草思社のblog

ノンフィクション書籍を中心とする出版社・草思社のブログ。

元米大統領の大著をもとに、まったく新たな第二次世界大戦像を提示! 『誰が第二次世界大戦を起こしたのか』渡辺惣樹 著

誰が第二次世界大戦を起こしたのか

――フーバー大統領『裏切られた自由』を読み解く

渡辺惣樹 著

 本書は、第31代アメリカ大統領ハーバート・フーバー(任期1929~1933)の大著『裏切られた自由』を翻訳した渡辺惣樹氏が、同書の読みどころを紹介しながら、新解釈の「第二次世界大戦史」を提示する本です。『裏切られた自由』はフーバーが20年の歳月をかけて第二次世界大戦の経緯を詳細に検証した記念碑的な歴史書で、日本語版の上巻が本書と同時に刊行されました。この大著を翻訳した著者・渡辺氏は北米在住、日本開国以来の日米関係を新たな視点でとらえた著作群が高く評価されている近現代史研究家です。2013年に小社より刊行された『日米衝突の萌芽1898-1918』で第22回山本七平賞奨励賞を受賞しています。
 アメリカが全体主義国と戦った「正義の戦争」という従来の大戦史観とはまったく異なる視点から第二次世界大戦を記述したフーバー元大統領ですが、渡辺氏は「フーバーは自身の感情を抑え、可能なかぎり『資料に語らせる』ことを心掛けて『裏切られた自由』を書き上げた」と書いています。世界各国の政治指導者、また軍関係者とも直接やりとりできる立場にいたフーバーの記録は第一級の史料と呼ぶにふさわしい価値があります。本書はその『裏切られた自由』をより深く理解するための格好の解説書であり、同時に、同書の克明な記録をもとに「始まりも終わりも腑に落ちないことばかり」(本書より)だった第二次世界大戦の謎に迫る意欲作でもあります。
 第二次世界大戦をめぐる数々の疑問、たとえば、なぜあのタイミング(1939年9月)で大戦が始まったのか、なぜアメリカは恐怖政治の首魁スターリンと手を結んだのか、なぜ日本側の必死の対米和平交渉は実らなかったのか、そして、二度目の世界大戦という悲劇的な事態を招いた最大の責任は誰のどのような意思決定にあったのか――。こうした疑問に本書は明快な答えを出しています。その答えは、ぜひ本書および『裏切られた自由』をお読みいただきたいのですが、間違いなく言えるのは、フーバーの提示した論点に触れずして第二次世界大戦を語ることはもはやできない、ということです。これまでの歴史認識にラディカルな変更を迫る一冊です。

(担当/碇)

本書より

 フーバーはスタンフォード大学で鉱山学を学んだ技術系の人物であった。それだけに歴史の細部をおろそかにしなかった。同時に一次資料を重視した。F・D・ルーズベルトの進めた外交の全貌をなんとしても正確に把握し、それを世に知らしめたかった。その気持ちが『裏切られた自由』を大著にした。……著者もフーバー同様に歴史は細部に宿ると信じている。日本の戦後教育を受けた者にとっては驚くべき事実が、フーバーが見逃さなかった歴史の細部にちりばめられている。ぜひ、ゆっくりと時間をかけてそれらを読みとってほしいと思っている。

 著者紹介

渡辺惣樹(わたなべ・そうき)
日本近現代史研究家。北米在住。1954年静岡県下田市出身。77年東京大学経済学部卒業。30年にわたり米国・カナダでビジネスに従事。米英史料を広く渉猟し、日本開国以来の日米関係を新たな視点でとらえた著作が高く評価される。著書に『日本開国』『日米衝突の根源1858-1908』『日米衝突の萌芽1898-1918』(第22回山本七平賞奨励賞受賞)『朝鮮開国と日清戦争』『アメリカの対日政策を読み解く』など。訳書にマックファーレン『日本1852』、マックウィリアムス『日米開戦の人種的側面 アメリカの反省1944』など。

