草思社のblog

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渾身の書き下ろし時代小説『楠木正成 河内熱風録』増田晶文 著

楠木正成 河内熱風録

増田晶文 著

史上最強の智将・楠木正成が駆け抜けた熱き五年間! 
 鎌倉幕府と戦い、後醍醐新政を支え、寝返った足利尊氏と闘い抜いて壮絶な最期をとげた楠木正成。下赤坂城の戦いから千早城の戦い、湊川の戦いで自刃するまでの軌跡が本作品の舞台である。
 弟・正季や恩地左近ら楠木一党とともに寡兵で大軍に立ち向かい、奇想天外な戦術で次々と勝利をおさめていった無敵の戦術家、そのあまりに熱い戦い日々が繰り広げられる。

河内の民と土地、そして家族と楠木一党の仲間たちをこよなく愛した、
人情味あふれる生身の「人間」としての楠木正成。
 本作品では、戦前戦中にいわれた「七生報国の大忠臣」としてではなく、みずからの郷土・河内の民と土地、そして家族と楠木一党の仲間たちをこよなく愛した人情味あふれる男、人を裏切ることのできない誠実で潔いひとりの男として描かれる。

イキのいい「河内弁」をしゃべくりまくる正成、そして一党の男たち
 正成以下、楠木一党のあまりに人間臭い男たちはイキのいい「河内弁」をしゃべりまくる。関西芸人さながらのボケ&つっこみに、ここぞの時の強烈な啖呵。作者・増田氏自身が河内の地出身、郷土に活躍した男の熱い生き様を見事に描き上げた。

著者・増田晶文氏による主要登場人物紹介

楠木正成(くすのき・まさしげ)
河内の総大将。河内の地と民、楠木一党、妻子をこよなく愛し「土ン侍(どんざむらい)」を自称する。
後醍醐帝の倒幕戦に呼応し、河内に築いた下赤坂城や千剣破(千早)城で智略の限りをつくしたゲリラ戦を披露。千人前後の寡兵でありながら、十数万人の鎌倉北条軍を翻弄する。足利尊氏とは互いを認め合いながらも、「新しい国づくり」の理想で折り合わず対決を余儀なくされた。本作の正成は戦前戦中の「七生報国の大忠臣」ではなく、智謀に富みながらも無類の人情家でユーモアも解する勇将として描かれている。

楠木正季(くすのき・まさすえ)
正成の実弟、楠木一党の副将。餓狼を彷彿させる精悍な青年で五尺の大太刀を使いこなし、幾多の武功をあげる。一方では河内男らしい剽軽(ひょうきん)さも。兄を深く敬愛し最期を共にする。

恩爺(おんじい)こと恩智満一(おんぢ・みつかず)
河内・恩智の領主で一党の最年長、参謀格。正成兄弟にとっては叔父貴のような存在。弓の名手でもある。正季との会話は漫才そこのけ、緊迫した戦場に一服の笑いをもたらす。

和田熊(わだくま)こと和田五郎正隆(わだ・ごろう・まさたか)
正季と並ぶ剛腕武将。髭面のうえ巨獣を連想させる偉丈夫で〝熊〟の異名もうなずける。刃長三尺という規格外の大身槍をふるい、数々の修羅場で縦横無尽の活躍をみせる。

瀧覚和尚(りゅうかくおしょう)
河内の名刹・観心寺の僧侶。正成の幼少時から学問と武芸を教えた。正成いわく「名僧というより怪僧や」。だが師弟の絆は堅固、瀧覚は知恵袋として正成をバックアップする。

久子(ひさこ)
正成の愛妻。夫の出陣にあたり楠木家を守り、息子たちを育てた。正成の「河内の女子(おなご)は亭主の倍も働きよりまっせ」は妻に対する情愛と感謝がこもったホンネに他ならない。

楠木正行(くすのき・まさつら)、正時(まさとき)、正儀(まさのり)
正成の男児たち。長男は正行、二男に正時、末っ子が正儀。三兄弟とも父をこよなく敬慕している。今生(こんじょう)の別れでは父にすがり号泣するも、河内の後事を託され涙をぬぐう。

