草思社のblog

ノンフィクション書籍を中心とする出版社・草思社のブログ。

運動機構の「見どころ」を詳説!『アスリートのための解剖学〈アドバンス編〉』大山卞圭悟 著

アスリートのための解剖学〈アドバンス編〉

大山卞圭悟 著

 本書は2020年に刊行されて以来、多くの読者を得て版を重ねている『アスリートのための解剖学』の姉妹編です。前著と同じく、日本トレーニング指導者協会(JATI)の機関誌『JATI EXPRESS』に連載された「GTK現場で使える機能解剖学」の内容に加筆・修正を加えて再構成した一冊です。著者はトップアスリートとしての競技歴(砲丸投げで全日本実業団優勝など)や陸連トレーナーとしての活動歴を持つ研究者であり、本書ではそうした多彩な経験をもとに、私たち人間の身体の仕組みの謎に迫っています。
〈人体の骨は200余り、筋は600を超えるといわれています。この数は、ほとんど変化しないにもかかわらず、身体の使い方に関する「みどころ」というのは、追求すればするほど、無限に生じるものです。本書では筆者の視点を通して見える、身体の運動機構の見どころについて図と共にお話ししていきたいと思います〉
 本書の冒頭で著者はこのように述べています。今回の本では筋肉の生理学的な特性や筋腱周辺の細やかな構造に関する解説、体幹から上肢に関するトピックス、そして各部位間の仕組みと動きのつながりに注目した「キネティックチェーン」についても、わかりやすい解説がなされており、さらには、ストレッチングやテーピングといったコンディショニング手技についても機能解剖学的な視点から解説されています。
 近年はネット上の動画などによってもアスリートに必要な情報が収集できるようになってきていますが、そうした情報の中には「解剖学的な理解が必ずしも正確でないと思われる情報も一定数見受けられます」と著者は述べています。では、何を基準に判断すればよいのか。「身体の仕組みや運動の成り立ちを取り扱う立場から、それぞれの情報が信ずるに足るものかどうかを見極める際の、もっとも信頼できる拠り所となるのが解剖学」なのです。トレーニング愛好者を含むすべてのアスリート及びトレーナーに、ぜひ目を通していただきたい一冊です。

(担当/碇)

 

【本書より】

 アスリートが競技の現場で繰り出す高い出力、身体への負担の大きな動きというのは、生存や種の維持に関わらないところであっても、最大出力や身体を傷つける可能性があるくらいの大きな負荷を「みずからすすんで」つくり出しているわけです。これはきわめて「人間らしい」営みといえるでしょう。
 そういう意味では、動物の中ではまったく特殊です。そのようなアスリートの活動であるからこそ、日常生活の負荷ではトレーニング効果を得るには不十分なことがほとんどで、意図的な負荷や動きづくりを考えていく必要があります。
 このような見方からいうと、ヒトと動物の違いは、目的が同様の動きであっても意図的、戦略的にコントロール様式を変えていくことができる点ではないでしょうか。

 

【目次】

巻頭コラム 私の解剖学事始
Chapter1 筋の力発揮特性と補助機能のはなし
Chapter2 キネティックチェーンのはなし
Chapter3 体幹のはなし
Chapter4 上肢のはなし
Chapter5 ストレッチングとテーピングのはなし
巻末コラム 恐怖の悪循環

 

著者紹介

大山卞圭悟(おおやま・べん・けいご)

1970年兵庫県西脇市生まれ。93年筑波大学体育専門学群卒業。修士(体育科学)。99年筑波大学体育科学系 講師、2001年筑波大学大学院人間総合科学研究科 講師を経て、13年より筑波大学体育系 准教授(現在に至る)。99年より現在まで、筑波大学陸上競技部部長・コーチ(主に投擲競技を担当、06~11年同監督)、日本陸連医事委員会トレーナー部長を務める。99年、01年、05年ユニバーシアード陸上競技日本選手団トレーナー。JATIトレーニング指導者養成講習会講師(担当講義「機能解剖」)。著書『トレーニング指導者テキスト 理論編改訂版(分担執筆)』『コンテクスチュアルトレーニング(監訳)』(いずれも大修館書店)、『解剖学』(化学同人)、『アスリートのための解剖学』(草思社)。

