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すでに巷では「とても役に立つ、手離せない」と話題沸騰。『音数で引く俳句歳時記・秋』岸本尚毅 監修 西原天気 編

音数で引く俳句歳時記・秋

岸本尚毅 監修 西原天気 編

 本書は『音数で引く俳句歳時記・春』『音数で引く俳句歳時記・夏』の続編で、8月8日に来る「立秋」に備えて、秋の句作・句会のために刊行された「秋」編です。秋の季語を音数別にまとめたものです。2音の「秋」「月」「霧」などから15音の「雀大水に入り蛤に為る」(すずめうみにいりてはまぐりになる、晩秋の季語)まで、こうしてまとめられた歳時記は初めての試みで、俳人には句作りに大変便利だと、すでに評判になっています。
 監修者の俳人・岸本尚毅氏は「はじめに」の中で、例によって高浜虚子の句をあげつつ、句作にとって音数がいかに大事かをこう述べています。
 「木曾川の今こそ光れ渡り鳥」
 これは虚子の名句の一つですが、元は、
木曾川の今こそ光れ小鳥来る」
という句で、虚子自身によって改稿されたもののようです。文芸評論家の山本健吉氏は「今こそ光れ」という命令形が「木曾川よ光れ」という意味の通常の形容だけではなく、「渡り鳥」という言葉にもかかり、秋の木曾川と空をきらめきながら渡っていく鳥たちの光にあふれた情景が見事に写されているとしています。この句を改稿するとき、虚子の中で「小鳥来る」を「渡り鳥」という季語に替えた要因は何かと推量するに、虚子はもっと情景を強く豊かにする季語はないか、下5に入る5音の季語は何かと考えたはずです。そして選んだのが「渡り鳥」だったということです。
 五七五の定型と季語という最小限のルールの中で句作を愉しむのが俳句という形式です。
岸本氏の末文はこうなっています。
「本書は、音数を考えながら季語を検討するための実作の手引きとして企画されたものです。本書の読者の皆さんに、季語との良き出会いをもたらすことを期待しています。」
 つまり何がそこにはまるか、季語を音数で捕らえておくと良いということなのです。

(担当/木谷)

 

監修者紹介

岸本尚毅(きしもと・なおき)

俳人。1961年岡山県生まれ。『「型」で学ぶはじめての俳句ドリル』『ひらめく!作れる!俳句ドリル』『十七音の可能性』『文豪と俳句』『室生犀星俳句集』など編著書多数。監修に本書の既刊『音数で引く俳句歳時記・春』『音数で引く俳句歳時記・夏』がある。岩手日報山陽新聞選者。俳人協会新人賞、俳人協会評論賞など受賞。2018・2021年度のEテレNHK俳句」選者。角川俳句賞等の選考委員をつとめる。公益社団法人俳人協会評議員

編者紹介

西原天気(さいばら・てんき)

1955年生まれ。句集に『人名句集チャーリーさん』(2005年・私家版)、『けむり』
(2011年10月・西田書店)。2007年4月よりウェブサイト「週刊俳句」を共同運営。
2010年7月より笠井亞子と『はがきハイク』を不定期刊行。編著に本書の既刊『音数で引く俳句歳時記・春』『音数で引く俳句歳時記・夏』がある。

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