草思社のblog

ノンフィクション書籍を中心とする出版社・草思社のブログ。

失われた30年から脱却するためのカギがここに『「変化を嫌う人」を動かす 魅力的な提案が受け入れられない4つの理由』 ロレン・ノードグレン著 デイヴィッド・ションタル著

「変化を嫌う人」を動かす

――魅力的な提案が受け入れられない4つの理由

ロレン・ノードグレン 著 デイヴィッド・ションタル 著

船木謙一 監訳 川﨑千歳 訳

イノベーション、商品普及、業務刷新――。変革を進めるのが難しいのはなぜか

 キャッシュレス化や、教育や医療や勤務のリモート対応などを普及させ、世の中をより効率的で便利にしよう、生産性を上げようという動きが活発になっています。職場や学校、地域コミュニティでも、状況をよりよくするために、変化を促す取り組みが行われていることでしょう。とはいえ、取り入れるかどうかは個人や個別の企業・組織の自由ですから、変化はなかなか進みません。「変われないこと」が日本の問題として認識されて、はや数十年。何とかならないものでしょうか。
 しかしこの「変われない」という問題はべつに日本特有ではなく、程度の差こそあれ、どこにでも見られる普遍的なものです。本書はこの問題への対処法を実践的に解説したもの。心理学者と起業家というバックグラウンドを持つ2人の米国の経営学教授が著した、学術的にも裏打ちされた本です。
 「変化を嫌う人」に対し、多くの人は、利点をくわしく説明したり、金銭的なインセンティブを増加させたりして動かそうとします。しかし本書によると、多くの場合、これには効果がありません。それよりも変化を取り入れる障害となっている「抵抗」を取り除く方がずっと効果がある、といいます。

◆利点の説明、インセンティブ設定では変化は促せない。「抵抗」の解消こそがカギ

 本書が取り上げている事例を紹介しましょう。入院中の子どもに手紙を送る活動への参加者を増やしたいとします。どうすればいいでしょうか。この事例では金銭的見返りと、子どもたちからの感謝の言葉を伝えることの効果が検証されましたが、効果なし。代わりに手紙の文例を示したところ、参加者は大幅に増えました。人々は、不適切な内容の手紙を書いてしまうことへの不安から、参加を躊躇していたのでした。手紙で、同情を寄せるべきか、それとも励ますべきか、といった迷いです。文例を示すことで、参加への「抵抗」となっていた不安が解消され、手紙を書いてくれる人が大幅に増えたのです。
 投票を促す電話キャンペーンでも「抵抗」の解消で大幅に効果が上昇した事例が紹介されています。選挙の意義を伝えるだけでなく、当日にどんな交通手段で投票所に行くかを訊ねて話し合うようにしたのです。投票所へ行く方法が明確になったことで、投票率上昇の効果は2倍になりました。交通手段に関する茫漠感が、投票へ行く「抵抗」となっていたのでした。
 このように「抵抗」の解消は非常に効果的ですが、行動を躊躇する本人さえ何が「抵抗」となっているかを自覚していないことが多いので、「抵抗」を探すことも、ましてや解消法を考えつくことも、何も知らなければ非常に困難です。本書の著者は変化への「抵抗」を「惰性」「労力」「感情」「心理的反発」の4つに分類。それぞれの「抵抗」の発見の仕方や対処法を、多くの事例を示しながら体系的に紹介していきます。非常に実践的に「変化を嫌う人」へのアプローチが示されているのです。
 日本が失われた30年と言われる停滞から脱却するためにも、多くの方に読んでいただきたい1冊です。

(担当/久保田)

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目次

1.魅力的なアイデアが成功しない理由
弾丸があれほどよく飛ぶのはなぜか
魅力の増大ばかりに注力する人々
買いたいのに「購入」ボタンを押せない顧客
新しいアイデアの受け入れを阻む4つの「抵抗」
イノベーションを解剖する
読んでいただきたい方々
倫理規範についての注意事項
誠実な戦略か、人を惑わせるような戦略か/意図は何か

2.魅力アピールに専念するのはやめよう
月平均132台の車を売る自動車販売員
自動車ディーラーのうんざりさせられる売り込み
進まないのは「燃料」が足りないせいと思い込む
人を動かす「燃料」には2つのタイプがある
「促進型燃料」とは何か
「回避性燃料」とは何か
人の心を支配するのは「燃料」より「抵抗」
「燃料」に頼る施策は高くつく
「燃料」となるメリットは誰にでも分かる
「燃料」が「抵抗」を増幅し事態悪化を招くことも
私たちを「燃料」思考にさせる脳の癖

3.「惰性」
人は変化より不変を、未知より既知を好む
見なれたものを好む「単純接触効果」
人は知っている商品を購入する
人生観や政治的規範より強い「既知」の力
「惰性」はいかにしてイノベーションを損ねるのか