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その翻訳、機械まかせでいいですか?先人に学ぶ翻訳の本質『生と死を分ける翻訳 聖書から機械翻訳まで』アンナ・アスラニアン著 小川浩一訳

生と死を分ける翻訳

――聖書から機械翻訳まで

アンナ・アスラニアン著 小川浩一訳

いまでは機械翻訳が驚くほど発達し、翻訳が手軽かつ身近になりました。しかし、この翻訳・通訳という行為は、その過去を振り返って見ると、数々の歴史的な重大局面にかかわっており、表舞台には名前が出てこない翻訳者たちが涙ぐましい努力、創意工夫、そして勇気とともに行われてきたものです。それはまた少なからず、自分の命がかかったり世界の歴史を決定するような、重大な行為であることも少なくありませんでした。
本書は、さまざまな「歴史的な翻訳」のエピソードを見ることでその本質を知るものです。本書から先人の知恵を学び、翻訳の本質を理解しておくことは、まさに「AI翻訳時代」のいまこそ知っておくべき内容と言えます。

・「クズマの母」とは何者か?
本書で取り上げられる事例には、冷戦時の東西の意見を懸命に訳した通訳者、ヒトラーやムッソリーニのような独裁者の通訳、聖書という最も困難な翻訳書、ボルヘスと二人三脚で翻訳をした人物の貢献、ジャーナリズム翻訳というジャンルならではの苦労など、さまざまな時代、分野の翻訳エピソードに触れられます。
ひとつ例を挙げてみましょう。冷戦下、ニキータ・フルシチョフとリチャード・ニクソンは、対談でお互いのイデオロギーの優位性を示すべく「言葉による殴り合い」と称される諺を多用した対話を繰り広げましたが、それにあたった通訳者は大変な苦労を強いられました。このように諺が多用される場合、ときにその諺に適切な訳がその場で出ず直訳するしかないということもあります。フルシチョフは、「クズマの母をお見せしよう」という表現を何度か用いたことがありました。アメリカ側は、このことが具体的な人物なのか、あるいは比喩的な意味なのか分からず戦々恐々としていましたが、この「得体のしれない謎の母親」の正体は、「一度も見たことがないもの」という程度の意味のロシアの慣用句に過ぎなかったのです。直訳は意訳による誤解を防ぐこともあるので効果的な場面もありますが、一方で混乱につながる場合もあるのです。
本書ではほかにも、「翻訳先の文化にはない単語は変えてもいいのか」「ジョークをどこまで翻訳するか」「独裁者の通訳はそうでない人と何か変える必要があるのか」など、翻訳や通訳の際に経験する「あるある」ともいえるテーマのもっとも極端に表れた事例を、多数収録しています。

・翻訳者はまだ死んでいない。
端的にいってしまうと、翻訳とはそもそもイコールではない二つの言語を、翻訳・通訳者が必死につなげる行為です。これはほとんど、2つの宇宙に橋を架けるような行為と言っても過言ではありません。そのような言語の本質が理解できたときに、翻訳行為に人間がかかわることの意味が見えてくると思います。言葉が、適切な単語を適切な順序で並べるだけのものになり下がらない限り、「翻訳者」は存在し続けるのです。

(担当/吉田)

 

目次

序章 翻訳者はロープの上で踊る
第一章 世界を揺るがせる 諺の知識が世界を救う
第二章 笑いの効用 通訳にユーモアが必要な理由
第三章 追従術 翻訳者の処世術
第四章 観測と解析 科学分野の翻訳も楽ではない
第五章 英語の宝物 翻訳は言語そのものを豊かにもする
第六章 崇高な門 翻訳力が権力を持つとき
第七章 不貞 前代未聞の離婚通訳劇
第八章 ヒトラーの言葉の正確性 第二次世界大戦の通訳者たち
第九章 小物 戦争裁判の被告と通訳者
第十章 二人のラストドラゴマン アラブ世界とヨーロッパのはざまに消えゆく
第十一章 「私の方が彼に近しいと思うのだが」 翻訳と翻案のはざまで
第十二章 ボルヘスの五十パーセント 翻訳者という枠を超えた二人三脚
第十三章 単語を変えるのはアリか? 聖書という困難な翻訳の対象
第十四章 ジャーナレーション ジャーナリズム翻訳に求められるもの
第十五章 現地人との付き合い方 通訳の不遇さの古今東西
第十六章 名を正す 危機の時代における通訳のあり方
第十七章 権限のある機関の義務 翻訳のサービス化を考える
第十八章 非論理的要素 機械翻訳と翻訳者の未来