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「共産主義」とか「万有引力」で、とたんに世界は違って見えた。 『世界の見方が変わる50の概念』齋藤孝 著

世界の見方が変わる50の概念

齋藤孝 著

 かつてマルクスが「共産主義」という概念を唱え、ニュートンが「万有引力」と言ったとたんに、当時の人びとに世界は、まったく違って見えたのではないか、と著者は言う。「概念」というものには、それほど強いインパクトがある。
「概念」とは現実の事象の中に共通性や法則を見つけて言葉にしたものだが、本書では哲学用語や各種理論などを中心に取り上げている。
「パノプティコン」という概念をまず真っ先に取り上げているが、これは最近では「テロ等準備罪」いわゆる「共謀罪」に反対するキャンペーンで朝日新聞が使っていた用語である。もともとは刑務所の設計構想で、「一望監視方式」と訳されるが、ミシェル・
フーコーが『監獄の誕生』で監視社会化する現代社会についての比喩として使って有名になった。過剰な監視や規制が社会を委縮させるのだという反論に「パノプティコン」が使われるととたんに強くなる。概念があるのとないのとではがらりと変わるのである。
 概念は抽象的なものであるが、これを現実に当てはめて考えることで具体的になり、さまざまな示唆が与えられる、と著者は言う。2番目に取り上げている「野生の思考」という概念はレヴィ・ストロースがアマゾンの未開民族を研究して考えたもので、西欧的な「文明の思考」にたいしてあり合わせの材料を組み合わせて成果を上げる彼らのやり方を評価して言った言葉だ。例えば「原子力発電」が文明の思考だとすると地方の「道の駅」の発想などが典型的な「野生の思考」(ブリコラージュ=間に合わせ仕事)ということになる。
 この本には50個の概念が載っているが、このうちの数個でも自分の武器として使ってみてほしいというのが著者の提唱である。困難な現実を打ち破るために必要な知恵を与えてくれるかもしれない。

(担当/木谷)

著者紹介

齋藤孝(さいとう・たかし)

1960年、静岡県生まれ。東京大学法学部卒、同大学大学院教育学研究科博士課程を経て、現在、明治大学文学部教授。専攻は教育学、身体論、コミュニケーション技法。著書に『宮澤賢治という身体』(宮澤賢治奨励賞)『身体感覚を取り戻す』(新潮学芸賞)、ベストセラーとなった『声に出して読みたい日本語』(毎日出版文化賞)などがある。近著に『語彙力こそが教養である』『こども 孫子の兵法』『夏目漱石の人生論 牛のようにずんずん進め』がある。

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地球が平らなら夕焼け雲はできないって、知ってた? 『地球は本当に丸いのか?―身近に見つかる9つの証拠』武田康男著

地球は本当に丸いのか?―身近に見つかる9つの証拠

武田康男著

◆「えっ! これも地球が丸いせいだったの?」と驚く事実の数々

 高層マンション最上階付近に相当する100mの高さに登ると、海抜0m近くに比べて日の出は2分も早くなります。このように、高いところに登ると日の出が早くなるのは、地球が丸いから。地球の丸さにより、高いところからは、地平線が下がって見える(見下ろす)ようになるためです。

 天気のいい日に海辺に立つと、水平線がくっきりと見えます。もし、地球が平らだったら、こうはなりません。地球が平らなら、水平線は無限に遠くにあることになり、霞んでしまうはずだからです。地球が丸いからこそ、水平線までの距離が有限で、はっきり見えるのです。
 

◆豊富な写真と図版で「地球が丸いから起こること」を視覚的に解説

 地球が丸いことは子どもでも知っている科学的事実ですが、なかなかそれを実感できません。子どものころ、「地球は本当に丸いの?」という疑問を抱いても、実感できるようにうまく説明してくれる大人はなかなかいなかったでしょう。納得できないまま大人になってしまった人も、多いのではないでしょうか。

