草思社のblog

ノンフィクション書籍を中心とする出版社・草思社のブログ。

元素を知れば、複雑な世界が面白いほどわかる!『世界の見方が変わる元素の話』ティム・ジェイムズ 著 伊藤伸子 訳

世界の見方が変わる元素の話

ティム・ジェイムズ 著 伊藤伸子 訳

宇宙はどう誕生したのか。なぜ携帯電話で通信できるのか。環境負荷を減らすにはどうしたらよいのか……本書は、この世界の最小の材料である「元素」が、身近な疑問から世界規模の課題まで、どのように世界を成り立たせているのかという「世界のレシピ」について紹介するものです。

■元素のおもしろエピソードを選りすぐり

突然ですがみなさんは、リンはどのようにして発見されたかご存じでしょうか。実は、尿が金色なので、これを煮詰めれば金を得られるのではないかと考えた錬金術師が、それを実行した結果発見したのです。いきなりこんな話で始まって恐縮ですが、これは目に見えている現象が理解できなくても、元素について理解すると途端にわかるという、化学の面白さを端的に表しているエピソードだといえます。
本書は、そのエピソードのセレクトの秀逸さと、語り口のユーモアにおいて、これまでの化学本とは一線を画しています。例えば、元素のベスト10を決めようと思ったけど、傑出した9つと、ものすごく役立たない1つを紹介することにした結果、「ここではっきり言おう。ジスプロシウムは人類の歴史から取りのぞいても、いっさい何も変わらない唯一の元素である。周期表で最もつまらない元素であるジスプロシウムに敬意を表する。」とコメントしてしまう著者のセンスに脱帽です。これほど面白がって読める化学の読み物というのはそうお目にかかれないことでしょう。

■化学の教養もしっかり身につく

とはいえ、本書ではただ面白い話を紹介しているのではなく、それらの逸話をうまく構成して、元素の発見の歴史、周期表が現在の形に整えられてゆく過程もしっかり押さえられています。笑いながら読んでいるうちに、元素とこの世界の関係が身についてしまっていること請け合いです。

(担当/吉田)


目次
第1章  炎を追いかけた人々
第2章 これ以上分割できないもの
第3章 マシンガンとプディング
第4章 原子はどこから来たのか
第5章 マス目ごとに
第6章 量子力学が危機を救う
第7章 大きな音をとどろかせるもの
第8章 錬金術師の夢
第9章 急進派の原子
第10章 酸、結晶、光
第11章 生きている! たしかに生きている!
第12章 世界を変えた九つの元素(と、変えなかった元素)

 

著者紹介

ティム・ジェイムズ(Tim James)

高校で科学の教師として働くかたわら、ユーチューバー、ブロガー、インスタグラマーとしても活躍。ナイジェリア生まれ。宣教師のもとで育ち、15歳で科学の魅力に気づいて以来、科学に恋をしつづけている。化学の修士号を取得(専門は計算量子力学)後、すぐに教師の職につき、現在は高校だけでなくさまざまな場所で科学を教えている。

訳者紹介

伊藤伸子(いとう・のぶこ)

翻訳者。主な訳書に、『世界を変えた10人の女性科学者』『ビジュアル大百科 元素と周期表』(以上化学同人)、『周期表図鑑』(ニュートンプレス)、『もっと知りたい科学入門』(東京書籍)、『ワインの味の科学』(エクスナレッジ)などがある。

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「自分の足」だけを頼りに、ゆっくり自由に旅することで人生を取り戻す。『歩き旅の愉しみ 風景との対話、自己との対話』ダヴィッド・ル・ブルトン著 広野和美 訳