4.「惰性」を克服する
よく知らないものを知っているものに変える
新しいアイデアに慣らすことで「抵抗」を和らげる
戦略その1:何度も繰り返す
戦略その2:小さく始める
戦略その3:伝達者をオーディエンスに似せる
戦略その4:提案を典型的なものに似せる
戦略その5:喩え(アナロジー)を使う
選択肢の提示に相対性を取り入れる
戦略その1:極端な選択肢を追加する
極端な選択肢の実例──契約期間と教員採用
戦略その2:劣った選択肢に光を当てる
劣った選択肢戦略とおとり選択肢のでっちあげ
カエルも劣った選択肢に影響を受ける
相対性に関する失敗はいつ起きるか
「慣性」を克服する方法のまとめ
イデアに慣らすための戦術/相対化するための戦術

5.「労力」
カニも人も最小の労力で最大の成果を得たがる
最小努力の法則はいたるところに見られる
最小努力の法則は友人関係にも認知にも影響
「高い価値」より「少ない労力」が優先される
「労力」の計算は少しのことで大きく変わる
私たちは「労力」の影響を軽視している
入学志願者を増やすためにシカゴ大学がしたこと
コラム│「労力」に価値が見出される状況

6.「労力」を克服する
「労力」を減らして人々を救った事例
「労力」の2つの側面──「苦労」「茫漠感」
ロードマップの作成で「茫漠感」を制した事例
イノベーション」をロードマップに落とし込む
その行動を取るべきタイミングを設定する
行動の簡素化で「苦労」を減少させる
コラム│人々が作る近道「けもの道」
必ず知っておくべき2つの簡素化テクニック
「ノー」と言いにくくする/デフォルトにする
コラム│UXデザイナーのように思考する
「労力」を克服する方法のまとめ
ロードマップを作成する戦術/行動を簡素化する戦術

7.「感情」
「ケーキを焼いた感じがしない」という問題
「感情面の抵抗」──出会い系アプリの事例
コラム│感情とは何か
「ジョブ理論」に基づいて感情について考える
ペット持ち込み不可のDVシェルターの事例
機能面の価値が「感情面の抵抗」を招いた事例
リーダーが優秀な部下を重用しない理由
製品情報収集のセルフサービス化の弊害

8.「感情」を克服する─価
探していないものは目に入らない
「感情面の抵抗」の発見は市場を拡大させる
「感情面の抵抗」が明瞭に表れることは少ない
「なぜ」にフォーカスする
コラム│理由を聞き出す質問の方法
行動観察者になれば「本当の理由」に近づける
アメリカン・エキスプレスの若年層顧客獲得戦略
コラム│行動観察者のマインドセット
外部の人を引き入れて「感情面の抵抗」を予測
顧客を従業員として雇う
コラム│「感情面の抵抗」に効く一般的な治療薬
「感情面の抵抗」を克服する方法のまとめ
「なぜ」にフォーカスする/行動観察者になる/外部の人を引き入れる

9.「心理的反発」
変化させられることに対する「抵抗」
自由が奪われると感じると「心理的反発」は起きる
相手の誤りを示す証拠が強力なほど態度が硬化
説得されていると感じるだけで「抵抗」は強まる
心理的反発」が発生する要件は何か
イデアが基本的な信念を脅かす場合/変わることへのプレッシャーを
感じる場合/オーディエンスがのけ者にされていた場合

10.「心理的反発」を克服する
変化を無理強いするのはやめよう
相手が自分を説得するのを助ける「自己説得」
メモ・カードの力──自分の目標を書き出す
偏見を弱める──ディープ・キャンバシング
「イエス」を引き出す質問をする
朝鮮戦争で米兵捕虜が受けた洗脳の仕組み
コラム│決定事項を「実験」と捉える
トップダウンではなく全員参加だとうまくいく
利害関係者たちとともに作る──コ・デザイン
自己説得の3つのルール
ルール1:自己説得は目安箱方式では無理/ルール2:メンバーに
コミットメントを発表させる/ルール3:参加を実質を伴ったものにする
心理的反発」の大きさを測る問い
心理的反発」を和らげる2つのテクニック
「イエス」を引き出す質問をする/コ・デザイン

11.3つの事例研究
「抵抗レポート」を使って分析し戦術を考察
研究事例その1:石油から起業への転換を成功させたドバイ
ドバイ未来財団/「抵抗」を克服する/失敗への恐怖を克服する/成果
研究事例その2:短期間での大麻合法化
「抵抗」を克服する/成果
事例研究その3:住宅購入時のハンデをなくす
もともとは「燃料」主体だったフライホームズ/成り行き任せの行動観察調査/「抵抗」/ポイント付与から顧客の「進歩」にピボットする/「抵抗」を克服する/成果