 本書は、誰もが幼少期に抱いたこの素朴な疑問に答える図鑑です。たくさんの写真と図版を使って、地球が丸いからこそ起こる「目で見てわかる現象」を解説し、地球の丸さの影響を視覚的に示します。

 本書を読めば、空の現象や遠くの風景の中に、普段は見逃している「地球が丸い証拠」が隠れていることに気づくことでしょう。著者は、これまで空や雲の現象を写真で紹介する本を多数著してきた武田康男さん。武田さんは、以前、高校の地学教師だっただけあって、とてもわかりやすく解説してくれます。巻末コラムには、地球の大きさを自分で測る方法や、水平線・地平線までの距離の計算方法も書かれていて、地球のスケール感も得られるようになっています。

 本書を読み終えたら、子どもと一緒に山や海へ、あるいはビルの展望台へ、地球が丸い証拠を見つけに行ってはいかがでしょうか。きっと、お子さんは「地球は丸い」ことを納得してくれることでしょう。親子でも楽しんでいただきたい一冊です。

(担当/久保田)

目次

はじめに

第1章    水平線がはっきり見えるということ

第2章    水平線の向こうの景色が沈んで見える

第3章    遠く離れると富士山が下がっていく

第4章    山に登ると地平線が下がる

第5章    太陽の道、月の道

第6章    空に地球の影が見える

第7章    南極と日本で月の模様が逆さになる

第8章    朝焼け・夕焼け・夜光雲・人工衛星

第9章    宇宙からの地球、距離と見え方の違い

コラム1    地球の大きさを測る

コラム2    水平線までの距離を計算する

著者紹介

武田康男(たけだ・やすお)

1960年、東京都生まれ。東北大学理学部卒業後、千葉県立高校教諭(理科)。第50次南極地域観測越冬隊員。気象予報士、空の写真家。日本気象学会会員、日本雪氷学会会員。現在、大学の客員教授・非常勤講師、講演、執筆、写真・映像撮影などをしている。著書に『楽しい気象観察図鑑』『世界一空が美しい大陸 南極の図鑑』『雪と氷の図鑑』(以上、草思社)、『雲の名前、空のふしぎ』『不思議で美しい「空の色彩」図鑑』(以上、PHP研究所)、『武田康男の空の撮り方』(誠文堂新光社)など。

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70代からでも間に合う! ボケ・寝たきりリスクが激減! 『死ぬまで介護いらずで人生を楽しむ食べ方』新開省二著

死ぬまで介護いらずで人生を楽しむ食べ方

新開省二 著

◆20年におよぶ、のべ5000人の高齢者の追跡調査からわかったこと

 「いつまでも元気で、自立した生活を送るにはどうすればいいのか?」
これは本格的な高齢社会に入った今、誰もが抱える切実な課題です。しかし、残念ながら高齢期の健康度には、人によって大きな差が生じます。歳をとっても自立した生活を送れるか、それとも要介護になってしまうのか、その差はどこから生まれるのでしょうか? 
 著者の研究によると、高齢期の健康は「栄養状態」と深く関係があることがわかってきました。いったん「低栄養状態」に陥ると、血管の壁がもろくなり、脳卒中など心血管病のリスクが高まり、認知症や寝たきりの進行を促進し、健康寿命が大きく損なわれるというのです。
 本書は栄養面からの老化予防を中心にして、健康長寿の極意をわかりやすくまとめた一冊です。自分の老後に備える上でも、親の老後が心配な方にも非常に役に立つ内容となっています。

◆寝たきりに最適な「多様食」とは?