歩き旅の愉しみ

――風景との対話、自己との対話

ダヴィッド・ル・ブルトン著 広野和美 訳

 本書はフランスの社会学者が、〈歩いて移動する〉という行為と、そこから生まれる感慨について味わいのある文章でつづった思索の書です。自身もまた歩き旅の愛好者である著者は、これまでのみずからの経験に加えて古今東西のさまざまな書物の一節も引用しながら、歩き旅の豊かな可能性について述べています。
《ルソーは、その著書『エミール』で旅について言及し、そのことをうまく表現している。「わたしたちは、都合のいいときに出発する。好きなときに足を休める。うんと歩きたいと思えばうんと歩くし、そう歩きたくなければすこししか歩かない。わたしたちはその土地のすべてを観察する。右へ曲がったり、左へ曲がったりする。わたしたちの心をひくあらゆるものをしらべてみる。どこでも見晴らしのいいところには足をとめる」。これこそが、歩き旅の大切な哲学であり、その人その人にふさわしい大自然の中での歩き方だ。》(本書より)
 さまざまなテクノロジーのおかげで、現代人は驚くほど容易に目的地に到達することができるようになりましたが、著者は歩き旅において大切なのは目的地にたどりつくことではなく、一歩一歩踏みしめて歩くことだといいます。そうすることで「道は無限に続くこと」「たくさんの生き方があること」、そして自分には「経験してみたかったことがたくさんあること」に気づくのです。私たちの日常を支配している効率やスピード感は、ここでは必要なくなるのです。
 そして歩き旅はまた、今は亡き大切な存在を思い出すよすがにもなると著者は書いています。フランスの旅行作家シルヴィアン・テッソンの「なぜ亡くなった者の思い出は、風に揺れる木の枝や丘の尾根の連なりのような何でもない光景と結びついているのだろう?」という一文を引用しながら、著者は「道を歩きながら抱くはかない幸福感は、かつて大切だったけれども今はこの世にいない親しい者たちの振る舞い、微笑み、笑顔を思い出させる。道歩きは過去をよみがえらせ、自分の生き方を考え直させ、人生のさまざまな瞬間に自分のそばにいてくれた人たちのことを思い出させる」と述べています。歩き続けることで研ぎ澄まされた感覚によって、わたしたちは自分の重心を再び確認するのかもしれません。あわただしい日々の暮らしの中ですり減った心を一休みさせるのに、好個の一冊といえそうです。

(担当/碇)

著者紹介

ダヴィッド・ル・ブルトン(David Le Breton)

ストラスブール大学教授(社会学・人類学)。フランス大学研究院の上級会員、ストラスブール大学高等研究院の正教授。人間の身体や感覚の変容、青少年の問題行動についての研究に取り組む。歩き旅の魅力を考察した著書やRire. Une anthropologie du rieur(笑う:笑いの人類学)、La saveur du monde(世界の味わい)など多数がある。本書は初の邦訳書となる。

訳者紹介

広野和美(ひろの・かずみ)

フランス語翻訳者。大阪外国語大学フランス語科卒。訳書に『フランスの天才学者が教える脳の秘密』(TAC出版)、『フランス式おいしい肉の教科書』『フランス式おいしい調理科学の雑学』(パイ インターナショナル)、共訳書に『0 番目の患者』(柏書房)、『世界で勝てない日本企業』(幻冬舎)などがある。

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人間はなぜこんなに賢く、こんなに愚かなのか?『人はどこまで合理的か(上・下)』スティーブン・ピンカー 著 橘明美 訳

人はどこまで合理的か(上・下)

スティーブン・ピンカー 著 橘明美

■『21世紀の啓蒙』『暴力の人類史』の著者による最新作。全米ベストセラー

 本書は2021年に刊行された全米ベストセラー、Rationality: What It Is, Why It Seems Scarce, Why It Mattersの邦訳です。
近年、フェイクニュース陰謀論がはびこり、党派的議論も横行していると、多くの人が嘆くようになりました。その一方で、IT、人工知能、医療などの科学技術は急速な進歩を遂げ、新型コロナワクチンはわずか1年足らずで開発されました。この状況は、2つのことを示しています。
 1つは、人間の合理性には、確かにとても大きな力があるということ。もう1つは、人間はつねに合理的なわけではなく、注意を怠ればたちまち非合理に陥るということ。どうすれば、私たちは、非合理に陥らず、より合理的に思考できるようになるのでしょうか。

■合理的思考の最強のツール群を幅広い学問分野から抽出し、伝授する初めての本

 この1000年あまりの間に、人類は、本来持っている合理性を拡張すべく、数多くの合理性ツールをつくり出してきました。そのツールとは、「論理」「批判的思考」「確率・統計」「意思決定理論」「ゲーム理論」などの幅広い学問分野から生まれた、合理的に思考するためのさまざまな“道具”で、さまざまな判断の基準や枠組み、考え方のルールを提供してくれます。
 さらに、「人はなぜ・どのように、非合理に陥るのか」についても、心理学や行動経済学などの分野で研究されており、さまざまな知見が蓄積されてきました。この研究は非常に活発で、ノーベル賞が与えられるような大きな発見も得られています。非合理に陥りやすい状況・条件などを教えてくれるものと言えるでしょう
 合理性のツールや、非合理に関する知見は、私たちが非合理に陥ることを防ぐために大変、役立つものです。危険な選択を修正し、疑わしい主張を値踏みし、おかしな矛盾に気づき、非合理に陥りそうな場面を事前に警戒できるようになるなど、人生にとっても社会にとっても、非常に実用的な意味を持つ知識です。にもかかわらず、これらツール・知見をすべてまとめて説明する本はこれまでどこにもありませんでした。本書はそれを実現した初めての本です。
 本書の元となったのは、バーバード大学で著者が受け持つ一般教養の講義。そのため、専門的な知識ナシで読み進められるように書かれています。人生と社会をよりよいものにするために、多くの方々、特に若い方に読んでいただきたい一冊です。