八尾顕幸(やお・けんこう)
河内の八尾を差配する土豪、僧侶でもある。正成の父の代から領地、利権をめぐって敵対していたが、正成の「新しい世の中をこさえるんや」の声に賛同、楠木一党に参じる。

足利尊氏(高氏 あしかが・たかうじ)
源氏の名門・足利家当主。当初は幕軍にあったが正成との出会いを機に官軍へ与する。だが建武新政に異議を唱え反旗を翻す。正成いわく「喰えない男」であり、尊氏の言動は一筋縄ではいかない。政局が二転三転する中、正成の最大のライバルとして最後の最後まで対峙し続ける。

後醍醐帝(ごだいごてい)
倒幕と建武新政の中心人物。〝異形(いぎょう)の天子〟と呼ばれ、復古的天皇親政の理想を実現させるためには非情な采配も辞さない。正成には野太刀を下賜(かし)し、死地に赴(おもむ)けと命じる。

大塔宮護良親王(おおとうのみやもりよししんのう)
後醍醐帝の皇子。官軍の武将として討幕緒戦から参戦。正成とは盟友関係をこえた信頼関係を築く。だが大塔宮は尊氏と激しく反目、足利の讒言(ざんげん)をうけ悲運の末路をたどる。

新田義貞(にった・よしさだ)
幕府軍の将だったが尊氏に含むところがあり官軍につく。酒色と武芸を愛する猪武者で、当初は武功をあげたが、尊氏の反攻に太刀打ちできず湊川の戦で敗北。京へ逃げ帰る。

北畠顕家(きたばたけ・あきいえ)
官軍の若き公家武将。奥州を統括していたが尊氏の謀叛を鎮めるため都に駆けつける。
正成の人柄と智略に敬意を抱き、都合戦で共に活躍する。

赤松円心(あかまつ・えんしん)
播州の豪族、悪党。討幕戦に呼応し地元で挙兵。息子の則祐(のりすけ)を大塔宮の側近として遣わすなど官軍勝利に寄与した。しかし、建武新政で冷遇され尊氏軍に寝返る。

愛犬シロ
千剣破城の戦いを前に河内の市で正成に拾われた白犬。逞しく賢く凛々しく成長し、河内の熱将の愛犬として傍らにあった。


本作で楠木正成は、忠臣・軍事の天才という既存のイメージをはるかに超えて、人情味にあふれ人々への優しさと権力に屈しない豪胆さをあわせ持った天下無双の「河内のおっさん」として紙面をはみ出さんばかりに大活躍、駆け抜ける爽快感をももたらす傑作!

(担当/藤田)

 

目次より

望楼の男/河内の土ン侍/笠置山/坂東武者/大塔宮/炎上/雌伏/瀧覚/築城/吉野山/蜂起/四天王寺/千剣破城緒戦/千剣破城合戦/喰えぬ男/寝返り/倒幕/宮仕え/齟齬/騒乱/都合戦/足利敗走/死命/郷夢

 

著者紹介

増田晶文(ますだ・まさふみ)

作家。日本文藝家協会会員。1960年、大阪は河内の地に生まれ育つ。同志社大学法学部卒業。人間の「果てなき渇望」を通底テーマに、さまざまなモチーフの作品を発表している。文芸作品に『稀代の本屋 蔦屋重三郎』『絵師の魂 渓斎英泉』(草思社文庫)、『S.O.P.大阪遷都プロジェクト』(ヨシモトブックス)、『ジョーの夢』(講談社)、『エデュケーション』(新潮社)など。デビュー作『果てなき渇望』で文藝春秋ナンバー・スポーツノンフィクション新人賞および文春ベスト・スポーツノンフィクション第1位を獲得、『フィリピデスの懊悩』(『速すぎたランナー』に改題)で小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。日本酒の神髄を描いた『うまい日本酒はどこにある?』『増補版・うまい日本酒をつくる人たち』(ともに草思社文庫)も話題に。

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