 では、実際にどのように食べれば健康寿命を延ばすことができるのでしょうか?
著者は、健康長寿のためのもっとも効果的な食べ方として、さまざまな食品からまんべんなく栄養素をとる、「多様食」を提唱しています。加齢がおよぼす体の問題により、高齢者は若い人と同じように食べても、栄養をうまく体内に吸収できなくなっています。その点、多様食にすれば食品に含まれる多くの栄養素が、消化する際、互いに補完しあうので栄養が体に吸収されやすくなります。その結果、栄養状態がよくなることで、筋肉、骨、内臓、血がしっかりと増え、健康で長生きできる体につながるというわけです。
 うれしいことに、研究の結果からいくつになっても食習慣を変えることで、健康寿命が延ばせることがわかっています。たとえ70代、80代からでも遅くはないのです。ぜひ本書に書かれていることを実践し、楽しく充実した高齢期を過ごしていただければ幸いです。

 (担当/吉田)

 

もくじ

はじめに
1章 高齢期の健康は「食べ方」で決まる
・「粗食信仰」が老化を促進する
・高齢期の健康は「栄養状態」が決め手
・まったく違う中年期の健康常識と高齢期の健康常識
・寝たきり予防は七十代からでも間に合う
・食べることが最強の老化対策
・要介護にいたる二つのプロセスとは
・高齢者を対象にした大規模調査からわかったこと


2章 なぜやせている人は死亡リスクが高いのか?
・健康長寿の三大条件
・病気があっても長生きできる
・やせている人より太めの人のほうが長生き
・総コレステロール値は高めがいい
・食欲は生命力
・低栄養によって死亡の危険度は一・五倍高まる
・みんなが誤解しているコレステロール
・健康診断のデータはうのみにするな
・「かむ力」が弱い人は要注意
・肉食が心と体を元気にする


3章 体をむしばむ「低栄養」の本当にこわい話
・なぜ高齢者は栄養が足りなくなるのか
・タンパク質が不足すると体はどうなるか
・低栄養は「脳卒中」「心筋梗塞」を引き起こす
・血液ドロドロよりこわい血管ボロボロ
・認知症は脳の栄養不足
・「かくれ低栄養」が増えている
・食生活を変えれば健康寿命は延ばせる

 

4章 老けない、ボケない、高齢期の正しい食べ方
・キーワードは「多様食」
・「多様食」とは「栄養素密度が高い」食事のこと
・多様な食生活は寝たきり予防につながる
・基本は「食べて動く」
・老化しない頭と体をつくる一四項目
・肉と魚、どっちが健康的?
・ご飯の食べ方
・ときにはてんぷらや揚げ物を
・牛乳はやっぱり健康にいい
・時代の淘汰から生き残った食品には価値がある
・香辛料、調味料にはボケ防止の効果
・世の中の健康情報を楽しく活用する


5章 死ぬまで介護いらずの体をつくる毎日の習慣
・高齢でも自立した生活を保つには
・フレイルをチェックする一五項目
・六十代後半からはメタボ対策よりフレイル予防が大切
・歩くのが遅いだけで、心血管病のリスクが約三倍に
・握力が弱くなるほど死亡率が高くなる
・群馬県草津町でのフレイル予防の取り組み
・フレイル予防の三本柱は「栄養」「体力」「社会参加」
・予防活動によって介護発生率は約半分に
・病気は減らなくても要介護が減った理由
・まずは「外出」の機会を増やそう
・骨を強くする
・老いない体は骨と筋肉が要
・高齢期はレジスタンス運動が効果的
・運動効果を高める食べ方
・血管を健康にする
・タバコはただちにやめなさい


6章 おいしいものを食べに、外に出かけよう
・「閉じこもり」と認知症の関係
・「外出頻度やや低め」も健康に悪い
・足腰が悪くても外出を続ければ回復の可能性がある
・買い物も通院も立派な外出
・長い睡眠時間は老化を促進する
・「閉じこもり」やすいタイプとは
・地域デビューは手軽な老化防止策
・男の老い方、女の老い方
・高齢期の問題点は「食」にはじまり、「食」で終わる
・食の三つの力
・地縁を有効に使う
・口を開けば、心も開く
・追いじたくは、豊かな食卓から

