草思社のblog

ノンフィクション書籍を中心とする出版社・草思社のブログ。

科学的な根拠のある正真正銘のビジネスハック! 『最高の自分を引き出す 脳が喜ぶ仕事術』

最高の自分を引き出す 脳が喜ぶ仕事術

キャロライン・ウェッブ 著 月沢李歌子 訳

◆マッキンゼーのシニアアドバイザーが膨大な行動科学文献から抽出

 経営コンサルティングの最高峰Mckinsey & Company。トップコンサルタントたちの仕事ぶりは、“マッキンゼー式”などと呼ばれ、多くのビジネスパーソンから羨望の眼差しを受けています。

 そのマッキンゼーで長らく経営者の能力開発に携わり、毎日をもっと生産的で快適に過ごす方法(How to have a Good Day)を追求した著者は、行動経済学・脳科学・心理学などの行動科学にヒントを求め、なんと600以上の文献、論文を読み漁りました(さすがマッキンゼー!)。そこで得た最新の科学知識と自身のコンサル事例を組み合わせてわかりやすく整理したのが本書です。

◆仕事の成果は脳の使い方しだい

著者は、行動科学の最新知見から、以下の3つが、私たちの生産性や快適さに直結すると説きます。

① 脳の「熟考と自動」システムの活用 →「優先順位」「生産性」up
② 無意識の「防衛と発見」モードを自覚 →「人間関係」「思考力」「影響力」up
③ 心と身体のループを改善→「レジリエンス(逆境力)」「エネルギー(活力)」up

 例えば、脳には自分に無関係なものを除外してしまう「自動操縦(オートパイロット)機能」があります。だからこそ「いま、この瞬間は◯◯が一番大事なんだ!」という日々の細かな優先順位付けが重要となり、逆に言えば、脳の機能に従い、適切な優先順位さえできれば、仕事は自ずと効率よく進むとか。

 これ以外にも「溢れかえるメールの処理」「賢く休憩を取る方法」「先延ばし癖の克服方法」など、日頃、仕事でぶつかる大小さまざまな課題について、「まず脳の動きを理解し、脳が快適になることを優先すればストレスも減り、成果が出やすい」と強調します。具体例と科学の知見がバランスよく織り交ぜられていることもあり、「ならば、試しにやってみようか」と思わせてくれ、“マッキンゼー式仕事術”ならぬ“科学的に正しい仕事術”とも呼ぶべき説得力ある一冊となっています。

(担当/三田)

 

本書の目次から 1日を前日の夜から始める/目的を支えるための行動目標を設定する/心の目でリハーサルをする/マルチタスクができる人ほど切り替えが苦手/意思決定は谷間ではなく頂上で/一番大切なことを一番最初に/ポジティブに断る/小さなことを自動化する/上機嫌を伝染させる/とにかく質問する/似たものを探す/クロスチェックを習慣にする/問題の樹形図を描く/自分を大きく見せる/報われる質問をする/最高の状態で終わらせる/睡眠を十分にとる...etc.

著者紹介

キャロライン・ウェッブ Caroline Webb
セブンシフト社CEO、マッキンゼーの社外シニアアドバイザー。ケンブリッジ大学、オックスフォード大学院で経済学を学ぶ。民間エコノミストを経て、マッキンゼー入社、パートナーとして上級管理職や経営層のリーダーシップ育成分野に従事し2012年退社。コロンビア大学ビジネススクールやロンドン・ビジネススクールでリーダーシップ論を指導した経験もある。

訳者紹介

月沢李歌子 Rikako Tsukisawa
津田塾大学卒。外資系投資顧問会社勤務から翻訳家に。訳書に『ポジティブ・リーダーシップ』(草思社)『最高の仕事ができる幸せな職場』(日経BP社)『ディズニー「感動」のプロフェッショナルを育てる5つの教え』(朝日新聞出版)ほか。

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江戸時代に累計100人もの男たちが漂着した驚異の島、鳥島(とりしま)の物語 ――漂流の島