 

著者紹介

アンナ・アスラニアン(ANNA ASLANYAN )

ジャーナリスト、翻訳家。『ガーディアン』や『タイムズ文芸付録』などに書籍やアート関連の記事を寄稿している。ロシア語の文学やノンフィクションを英訳しており、「Post-Post Soviet? Art, Politics and Society in Russia at the Turn of the Decade」などの英訳書がある。 

訳者紹介

小川浩一(おがわ・こういち)

1964年京都市生まれ。東京大学大学院総合文化研究科修士課程修了。英語とフランス語の翻訳を児童書から専門書まで幅広く手掛ける。主な訳書に、『アーティストのための形態学ノート』(青幻舎)、『GRAPHIC DESIGN THEORY』(ビー・エヌ・エヌ新社)、『いろんなたまご』(大日本絵画)、『ディープラーニング学習する機械』(講談社)、『軍事の科学』(ニュートンプレス)などがある。

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物語と文体の力が伝える家康の生涯 『日本外史 徳川氏正記』頼山陽 著 木村岳雄 訳・解説

日本外史 徳川氏正記

頼山陽 著 木村岳雄 訳・解説

『日本外史』は、源平から徳川までの武家の興亡を、司馬遷の『史記』の紀伝体に倣って記述した歴史書です。本書は『日本外史』全二十二巻のうち、巻之十八から巻之二十二までに相当する「徳川氏正記」を扱っています。徳川氏の出自からその死後まで、家康の生涯を格調高い名文(書き下し文)に丁寧な解説・現代語訳を付しています。

頼山陽は江戸時代後期の漢学者にして詩人。二十一歳で安芸国(広島県)を出奔、自宅幽閉赦免ののち、京都で開塾。詩、書に才能を発揮しました。山陽二十三歳の時に初稿として書き上げられた『日本外史』は、その後二十三年をかけ推敲されて完成。死後評判を呼び、疾風怒濤の時代のベストセラーとなり、幕末の志士たちを奮起させることになりました。

『日本外史』の何が同時代の日本人の心を打ったのでしょうか。一つは訳・解説者の木村岳雄氏が師・西部邁氏から学んだという「historyとはhis storyである」という言葉に見出せます。『日本外史』に採用された史料は軍記物が中心で、史実に合致しない記述が散見されるのは確かですが、正確さ以上に同時代、そして後世の日本人が「天下人の家康」として語り継いできた物語の力がここには脈打っています。

そしてもう一つは木村氏が「引き締まり研ぎ澄まされた文体に、思わず声に出して読みたくなるような律動を帯び、しかもそこはかとなく清艶ささえ漂わす」と記す頼山陽の文章の持つ力です。

是非本書を紐解いて、当時の日本人を奮い立たせた活気の幾分かでも味わってください。

(担当/渡邉)

 

【内容紹介】

幕末の志士たちを奮起させた、
疾風怒濤の時代のベストセラー!

家康の生涯を格調高い名文と丁寧な解説・現代語訳で読む。

徳川氏の出自/家康の誕生/清洲同盟/三河一向一揆/姉川の戦い/三方ヶ原の戦い/長篠の戦い/武田家の滅亡/本能寺の変/神君伊賀越え/天正壬午の乱/羽黒の戦い/小牧長久手の戦い/小田原征伐/江戸入府/朝鮮出兵/秀吉、薨ず/天下の政務を執る/伏見城の戦い/小山評定/岐阜城の戦い/関ヶ原の戦い/家康、征夷大将軍に/大坂冬の陣/大坂夏の陣/秀頼の自殺/家康、薨る/徳川氏論賛 ほか