(担当/久保田)

 

■上巻目次

序文

第1章 人間という動物はどのくらい合理的か
■狩猟採集民は驚くほど合理的である
■「なぜ人間は時に非合理になるか」は研究されている
■人間の非合理さを露呈させる簡単な数学の問題
■人間の非合理さを露呈させる簡単な論理学の問題
■人間の非合理さを露呈させる簡単な確率の問題
■人間の非合理さを露呈させる簡単な予測の問題
■認知的錯覚と「目の錯覚」の類似点

第2章 合理性と非合理性の意外な関係
■「理性に従う」ことはかっこ悪いのか
■理性なしにはあらゆる議論が不可能
■理性は妥当かつ必要だと考えられる理由
■理性は情念の奴隷? 情念が理性の奴隷?
■自分の中にある複数の目的間の葛藤
■今の自分と未来の自分とのあいだの葛藤
■あえて無知でいるほうが合理的な場合もある
■無能や非合理でいることが合理的な場合
■考えることや訊ねることがタブーとされる場合
■道徳は合理的な根拠をもちうるか
■理性の誤りも理性で正すことができる

第3章 論理の強さと限界はどこにあるか
■論理の力で論争は解決できるか
■「もし」や「または」の論理学上の意味は通常と異なる
■形式論理のよくある誤用の例
■論理の飛躍や誤謬に気づく方法「形式的再構成」
■非形式的誤謬のさまざまなバリエーション
■論理が万能でない理由―論より証拠
■論理が万能でない理由―文脈や予備知識の無視
■論理が万能でない理由―家族的類似性
ニューラルネットワークで家族的類似性を扱う
■人間の理性は家族的類似性も論理も扱える

第4章 ランダム性と確率にまつわる間違い
■偶然と不確実にどう向き合うべきか
■ランダム性とは何か。それはどこからくるのか
■「確率」の意味は複数あり混乱の元になっている
■利用可能性バイアスで確率の見積もりを誤る
■「大衆の怒り」はバイアスだけでは説明不能
■ジャーナリズムがバイアスを増幅させる理由
■連言確率、選言確率、条件付き確率の混同
■確率にまつわる誤謬は専門家でも気づきにくい
■〈AまたはB〉の確率と〈Aでない〉確率の計算
■条件付き確率の計算は混乱しやすいが重要
■〈AのときのB〉の確率と〈BのときのA〉の確率
■後知恵確率を事前確率と取り違える誤謬
■人間の「かたまり」を見つける能力が誤謬を生む
■それでも人は幸運の連鎖に魅了される

第5章 信念と証拠に基づく判断=ベイズ推論
ベイズ推論は全人類が学ぶべき理性の道具
■基準率無視と代表性ヒューリスティック
■基準率無視が科学の再現性危機の根源
■基準率を無視するほうが合理的である場合
ベイズ推論を直観的に使えるようにするには

原注

■下巻目次

第6章 合理的選択理論は本当に合理的か
■悪者にされ嫌われてきた「合理的行為者」の正体
■合理的行為者が満たす7つの公理
■「限界効用の逓減」と保険とギャンブルと大惨事
■共約可能性・推移性の公理違反を犯す場合
■非合理と言い切れない、独立性の公理違反
■「プロスペクト理論」による公理違反と合理性
■合理的選択が本当に合理的なことはやはり多い

第7章 できるだけ合理的に真偽を判断する
■不完全な情報を基に合理的な決定を下すには
■信号とノイズを見分けるのはなぜ難しいか
■反応バイアスを最適に設定する方法
■測定の感度を上げればミスも誤警報も減る
■法廷における信号検出の精度は十分か
■科学研究の「再現性の危機」と信号検出理論