漂流の島 ――江戸時代の鳥島漂流民たちを追う

高橋大輔 著  

◆水さえない絶海の孤島で十数年も生きた日本人たち

 『ロビンソン漂流記』の主人公・ロビンソンの実在のモデルの住居跡を2005年に発見し世界的に注目を集めた探検家・高橋大輔さんが、今度は、江戸時代の日本人漂流民の壮絶な生をテーマに選びました。
 その舞台、鳥島は東京から南に600キロに位置する直径2.7キロほどの無人島で、アホウドリの生息地として知られていますが、ここは17世紀末から幕末にかけての百数十年の間に、記録に残るだけでも15回ほど、累計約100人もの男たちが漂着した「漂流の島」でもあります。鳥島は火山島で、湧き水さえなく、食料は貝、魚、アホウドリの肉程度。この極限状況の中で、遠州の甚八は19年3ヵ月、土佐の長平は12年4ヵ月など、途方もない超長期生存を果たし、奇跡の生還を遂げています。『ロビンソン漂流記』の実在のモデルの漂流期間が4年4ヵ月ですから、鳥島漂流民たちのサバイバルがいかに驚異的なものだったかがわかります。

◆著者、ついに鳥島に上陸、そして漂流民たちの洞窟を発見! 

 鳥島漂流民については、昭和期に、井伏鱒二『ジョン万次郎漂流記』、織田作之助『漂流』、吉村昭『漂流』(いずれも小説)が書かれ、研究書もわずかに存在しますが、現地鳥島に行って、漂流民たちの足跡をたどった人は過去に一人もいません。鳥島はアホウドリの保護区で、かつ火山活動度が極めて高いため、一部の関係者以外、上陸を禁止されているからです。著者の高橋さんは鳥島関係者とコンタクトをとり、千載一遇の機会を得て鳥島に渡り、漂流民たちの住居跡である洞窟を発見します。史料によると、代々の漂流民たちは同じ洞窟に住み、島を脱出する際には、のちの漂流民を想って鍋釜などの生活具やメッセージを洞窟に残していったといいます。代々の漂流者が同じ洞窟に身を寄せた例は世界でも見当たらず、洞窟の発見は、『ロビンソン漂流記』の実在のモデルの住居跡発見に匹敵するニュースといえます。
 本書では、漂流民たちの生涯のほか、明治の鳥島開拓民たちのアホウドリ乱獲や、現代の鳥類学者・火山学者たちの奮闘など、鳥島で連綿と続く人間ドラマも描かれています。知られざる日本、知られざる日本人を描いた渾身の一冊を、一人でも多くの方にお読みいただければと願ってやみません。

(担当/貞島)

著者紹介

高橋大輔(たかはし・だいすけ)
一九六六年、秋田市生まれ。探検家、作家。「物語を旅する」をテーマに、世界各地に伝わる神話や伝説の背景を探るべく、旅を重ねている。二〇〇五年、米国のナショナル ジオグラフィック協会から支援を受け、実在したロビンソン・クルーソーの住居跡を発見。探検家クラブ(ニューヨーク)、王立地理学協会(ロンドン)のフェロー会員。著書に『12月25日の怪物』(草思社)、『ロビンソン・クルーソーを探して』(新潮文庫)、『浦島太郎はどこへ行ったのか』(新潮社)、『間宮林蔵・探検家一代』(中公新書ラクレ)、『命を救った道具たち』(アスペクト)などがある。
探検家高橋大輔公式Facebookページ https://www.facebook.com/tankenka

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これを読まずして、すし、鰻、天ぷらを語るなかれ 『江戸前魚食大全』

江戸前魚食大全――日本人がとてつもなくうまい魚料理にたどりつくまで

冨岡一成 著

◆何としてもうまく食いたい! 執念にも似た日本人の「魚愛」はどこからきたのか?

 塩をして、干して、火を通して、燻して、たたいて、発酵させて、そして生のままで。ひとつの魚に対して、これでもかと手をかけて、何としてもうまく食べようとする日本人。本書によれば、日本人が生み出した多様な魚の食べ方は、決して「豊かな水産資源」がもたらしたのではなく、「食べたいのに食べられない」という逆境からうまれたものだったといいます。現代と違い、保存や輸送が難しく、氷も冷蔵庫もない時代、たとえ魚がたくさんとれても、みるみるいたんでしまうし、「生」で食べるなんてとんでもない。自然の恵みを享受することには、大変な苦労をともなったのです。一般の庶民がやっと魚を食べられるようになったのは実に江戸時代に入ってだいぶ経ってからのことで、長い日本の歴史においてそんなに昔ではありません。

 本書は、そうした食べたいけど食べられない、なら何とか魚を食べられるようにしようという強い思いをもって、知恵を絞り、工夫を重ね、やがて江戸前魚食文化を花開かせるまでの、日本人と魚の長きにわたる歴史をあますところなく紹介するものです。

◆本書を読めば、すし、鰻、天ぷらが100倍うまくなる!