【「はじめに」より】
幕末から戦前にかけての日本人の精神史を語る上で『日本外史』の歴史観を欠かすことはできない。この時代の若者たちはみな『日本外史』を咀嚼し反芻し消化し血肉化し、そこから獲た精神の活力で次の新しい歴史を切り開いていったのである。(中略)
天朝の式微を嘆き、武門の専横を憤る『日本外史』の「尊王斥覇」の主調低音。それはやがて討幕維新の志士の言葉や行動へと変換されていく。

【目次】
はじめに

巻之十八 徳川氏正記 徳川氏一
徳川氏の出自/松平氏、西三河を平定す/森山崩れ/家康の誕生/広忠死す/竹千代の元服/信康の誕生/清洲同盟/三河一向一揆/名を家康と改める/徳川への改姓/姉川の戦い

巻之十九 徳川氏正記 徳川氏二
武田氏と兵難を構える/三方ヶ原の戦い/信玄、死す/勝頼の来攻/長篠の戦い/遠江の諸城の回復/築山殿と信康の死/武田家の滅亡/本能寺の変/神君伊賀越え/天正壬午の乱

巻之二十 徳川氏正記 徳川氏三
信雄、家康に援けを願う/羽黒の戦い/小牧長久手の戦い/秀康を養子に遣る/第一次上田合戦/家康、秀吉の妹を娶る/家康西上し、秀吉と会す/秀吉、九州を平定す/北条氏の討伐を決す/小田原征伐/八王子城の戦い/徳川氏、関東八ヵ国を領有す/江戸入府/朝鮮出兵/秀次事件/秀吉、病に罹る/秀吉、薨ず

巻之二十一 徳川氏正記 徳川氏四
天下の政務を執る/七将三成襲撃計画/会津征伐を決す/伏見城の戦い/小山評定/家康、秀忠の出陣/伏見城の陥落/岐阜城の戦い/家康、西上す/家康の着陣/関ヶ原の戦い/秀忠の遅参/九州、四国を平定す/諸将将士の論功行賞/於大の方死す/家康、征夷大将軍に/秀忠の長男、家光誕生/秀忠、征夷大将軍に/琉球侵攻/家康、秀頼と会す

巻之二十二 徳川氏正記 徳川氏五
方広寺鐘銘事件/大坂冬の陣/真田丸の攻防/和議の成立/大坂夏の陣/諸軍向かう所を定める/死を恐るゝ者はこれより去れ/家康、諸将を部署す/家康、また勝つ/秀頼の自殺/秀忠、賞罰を評議す/武家諸法度、禁中並公家諸法度/一国一城令の布告/家康、薨る/秀忠、政権に就く/秀忠、薨る/島原の乱/家光、薨る/家綱、四代将軍に就く/徳川氏論賛

おわりに
主要参考文献一覧

 

著者紹介

頼山陽(らい・さんよう)

一七八〇〜一八三二年。江戸時代後期の漢学者、詩人。二十一歳で安芸国(広島県)を出奔、自宅幽閉赦免ののち、京都で開塾。詩、書に才能を発揮。著書は『日本外史』の他、『日本政記』『日本楽府』『山陽詩鈔』など。

訳者・解説者紹介

木村岳雄(きむら・たけお)

一九六三年、埼玉県生まれ。京都大学文学部卒業。発言者塾で西部邁氏に師事。現在は東洋大学で非常勤講師を務める。他に講演活動、漢文塾を主宰、学習塾で指導。著書に『白川静読本』(共著)、『論語清談』(監修)がある。

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フランスの人気作家が自在な筆致で「聖なる文字」の世界に誘います!『楽しいヒエログリフ入門』クリスチャン・ジャック 著 鳥取絹子 訳

