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日常生活に役立つ哲学的思考法を、フランスの教科書を読んで鍛えよう!『フランスの高校生が学んでいる哲学の教科書』シャルル・ぺパン 著 永田千奈 訳

フランスの高校生が学んでいる哲学の教科書

シャルル・ぺパン 著 永田千奈 訳

古代ギリシャを起源とする西欧哲学は、中世を経て近代に至り、ヨーロッパ各国で花開いていきました。フランスではデカルト、ルソー、サルトルなどの哲学者が大きな影響力を持ち、1970年代にはポスト構造主義が隆盛を極めました。

現在においてもフランスの高校では哲学が必修、バカロレア(大学入学資格試験)では文系理系を問わず哲学の筆記試験が課されます。フランスのエリートにとって、哲学は不可欠な教養であると言えるでしょう。

「現実の複雑さを熟知し、現代世界に対する批判意識を働かせることのできる自律的精神を育てる」(「解説」より)ことがフランスの哲学教育の目標とされています。
ではフランスの高校生はどのように哲学を学んでいるのでしょうか。その答えを知るには、彼らの教科書を手に取ってみるに如くはありません。

本書は『フランスの高校生が学んでいる10人の哲学者』に続く、シリーズ第二弾。60人に及ぶ哲学者に言及しながら、「主体」「文化」「理性と現実」「政治」「道徳」といったテーマを解説するベストセラー教科書です。

著者は、哲学の教鞭をとる一方、教科書、参考書のほか、エッセイや小説を多数執筆。テレビやラジオ、映画にも出演し親しまれています。
本書を紐解くことによって、西欧文明のバックボーンを成す思想の一端が垣間見られることでしょう。是非ご一読ください。

(担当/渡邉)

 

【内容紹介】
日常生活に役立つ、哲学的思考法を鍛えよう。
フランスの人気哲学者が、
西欧哲学の真髄を明快に解説したベストセラー教科書。

ソクラテス、プラトン、アリストテレス、ホッブズ、デカルト、スピノザ、ルソー、カント、ヘーゲル、ニーチェ、フロイト、サルトルなど、60人に及ぶ哲学者に言及しながら、「主体」「文化」「理性と現実」「政治」「道徳」といったテーマを解き明かす。各哲学者の引用も多数紹介。
26項目もの「キーワード解説」も充実。

『フランスの高校生が学んでいる10人の哲学者』に続くシリーズ第二弾。
坂本尚志氏(『バカロレアの哲学』)による解説「フランスの高校生はどのように哲学を学んでいるのか?」を収録。

欧米のエリートにとって、哲学は不可欠な教養だ。
フランスの高校では哲学が必修、バカロレア(大学入学資格試験)では文系理系を問わず哲学の筆記試験が課される。
教養としての哲学を、フランスの教科書を読んで身に着けよう!

 

【目次】
はじめに

1.主体 「私」は私ひとりだけのものか、それとも他者との関係で定義されるものなのか
2.文化 文化とは自然なことか、それとも自然に反することか
3.理性と現実 理性は現実を捉えることができるのか、それとも現実は理性では捉えきれないものなのか
4.政治 政治は現実的であるべきか、理想を目指すべきか
5.道徳 道徳は現実に存在するのか、ただの幻想なのか

キーワード解説
絶対と相対/抽象と具象/現実態と可能態/分析と総括/原因と目的/偶発性、必然性、可能性/知ると信じる/本質的(エッセンシャル)と非本質的(アクシデンタル)/説明と理解/法的な権利と現実/形(形相)と素材(質料)/属、種、個人/理想と現実/同一、平等、差異/直観的と論証的/合法性と正当性/直接(媒介なし)と間接(媒介あり)/客観と主観/義務と強制/起源と根拠/論破と納得/類似と類比/原理と結果/理論と実践/超越的と内在的/普遍、全般、個人、個別

バカロレア試験対策 実践編

おわりに
訳者あとがき
解説「フランスの高校生はどのように哲学を学んでいるのか?」坂本尚志
哲学者索引

 

