鬼谷子 全訳注
――中国最古の「策謀」指南書
高橋健太郎 著
■ 現存する唯一の「縦横家」の古典、初の全文全訳注による解説書!
本書は、中国古典『鬼谷子』の全訳注書です。とは言っても日本では『論語』や『孫子』は知られていても『鬼谷子』についてはほとんど知られていないでしょう。
この知られざる古典は、今から二千数百年前、縦横家【しょうおうか】の祖とされる鬼谷先生によって書かれたと言われています。
縦横家とは遊説家とも呼ばれ、中国戦国時代に自らの弁舌を武器に各国を渡り歩き、言葉一つで王たちを動かし、ときにライバルをおとしいれ、天下の趨勢を左右するほどの大きな力を持った存在でした。
いわば、『鬼谷子』とは、弁舌と頭脳で乱世を渡り歩いた縦横家の英知が結実したリアリズムの書とも言えます。
■ 旧日本軍の参謀たちにも読み継がれた『鬼谷子』、何が書かれているのか?
では『鬼谷子』にはいったい何が書かれているのでしょうか?
『鬼谷子』は大きく分けて次の二つの要素から成り立っています。
一、 権力者を言葉で動かすための説得術
二、 身の安全をはかりながら物事を成し遂げるための謀略術
中身は極めて具体的。たとえば、感情のツボを刺激して相手を自在に動かす「揣摩【しま】の術」、自分の身に迫る危険を事前につぶす「抵巇【しぎ】の術」など、思想が実践的な「術」にまで昇華されています。
一読すれば、二千数百年経った今に至って全く古びていない、そのリアルな内容に驚かれるでしょう。
ひるがえって今はSNS全盛期で、楽しいことも一瞬で伝わりますが、一歩間違えば、言葉の選び方一つで自分の身を亡ぼしかねない、非常におそろしい時代であるとも言えます。
そうした時代に、『鬼谷子』が説く、自分の身を守りつつ、まわりの人を自分の思い通りに動かすための「言葉」と「策謀」の技術は、大きな助けとなること間違いありません。ぜひ多くの方に知っていただければと願っております。
(担当/吉田)
著者紹介
高橋健太郎(たかはし・けんたろう)
作家。横浜市生まれ。上智大学大学院文学研究科博士前期課程修了。国文学専攻。専門は漢文学。古典や名著を題材にとり、独自の視点で研究・執筆活動を続ける。近年の関心は、謀略術、処世術、弁論術や古典に含まれる自己啓発性について。著書に『鬼谷子――中国史上最強の策謀術』『真説 老子――世界最古の処世・謀略の書』(草思社文庫)、『どんな人も思い通りに動かせるアリストテレス 無敵の「弁論術」』(朝日新聞出版)、『言葉を「武器」にする技術――ローマの賢者キケローが教える説得術』(文響社)、『哲学ch』(柏書房)など多数。
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