楽しいヒエログリフ入門

クリスチャン・ジャック 著 鳥取絹子 訳

 この本は、2001年に紀伊國屋書店から刊行された『クリスチャン・ジャックのヒエログリフ入門』の改題・新装版です。原題はLE PETIT CHAMPOLLION ILLUSTRÉ(図説プチ・シャンポリオン)、シャンポリオンが閉ざされていたヒエログリフの世界の扉を開いてくれたように、読者を謎めいたヒエログリフの世界へと導く一冊です。
 著者のクリスチャン・ジャック(Christian Jacq)は1947年、パリ生まれ。フランスを代表するベストセラー作家の一人で、エジプト学に通暁している研究者としても名高い存在です。『太陽の王ラムセス』をはじめ古代エジプトを舞台にした壮大な歴史小説で人気を博し、その作品は世界30カ国以上で翻訳出版され、世界での売上げは累計2700万部以上、世界でもっとも読まれている現代フランス人作家とも評されています。
「ヒエログリフを学びたいという人は増えているが、誰に聞いても最初の一歩がいちばん難しいという。そこで私は、そういう人たちのために、楽しみながらヒエログリフの仕組みを身につけられる本を書きたいと思った」(著者)
 というのが、本書の執筆理由です。手練れの書き手が自在な筆致で古代エジプト人の生活ぶりや世界観もたくみに盛り込ながら、「聖なる文字」(ヒエログリフ)の基本をわかりやすく面白く教えてくれるのがこの本なのです。お読みいただければ、古代エジプトにも私たち現代人と同じように、喜怒哀楽に満ちた日々を生き抜いた人々がいたのだということも感じられる本です。ヒエログリフに関心を持った読者に最初に手に取っていただきたい一冊であると同時に、古代文明に関心がある読者や、ちょっと変わった言語に興味があるという読者にもぴったりの内容かもしれません。
 人類の文明の礎を築いた古代エジプトの人々に思いをはせながら、ヒエログリフという謎に満ちた言葉を満喫していただけたら幸いです。

(担当/碇)

 

【本書「はじめに」より】

 本書は、読者を一人前のエジプト学者にしようとか、新聞を読むようにパピルスを読めるようにしようというものではない。そんなのは大それた望みだ。そうではなく、あなたにヒエログリフの精神を初歩から手ほどきし、魅惑的な世界の内側へ数歩でもお招きするための本だ。ヒエログリフを正しく読み、難解なテキストを解読できるようになるには、何年もの勉強が必要だ。なかにはいまだに秘密を隠し、謎だらけのものもあるのだから。
 それでも、ヒエログリフが「どのような仕組みなのか」を理解するのは可能だし、なにより、ヒエログリフによって古代エジプト人の世界観を共有できる。古代エジプト人は、私たちの文化の母ともいえる、文明の創始者だ。ヒエログリフの世界を散策し、いろいろな絵文字が語りはじめるときの、あのわくわくする喜び! それをぜひあなたにも味わってもらいたい。
 また、この本には面倒な文法の話はなく、触れたとしてもごく控えめなので、ご安心を。私としては、ヒエログリフの基礎をまず知ってもらうために、あくまでもわかりやすい方法で、いくつかの基本的な要素だけを紹介するつもりだ。何も難しがることはない。絵が重要な役を演じるからだ。ほらあなたも、本を読む前に、ヒエログリフを見ているのでは? 少しでもヒエログリフを実際に使ってみると、アヒルやその仲間たちを身近に感じられるようになる。……同じ一つの記号のなかに、考えと、イメージと、音まであるのだから、これこそまさに完全な言語といえないだろうか?
 エジプトは陽気な文明で、何よりも生きる幸せが優先されていた。この小さな本で、読者のあなたに、エジプト人いわく「ヒエログリフに酔っぱらって」もらえれば……、つまり、ヒエログリフを肴に楽しんだり、喜んだりしてもらえれば、著者としてこれほど嬉しいことはない。

 

【目次】

はじめに  

第Ⅰ部 ヒエログリフとの出逢い  
第1章 シャンポリオンの偉業  
第2章 聖なるヒエログリフ!  
第3章 ヒエログリフの仕組みは?  
第4章 おかしなアルファベット  
第5章 「はい」と「いいえ」がない!?  