謝辞
監訳者解説
原注

 

著者紹介

ロレン・ノードグレン(Loran Nordgren)

ケロッグ経営大学院の経営学教授。新しいアイデアの採用を促す作用や妨げる作用を持つさまざまな心理的力について探求する研究や教育に携わる。研究者として、また教育者として数々の賞を獲得。世界中の企業とともにさまざまな行動変革の課題に取り組んできた。そのプロセスをロレンは「行動デザイン」と呼んでいる。

デイヴィッド・ションタル(David Schonthal)

イノベーションアントレプレナーシップを担当するノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院教授。数々の賞を獲得。学外では、デザイン、イノベーションコンサルティングベンチャー・キャピタルの分野で活動。これまでに世界各地で生み出した新製品と立ち上げた新サービスは200を超える。

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いよいよ始まるマスク無し生活に向け、今こそ顔の筋肉の鍛え時!『顔の老化は咀嚼で止められる』内田佳代 著

顔の老化は咀嚼(そしゃく)で止められる

内田佳代 著

■自信をもってマスクを外せますか?

 いよいよ始まるマスク無しの生活に向け、どうしたら自分の顔をもっときれいに見せられるか、日に日に関心が高まってきています。中でも「マスク老化」という言葉もあるように、とくに「老け感」があらわれやすい口元を、人前にさらすことに心理的な抵抗を感じる人は多いと言われています。  
 でも、慌ててやみくもに顔のトレーニングやエステを始めると、かえってシワが増えたり、表情がおかしくなったり、逆効果になることもあるので注意が必要です。
 本書は、歯科衛生士であり、表情筋トレーナーでもある著者が、今すぐにでもほうれい線や頬のたるみ、二重アゴなど「顔の老化」問題を何とかしたい、でもお金も時間もあまりかけられないという方々に向け、最も安全で経済的な顔の老化予防法を提案するものです。

■1日3度の食事を、しっかり嚙んで食べるだけで顔は引き締まる!

 加齢とともに顔がたるんで下がって見えるのは、実は顔の筋肉の衰えが大きな原因です。顔の筋肉も体の筋肉と同じで、鍛えなければ衰え、たるんでいくからです。
 つまり、顔の老化を止めるためには、何よりも顔の筋肉を動かしていくことが最も重要というわけです。そして、著者によると、顔の筋肉を鍛える一番効率のよい方法が、毎日の食事でしっかり咀嚼を行うことです。
 口元を動かすと顔の筋肉の8割が動くと言われています。私たちが毎日の動作でもっとも口元を動かすのが、食べるときです。おいしいものを食べながら、顔の筋トレもできる。そんな夢のような一石二鳥ができたら、食事の時間ももっと楽しくなっていきませんか?
 そのうえで、食べるとき以外の普段の生活から口元を動かすことを意識していけば無理なく顔の筋肉を効率的に鍛えていくことができるでしょう。
 本書では、効果的な咀嚼の方法を中心に、気軽に実践できる顔の筋肉を鍛える様々な方法を多数紹介します。
 毎日少しの工夫を続けていくことで、習慣化し、やがて顔や体にも素敵な変化が訪れるはずです。ぜひ多くの方に読んでいただければと思います。

(担当/吉田)

目次より
1章 「なんか老けてきた……」と感じたら
2章  よく嚙んで食べる、毎日の食事が最強の顔筋トレーニングになる
3章  しっかり嚙む・声を出して歌う・積極的におしゃべりする
   ――毎日の生活の中で顔の筋肉は鍛えられる 
4章  笑顔エクササイズでより表情豊かに、美しくなる
5章 「老け感」が気になる部分別、鍛え方
6章  日々の積み重ねが、未来のあなたの顔をつくる

 

著者紹介

内田佳代(うちだ・かよ)

歯科衛生士・表情筋トレーナー・日本抗加齢医学会認定抗加齢指導士。東京医科歯科大学歯学部附属歯科衛生士学校卒。早稲田大学大学院創造理工学研究科修了。経営工学修士。専門は口の中と外からのマッサージ法。歯周病専門医にて研修を受けた後、一般歯科・審美歯科勤務。フリーランスとして活動を始め、以後保健所、都立病院、一般歯科など複数のクリニックと契約。現在は予防・審美歯科を中心に都内のクリニックにて活動中。「嚙むこと」を意識させる、歯科衛生士ならではの表情筋エクササイズ、口元からの美を提案し、全国各地で講演・セミナー開催。ミスユニバース地方大会セミナー担当。

