草思社のblog

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幸せな老い暮らしは、どうあるべきかーー。 『理想の老人ホームって、何だろう』

理想の老人ホームって、何だろう

―― 常識にとらわれない介護70か条

片山ます江 著

◆介護福祉界のパイオニア的経営者の問いかけ

 著者の片山ます江さんは、介護事業のパイオニアとして知られる女性起業家。専業主婦から30代後半で保育所運営を始め、続いて使われなくなった企業の保養施設を低コストで素早く介護施設に転用する独自の手法を編み出しました。
 日頃から「100人いれば100の杖」を信条に、お仕着せのサービスを嫌い、人間の尊厳を大事にした施設運営を推進し、そのアプローチは「伸こう会」方式と言われ、介護業界でも異彩を放っています。
 本書では、「老人ホームって何だろう」という問いを著者自らが立て、理想の老人ホーム、介護のあり方を問い直す形で、「空間づくり」「食事」「コミュニティとの関係」「家族との関係」「ホスピタリティ」「終末」「スタッフ」といった観点から「理想の介護70か条」としてまとめました。

◆これからの時代における介護と老人ホームのあり方

 「事務スペースはガラス張り」「ありがとうは悪魔のささやき」「食堂の椅子は人数よりも少なく」「『福祉バカ』になってはいけません」「人生経験の豊富な人が相手だという意識を」「いつまで働くかはその人が決めればいい」………。
 70の条件には、福祉の仕事に携わる人には「えっ」と思いそうな言葉や介護ビジネスの枠を超える大胆で斬新な提案が続きます。

理想の介護70か条――(1)「ふつうの暮らしぶり」を大切にしたい (2)介護の世界の常識を疑え (3)型にはまらず柔軟な発想で…(8)マニュアルは最低基準。縛られてはいけません (9)改善の手がかりはクレームにあり…(18)目に付きにくいバックヤードこそ整然と…(29)食事は定時であるべきなのでしょうか?…(35)ひとり合点な「よいこと」の押しつけに要注意…(40)「家族のような介護」は理想でしょうか?…(45)ホームで最期を、「地域死」という選択…(60)採用は経験よりも「一芸」を重視…(68)喜んでもらえる仕掛け、イベントを考え続ける (70)早期にISOの認証を取得したわけ

「福祉の世界なんてまったく知らなかったし、いまだに福祉のことがわからない」と語る”福祉の門外漢”ならではの人間中心の真摯なメッセージは、福祉に携わる人だけでなく、家族や自身の老い暮らしを考える上で必ずや参考になることでしょう。

(担当/三田)

本書の目次から
老人ホームって何だろう――「最高の必要悪」を届けたい
1章 「究極のサービス業」の奥深さを極める
2章「世界でいちばん素敵な老人ホーム」への70か条
3章 経営をゆるがせにしない
4章 理念を言葉に――組織拡大と継承のさなかで
5章 次へのステップ
あとがきに代えて

◆著者紹介

片山ます江(かたやま・ますえ)

社会福祉法人 伸こう福祉会 専務理事 
大阪府出身。1976年に認可外保育園「湘南キディセンター」を神奈川県藤沢市に開園。その後、老人ホーム「グラニー鎌倉」をオープンし、伸こう会㈱を設立。介護施設で初のISO9001を取得するなど常に先進的な取り組みを続ける。その後、伸こう会をベネッセコーポレーションへ売却し、その資金を元に、社会福祉法人伸こう福祉会を設立。2012年に米国の社会起業支援非営利組織アショカからシニアフェローとして選出されたほか、2014年にはダボス会議で知られるシュワブ財団から日本人として初めて"Social Entrepreneur of the Year 2014"に選ばれた。人生の始まりと最後の時間を有意義なものにするために、特別養護老人ホーム、グループホーム、デイサービス、有料老人ホーム、ショートスティなどの36の介護事業と8つの保育事業を運営(事業活動収入48.5億円、従業員923人)。

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