第Ⅱ部 ヒエログリフが語る生命  
第6章 生命とは何?  
第7章 ファラオとの出会い  
第8章 高官たちの宮廷で  
【練習問題1】  
第9章 ヒエログリフの空は頭の上に落ちてこない  
第10章 ヒエログリフで時間をみよう  
第11章 ヒエログリフの自然  
第12章 おしゃべりな動物たち  
第13章 男と女の話  
第14章 体がヒエログリフになると?  
【練習問題2】  
第15章 ヒエログリフの愛  
第16章 親と子ども  
第17章 いろいろな名前  
第18章 ヒエログリフの学校へ行こう!  
第19章 読んで、書く  
第20章 数えて、測る  
【練習問題3】  
第21章 ヒエログリフの言葉  
第22章 ヒエログリフで考えよう  
第23章 ヒエログリフで「創造」しよう  
第24章 美しい真実について  
第25章 神々とともに  
第26章 よい町にあるよい家  
第27章 食卓につこう!  
第28章 健康であるかぎり!  
【練習問題4】  
第29章 医者にかかる  
第30章 働く一日  
第31章 所有するにも努力が必要  
第32章 ヒエログリフは旅人  
第33章 戦争だ!  
【練習問題5】  
第34章 老いと落ち着き  
第35章 永遠のためのヒエログリフ  
【練習問題6】  
付録 遺跡のなかのヒエログリフ  

訳者あとがき

 

著者紹介

クリスチャン・ジャック(Christian Jacq)
1947年、パリ生まれ。フランスを代表するベストセラー作家。エジプト学者としても名高い。『太陽の王ラムセス』『ピラミッドの暗殺者』など、古代エジプトを舞台にした壮大な歴史小説で世界中にファンを持つ。その作品は世界30カ国以上で翻訳出版され、世界での売上げは2700万部以上、世界でもっとも読まれている現代フランス人作家と評されている。

訳者紹介

鳥取絹子(とっとり・きぬこ)

翻訳家、ジャーナリスト。主な著書に『「星の王子さま」隠された物語』(KKベストセラーズ)など。訳書に『崩壊学』『感染症の虚像と実像』『日本最後のシャーマンたち』(以上、草思社)、『ウクライナ現代史』(河出書房新社)、『地図で見るアフリカハンドブック』(原書房)、『シューベルトの手当て』(アルテスパブリッシング)など多数。

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家康はいつ「打倒豊臣家」のスイッチが入ったか?『大坂の陣全史 1598-1616』渡邊大門 著

大坂の陣全史

――1598-1616

渡邊大門 著

気鋭の歴史学者が
良質な一次史料と最新研究を用い、
「今わかりうる大坂の陣のすべて」
をつまびらかにした労作!

大坂の陣という合戦そのものだけでなく、
そこに至るまでの十数年にわたる家康と秀頼の政治的駆け引きの真実を、
最新研究を用いながらわかりやすく、かつ詳細に解説したのが本書です。
関ヶ原合戦以後の家康の思惑から、秀頼の動向、
大坂の陣前夜の牢人衆やキリシタンたちの動き、
村々の合戦への対応、戦後処理に至るまで幅広くカバーしてあり、
大坂の陣関連書としては類のない充実度です。
旧説の誤りを正す論考も多数で、
歴史好きにはぜひともお読みいただきたい一冊です。

(担当/貞島)

 

【内容より】

● 家康はなぜ、関ヶ原合戦後の十数年も間、豊臣家を生かし続けたのか?
● 方広寺の鐘に刻まれた「国家安康」に、家康呪詛の心はあったか?
● 関ヶ原合戦後、九度山に蟄居していた真田父子に「打倒家康」の意志はなかった
● 大坂の陣に、牢人衆・一揆勢・キリシタン・寺社・村々はどう関わったか?
● 冬の陣後の、大坂城外堀・内堀の「埋め立て」は、豊臣方も了解済だった
● 夏の陣後、幕府が執念を燃やした、「豊臣方の落人探索」

 

【目次】

第一章 豊臣秀頼の誕生と関ヶ原合戦 
第二章 関ヶ原合戦後の家康と秀頼   
第三章 方広寺鐘銘事件の経緯     
第四章 大坂冬の陣、開戦前夜    
第五章 豊臣方に集まった牢人たち   
第六章 キリシタンや寺社の動向
第七章 着々と進む開戦準備
第八章 大坂冬の陣、開戦
第九章 徳川方と豊臣方の和睦交渉
第十章 大坂夏の陣、開戦
第十一章 大坂夏の陣の戦後処理