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その力は、どんな道路よりも、どんなテクノロジーよりも、どんな政治指導者よりも、私たちの文明を形づくってきた――。「川の流れ」によって規定されてきた人類の歩みを振り返る文明論!『川と人類の文明史』ローレンス・C・スミス 著 藤崎百合 訳

川と人類の文明史

ローレンス・C・スミス 著 藤崎百合 訳

「はじめての雨が降ったときに、世界のあり方は永遠に変わった」。
 この印象的な一文ではじまる本書の原題は“Rivers of Power”で、文字どおり河川が私たちの暮らしに及ぼしてきた力(影響力)について、歴史をさかのぼって多面的に読み解く一冊となっています。著名な環境地理学者である著者は、古代文明の勃興と巨大河川との関係から現代のリバーフロント開発にいたるまで、河川が私たちの暮らしにどのような影響を与えてきたのか、そしてそれは今日どのような状況になっているのかについて、多彩なエピソードを交えながら描いています。
 人類にとって地上でもっとも重要な資源である「水」の供給源として河川はきわめて重要なわけですが、河川がはたす役割はそれにとどまりません。時に荒れ狂い氾濫する河川を制御するために人類の知識は深まり、それにともなって社会構造も変化し、やがて巨大な権力が生まれました。時には主要な交通網として、また場所によっては敵と味方を分かつ境界線としての役割もはたしてきましたし、古代から現代にいたるまで世界の主要な都市の成り立ちを規定しているのは「川の流れ」なのだということは、今日の世界の大都市もそのほとんどが大きな河川沿いにあるという事実からもわかると思います。
「橋」「船」「水車」「ダム」「運河」……といった人類に巨大な便益をもたらした発明もまた、大いなる河川の力を制御し、利用しようとする試みの中から生まれてきました。その意味で本書は、人類が創意工夫によってなしとげてきた輝かしい偉業をめぐる物語ともいえるのですが、一方で現在の世界が抱えるさまざまな問題(格差、環境汚染など)も各地の河川の状況に注目することではっきり見えてきます。世界の河川の在りようから人類の過去・現在・未来を読み解くユニークな文明論として、ぜひ目を通していただきたい一冊です。

(担当/碇)

 

目次

第1章 川と文明
ナイル川の氾濫を予測/治世者たちの権力の源泉/「川の間の土地」に生まれた最古の都市/チグリス・ユーフラテスの方舟/サラスヴァティー川の消滅/大禹の帰還/「水利社会」がもたらしたもの/知識、それはハピ神の乳房から始まった/「水の管理」を定めたハンムラビ法典/川の所有権をめぐる歴史/水車の力/新世界の発展と川の役割/ジョージ・ワシントンの着眼点/アメリカの運命を決めた土地取引

第2章 国境の川
移民の死因でもっとも多い「溺死」/青い境界線/川を国境にするメリット/国の大きさと形/「水戦争」の21世紀/マンデラはなぜ隣国を襲撃したのか/「ウォータータワー」がもたらす支配力/アメリカ司法長官ハーモンの過ち/越境河川を共同管理するためのルール/メコン川をめぐる緊張

第3章 戦争の話
イスラム国の支配流域/あの川を越えて/分断の大きな代償/「南軍のジブラルタル」攻防戦/中国の「屈辱の世紀」/金属の川/イギリス空軍のダム爆破計画/独ソ戦の趨勢を決めた川/闘牛士のマント/ベトナムでの「牛乳配達」/メコンデルタ戦略的価値

第4章 破壊と復興
ハリケーンの爪痕/大洪水の後に起こること/アメリカの政治地図を変えた洪水
抗日に利用された「中国の悲しみ」/黄河決壊から生まれた共産中国/アメリカ社会を変えた大洪水

第5章 巨大プロジェクト
「大エチオピアルネサンスダム(GERD)」計画の衝撃/大規模ダム建設の20世紀/橋が紡いできた歴史/人工の川/ロサンゼルスに水を引いたアイルランド人技師/水不足に苦しむ40億人/インドが挑む河川連結プロジェクト/大いなる取引

第6章 豚骨スープ
問題のある水/アメリカの環境保護、半世紀の曲折/中国の河長制/拡大するデッドゾーン/河川に流れ込むさまざまな医薬品/グリーンランドリビエラ/ピーク・ウォーター

第7章 新たな挑戦
絶滅危惧種の回帰/ダム撤去のメリット/土砂への渇望/ダムの被害を軽減する方策/未来の水車/大きな中国の小さな水力発電/繊細な味わいの雷魚の煮込み/最先端のサケ/侵入種対策としての養殖業/河川利用におけるイノベーションの萌芽/危険な大都市の新たな洪水対策/暗い砂漠のハイウェイと、その先にあるホテル・カリフォルニア

