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物語と文体の力が伝える家康の生涯 『日本外史 徳川氏正記』頼山陽 著 木村岳雄 訳・解説

日本外史 徳川氏正記

頼山陽 著 木村岳雄 訳・解説

『日本外史』は、源平から徳川までの武家の興亡を、司馬遷の『史記』の紀伝体に倣って記述した歴史書です。本書は『日本外史』全二十二巻のうち、巻之十八から巻之二十二までに相当する「徳川氏正記」を扱っています。徳川氏の出自からその死後まで、家康の生涯を格調高い名文(書き下し文)に丁寧な解説・現代語訳を付しています。

頼山陽は江戸時代後期の漢学者にして詩人。二十一歳で安芸国(広島県)を出奔、自宅幽閉赦免ののち、京都で開塾。詩、書に才能を発揮しました。山陽二十三歳の時に初稿として書き上げられた『日本外史』は、その後二十三年をかけ推敲されて完成。死後評判を呼び、疾風怒濤の時代のベストセラーとなり、幕末の志士たちを奮起させることになりました。

『日本外史』の何が同時代の日本人の心を打ったのでしょうか。一つは訳・解説者の木村岳雄氏が師・西部邁氏から学んだという「historyとはhis storyである」という言葉に見出せます。『日本外史』に採用された史料は軍記物が中心で、史実に合致しない記述が散見されるのは確かですが、正確さ以上に同時代、そして後世の日本人が「天下人の家康」として語り継いできた物語の力がここには脈打っています。

そしてもう一つは木村氏が「引き締まり研ぎ澄まされた文体に、思わず声に出して読みたくなるような律動を帯び、しかもそこはかとなく清艶ささえ漂わす」と記す頼山陽の文章の持つ力です。

是非本書を紐解いて、当時の日本人を奮い立たせた活気の幾分かでも味わってください。

(担当/渡邉)

 

【内容紹介】

幕末の志士たちを奮起させた、
疾風怒濤の時代のベストセラー!

家康の生涯を格調高い名文と丁寧な解説・現代語訳で読む。

徳川氏の出自/家康の誕生/清洲同盟/三河一向一揆/姉川の戦い/三方ヶ原の戦い/長篠の戦い/武田家の滅亡/本能寺の変/神君伊賀越え/天正壬午の乱/羽黒の戦い/小牧長久手の戦い/小田原征伐/江戸入府/朝鮮出兵/秀吉、薨ず/天下の政務を執る/伏見城の戦い/小山評定/岐阜城の戦い/関ヶ原の戦い/家康、征夷大将軍に/大坂冬の陣/大坂夏の陣/秀頼の自殺/家康、薨る/徳川氏論賛 ほか

【「はじめに」より】
幕末から戦前にかけての日本人の精神史を語る上で『日本外史』の歴史観を欠かすことはできない。この時代の若者たちはみな『日本外史』を咀嚼し反芻し消化し血肉化し、そこから獲た精神の活力で次の新しい歴史を切り開いていったのである。(中略)
天朝の式微を嘆き、武門の専横を憤る『日本外史』の「尊王斥覇」の主調低音。それはやがて討幕維新の志士の言葉や行動へと変換されていく。

【目次】
はじめに

巻之十八 徳川氏正記 徳川氏一
徳川氏の出自/松平氏、西三河を平定す/森山崩れ/家康の誕生/広忠死す/竹千代の元服/信康の誕生/清洲同盟/三河一向一揆/名を家康と改める/徳川への改姓/姉川の戦い

巻之十九 徳川氏正記 徳川氏二
武田氏と兵難を構える/三方ヶ原の戦い/信玄、死す/勝頼の来攻/長篠の戦い/遠江の諸城の回復/築山殿と信康の死/武田家の滅亡/本能寺の変/神君伊賀越え/天正壬午の乱

巻之二十 徳川氏正記 徳川氏三
信雄、家康に援けを願う/羽黒の戦い/小牧長久手の戦い/秀康を養子に遣る/第一次上田合戦/家康、秀吉の妹を娶る/家康西上し、秀吉と会す/秀吉、九州を平定す/北条氏の討伐を決す/小田原征伐/八王子城の戦い/徳川氏、関東八ヵ国を領有す/江戸入府/朝鮮出兵/秀次事件/秀吉、病に罹る/秀吉、薨ず

巻之二十一 徳川氏正記 徳川氏四
天下の政務を執る/七将三成襲撃計画/会津征伐を決す/伏見城の戦い/小山評定/家康、秀忠の出陣/伏見城の陥落/岐阜城の戦い/家康、西上す/家康の着陣/関ヶ原の戦い/秀忠の遅参/九州、四国を平定す/諸将将士の論功行賞/於大の方死す/家康、征夷大将軍に/秀忠の長男、家光誕生/秀忠、征夷大将軍に/琉球侵攻/家康、秀頼と会す

巻之二十二 徳川氏正記 徳川氏五
方広寺鐘銘事件/大坂冬の陣/真田丸の攻防/和議の成立/大坂夏の陣/諸軍向かう所を定める/死を恐るゝ者はこれより去れ/家康、諸将を部署す/家康、また勝つ/秀頼の自殺/秀忠、賞罰を評議す/武家諸法度、禁中並公家諸法度/一国一城令の布告/家康、薨る/秀忠、政権に就く/秀忠、薨る/島原の乱/家光、薨る/家綱、四代将軍に就く/徳川氏論賛

おわりに
主要参考文献一覧

 

著者紹介

頼山陽(らい・さんよう)

一七八〇〜一八三二年。江戸時代後期の漢学者、詩人。二十一歳で安芸国(広島県)を出奔、自宅幽閉赦免ののち、京都で開塾。詩、書に才能を発揮。著書は『日本外史』の他、『日本政記』『日本楽府』『山陽詩鈔』など。

訳者・解説者紹介

木村岳雄(きむら・たけお)

一九六三年、埼玉県生まれ。京都大学文学部卒業。発言者塾で西部邁氏に師事。現在は東洋大学で非常勤講師を務める。他に講演活動、漢文塾を主宰、学習塾で指導。著書に『白川静読本』(共著)、『論語清談』(監修)がある。

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