 何より、元学芸員であり築地市場に15年も務めた著者だけに、視点はかなりマニアック。一般人が知らない魚のうんちくが満載なのも本書の大きな魅力です。本書を読めば、すしや鰻、天ぷらなどがどのようにうまれたか?(*1)がわかるのはもちろんのこと、漁師はどんな人がやっていたのか?(*2)、江戸っ子の「いき」と魚の関係とは?(*3)、なぜ鰻のことを江戸前といったのか?(*4)、江戸の外食店の始まりは?(*5)等々、江戸や魚に関するおおよそすべての知識を身に付けることができます(*…答えは下に)。読んだあとに魚を見る目が変わることは間違いありません。

 さらに、付録の「魚河岸の魚図鑑」では、江戸の日本橋の魚河岸で実際にあつかわれた様々な種類の魚を当時の江戸の文献に基づいて紹介していますので、魚好きの江戸人の気持ちを想像しながら楽しんで読みつつ、魚の知識を学べるようになっています。

 いよいよ築地閉場を11月にひかえ、日本人として魚食の歴史についてあらためて考えてみたいという人はもとより、多くの方に手にとっていただきたい一冊です。

 

(*…答え)
*1)すしや鰻、天ぷらなどがどのようにうまれたか?
すしも鰻も天ぷらも後に高級化しますが、初めは庶民の手軽なファストフードとして登場しています。いずれの料理もルーツをたどれば、関西でうまれたものですが、江戸において洗練され「江戸前料理」として花開きました。江戸には、何よりも魚貝の宝庫ともいえる豊潤な江戸前の海と巨大な生鮮市場魚河岸があったこと、さらには関東風の味覚形成に大きな影響を与えた醤油や味醂をはじめとする調味料が普及したことが、江戸前料理の完成に大きな役割を果たしたと考えられています。(詳細は第八章ご参照ください)

*2)漁師はどんな人がやっていたのか?
漁師とは徳川政権の下に再編成された漁村の漁民たちに与えた尊称です。はじめは漁業適格地と認められた専業漁村の者に限られましたが、後に漁撈をおこなう者を広く漁師と呼びならわすようになりました。

*3)江戸っ子の「いき」と魚の関係とは?
江戸は武士の都でしたから、町人たちはつねに支配者層の存在を感じずにはおれませんでした。そんなことから武士への対抗心がうまれていきます。「通」、「はり」、「いき」などの価値観は、いずれも江戸っ子の世の中に対する反骨精神に育まれたといってよいかもしれません。町人が武士に対抗できたのは「遊郭」と「芝居」、そして「食」です。そのため、単にうまいものを楽しむ風情にとどまらず、たとえば「初鰹は誰よりも早がけに食う」というような、江戸っ子独特の価値観が醸成されたのでしょう。

*4)なぜ鰻のことを江戸前といったのか?
隅田川河口や深川は風味の良いウナギを産出する恰好の漁場でしたから、ご当地産のうたい文句として江戸前と呼ぶようになりました。江戸人の自慢は大変なもので、隅田川産や深川産以外は「旅鰻」とか「江戸後」などといって嫌ったといいます。

*5)江戸の外食店の始まりは?
明暦の大火(一六五七)の際、罹災民に食事を供する煮売りの店があらわれたのをきっかけに、江戸に外食店がつくられるようになりました。つまり江戸の外食店は災害によってうまれたといえます。江戸時代の初めは買い食いの風情はなく、寛永の頃(一六二四‒四四)には、東海道のような街道筋の限られた場所に茶店が点在する他は、飯を売る店は一軒もなかったといいます。

(担当/吉田)

著者紹介

冨岡一成(とみおか・かずなり)