第8章 川とビッグデータ
河川データの爆発的増加/川の目的と存在理由/「たゆまぬ努力」と「炎と氷」の対決/地球の記録者たち/3Dメガネをかけよう/ビッグデータと世界の水系の出会い/モデルの力

第9章 再発見される川
地球上で最高の釣りの穴場/加速する人類の「自然離れ」/自然と脳の関係/都市部の河川に関するトレンド/激変するニューヨークの河川沿岸/川を起点とする世界的な都市再生/多数派となった都市居住者/川が人類にもたらしたもの

 

著者紹介

ローレンス・C・スミス(Laurence C. Smith)

ブラウン大学のジョン・アトウォーター・アンド・ダイアナ・ネルソン環境学教授、および地球・環境・惑星科学教授。初の著書『2050年の世界地図』(邦訳はNHK出版より刊行)は、ウォルター・P・キスラー図書賞を受賞し、2012年の『ネイチャー』誌エディターズピックにも選ばれた。ダボス世界経済フォーラムでの招待基調講演をはじめ、講演活動も頻繁に行なっている。

訳者紹介

藤崎百合(ふじさき・ゆり)

高知県生まれ。名古屋大学の理学系研究科にて博士課程単位取得退学。訳書に『砂と人類』『すごく科学的』『ハリウッド映画に学ぶ「死」の科学』(いずれも草思社)、『ウイルスVSヒト』(文響社、共訳)、『ディープラーニング革命』(ニュートンプレス)、『生体分子の統計力学入門』(共立出版、共訳)などがある。

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上司がAIになったらどうする?!『AIが職場にやってきた 機械まかせにならないための9つのルール』ケビン・ルース著 田沢恭子訳

AIが職場にやってきた

――機械まかせにならないための9つのルール

ケビン・ルース 著 田沢恭子 訳

労働の機械化が現実のものになりつつある現在。ある意味で、リモートワーカーはすでに半ば自動化されているといえる現在、AIが導入されたリアルな未来を見据え、企業への取材なども通して、具体的な提言をするのが本書です。

「人間の脅威は、AIではなく機械化した人間の心である」というのが本書の主張です。
そのため、半端な自動化こそ、私たちが真に恐れるべきものだといいます。なぜなら雇用主が人間を機械で置き換えることを可能にする一方で、別の場所で新たな雇用を創出できる大幅な生産性向上をもたらすことがないからです。そうだとすると、直観に反するようですが、人間がロボットに仕事を奪われることが主たる懸案ならば、ロボットの能力を下げるのではなく上げることを求めるべきなのです。
そのため、AIを恐れるのでもなく、また人間が「機械化」するのでもない、人間らしさを失わずに働ける未来を描くことが重要なのです。そのことを表した、著者の言葉を引用して締めくくりたいと思います。

「ロボットが世界を破滅させるなら、それは私たち自身が生み出した結果なのだ。テクノロジーによる革命のおかげで世界がもっと公平で幸福で豊かな場所になるのなら、それは私たちが果てしなく理屈をこねたり議論を続けたりするのをやめて、自らの運命を制し、未来に備えることができたからに違いない。」

著者紹介

ケビン・ルース(Kevin Roose)

ニューヨーク・タイムズ』紙のテクノロジー担当コラムニスト。ポッドキャスト番組『ラビットホール』でホストを務め、『ザ・デイリー』にもレギュラーゲストとして出演している。自動化とAI、ソーシャルメディア、偽情報とサイバーセキュリティー、デジタルウェルネスなどについて執筆とメディア出演により発信している。『ニューヨーク』誌の記者、テクノロジーを扱うTVドキュメンタリーシリーズ『リアル・フューチャー』の共同エグゼクティブプロデューサーの経験もある。2冊の著書「Young Money」と「The UnlikelyDisciple」が『ニューヨーク・タイムズ』のベストセラーリスト入りしている。カリフォルニア州オークランド在住。

訳者紹介

田沢恭子(たざわ・きょうこ)

翻訳家。お茶の水女子大学大学院人文科学研究科英文学専攻修士課程修了。翻訳書に『アルゴリズム思考術』(早川書房)、『戦争がつくった現代の食卓』、『ルーズな文化とタイトな文化』(以上、白揚社)など。

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ヒトラーはなぜ北欧に「総統都市」を置こうとしたのか。『ナチスの北欧幻想 知られざるもう一つの第三帝国都市』デスピナ・ストラティガコス著 川岸史訳

