AIが職場にやってきた
――機械まかせにならないための9つのルール
ケビン・ルース 著 田沢恭子 訳
労働の機械化が現実のものになりつつある現在。ある意味で、リモートワーカーはすでに半ば自動化されているといえる現在、AIが導入されたリアルな未来を見据え、企業への取材なども通して、具体的な提言をするのが本書です。
「人間の脅威は、AIではなく機械化した人間の心である」というのが本書の主張です。
そのため、半端な自動化こそ、私たちが真に恐れるべきものだといいます。なぜなら雇用主が人間を機械で置き換えることを可能にする一方で、別の場所で新たな雇用を創出できる大幅な生産性向上をもたらすことがないからです。そうだとすると、直観に反するようですが、人間がロボットに仕事を奪われることが主たる懸案ならば、ロボットの能力を下げるのではなく上げることを求めるべきなのです。
そのため、AIを恐れるのでもなく、また人間が「機械化」するのでもない、人間らしさを失わずに働ける未来を描くことが重要なのです。そのことを表した、著者の言葉を引用して締めくくりたいと思います。
「ロボットが世界を破滅させるなら、それは私たち自身が生み出した結果なのだ。テクノロジーによる革命のおかげで世界がもっと公平で幸福で豊かな場所になるのなら、それは私たちが果てしなく理屈をこねたり議論を続けたりするのをやめて、自らの運命を制し、未来に備えることができたからに違いない。」
著者紹介
ケビン・ルース(Kevin Roose)
『ニューヨーク・タイムズ』紙のテクノロジー担当コラムニスト。ポッドキャスト番組『ラビットホール』でホストを務め、『ザ・デイリー』にもレギュラーゲストとして出演している。自動化とAI、ソーシャルメディア、偽情報とサイバーセキュリティー、デジタルウェルネスなどについて執筆とメディア出演により発信している。『ニューヨーク』誌の記者、テクノロジーを扱うTVドキュメンタリーシリーズ『リアル・フューチャー』の共同エグゼクティブプロデューサーの経験もある。2冊の著書「Young Money」と「The UnlikelyDisciple」が『ニューヨーク・タイムズ』のベストセラーリスト入りしている。カリフォルニア州オークランド在住。
訳者紹介
田沢恭子(たざわ・きょうこ)
翻訳家。お茶の水女子大学大学院人文科学研究科英文学専攻修士課程修了。翻訳書に『アルゴリズム思考術』(早川書房)、『戦争がつくった現代の食卓』、『ルーズな文化とタイトな文化』(以上、白揚社)など。
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