1962年東京に生まれる。博物館の展示や企画の仕事を経て、1991年より15年間、築地市場に勤務。「河岸の気風」に惹かれ、聞き取り調査を始める。このときの人との出会いからフィールドワークの醍醐味を知る。仕事の傍ら魚食普及を目的にイベント企画や執筆などを積極的におこなう。実は子どもの頃から生魚が苦手なのに河岸に入ってしまい、少し後悔したが、その後魚好きになったときには辞めていたので、さらに後悔した。江戸の歴史や魚の文化史的な著述が多い。

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最新の心理学に基づくコーチングの決定版!――ポジティブ・コーチングの教科書

ポジティブ・コーチングの教科書

――成長を約束するツールとストラテジー

ロバート・ビスワス=ディーナー 著 宇野カオリ 監訳 高橋由紀子 訳

◆第一人者が書き下ろしたメンタル・トレーニング法

 ポジティブ心理学とは、組織や人が最高潮(ピーク)の状態や、個人の「強み」に注目して、それが持続する方法を研究するもの。著者ディーナー博士は、世界中を旅して極限状態にある人の幸福感や強みの発揮を探る研究を続けながら、その成果を企業人の教育に携わるビジネス・コーチングに応用するポジティブ心理学コーチング(ポジティブ・コーチング)の第一人者です。

 本書は、著者自身の研究でのリアルな体験談やコーチング事例、数多くのエクササイズ、心理テストを盛り込んだ本格的な教則本。とはいえ、ビジネス・コーチやキャリア・コンサルタントなど、企業人教育に携わる方から、人をマネジメントする立場にある方までが知っておくとコミュニケーションがうまくいくコツが学べるようにもなっています。

 すぐに習得してみたいエクササイズの数々から、簡単なものを1つを紹介しましょう。それは、相手の強みに名前をつけることを習慣にするというものです。

◆自分や相手の強みに名前をつけることから始めよう

 著者のクライアントに、仕事の締め切りにいつも遅れがちで、自分を「怠け者の引き延ばし屋」だと悩んでいる男性がいました。しかし、聞けばその人、仕事の評価は決して低くないというのです。そこでピンときた著者は、その人に自分を「引き延ばし屋」ではなく、良い意味で仕事を熟成する「寝かせ屋」だと思うように提案します。それにより、クライアントの男性は仕事がギリギリになることを不安に思わずに質の高い仕事に一層邁進できるようになったとか。

 相手の強みを引き出すことは、ポジティブ・コーチングの大きな目的の1つですから、一見、ネガティブな特長でもその人がポジティブに転換できるように導いてあげることが大事です。そこで著者は、日ごろから、同僚や部下、上司など相手の良いところを見つけて、ポジティブなあだ名をつけて、折に触れて呼んでみれば、互いの強みが発揮されやすくなると提案します。

 あだ名と言えば、学生時代の嫌な先生のことを思い出す方もいるかもしれませんが、思い切って、今日から、ポジティブなあだ名づけを習慣にして、ポジティブ・コーチングを実践してみてはいかがでしょうか?
(担当/三田)

著者紹介

ロバート・ビスワス=ディーナー(Robert Biswas-Diener)
ポジティブ心理学者。学術研究を続けながら、各国の幅広い知的プロフェッショナルを対象にしたコーチングや企業向けの心理学研修を実施してきた。ケニアやイスラエル、グリーンランド辺境など、普通の心理学者が研究対象にしないような極限の地域に暮らす人たちを対象に研究を続けてきており「心理学界のインディ・ジョーンズ」という異名を持つ。著書に『「勇気」の科学』(大和書房)『ネガティブな感情が成功を呼ぶ』(草思社)ほか多数。

訳者紹介

宇野カオリ(監修)

一般社団法人日本ポジティブ心理学協会代表理事。国際ポジティブ教育ネットワーク日本代表。筑波大学人間系研究員。跡見学園女子大学講師。ペンシルベニア大学大学院応用ポジティブ心理学修士課程修了。同大学ポジティブ心理学センター研究員、ミシガン大学ロス・スクール・オブ・ビジネス ポジティブ組織研究センターフェローを歴任。訳書多数。

高橋由紀子

翻訳家。慶應義塾大学文学部卒業。訳書に『幸福優位7つの法則』(徳間書店)『ポジティブな人だけがうまくいく3:1 の法則』(日本実業出版社)『ネガティブな感情が成功を呼ぶ』(草思社)ほか多数。

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妖気を吐いて楼台の幻を生む謎の生物とは?――『蜃気楼のすべて!』

蜃気楼のすべて!