ナチスの北欧幻想

――知られざるもう一つの第三帝国都市

デスピナ・ストラティガコス 著 川岸史 訳

1934年4月12日、ヒトラーノルウェーフィヨルドを視察に訪れました。その時、彼の眼には、自らのユートピア都市が重なって見えていたのかもしれません。

ナチスにとって、ノルウェー人はそのナチス的世界観の人種ヒエラルキーの頂点にある存在でした。そのため、ナチスノルウェーをほかの占領地のように一方的に蹂躙するのではなく、「同胞」として自ら第三帝国の一員となるように仕向けるという、異例の対応が行われていました。さらには、ヒトラーはこの地を「もう一つの第三帝国の重要都市に改造する」という野望を抱き、そのための建築・都市計画の構想を計画していました。その計画を図面等の資料を詳細に読み解き分析したのが本書です。

ナチスから見たノルウェー建築との連続性

まず、ナチスにおいて、ノルウェーの建築とドイツの建築がどういう関係にあると考えられていたのでしょうか。ナチスは、ノルウェーの農村建築と、ドイツのそれが似ていると主張し、その理由が「祖先の土地の風景を集団的な人種的記憶として持っている」からだと主張しています。つまり、建築が似ていることが、同じルーツの血を持つことと同義になっているのです。このような理論建てによって、建築さえも、ドイツがノルウェーを占領する「正当性」の理由の一つになっていたのです。

◆北欧を第三帝国にするための建築計画

ここから具体的な計画の分析に入ります。ノルウェー第三帝国にするために構想された代表的な建造物として、「スーパーハイウェイ(高速道路)」「レーベンスボルン」「兵士の家」「庁舎」、そしてベルリンやミュンヘンに並ぶ「総統都市」として計画された「ニュー・トロンハイム」があり、これらについての分析を試みます。

具体例を見てみると、ドイツとノルウェーを物理的にも精神的にも結ぶ目的で構想された「スーパーハイウェイ」ですが、他の占領国では、高速道路は即物的な機能を優先して建設されていたのですが、これに対しノルウェーでは、「その美観をうまく取り込んだように設計せよ」というお達しがありました。その「美」とは、ナチスの美学に合うかどうかが重要であり、ノルウェーの自然をそのまま残すということとは少し異なっていましたが、それでもこれ1つとっても、ナチスにとつてノルウェーがいかに他の占領国と違い、かつ重要なものであるのかがうかがえます。

◆ドイツ、ノルウェーそれぞれの人々

また、ヒトラーをはじめ、シュペーアヒムラーゲッペルスといった要人たちは、計画に対してどのような思惑を抱いていたのかという、内部の権力闘争についても細かく触れられています。一方、ナチスの様々な計画に対して、現地ノルウェーの人々、なかでも建築家はどのような態度だったのでしょうか。ノルウェー現地の熟練建築家であったスヴェレ・ペデルセンについて多くの記述がなされていますが、シュペーアたちさえもドイツ人の案より優れていると認めざるを得なかった彼が、どのようにふるまっていたのかは要注目です。

ナチスの幻想は消え去ったのか?

著者は最後に、その計画が現在に残したものとは何かと問いかけます。というのも、一部のインフラはそのまま残り、現在でも利用されているからです。ナチスの理想のためにつくられた都市は、いま何らかの影響を与えているのか、否か。建造物の形態と政治・思想の関係を考えさせる、圧倒的な力作です。

目次

1 北欧を美化する過程:ナチス占領下のノルウェーに関するドイツの報道記録

2 新秩序のノルウェー:スーパーハイウェイ(高速道路)からスーパーベビー(優等人種の子供たち)までのインフラ構築

3 ドイツ人気質の島々:占領下のノルウェーにおける兵士の家

4 ノルウェーの町のナチ化:戦時下の都市生活と環境の形成

5 フィヨルドに築くゲルマン都市:ヒトラーのニュー・トロンハイム計画

著者紹介

デスピナ・ストラティガコス(Despina Stratigakos)

ニューヨーク州立大学バッファロー校建築設計学部教授。主な著書に、A Women's Berlin: Building the Modern City (University of Minnesota Press), Where Are the Women Architects? (Princeton University Press)、『ヒトラーの家』(作品社) がある。

訳者紹介

川岸史(かわぎし・ふみ)
翻訳家。立教大学ドイツ文学科卒。『世界で一番美しい馬の図鑑』(エクスナレッジ)で2017年度JRA賞馬事文化賞受賞。主な訳書に『イマジン ジョン&ヨーコ』(ヤマハミュージックメディア)『アント・ワールド アリの世界』(ニュートンプレス)『建築する動物』『夜行性動物写真集』(ともにスペースシャワーネットワーク)『人生最後の食事』(シンコーミュージック・エンタテイメント)などがある。映像翻訳、コラム執筆も行う。

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さまざまな文化的背景を背負う日本各地のシャーマンを訪ね歩き、貴重な肉声を多数採録したユニークな記録!『日本最後のシャーマンたち』ミュリエル・ジョリヴェ著 鳥取絹子訳

