草思社のblog

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幕末史の舞台は、アメリカ、ヨーロッパにまで広がっていた!

グローバル幕末史  幕末日本人は世界をどう見ていたか

町田明広 著 

 幕末史といえば、「薩摩vs長州」「幕府vs薩長」「官軍vs会津」など、国内抗争にばかり目が向きがちですが、そもそも幕末とは、日本が開国し欧米列強の世界再編体系に飲み込まれた時代であり、欧米との関係性を無視してこの時代の全体像を知ることはできません。そこで本書では、以下の3つの観点から幕末史をグローバルに捉え直します。

◆1 幕府・薩摩・長州は欧米列強をどう見ていたか?

外国人排斥思想である「攘夷」を信奉したのは一部の過激派志士のみ、というのが通説ですが、著者は、「実は開国後もほとんどの武士は程度の差はあれ攘夷家だった」と指摘。幕府、薩摩、長州それぞれの「攘夷思想」がいかに誕生し、それが激動の時代の中でどういう変遷をたどったのかをつぶさに見ていきます。一般に開明派と思われている老中・阿部正弘や島津斉彬・久光らが秘めていた攘夷思想など、驚きの事実が満載です。

◆2 欧米列強との軍需貿易の実態

幕府が欧米列強と通商条約を締結し、横浜、長崎などを開港して以降、日本がどういう貿易をしていたのかは、あまり知られていません。

本書では、幕府・諸藩の力の源泉といえる軍需貿易にとくに注目。希少な貿易統計データを用いて、年度別に幕府・諸藩が軍艦や銃器をどの国からどの程度輸入していたかを明かします。また、貿易利益を独占しようとする幕府に対し、薩摩が密かにイギリスと独自の通商条約締結交渉を行っていた事実などに光を当てます。

◆3 欧米を舞台にした幕末抗争

日本は開国しても、日本人の海外渡航は国禁のままでした。幕府は1860年の遣米使節団を皮切りに、7度にわたり欧米に使節を派遣し、列強の国情を探索。一方、薩長は密航という手段で藩士を欧州に送り込み、列強の海軍調査や軍艦輸入交渉を行います。結果、欧州でも幕府と薩長の抗争が繰り広げられることに。

1863年、伊藤博文・井上馨ら長州の志士5名(長州ファイブ)がロンドンに密航し、その約1年半後、薩摩も19名からなる志士団(薩摩スチューデント)を極秘に渡英させます。犬猿の仲だった薩長が英国で急接近し、国内に先駆けて薩長同盟を締結、薩長合同でイギリス外務省と倒幕密談を行い、幕末史の行方に大きな影響を与えていた事実を明かします。

著者は幕末日本人の対外認識論が専門。幕末史を国際的視点から語る本は類書がなく、新たな切り口の歴史書を求めている読者に喜ばれる一冊となるでしょう。

(担当/貞島)

著者略歴 

町田明広(まちだ・あきひろ)

1962年長野県生まれ。上智大学文学部・慶應義塾大学文学部卒業。佛教大学文学研究科修士課程・同博士後期課程修了。博士(文学)。日本近現代史(明治維新史・対外認識論)研究者。明治維新史学会理事。神田外語大学専任講師。千葉商科大学・佛教大学非常勤講師。著書に『攘夷の幕末史』(講談社現代新書)、『島津久光=幕末政治の焦点』(講談社選書メチエ)、『幕末文久期の国家政略と薩摩藩――島津久光の皇政回復』(岩田書院)がある。

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