【本文「質問と回答」より】
「本当になりたいものは何か、どうすればわかるのか」

哲学者にこんな質問をしたら、内省や論理的な考察を推奨し、世間の喧騒から離れ、自身の内なる欲望に耳を傾けよという答えが返ってくると思っている人が多いのではないだろうか。

だが、それは誤解である。デカルト、ヘーゲル、アラン、サルトルなど何人もの哲学者、いや、かなりの数の哲学者がそれを知るには、行動を起こすこと、その選択が正しいか否かを知るにはまずひとつの道を選んで歩き出すしかないとしている。

なぜ行動が推奨されるのか。すぐに浮かぶ理由は、考察だけですべての問題を解決できるわけではないからである(デカルト風に言うなら、悟性は限定的なものだからということになる)。大学に行くか、専門学校に行くか、どちらを選ぶにしろ、人それぞれに理由はあるだろう。だが、「悟性」で想像しても限界はある。どちらの選択肢があなたの人生、その生き甲斐に直結するものかを断定することはできない。それでも、決めなくてはならない。知性ではなく、意志の力で「決断」するのだ。

アランは、デカルトが「行動の世界」と「形而上学的真理の世界」を区別していることを例にとり、「行動の秘訣は、行動を起こすことだ」と書いている。行動の世界において、私たちはその選択の意味や結果を確信することはできない。だが、疑念を抱きつつも行動する勇気、つまり、はっきりしない部分に一歩踏み出すことが重要なのだ。

だから、私としてはデカルトと同様、あなたにこう言いたい。自分が何を目指すべきか本当の意味で知ることは難しい。でも、何が正しいかわからなくても自分で選ぶことはできる。それがあなたの強みなのだ。

一方、それに取り組むことが、あなたにとって、人間的な能力、知性や感性、想像力を伸ばすことが可能になるような分野があるなら、それがあなたの適性だと言える。自分とその分野の相性がいいということだ。どんな出会いにも言えることだが(そしてまた、だからこそ出会いは美しいのだが)、人はあらかじめ、その出会いが自分の人生にどんな影響をおよぼすかを予想することはできない。そこに踏み込んでみないことには、それが「本当に自分がやりたいこと」に通じる道なのかを知ることができない。それでいいのだ。

最後にもうひとつ。「あなたが本当にやりたいこと」に少なくとも何らかの意味があるのかという問題だ。それをやり遂げるには、「本質」つまり天性が必要かもしれない。サルトルなら、「本質」には意味がないというだろう。あなたは「実存」であって、「本質」ではない。実存は本質に先行する。それなら、あなたが何を本当にやりたいと思おうがかまわない。あなたはあれにもこれにもなれるし、自分がこれからすることが「あなた」を定義する。

あなたの悩む気持ちもわかる。進路の選択を間違うかもしれない。もしかすると一年を無駄にしてしまうかもしれない。確かにそうだろう。でも、それがプラスになったかマイナスになったかは、死ぬまで判断することができない。人生は毎日いつだって軌道修正が可能なのだ。死ぬまでずっと。

 

著者紹介

シャルル・ぺパン(Charles Pépin)

1973年、パリ郊外のサン・クルー生まれ。パリ政治学院、HEC(高等商業学校)卒業。哲学の教鞭をとる一方、教科書、参考書のほか、エッセイや小説を多数執筆。映画館で哲学教室を開いたり、テレビやラジオ、映画に出演している。邦訳に『フランスの高校生が学んでいる10人の哲学者』『幸せな自信の育て方 フランスの高校生が熱狂する「自分を好きになる」授業』などがある。

訳者紹介

永田千奈(ながた ちな)
東京都生まれ。早稲田大学第一文学部フランス文学専修卒業。主な訳書にルソー『孤独な散歩者の夢想』、ペパン『フランスの高校生が学んでいる10人の哲学者』『考える人とおめでたい人はどちらが幸せか 世の中をより良く生きるための哲学入門』がある。

 

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