日本最後のシャーマンたち

ミュリエル・ジョリヴェ 著 鳥取絹子

 本書(原題Les Dernières Chamanes du Japon)の著者ミュリエル・ジョリヴェさんは日本に住んですでに半世紀、長年にわたって大学で教鞭をとってきましたが、来日以来ずっと、日本人が親しい関係になるととてもカジュアルに「霊感はあるほうですか?」といった質問を投げかけてくることが不思議だったそうです。また教えていた大学の授業でも、超自然現象の話題になると学生たちの会話が思いのほか活発になることに気づきました。
 そういう経験をするうちに、著者は「日本人の死生観においては、霊がきわめて身近な存在なのだ」ということがわかってきたといいます。ならば、実際に「見えない世界」とつながりながら生きる人たちに会って、話を聞いてみたい――。この本は、そういう好奇心からはじまった長い探求の成果ともいうべき一冊で、欧米の知識人が、北海道から沖縄まで時代の波に押されて消えつつある「シャーマンたち」を訪ね歩いた貴重な記録です。明治の日本にやってきたラフカディオ・ハーンは日本各地に残されている多彩な幽霊話のなかに日本人独特の感受性を見出しましたが、本書も日本という国に対する温かな視点も含め、同じような枠組みの本といえるかもしれません。
 本書では、「シャーマン」という言葉をかなり広い意味でとらえていて、恐山のイタコや沖縄のユタ、ノロといった、よく知られた伝統的な存在だけでなく、超感覚的な知覚能力があるとされている人すべてを「シャーマン」として扱っています。たとえばタロット占いや催眠療法チャネラー……といったことをおこなっている人たちも、そのなかに含まれます。
 著者はフェアに彼女たちの言葉を紹介し、そこに自身の率直な考察を加えています。ベースとなっているのは、「訪ねてくる人々の心を楽にする」という点では伝統的なシャーマンも彼女たちも同じことをしているのだという考え方で、この立場に立つことによって本書はきわめて懐の深い文化論になっているようにも思われます。文明の黎明期からずっと、私たちは「見えない世界」との媒介者を必要としてきたわけですが、伝統的なシャーマンたちが姿を消しつつあるなかでも、生きることに苦悩が付きまとうかぎり、そして私たちが「この世を去る確率」が百パーセントであるかぎり、シャーマン的なるものの必要性が失われることはなさそうに思えます。その意味で本書は、生きることの不思議さに気づかせてくれる一冊であるといえそうです。

 

〔本書より〕
 私はジャーナリストのステファン・アリックスの視点に全面的に賛同する。シャーマンの調査で世界を飛びまわったあとで彼がたどり着いた結論は、霊能者たちは従来の方法では得られない方法で情報を得ているということだった。彼はまた、自分は分析的な脳で話を聞いていたが、しかし、彼らが言ったことで自分が変えられたとも言っている。
「シャーマンの問題は、一つの真実がないということだが、しかしそれぞれが体験した経験があり、そこからそれぞれ自身が情報を引き出している……。結局のところ、私は何一つ確信していない……量子力学を例にするとよくわかるが、確実とされていたのは、本当は、はっきりしない仮説だったということだ。(……)私の仕事は、その世界にどっぷり浸っている人たちの現実をできるだけ忠実に書き写すことだ」
 これがまさに私のやってきたことだった。

(担当/碇)

 

著者紹介

ミュリエル・ジョリヴェ

ベルギー生まれの日本学者、1973年から日本在住。早稲田大学東京大学社会学を勉強、東洋学博士。上智大学国学部フランス語学科の教授を34年間務めたあと、2017年から名誉教授。日本社会に関する著書多数。うち邦訳は『子供不足に悩む国、ニッポン』(大和書房)、『ニッポンの男たち』(筑摩書房)、日本向け書き下ろしに『フランス新・男と女』(平凡社新書)、『移民と現代フランス――フランスは「住めば都」か』(集英社新書)などがある。

訳者紹介

鳥取絹子(とっとり・きぬこ)

翻訳家、ジャーナリスト。主な著書に『「星の王子さま」隠された物語』(ベストセラーズ)など。訳書に『崩壊学』『感染症の虚像と実像』(以上、草思社)、『私はガス室の「特殊任務」をしていた』『ウクライナ現代史――独立後30年とロシア侵攻』(以上、河出書房新社)、『巨大化する現代アートビジネス』(紀伊國屋書店)、『地図で見るアメリカハンドブック』『地図で見る東南アジア』(以上、原書房)などがある。

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昔の日本映画はどのように残ってきたか。それはどこかに眠っている。『映画を追え フィルムコレクター歴訪の旅』山根貞男 著