あとがき

 

著者紹介

新開省二(しんかい・しょうじ)

東京都健康長寿医療センター研究所副所長。医師・医学博士。1984年愛媛大学大学院医学研究科博士課程修了。愛媛大学医学部助教授(公衆衛生学)を経て1998年より東京都老人総合研究所(現・東京都健康長寿医療センター研究所)勤務、2015年より現職。この間(1990-91年)カナダ・トロント大学医学部に旧文部省在外研究員として留学。日本老年医学会、日本老年社会科学会、日本体力医学会、日本衛生学会の各評議員や厚生労働省「健康日本21(第二次)策定専門委員会」委員、長寿科学総合研究事業、JST-RISTEX研究開発事業などの主任研究者を歴任。日本公衆衛生学会奨励賞(2006年)、都知事賞(2007年、研究、発明・発見部門)など受賞。

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ジャレド・ダイアモンド著・草思社文庫『若い読者のための 第三のチンパンジー』:「人間」はなぜこれほど奇妙に進化してしまったのか?

 ジャレド・ダイアモンド博士の第一作をより読みやすくコンパクトに
 ピュリッツァー賞受賞の『銃・病原菌・鉄』が世界的ベストセラーとなったジャレド・ダイアモンド博士は、1992年に初めての著作『人間はどこまでチンパンジーか?』(The Third Chimpanzee、新曜社刊)を発表、いきなりベストセラー作家となりました。
 その後『文明崩壊』『人間の性はなぜ奇妙に進化したのか』(いずれも草思社刊)『昨日までの世界』(日本経済新聞出版社刊)を続々と発表、いずれも話題の書として多くの読者を得ています。
 本書は大部の書である『人間はどこまで…』を、その刊行以降に発表された最新の研究成果をふまえつつ、「For Young People」シリーズで定評のあるレベッカ・ステフォフ氏が、中心となるテーマをコンパクトに編集し、関連する興味深い写真を数多く配置したものです。

 「人間」はなぜこれほど奇妙な生きものなのか?
 本書は「サル学」の本ではありません。ダイアモンド博士が一貫して追究しているのは「ヒト学」あるいは「ホモ・サピエンス学」と呼ぶべきものです。
 この書名は、ヒトとチンパンジーのDNAレベルでの比較から生まれたもの。チンパンジーには、いわゆるコモンチンパンジーとボノボ(ピグミーチンパンジー)の2種類がいますが、彼らとヒトとは、DNAのなんと98.4%が同じ。いわば人間は「三番目のチンパンジー」だというのが書名の由来。
 たった1.6%の違いが、なぜ人間と他の動物のとてつもない違いを産み出したのか? なぜ人間はなぜこれほど奇妙な動物なのか? 道具を作り、言葉を操り、農耕を行い、巨大な都市を造りあげ、環境から収奪し、特定の生物を絶滅させ、人間同士で大量に殺戮し合う。この「人間」とは何なのか? これが一貫したダイアモンド博士の問題意識です。

 ダイアモンド博士が展開していくテーマが凝縮された「入門書」
 この大きなテーマが、多様な学問領域、進化生物学、生物地理学、人類生態学、古環境学、古病理学、文化人類学、言語学などの幅広い知見を縦横に駆使して考察され、博士の柔軟で新鮮な思考に驚かされます。
 本書では、『銃・病原菌・鉄』以降の著作でさらに展開されていくさまざまなテーマの根幹がコンパクトに記述されています。いわば「ジャレド・ダイアモンド入門」のインデックス書と言ってもいいかもしれません。
 たとえば本書の第4部「世界の征服者」は、『銃・病原菌・鉄』で展開される文明の格差・偏在の問題。旧大陸の人間が新大陸を征服し、なぜその逆は起こらなかったのかという考察につながっていきます。
 第5部「ひと晩でふりだしに戻る進歩」は、『文明崩壊』で展開される、巨大な文明がなぜ跡形もなく崩れ去っていったのか、なぜそれが繰り返されてきたのかという問題につながります。
 第2部「奇妙なライフスタイル」では、『人間の性はなぜ奇妙に進化したのか』で考察されるセックスとメイティング、他の動物とあまりに異なる人間の「性」の問題を通じて、人間が生み出す文化文明の奇妙さを問います。