第8章 協力や敵対をゲーム理論で考える
ゲーム理論なしでは社会の重大問題に向き合えない
■じゃんけん・ゼロサムゲーム・混合戦略・ナッシュ均衡
■猫に鈴・非ゼロサムゲーム・ボランティアのジレンマ
■待ち合わせ・調整ゲーム・フォーカルポイント
■チキンゲームとエスカレーションゲームへの対処法
囚人のジレンマの克服法「掟」「しっぺ返し戦略」
囚人のジレンマの多人数版「共有地の悲劇

第9章 相関と因果を理解するツールの数々
■違うとわかっていても混同する相関と因果
■相関があるかどうかは散布図と回帰分析でわかる
■特異な現象の繰り返しは少ない「平均への回帰」
■実は答えるのが意外に難しい「因果関係とは何か」
■因果をつなぐのは一本道ではなくネットワーク
■その相関は因果関係か――ランダム化と自然実験
■その相関は因果関係か――マッチング、重回帰など
■「主効果」「交互作用」で因果を賢明に考察する
■あらゆる手段を駆使しても人間は予測しきれない

第10章 なぜ人々はこんなに非合理なのか
■理性の衰退を懸念させるデマや陰謀論、迷信の流布
■たわごとの蔓延に関する説明にならない説明
■望ましい結論に誘導する「動機づけられた推論」
■党派性に侵された議論「マイサイドバイアス」
■非合理な両極化を引き起こす原因は何か
陰謀論は「神話のマインドセット」の信念
■人はなぜ疑似科学・超常現象などに騙されるのか
■エンタメとしての都市伝説・フェイクニュース
陰謀論が蔓延しやすいのには理由がある
■社会から非合理を減らすためにできること
■「合理性の共有地の悲劇」を防ぐ制度も必要

第11章 合理性は人々や社会の役に立つのか
■理性は人生とこの世界をより良いものにするか
■合理的に判断することは人生の役に立つのか
■世界の物質的進歩は合理性の成果だ
■道徳の進歩も合理性によりもたらされたのか
■道徳を進歩させた合理的で健全な議論の数々

参考文献

原注

誤謬の索引・人名索引

 

著者紹介

スティーブン・ピンカー(Steven Pinker)

ハーバード大学心理学教授。スタンフォード大学マサチューセッツ工科大学でも教鞭をとっている。認知科学者、実験心理学者として視覚認知、心理言語学、人間関係について研究している。進化心理学の第一人者。主著に『言語を生みだす本能』、『心の仕組み』、『人間の本性を考える』、『思考する言語』(以上NHKブックス)、『暴力の人類史』(青土社)、『21世紀の啓蒙』(草思社)などがある。その研究と教育の業績、ならびに著書により、数々の受賞歴がある。米タイム誌の「世界で最も影響力のある100人」、フォーリンポリシー誌の「知識人トップ100人」、ヒューマニスト・オブ・ザ・イヤーにも選ばれた。米国科学アカデミー会員。

訳者紹介

明美(たちばな・あけみ)

英語・フランス語翻訳家。お茶の水女子大学卒。訳書にスティーブン・ピンカー『21世紀の啓蒙』(草思社、共訳)、ジェイミー・A・デイヴィス『人体はこうしてつくられる』(紀伊國屋書店)、フランソワ・ヌーデルマン『ピアノを弾く哲学者』(太田出版)ほか。

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鉄道開業150周年。電車もいいけど、駅のデザインにも注目してみませんか?『東京の名駅舎』大内田史郎 著 傍島利浩 写真

東京の名駅

大内田史郎 著 傍島利浩 写真

皆さんは、電車で目的の駅の改札を出た後に、うしろを振り返ったことがあるでしょうか?
誰もが利用しているのに、普段は見過ごされている駅舎。
しかし、そこには設計者がデザインに託したさまざまな思いや考え方が込められています。
本書は、そんな駅の「建築としてのデザイン」に着目した、ありそうでなかった書籍です。
東京圏の、70以上の駅舎を収録しています。いくつか、登場する駅舎を紹介します。

まずは、東京の駅といえば東京駅ですが、これは駅舎のカテゴリーに限らず、「様式建築の横綱」と呼ぶことができます。また、同じレトロな建築でも、小湊鐵道のように、壮大なデザインではないけれど、風土にマッチするような佇まいのものもあります。
また、第一線で活躍する安藤忠雄隈研吾といった建築家たちが、一級の現代建築として設計した、高輪ゲートウェイ駅などの駅舎も収録されています。さらには、竜宮城のような片瀬江ノ島駅、SL機関車の形をした真岡駅など、普通の建物ではありえないような形のものさえも存在しているのが、駅という建築の面白さです。