 

著者紹介

渡邊大門(わたなべ・だいもん)

1967年、神奈川県生まれ。歴史学者。関西学院大学文学部史学科日本史学専攻卒業。佛教大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(文学)。現在、株式会社歴史と文化の研究所代表取締役。著書に『関ヶ原合戦全史 1582-1615』(草思社)、『光秀と信長 本能寺の変に黒幕はいたのか』『奪われた「三種の神器」 皇位継承の中世史』(以上、草思社文庫)、『誤解だらけの徳川家康』(幻冬舎新書)、『豊臣五奉行と家康 関ヶ原合戦をめぐる権力闘争』『戦国大名は経歴詐称する』(以上、柏書房)など。

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睡眠中の人体に潜入! 働き者の臓器たちの知られざる姿に迫る『眠っている間に体の中で何が起こっているのか』西多昌規 著

眠っている間に体の中で何が起こっているのか

西多昌規 著

■ 睡眠中の人体に潜入! そのとき「胃」や「肺」や「骨」はどうなっているか

 みなさんは、毎日の睡眠でしっかり休養できていると感じていますか? もしかすると、「寝ても疲れがとれない」「眠りが浅い」「夜中にしょっちゅう目覚める」など、睡眠に関する悩みを抱えている方も多いかもしれません。
世界的に見ても、日本人の睡眠時間がなかなか増えないという問題があります。わたしたち日本人には、睡眠より仕事や趣味のほうを優先させてしまう傾向が染みついている可能性があります。
 そこで本書は、「ちゃんと寝ること」がいかに人間の体にとって大切なのかを、睡眠中の人体内部の様々な臓器の動きや変化を通じて明らかにしようとするものです。たとえばいちばん身近な臓器である「胃」が、眠っている間にどうなっているか、ご存じでしょうか。あるいは、睡眠中の「筋肉」は、どのような活動をしているか、聞いたことはあるでしょうか?
 実は、眠っている間の体の動きや変化を、臓器別に解説した本はこれまでありません。このテーマは必要性が大きいにもかかわらず、きちんとした本がないことが、著者が本書を執筆する動機であり、本書の大きな特徴です。

■ 眠っている間に修復される私たちの体

 本書では、睡眠の質が悪くなったり睡眠時間が不足することで、風邪を引きやすくなったり、血圧が高くなり、太りやすく、筋量が減って骨折しやすくなる、さらには皮膚にダメージがあり見た目の老化が進むことなどを科学的に明らかにしています。一方で、「夜にちゃんと寝る」だけで、ホルモンバランスが整い、免疫力は上がり、脳が冴え、若返るメカニズムについても詳述しています。
 人間であれば、どんな人でも必ず毎日眠らなければなりません。本書を読めば、人生の時間において「睡眠の時間」が、実に大事なものであるかを理解できるでしょう。逆に寝不足がいかに体に悪いかということを痛感します。
 本書が広く読まれることにより、「寝る間を惜しんで○○をする」という間違ったタイパ意識が消え、「夜はきちんと寝よう」と考え直す人が増えると思われます。日本人の心身の健康にとっても非常に有益な一冊です。ぜひ多くの方に読んでいただければと願っております。

(担当/吉田)

 

スタンフォード大学教授・スタンフォード睡眠生体リズム研究所所長
西野精治氏 推薦!
「睡眠は豊かな生活において最も重要で基本的な生理現象です。睡眠の使命について明確に解き明かした書籍に初めて出会いました」

 