 「人間」はどこから来たのか? どこに向かっているのか?
 これらの問題の考察は、「人間とは何か」を突き詰めることであり、私たちがどこから来たのかを検証し、私たちがどこに向かっているのかを見極めることにつながるものです。現在、私たち人類が向き合っている複雑に絡みあった問題の見取り図であり、総目録でもあります。
 解答の見えない難題におおわれている現在こそ、ぜひ多くの読者に読んでいただきたい一冊です。
 巻末には『人間はどこまでチンパンジーか?』の訳者である長谷川眞理子先生に非常に示唆に富んだ「解説」を寄せていただきました。

 

【本書目次より】
はじめに 人間を人間であらしめるもの

第1部 ありふれた大型哺乳類
 第1章 三種のチンパンジーの物語
 第2章 大躍進
第2部 奇妙なライフサイクル
 第3章 ヒトの性行動
 第4章 人種の起源
 第5章 人はぜ歳をとって死んでいくのか
第3部 特別な人間らしさ
 第6章 言葉の不思議
 第7章 芸術の起源
 第8章 農業がもたらした光と影
 第9章 なぜタバコを吸い、酒を飲み、危険な薬物にふけるのか
 第10章 一人ぼっちの宇宙
第4部 世界の征服者
 第11章 最後のファーストコンタクト
 第12章 思いがけずに征服者になった人たち
 第13章 シロかクロか
第5部 ひと晩でふりだしに戻る進歩
 第14章 黄金時代の幻想
 第15章 新世界の電撃戦と感謝祭
 第16章 第二の雲
おわりに なにも学ばれることなく、すべては忘れさられるのか
 
解説:長谷川眞理子(総合研究大学院大学・学長)

 

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【近刊予告】「自分の加齢臭」と闘い克服した著者が、効果のあった方法を伝授!! 大人のニオイケア『改訂新版 加齢臭読本(仮)』奈良巧 著

7月上旬 刊行予定

◆加齢臭対策は「頭皮ケア」「体内ケア」の時代に

 小学校高学年のころからワキガで、同級生に「オヤジくさいよ」と言われていた著者の奈良さん。大学生になり、初めて付き合った女性からのクリスマスプレゼントは、高級ブランドのセッケンでした(ワキガ用)。のちに、ワキの悩みは入浴や銀イオンスプレーの習慣で克服したものの、40代を迎えたころに新たに発生した「謎の脂くさいニオイ」をご家族から指弾され、その正体が加齢臭であることにずいぶん後になってから気づいたといいます。
 この謎の脂くさいニオイと闘い、苦難の末、みごと克服した著者が、試して効果のあった方法を2012年に小社刊『加齢臭読本』にまとめられました。それから5年が経過し、加齢臭研究に大きな変化がありました。2013年にマンダムが主に40代男性の脂くささが「後頭部と首筋」から発生することを突き止め、これを「ミドル脂臭(ししゅう)」と命名(加齢臭の一種)。2017年には、資生堂がコエンザイムQ10を摂取すれば加齢臭が激減すると発表。今や加齢臭は、セッケンでのボディケアだけでなく、頭皮ケア、サプリを飲んでの体内ケア、という領域に入ってきているのです。
 この近年の加齢臭研究の進化と、それに合わせた加齢臭対策商品の充実を受け、最新の加齢臭対策を大幅に加筆したのが、 このたびの改訂版です。

◆加齢臭対策の新商品を、実際に試して徹底批評!