駅舎と一口に言っても、そこには非常に豊かな形が存在しています。それは、駅舎の機能が満たされていれば、そのほかは案外自由であるということなのかもしれません。また、形はさまざまに異なっていても、そのまちの歴史や地域性に見事に合うように計画されているという点ではどの駅でも共通しています。駅舎とは、そのまちと鉄道をつなぐ形としてデザインされているのです。
この本を読んだ後は、ぜひ改札を出てから後ろを振り返ってみてください。
そこには、そのまちの名建築としての駅の姿が見えるはずです。

(担当/吉田)

 

■風格のある様式建築
旧新橋停車場、東京駅、両国駅、旧原宿駅南甲府駅…

■スタイリッシュな現代建築
高輪ゲートウェイ駅、銀座線渋谷駅、日立駅上州富岡駅

■最新の木造駅舎
戸越銀座駅旗の台駅参宮橋駅

インパクトのある個性的な駅舎
片瀬江ノ島駅真岡駅国道駅土合駅

帯文:藤森照信

 

著者紹介

大内田史郎(おおうちだ・しろう)

工学院大学建築学部建築デザイン学科教授 。1974年静岡県生まれ。1999年工学院大学大学院工学研究科修士課程修了、東日本旅客鉄株式会社入社。2001年から2012年まで東京駅丸の内駅舎の保存・復原に携わり、2006年に「東京駅丸ノ内本屋の意匠と技術に関する建築史的研究」にて東京大学大学院から博士(工学)の学位を授与。2014年工学院大学建築学部建築デザイン学科准教授、2020年から現職。一般社団法人DOCOMOMO Japan 理事。著書に『東京建築遺産さんぽ』(エクスナレッジ)、共著に『建築学の広がり』(ユウブックス)がある。

写真家紹介

傍島利浩(そばじま・としひろ)

1965年大阪生まれ。1991年より藤塚光政に師事。1996年よりフリーランス。建築、インテリア、プロダクト、アート、人物を中心とした雑誌、広告、竣工写真などを手がける。1999年、写真展「都市放浪 PART l」(セラトレーディング)開催。2000年、写真展「都市放浪 PART ll」(セラトレーディング)開催。2006年、株式会社プンクトゥム設立。2016年、iPhone写真展「iSnap 4s+6」(ANOTHER FUNCTION)開催。共著に「日本の不思議な建物 101」(エクスナレッジ)、「日本の美しい酒蔵」(エクスナレッジ)、「東京建築遺産さんぽ」(エクスナレッジ)、「奇跡の住宅 旧渡辺甚吉邸と室内装飾」(LIXIL出版)がある。


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その目の異常、「心の叫び」かもしれません!『心をラクにすると目の不調が消えていく』若倉雅登 著

心をラクにすると目の不調が消えていく

若倉雅登 著(井上眼科病院 名誉院長・心療眼科医)

■目からの警告サインを無視してはいけない!

 まばたきが増える、まぶしい、目が痛い、急激な視力低下……。目に明らかな不具合があるのに、眼科の検査では異常が見つからない。最近こうした原因不明の目の不調を訴える人が増えています。重症化するとまぶたがうまく開閉できない、光がまぶしくて室内でもサングラスをかけざるを得ない、目を少し動かすだけで吐き気がするなど、日常生活に支障をきたすほど深刻な状態となると言います。
 著者は、その原因が、「眼球」自体にはなく、視覚を司る「目と脳の連携システム」にあると指摘します。いったい「目と脳の連携システム」に何が起こっているのでしょうか。

■脳の働きが落ちると、なぜ目と心に不具合が出るのか

 私たちは普段、無意識のうちに目と脳が緻密に連携することによって、「ものを見る(判断する)」ということをしています。しかし、近年「目」をめぐる環境は激変し、近距離でのスマホタブレットの長時間の使用により、私たちの目はつねに、人工的な強い光と人工画像による強い刺激にさらされるようになったのです。
 今や目から脳へと入る情報量はかつてないほど膨大になり、そのため脳に過度なストレスがかかっているというのです。そして、目と脳の酷使により、脳の働きが落ちているのです。
 著者によれば、脳の働きが落ちることで、目と脳の連携システムに不具合が出て、目や目の機能が低下したり、精神状態が不安定となり、うつの症状が出ることもあると強く警鐘を鳴らします。そのため普段からの「目の使い方」の見直しが急務だと言います。

