欠陥
    信仰擁護無神論者「信仰を否定するな」
    神がいなくても人が生きる意味は見出せる
    「宗教は巻き返している」という見解は誤り
    宗教復興と見誤らせる「出生率」「投票率」
    イスラム諸国の停滞の原因は明らかに宗教
    イスラム世界でもヒューマニズム革命は進む
    ヒューマニズムの敵を育てたニーチェの思想
    ニーチェに感化され独裁者を支持した知識人たち
    ニーチェからトランプに至る二つのイデオロギー
    トランピズムの思想基盤は論理的に破綻している
    啓蒙主義の理念はつねに擁護を必要としている