日本蜃気楼協議会 著

◆「なぜ見えるのか」から、その歴史や美術まで。あらゆる側面を網羅!

 「蜃気楼(しんきろう)」という言葉の語源をご存じでしょうか。この言葉は、最初に司馬遷の『史記』に登場する古い歴史を持った言葉です。

 蜃気楼の「蜃」とは、生き物の名前。竜の一種とも、ハマグリのような二枚貝とも言われ、その謎の生き物が妖気を吐いて、楼閣・楼台のような高い建物の幻を生じさせる、というのが「蜃気楼」という言葉のもともとの意味なのです。

 江戸時代には「蜃=ハマグリ」説が普及し、ハマグリが妖気を吐いて楼台を生じさせる図が、吉兆を示すおめでたいものとして絵に描かれ、皿やかんざしなどにも図案が使われました。

現代では蜃気楼にも科学の目が向けられ、空気の温度差による光の屈折で、遠くの景色が伸びたり縮んだりして見える現象であることが解明されてきました。とはいえ、実はまだ、蜃気楼にはわからないこと、未発見な真実がたくさんあります。

 たとえば、蜃気楼と言えば富山湾が有名で、北海道でも小樽や斜里などでも見られることが知られていましたが、最近になって、日本各地で、これまで蜃気楼が発生することが知られていなかったところでも観測例が次々と報告され、発見ラッシュが起きているのです。琵琶湖や猪苗代湖、大阪湾の蜃気楼は、その新発見により明らかにされたもので、本書でも詳しく紹介しています。

 本書は、日本各地の蜃気楼を美しい写真で紹介するだけでなく、蜃気楼の最新の研究成果から、なぜ見えるのか、どこに行けば見えるのか、どんな天気のときに見えるのかと言った観察のガイドまでも網羅。さらには、歴史や美術・骨董の中の蜃気楼までを扱った、世界初の完全ビジュアル・ガイドブックです。

◆3月~5月が蜃気楼のハイシーズン! 本書を片手に観測に出かけよう!

 蜃気楼は、その背景にある歴史も科学も面白いのですが、とにかく本物の現象を目撃するのがいちばん。大変素晴らしい体験で、誰もが驚くこと間違いありません。

 蜃気楼が最もよく見られるのは、多くの地域で3月~5月頃で、年に数回しか発生しないレアな現象です。晴れて風が穏やかな日に発生しやすいと言われていますが、風向きや、朝昼の寒暖の差も影響すると言われています。天気予報などの情報を利用することで、発生の予測はある程度可能です。本書では、各観測地ごとに、どんな時期のどんな天気のときに発生しやすいかも、観測の実体験に基づいて書かれています。

 また、場所も重要です。どこでも見られるわけでなく、蜃気楼が見られる地域でも、観測ポイントは限られます。本書ではその観測ポイントも惜しみなく公開。カメラや双眼鏡をはじめとした、観察に必要な道具についてもアドバイス満載です。

 さらに、近くに蜃気楼発生地がない方、とくに関東地方にお住まいの方のために、蜃気楼のメッカである魚津に、日帰りで蜃気楼を見に行くためのガイドも掲載。朝、天気予報図を見て蜃気楼の発生の可能性を確認してから、北陸新幹線を利用して昼まえに到着、観測するというもの。天気図による予測を使うと、成功の確率がグンと上がります。

 様々な側面から見ることができ、興味の尽きない蜃気楼。本書をきっかけに、蜃気楼への興味を持っていただき、関連する知識が普及することを期待しています。

 (担当/久保田)

著者紹介

日本蜃気楼協議会

全国各地の蜃気楼に関する情報交換、調査研究、教育の普及を図ることを目的に2003年に発足した団体。会員は気象や教育関係者、博物館・科学館に携わる人から、カメラマンや蜃気楼愛好家など、バラエティに富む。毎年、研究発表会等を開催し、会員相互の親睦を図っている。蜃気楼に興味を持った人であれば誰でも入会できる。詳細はウェブサイトを参照。  

http://www.japan-mirage.org/

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戦後日本の歴史認識に変更を迫る卓抜な論考集!『アメリカの対日政策を読み解く』渡辺惣樹著