■目の使い方を見直し、人生の質を向上させる

 本書は目の不調に悩む方に向け、眼科で診断がつかない症例を数多く治療してきた神経眼科・心療眼科の第一人者である著者が、目と脳との関係に踏み込んで、不調の根本原因をやさしく解きほぐします。さらには、「きょろきょろ運動」や「視環境の整え方」など、普段から目と心を健康に保つ秘訣や方法などもわかりやすく教えてくれます。
 ぜひ多くの方に知っていただければと願っております。

(担当/吉田)


■目次
1章    あなたの目と脳は疲れ切っている
・急増する原因不明の目の不調 
・ものは眼球だけで見ているわけではない 
スマホで人間の視環境が激変 
・目からの情報過多は脳への負担を増やす 
・ものを見るプロセスは脳に入ってからが本番 
・目と脳の深いつながり 
・脳のバランス制御システムを崩しやすい現代社会 
・目の疲れや痛み、不快症状は脳から来ている 
・心療眼科的アプローチの重要性

2章    あまりに目を酷使する現代人の悪習慣
スマホで目の使い方が単一に 
・近視化した状態はすぐには戻らない 
・過剰な近見は自律神経のバランスも崩しやすい 
スマホが目に悪いのは「光」のせいでもある 
・「まぶしい」と訴える患者さんが一番多い 
・視機能のパターン化は脳のエネルギーを奪う? 
・子どものスマホ依存、ゲーム依存はとくに危険 
・新たな現象「スマホ内斜視」「子どもの心因性の視力低下」 
・目の持久力の低下、集中力の低下が問題 
・眼精疲労は単なる目の疲れではない 
・目からの警告サインを無視してはいけない 
・見え方の質の低下は心の不調に直結する 

3章    目の不調の裏にある心の異常
・感覚で感じる不調は数値化できない 
・心療眼科で扱うもの 
・「視野が狭い」の背景に隠れていたのは? 
・心の叫びが視力低下につながることがある 
・生活の質も心の質も低下する目の病気「眼瞼けいれん」 
・視界にノイズが生じてしまう「小雪症候群」 
・原因不明の現代病はすべてつながっている? 
・心を元気にするための薬が目の不調をつくっている 
・薬の影響と眠れないことへの恐怖 

4章    心がラクになると、目も癒える
・疲れたら思い切って休む、心の叫びを無視しない 
・ストレスへの耐性を少しでも上げていく 
・自分にあった明るさ、視環境をつくろう 
・きょろきょろ運動で目と脳の使い方に変化を 
前頭葉を活性化させよう 
・自分の症状に納得することの大切さ 
・むずかしい病気との付き合い方 
・生体リズムを尊重し、自然回復力を取り戻す 
・睡眠不安、睡眠依存から抜け出そう 
・弱音を吐く、自分をほめる 
セーフティネットが心の安寧をもたらす 

5章    視界良好、快適な目が人生の質を向上させる
・目も老いる 
・老眼だけではない、目の加齢変化 
・症状にとらわれない、こだわらない 
・病気も人生も俯瞰すると気持ちがラクになる 
・「医者任せ」をやめてみる 
・患者と医師のあるべき関係 
・病気に人生を振り回されてはいけない 
・大事にしたい「後ろに前進する」という考え方

著者紹介

若倉雅登(わかくら・まさと)

井上眼科病院名誉院長。1949年東京生まれ。80年北里大学大学院博士課程修了。北里大学助教授を経て、2002年井上眼科病院院長、12年から現職。07年より日本心療眼科研究会共同代表、14年NPO法人目と心の健康相談室を立ち上げ、現在副理事長。その他東京大学非常勤講師、慶應義塾大学非常勤講師、北里大学客員教授日本神経眼科学会理事長を歴任。現在は井上眼科病院で神経眼科、心療眼科を専門とした予約診療、眼球使用困難症調査研究(厚労省)に関わるほか、著作、講演、相談室や患者会などでのボランティア活動を行っている。

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どうして私には好きになってくれる相手がいないんだろう。『失われたモテを求めて』黒川アンネ著

