草思社のblog

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よく言われる「品性」「品格」はどうやって身に着けさせるのか 声に出して読みたい・こどもシリーズ こども論語 齋藤孝著/平井きわ絵

声に出して読みたい・こどもシリーズ

こども論語 ――故きを温ねて新しきを知る

齋藤孝 著 平井きわ 絵

 大相撲の暴力事件で横綱の「品格」とか「品性」とかが取りざたされている。しかし、「品性」とはどういうもので、どうやって身に着くものなのかということには、誰も明確には答えられない。これは現代日本人が教育において「品性」にあまり重きを置いてこなかった結果なのだ。
 齋藤孝氏は江戸時代から続いてきた寺子屋教育の中で「読み書きそろばん」以外に『論語』の素読があったことを常々強調してきた。小社刊『声に出して読みたい日本語』もその再評価の一貫であり、この本は多くの人に素読の効用を再認識させた。とくに『論語』は徳育を重要視している点で精神教育という面が強かった。一時これが封建的ということで現代教育の中では捨てられていた。この結果何が起こったかというと人心の荒廃であり、「品性」の欠如である。齋藤氏いうところの「魂の教育」ができていないのである。
 『こども論語』は「知的で教養ある生き方を身に着けさせる」ための教育絵本として作られている。小さいころから古典を読んで、名言や先人の教えに触れることで、魂の奥深いところから刺激を受け、人格が形成される。「知的で教養ある人生」というものが「強欲で、他人を押しのけてまで、金銭を求め、欲望を追求する人生」より、すぐれた価値であることを子供に教える必要がある。行きつくところまで行きついた「強欲な社会」に今こそ必要なのはこうした価値観ではないだろうか。「強欲」よりも「教養」「品性」のほうが得るのは難しいし、価値が高い――というのが本書の主張である。

(担当/木谷)

著者略歴

齋藤孝(さいとう・たかし)

1960年、静岡県生まれ。東京大学法学部卒業、同大学大学院教育学研究科博士課程を経て、現在、明治大学文学部教授。専攻は教育学、身体論、コミュニケーション技法。著書に『宮澤賢治という身体』(世織書房、宮沢賢治賞奨励賞)『身体感覚を取り戻す』(日本放送出版協会、新潮学芸賞)『声に出して読みたい日本語』(草思社、毎日出版文化賞特別賞)など多数。近著に『語彙力こそが教養である』(角川書店)『こども孫子の兵法』(日本図書センター)『世界の見方が変わる50の概念』(草思社)など。NHK・ETV「にほんごであそぼ」企画監修など、マスコミでも活躍中。

イラストレーター

平井きわ(ひらい・きわ)

女子美術大学卒業後、企業のキャラクターデザイナーとして勤務を経て、フリーランスで活動中。

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