アメリカの対日政策を読み解く

渡辺惣樹 著

◆日本人はアメリカの行動原理がわかっていない

 米大統領選の候補者選びで共和党トランプ氏の優勢が報じられています。メディアの下馬評にもあがってなかった、まさに予想外の展開です。我が外務省では急遽、氏について情報収集を始めた由。同盟国アメリカの動向が日本の政治・外交に重大な影響を与えることは自明で、あらゆる可能性をシミュレートして然るべき外交のプロが俄かに情報集めに走った気配が窺えて、何やら不安な気持ちになります。しかし顧みれば、ペリー来航により開国して以来、日本はアメリカの政治・外交の転換、その対日政策の変容にそのつど戸惑い、翻弄されてきたと言えます。日米開戦の衝撃は言うまでもなく、戦後も、日本の頭越しの米中接近を危惧する朝海浩一郎(元駐米大使)の〝悪夢〟が、ニクソン政権下で現実のものとなった衝撃は、当時を知る者にとっては圧倒的でした。百六十余年に及ぶ交流の歴史を持ち、大量の情報に接していながら、アメリカという国を、またその行動原理を日本人は今にいたるも十分に理解できていないということでしょう。

◆知られざるドラマから対日政策変容の由来を探る

 本書は、日米近現代史のトピックスを独自の視点で解釈した一連の著作が高く評価されている渡辺氏が、オピニオン誌を中心に発表した論考、インタビュー、自身が翻訳を手がけた著作の訳者あとがき等を集めた評論集です。渡辺氏は初めての著作『日本開国』(二〇〇七年、小社刊)において、ペリー来航の本当の狙いは、中国市場をめぐるイギリスとの通商戦争を戦うためのシーレーンの確保にあったと説き、日本未紹介の米政府資料をもとに、日本開国プロジェクトの立案者を特定しています。この画期的な「開国史」を上梓していらい、渡辺氏は、壮大かつ斬新な「日米開戦史」を書き継ぎ、また、TPPや米露資源戦争などのヴィヴィッドなテーマを取り上げてアメリカ外交の真意を推し量る著作・翻訳書をものしてきました。こうした意欲的な執筆活動から〝スピンオフ〟した本書収録論考の主要テーマはアメリカの対日政策であり、日米関係を画した事件の背後で進行していた知られざるドラマを俎上にのせ、米側資料に依拠しつつ、通説からは決して見えてこない、対日政策変容の由来を探っています。

◆「ルーズベルトの開戦責任」を問う

 論考が扱う内容は明治期の日米関係からヒラリー・クリントンの外交政策まで広範囲に及びますが、そこには日米戦争の本当の開戦原因は何だったのかという渡辺氏の問題意識が貫かれているように思われます。アメリカにとってのフィリピンの重要性、米西海岸で顕著だった人種差別運動、米国世論の八割が第二次大戦参戦に反対していたこと、ルーズベルトの異常な政治的野心、彼とチャーチルの密約、アメリカの過干渉外交の伝統等々、多面的なアプローチによってこの点が追究されています。そして、日米を最大の悲劇に導いた責任の多くはルーズベルトの無定見な外交政策にあり、米国の責任ある立場の人々はこれを認めるようになっているとの渡辺氏の指摘はきわめて重要で、敗戦を機に定着した日本人の歴史認識を一変させるものと言っても過言ではありません。

(担当/A)

著者紹介

渡辺惣樹(わたなべ・そうき)

日米近現代史研究家。1954年生まれ。東京大学経済学部卒業。日本未紹介の膨大な米英資料を読み込み、開国以来の日米関係を主義・主張を排した合理的な視点をもって解釈した一連の著作が高い評価を受ける。オピニオン誌を中心に、日米の開戦原因、最新のアメリカ政治をテーマとした論考を発表。著書に『日本開国』『日米衝突の根源 1858-1908』『日米衝突の萌芽 1898-1918』(第22回山本七平賞奨励賞)『朝鮮開国と日清戦争』『TPP 知財戦争の始まり』、訳書に『日本 1852』『日米開戦の人種的側面 アメリカの反省1944』『アメリカはいかにして日本を追い詰めたか』『ルーズベルトの開戦責任』『ルーズベルトの死の秘密』『コールダー・ウォー』『ダレス兄弟』(いずれも草思社刊)。

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スマートで安全な運転を身につけたいなら、コレだ!―『徳大寺有恒のクルマ運転術 アップデート版』

徳大寺有恒のクルマ運転術 アップデート版
徳大寺有恒 著

◆読み継がれる定番の運転バイブル。読むだけでうまくなる、安全になる!