失われたモテを求めて

黒川アンネ 著

 本書は、小さい頃からずっと太っていることがコンプレックスで、自分に自信を持てず、異性との交際に消極的だった著者が、モテを求めて奮闘する2年半の様子を綴った記録です。
 シャネルの口紅を買いに行ったり、映画や本からモテのヒントを学んだり、ランニングをしたり、マッチングアプリ用に資生堂フォトスタジオで写真を撮ったり……。
 ある時は、整った顔立ちをしたファッションセンスの良い友人から「一人に執着してはダメだよ、次に行かなきゃ」「1年に100人と会え」とアドバイスをもらい、飲み会で知り合った男性を誘ってみます。
 またある時は、お笑い芸人が六本木ヒルズの多目的トイレで不倫をしていたという報道に接し、「私は(多目的トイレに呼び出されたら)行く側の人間かもしれない」と、恋愛関係の非対称性について考察を深めます。
 そしてまたある時は、「エロいと思ってほしいからパイパンにしているけど、実際には自分がすごく快適」との友人の勧めを受けて、陰毛の永久脱毛にチャレンジ。
 最終章では、海外の友人から精子提供を約束され、不妊治療を体験、一つの卵子を凍結するに至ります。
 「モテ」とは一体何なのか。なぜ人は誰かを求めるのか――。そんな根源的なテーマに取り組む著者の姿は決して他人事ではありません。誰もが一度はモテに悩まされたはず。是非ご一読ください。

(担当/渡邉)

【目次】
1 臆することなくシャネルで口紅を買う
2 失われたモテ
3 「ともかく人に会え」
4 子どもと避妊
5 どうしてモテたいの?
6 モテの途中下車?
7 一人でいること
8 (ソフィア・ベルガラに学ぶ)自信を持つこと
9 モテは生死に直結する―就職活動について
10 新型コロナ時代のシングル女性
11 明るい部屋でのおこもり生活
12 コロナ禍でモテを世界中で味わってみたら……
13  短絡的ハッピーエンド思考について
14 三浦春馬なき世界で
15 内から輝きを放つ、自信が香り立つ顔が私もほしい
16 思い直すとしっかりと傷ついている、そんな経験
17 「Go To行きませんか?」
18 銀座キラキラ生活で穏やかさの感触を手に入れる
19 どうして私たちはパートナーが欲しいと思うのだろう?
20 「パイパン」問題
21 ラフォーレ原宿で膣トレボール購入
22 一つの卵子を凍結できました
あとがき

 

著者紹介

黒川アンネ(くろかわ・あんね)

編集者、翻訳者、コラムニスト。1987年生まれ。一橋大学社会学部在学中にドイツに派遣留学。一橋大学大学院言語社会研究科修士課程修了。現在は都内の出版社勤務。

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香港の自由を「暴力」で守ろうとした若者たちが思いのたけを吐露した貴重な記録!『香港秘密行動』楊威利修 著 勇松 訳

香港秘密行動

楊威利修 著 勇松 訳

 この本は「逃亡犯条例」の改正に端を発する香港での騒乱(2019年)の際、過激な抗議活動で注目を浴びた「勇武派」と称される若者たちにインタビューしたルポです。当時、抗議デモ参加者の大半は非暴力の抵抗運動で香港の自由を守ろうと考えていましたが、本書で取り上げる若者たちは活動の初期から、中国共産党が背後にいる香港政府と対峙するには市民が覚悟を決め、武装して戦うしかない、という考えをもっていました。黒ずくめの格好で現場に現れ、時に警官に火炎瓶を投げつけたりもしていた彼らはいま海外に逃れ、それぞれに苦難の日々を送っています。本書の著者は志を同じくする香港人として極秘裏に彼らとコンタクトを取り、心のひだにまで入り込むようなインタビューに成功しました。一線を越えて戦った若者たちについて、〈その強さも弱さも、戦術的な賢さも政治的な無知も、格好よさも脆さも、上品でないドロドロした部分も含めて、その実態、行動、思考をあますことなく描いている〉(「解説」より)のがこの本です。
 本書をお読みいただければ、香港の若者たちに根づいている本土意識(香港を自らの「ふるさと」と考える意識)の強さに驚かれるのではないかと思います。また、彼らの言葉のところどころに日本文化への親しみが感じられる点にも、ぜひご注目いただきたいと思います。著者も日本の読者に向けた本書冒頭で、こう書いています。〈香港人はつねづね日本への旅行を「里帰り」とふざけて言っているが、それはたんなる戯言ではなく、深い意味が含まれている。……本書の最初の出版が奇跡的に日本に決まったことは、ある意味では「里帰り」とも言える。……日本の友人たちが抱いている勇武派や香港の抵抗闘争に関する疑問に対し、このインタビューにもとづく物語がその回答となり、あわせて彼らが直面している困難と曲折の理解に少しでも役立つことを希望する〉
 返還から25周年を迎える香港はいま、ジョージ・オーウェルの『1984』のような超監視社会になり、民主化を支持していた大多数の人たちも「国家安全維持法」が壁となって、声を上げられない状況が続いています。この厳しい状況を打破する方途はなく、負け戦を承知で圧政と戦った若者たちの言葉も、香港がどのような都市であったかを後世の人びとに伝える証言として歴史に刻まれるのかもしれません。しかし香港を飲み込んだ強権統治こそは、現在の日本が直面している巨大な脅威でもあります。そうした観点からも、ぜひお読みいただきたい一冊です。