 改訂新版の本書では、資生堂、ライオン、マンダム、ペリカン石鹸など、メーカー各社の加齢臭商品の開発担当者や広報担当者を独自に取材し、商品のすごさの秘密を深く聞き出しています。また、それらの商品を著者自身が試し、効果を検証されています。
 たとえば、ペリカン石鹸が2016年に発売開始した、頭皮洗い専用セッケン「HARIHAIR(ハリヘア)」。髪のハリがなくなってきた、毛が細くなってきた、と悩む男性の髪をシャキッと根元から立ち上げる効果があるだけでも嬉しいのに、頭皮の皮脂もしっかり洗える、という優れもの。皮脂汚れの酸性を、固形セッケンの弱アルカリ性で「中和」することで、綺麗サッパリに洗えるという仕組みです。
 著者が実際に試してみると、まず泡立ちのすごさにびっくり。濡らした頭にくるくるとこすりつけるだけで、キメ細かい硬めの泡が「ぶわーーー」っと立つのだそう。著者は日ごろから洗髪の際は「洗髪専用ブラシ」を愛用し、かつ「二度洗い」を心がけているので、泡はさらにきめ細かく、しっかり立つようです。この泡、頭に使うだけではもったいない、とのことで、残った泡で顔や首筋、全身まで洗ってしまうといいます。このセッケン、皮脂を吸着する「泥」「炭」成分や、皮脂の酸化を防ぐ「柿渋」が配合されており、体全体の加齢臭対策にもなるのです。 
 さて、こうした優れもののセッケンで頭皮ケアをしても、実は「ニオイ(ミドル脂臭)は約6時間で復活します」(マンダム広報担当者)とのこと。つまり、夜せっかく入念に洗髪しても、朝には嫌~なニオイが発生しており、そのニオイを職場まで持っていくことになってしまうわけです。忙しいビジネスパーソンの皆様には朝風呂はもちろん朝シャワーでさえ、そんな時間ないよ、というのが実情でしょうが、そんな方々を救ってくれるのが、マンダム「ルシード カラダと頭皮のデオペーパー」。植物フラボノイドと緑茶エキスがたっぷり沁み込んだペーパーで、朝の出社前に、皮脂の多いスポットである「後頭部と首筋」をぬぐうだけ。著者も日々取材で人に会うという仕事柄、このペーパーを愛用しているといいます。これを持っていれば、午後の昼食後でも、夕方過ぎでも、気になったときにひと拭きすれば、安心。心のお守りがわりにもなります。

◆食事、生活習慣など「トータルケア」で加齢臭を消去

 本書では、「セッケンをどう選ぶか」「体や頭皮のどこをどう洗うか」のほか、「保湿習慣やワキ汗対策は?」「食事や生活習慣は?」「衣服の洗剤は何を選ぶ? 洗濯機は?」、さらには「他人のニオイにはどう対処すべき?」など、加齢臭対策を網羅的に紹介してあります。
 ニオイが気になる男性であれば、読むと読まないでは、人生が変わるといっても過言ではないでしょう。また、女性にも加齢臭があることがわかっていますので、女性にも、自身のケアとして、あるいは夫や彼氏へのプレゼントとしても、お求めいただけるかと思います。
 夏も近づいてきているこの時期、かばんに一冊、本書をしのばせて、セルフケアのお供にしていただけると幸いです。


著者紹介

奈良巧(なら・たくみ)
1958年生まれ。早稲田大学卒業。出版社での編集記者を経て、50歳よりフリー記者。得意テーマは、加齢臭、アンチエイジング、現代栄養学とサプリメントについて、コンビニ・ファミレス・外食文化と健康について。「週刊ポスト」「夕刊フジ」等の雑誌・新聞に、主に健康に関する記事を寄稿。著書に『加齢臭読本』(2012年、草思社)、企画・構成に『「コンビニ食・外食」で健康になる方法』(浅野まみこ著・草思社)、『麺屋武蔵ビジネス五輪書』(矢都木二郎著・学研)。