映画を追え

山根貞男

 戦前の日本映画で残っているものは10パーセント以下、一説によると4パーセントぐらいだと言われている。小津安二郎監督の初期短編、溝口健二のサイレント期の作品、伊丹万作山中貞雄の名作と言われる時代劇もほとんど残っていない。貴重な文化遺産の喪失である。なぜかというと映画は娯楽であり、消費され捨てられてきた大衆商品だったからだ。
 アメリカでは映画を自国の大事な産業・文化と位置づけていたから、かなり組織的に残されている。フランスは有名なアンリ・ラングロワという映画狂の個人の頑張りでシネマ―テーク・フランセーズが多くの貴重な作品をコレクションしている。
 日本では可燃性フィルムということもあって実際に焼失したり(日活の二度の火事など)、フィルムを再利用して別の工業資源に使ったりした(化粧品など)。また契約上、上映期限が切れたフィルムはジャンクしなければならなかったし、第一に映画会社に貴重な知的所有物という意識がなかったから、多くの量産される娯楽作品の扱いはぞんざいで、廃棄することに誰も気に留める人はいなかったのだ。持っていても倉庫代もかかるし、税金もかかるから捨ててしまえということになった。その結果、映画史に名のみ残る天才山中貞雄監督の処女作で名作時代劇『抱寝の長脇差』(だきねのながどす)は永遠に失われてしまったのだ。
 この本は1988年に著者の友人のフィルムコレクター岡部純一さんという人が小津監督の初期のサイレント短編映画『突貫小僧』を9・5ミリのパテベビーのおもちゃフィルムで所有していることを知って(古道具屋から買ったらしい)、大々的に上映会を開き、古い日本映画発掘の機運を1990年代に大いに盛り上げたことから始まり、とくに日本国中のフィルムコレクターという映画愛にあふれた「オタク的」趣味の人びとを訪ね歩いた30年にわたる回想録であり、保存発掘の回顧である。
 実はこうした収集活動は従来、国立フィルムセンターが担ってきたし、「無声映画愛好会」のような趣味の会で行われていたが、このころ(20世紀末から21世紀初頭にかけて)小津映画の世界的な再評価ブームや日本の古典映画の世界的な評価の高まりと相まって日本映画発掘・探求ブームが起こっていた。そこに呼応して著者の活動は大いに評価され、各種映画祭や研究活動において、著者は第一人者と見なされる存在となっていった。一昨年、三省堂出版から刊行された『日本映画作品大事典』という本は戦前からのすべての作品を解説した事典で(存在しないものも含めて)、この監修者をつとめた著者は、その功績によって日本映画ペンクラブ賞を受賞している。
 この本のハイライトは「生駒の怪人」と言われた幻の映画コレクターのもとに朝日新聞記者や蓮實重彦さんなどと二十年ぐらいのあいだ何度も通い、その膨大なコレクションを発掘しようとした経緯である。そこには所蔵フィルムのリストや膨大なフィルム缶があり、いかにもありそうな雰囲気が漂っていた。マキノ正博の『浪人街』三部作も小津監督の『懺悔の刃』も伊藤大輔の『新判大岡政談』も何でもあるとリストは告げていた。これは結局「生駒の怪人」の死によってすべてが暗闇の中に消えてしまった。しかし著者は私が見たものは絶対嘘ではなかった。「それはどこかに眠っている」と確言している。
 じつにこれまで発掘された日本映画も、地方の素封家の蔵の中に隠されていたり、廃工場の倉庫に埋もれていたり、古道具屋のその他のがらくた的道具の中から見つかったという場合がほとんどなのだ。過去何百年、何千年と続いてきた日本文化の遺産はさまざまな形で残ってきたが、日本映画も社会の片隅で不思議な作用で残って来たとも言える。本質的に日本のある種オタク文化はすごいと気づかされるエピソードではないか。

(担当/木谷)

著者紹介

山根貞男(やまね・さだお)

1939年大阪生まれ。映画評論家。大阪外国語大学フランス語科卒。加藤泰マキノ雅弘など日本の大衆映画を評価。1986年以来キネマ旬報に日本映画時評を連載。2001年~2008年東海大学文学部文芸創作科教授。内外の映画祭の企画に携わる。2021年『日本映画作品大事典』(三省堂)を編集して、日本映画ペンクラブ賞受賞。著書・編書に『映画渡世』(マキノ雅弘著、山田宏一聞き書きちくま文庫)『増村保造 意志としてのエロス』(筑摩書房)『映画監督 深作欣二』(深作欣二と共著、ワイズ出版)『加藤泰、映画を語る』(安井喜雄と共編、ちくま文庫)『日本映画時評集成1~3』(国書刊行会)など。近著に『東映任俠映画120本斬り』(ちくま新書)など。

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