(担当/碇)

 

【目次】

日本の読者へ 

序文 

第1章 懐かしいのはあのときの自分であり、そのとき僕の心の中にいた彼女なんだ 
出境したときは二人、戻ったときは一人/七十九日目の挫折/一転、冬眠生活へと堕落/泣きながら彼女を守る/黒衣のブラックユーモア/マスクを外し、はじめて顔を合わせる/五秒の距離/阿呆と鬼/血の債務が民兵を育てる/連合戦線と頓挫した計画/血縁より深い結びつき/あの日の写真/階級の距離/僕にはわからないし、答案も書けない

第2章 私は「何もない」人間なんかじゃなかった 
古い音楽、古い映画/催涙弾の中で羊鍋を食べる/裏山での聯校活動/心の傷/MK妹、火炎瓶を作る/香港理工大学での攻防戦/「また誰か、大学から出てきたよ」/うつ病の再発、望郷の思い

第3章 いつの日か、あのヘルメットをとり戻す機会があるよ
火炎瓶を投げる人間とは/単独行動のメリット/八百香港ドルの大冒険/敵の弾が尽きるまで/必要なのは暴動だった/内部での主導権争い/降伏とは言わない降伏/最後の尊厳

第4章 立ち上がった以上、代償を払うことも覚悟しておくべき 
覆面をかぶれば別の男になれる/勇武派はいつ生まれたのか/前線でのファッションショー/スパイ扱いで危機一髪/「水になれ」は役に立ったか/涙が涸れれば静かになる/逃れる理由、残る理由/勇気のない人間が爆弾を作る

第5章 曖昧さゆえに、失敗は運命づけられていた 
香港の冬はまだ燃えていない/消去された記憶/たいまつは継承される/風雨もなく晴れもなく

第6章 みんなが生きてさえいれば、それで十分だ 
剣を振るい、盟約を絶つ/引き金を引く勇気/押収された爆発物/ロマン主義の代償/香港の「法治」への幻想/香港に欠けているもの

第7章 父親には「戦車にひき殺されたいのか」と言われたけど
物資調達グループに参加/三万三千香港ドルを手渡された日/こんな娘を産んだ覚えはない/「暴徒」たちのメッセージ/中国に帰りたい母親/恋は風塵の如く/物資組を再び始動させる

第8章 不満を発散する道が封鎖されたとき、爆発する土壌が形成される 
次の「魚蛋革命」を渇望する日々/立法会八階の民建聯オフィス/レンガを投げるのなら前にこい!/危険なリクルート活動/致命的な戦略のミス/自分の過大評価と、敵へ過小評価/拳銃はどこにあるのか/警察による自作自演説をめぐって/もう何も動かせないよ

第9章 なかったふりをすることと、本当に何もなかったこととは違う 
排水溝に逃げ込み、一人戦う道を進む/馬鹿野郎、なんであたしの肩を殴ったんだい?/台湾式のプロセス/暴動鎮圧隊にペンキ卵を投げる/階下にイヌがいる/勇武派はマニキュアを塗ってはいけないのか/忘れっぽい香港人

第10章 僕は少数派になることができてうれしいですよ 
ヘラジカの沈黙/必要なのは武力/麻袋襲撃を決行/大棠山の都市伝説/可能性A、可能性B

解説

 

著者紹介

楊威利修(やんうぇんりー・しゅう)

英国統治時代の香港に生まれる。中産階級の家庭に育ち、学校卒業後はスラッシャー(仕事や職種を複数持つ人)として生計を立てる。雨傘運動失敗ののち、汎民主派支持や「民主中國建設」の観念から脱却。2019年の「逃亡犯条例」改正反対運動では、抗議闘争者のために友人らと後方支援活動をおこなう。その後香港を離れ、海外に逃亡した勇武派への支援・協力を続けている。

訳者:勇松(ゆうしょう)

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