『今日からヒラ社員のオレが会社を動かします。』刊行記念! ビジネスパーソンのための超速『鬼谷子』講座 第四回「人を動かしたあとにするべきこと」 『今日からヒラ社員のオレが会社を動かします。』高橋健太郎著

 超速『鬼谷子』講座も今回が最終回。
 最後にご紹介するのは、『鬼谷子』が教える「人を動かしたあとにするべきこと」です。

・人を動かしたら去る
 この講座でも述べてきたように、『鬼谷子』の術は、安全圏から人を動かす術です。
 ひそかに周囲を観察し、それとなく言葉を投げかけ、誰からも知られることなく、あたかも自然にそうなったかのように他人を動かすのを理想とします。

 人を動かすには何らかの「行動」が必ず伴います。
 これは避けようがありません。
 観察も周囲への言葉がけも、どんなに目立たないように行っても「行動」です。そして、そうした具体的な「行動」がある以上、周囲の人間に「あいつ、人を動かそうとしてるな」なんて知られてしまうリスクは、必ず出てきます。

 こうした状態を、『鬼谷子』は「陽」(日の当たる状態)と呼んで危険視します。
 もちろん、『鬼谷子』では、こうした避けがたい「陽」の状態においても、なおかつ、人に知られるリスクを最小限化する技術もまた説いてます。

 ただし、『鬼谷子』がもっとも重視するのは、なによりも「陽」の状態から一刻も早く去ることです。つまり、人を動かしたら、すぐに目立たない場所に消える。
 これが鉄則なのです。

・虚栄心が身を滅ぼす
 人を動かすのに成功した人間が、もっとも陥りがちな罠。
 それは「あの人を動かしたのは、実はオレなんだ」などと吹聴して回ることです。
 動かしたのが難しい相手であればあるほど、それによって得られる功績が大きければ大きいほど、人はどうしても、それが自分の手柄であることを周囲にアピールしたくなってしまうもの。

 しかし、『鬼谷子』的にいえば、それこそがもっとも危険な行為なのです。
 なぜか?
 周囲の心情面と情勢面に次のようなリスクが生まれるからです。

1,(心情面のリスク)功績は周囲の嫉妬を生む
 嫉妬は必ずその人を引きずり降ろします。必ず将来禍根になるのです。

2,(情勢面のリスク)功績はその人間をキーパーソンにする
 功績のある人間は、一目置かれます。つまり、周囲から注目されるようになり、「陽」の状態から抜け出せなくなるのです。

 周囲から注目されて一挙手一投足が注目され、しかも嫉妬までされるという得意絶頂の状態こそ、失敗の谷へ転落するまであと一歩。

 この最低の状態をなんとしても避けるというのが、安全圏から人を動かすために、最後に行わなければいけない『鬼谷子』の術の総仕上げなのです。そのための方法には、例えば次のようなものが考えられるでしょう。

1,物理的に、あるいは心理的にその場を去る
2,功績を人に譲る
3,逆に「成功ではない」と吹聴する

・「転円」こそ究極
 いずれにせよ、『鬼谷子』では、人を動かすには「自然であること」がもっとも大事であると説きます。
 状況を見て人を動かし、成功したのなら成功を観察して動き、失敗したのなら失敗を観察してまた動く。これを自然と流れるように淡々と行っていく。
 これこそが『鬼谷子』の説く究極の境地である「転円」です。

 その動きの自然さが極まれば、自然さに紛れて誰が誰を動かしたのかすら、周囲にわからなくなります。
 周囲から見たときに「何かわからないけど、あの人が急に動き出して事態が進展した」、そんな印象しか残らないような人の動かし方を目指すのが『鬼谷子』の術なのです。

(筆者:高橋健太郎)

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