 長年にわたり支持され、数多くのドライバーに読まれてきた、クルマ巨匠・徳大寺さんによる運転読本が新しくなって登場しました。『決定版 徳大寺有恒のクルマ運転術』(2005年刊)に、技術進歩や制度変更に関する最新事情をふまえて、編集部が修正を加えたアップデート版です。徳大寺メソッドの運転バイブルが、末永く読み継いでいただけるようになりました。

 2014年に惜しまれつつ亡くなった徳大寺さん。その運転歴は50年以上、元レーサーでもあり、自動車評論家として数え切れないほどたくさんのクルマに乗ってきた徳大寺さんですから、内容は折り紙付きです。本書はいわゆる「ドラテク」本ではなく、ふつうの道路をいかに安全に快適に運転するかを、これ以上なくわかりやすく解いたもの。「そうだったのか!」と目からウロコが落ちる実践的アドバイスが満載で、まさに読むだけで運転がうまくなる本です。

◆論理的でわかりやすい! 徳大寺流快適運転の極意

 一例を挙げるなら、「周囲にアピールする運転」ということを、徳大寺さんは強調しています。たとえば、右折信号のない交差点で右折する場合。一刻も早く交差点を脱出したいと思うあまり、あわててアクセルを踏みがちです。しかし、これが事故のもと。横断歩道を渡る自転車と衝突したり、あるいはアクセルを急に強く踏んだものの途中で不安になって急ブレーキ、後続車に追突されたりといった目に遭うことが多いのです。では、どうしたらいいでしょうか。

 徳大寺さんは、こういうときこそ、あえてゆっくり、まわりに自分の行為をアピールしつつ曲がるべきだといいます。ゆっくり曲がれば、自転車も後続車も、横から来るクルマも、事態にどう反応すべきか判断する余裕ができます。イラついた他車にクラクションを鳴らされるとしても、相手はこちらのすることを見ているのですから、絶対にぶつかってくることはありません。へんに遠慮してあわてるのが間違いで、ゆっくりアピールして曲がるのが右折の「正解」なのです。

 徳大寺さんはこのほかにも、いくつもの運転の「原則」を挙げていて、それらの原則をもとに、具体的な運転の場面でどう対処したらいいかを非常に論理的に、わかりやすく解説しています。

 その表現のうまさは徳大寺さんならでは。また、すべての項目が2ページで完結していて、とても読みやすくなっています。初心者からベテランまで、すべてのドライバーに自信を持ってオススメできる一冊です。

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【内容より】 

◎「ドラテク」より他車とのコミュニケーションが大切だ
◎運転は運動神経ではなくアタマでするものである
◎信号の変わりぎわの右折は、あえてゆっくり行うべし
◎ドライビングポジションがダメだと運転がヘタになる
◎教習所が禁じる「送りハンドル」だが、私はオススメする
◎狭い道でのすれ違いは、路肩に寄せず、対向車に寄せる
◎タクシーの後ろを走るときは車間距離を長めにとる
◎2車線あれば右側車線を走った方が安全だ
◎駐車で無駄な苦労をしないためのテクニックと知恵

著者紹介

徳大寺有恒 (とくだいじ・ありつね)
1939年東京生まれ。成城大学経済学部卒。初代クラウンが登場した1955年に運転免許を取得。1964年日本グランプリでレーサーとしてデビュー。その後、トヨタワークスチームを経て、フリーの自動車ジャーナリストに。1976年草思社刊『間違いだらけのクルマ選び』で自動車評論の新境地を開拓、社会に衝撃を与える。以降『年度版間違いだらけ』を2004年まで刊行、一時休刊したのち復活した『2011年版』からは島下泰久氏との共著として刊行。2014年11月7日、急逝。これまでに自動車運転術に関する本を多数執筆、いずれも版を重ねて長年にわたり読み継がれてきた。その著作によって上達したドライバーは数多い。

(担当:久保田)

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