目次

・第1章 睡眠・生体リズムの基礎 
睡眠段階 ノンレム睡眠とレム睡眠 
睡眠はどこから生まれるのか? 睡眠中枢の話 
覚醒を制御するオレキシン 覚醒と睡眠のコントローラー 
朝の光を視交叉上核がキャッチして、交感神経を刺激する
眠りのホルモン? 謎の多いメラトニン
深部体温でわかる生体リズム
徹夜明けなのに眠りが浅いのはなぜ? 
睡眠中に活動が低くなる交感神経、活発になる副交感神経
コラム 睡眠中の寝返りは少ないほうがいい?
・第2章 眠っている間に内分泌系では何が起こっているのか 
内分泌系にとって睡眠はなぜ重要なのか
内分泌系の基礎 ホルモンとは何か
ホルモンの24時間リズムは多種多様
成長ホルモン 「寝る子は育つ」は正しい?
コルチゾル 夜中に喘息発作が多いわけ
甲状腺ホルモン 寝不足でギラギラしてくるわけ
性ホルモン 不妊や月経前症候群は夜のホルモンが不安定になるため
ブドウ糖代謝 睡眠中に血糖値は上がる?
食欲と睡眠 睡眠不足だと太りやすくなる
ミネラル調節 寝不足は脱水になりやすい
・第3章 眠っている間に免疫系では何が起こっているのか 
なぜ風邪をひくと眠くなるのか 
免疫とは? 病原体から身を守る免疫、そして睡眠
睡眠不足だと風邪をひきやすくなるのは本当?
風邪や肺炎、膀胱炎 炎症反応って何? 急性炎症について
細胞間のSNS? サイトカイン
睡眠を生じさせるサイトカイン
風邪をひくと眠くなるが、睡眠は悪化する
睡眠不足によって機能低下するサイトカイン
がんやうつ病も炎症から? 慢性炎症の怖さと睡眠不足
コラム 炎症と鎮痛薬、睡眠物質プロスタグランジン
・第4章 眠っている間に消化器系では何が起こっているのか 
寝る前に食べるとなぜ悪いのか
睡眠中の胃腸の動きと自律神経 朝にお腹が減るのはなぜ?
睡眠中は、胃に入った物が逆流しやすい
睡眠前半での胃の危機的状況
睡眠中も休まないはたらき者の小腸
大腸、肛門と睡眠 眠っている間に便が出ない精巧なメカニズム
睡眠中に胸焼けが起こる逆流性食道炎 睡眠時無呼吸症候群との意外な関係
過敏性腸症候群と睡眠障害との悪いサイクル
頑固な便秘「慢性便秘症」と睡眠 女性は寝すぎると便秘になりやすい
・第5章 眠っている間に呼吸器系では何が起こっているのか 
眠っている間の呼吸は不安定
眠っている間の呼吸筋の力は低下する
低酸素への反応も、睡眠中に鈍くなる
息苦しいと目覚めてしまうわけ
睡眠中はのどの空気の通り道がつぶれやすくなる
睡眠中は、肺での換気効率も悪くなる
睡眠時無呼吸症候群 頻度、症状、合併症
無呼吸はどうして人体に悪いのか① 交感神経系の過剰活動
無呼吸はどうして人体に悪いのか ② 低酸素状態
・第6章 眠っている間に循環器系では何が起こっているのか 
日本人の3分の1が高血圧
慢性的な睡眠不足では、血圧は上昇する
ノンレム睡眠中に血圧が下がるメカニズム
レム睡眠中に血圧が不安定になるわけ
睡眠中も血圧が下がらない危険なノン・ディッパーとは
オレキシン 隠れた睡眠中の血圧ペースメーカー
・第7章 眠っている間に脳神経系では何が起こっているのか 
眠っている間の記憶の整理と忘却
ノンレム睡眠中に素早く、かつゆっくり「振動」する脳
ノンレム睡眠中に「洗浄」される脳
レム睡眠中に血流が増加する脳
レム睡眠で脳は大人でも成長する? 
睡眠中に活動を停止するドーパミンやセロトニン
夢を見る脳
睡眠不足で老化する脳
・第8章 眠っている間に筋骨格系では何が起こっているのか
リカバリーとしての睡眠① 筋トレと睡眠
睡眠中に強化される筋肉
睡眠不足で壊れる筋肉
リカバリーとしての睡眠② 骨折と睡眠
睡眠で生まれ変わる骨
睡眠不足で壊れる骨
炎症は骨も筋肉も弱めてしまう
骨を強化する意外な立役者 レプチンと自律神経
・第9章 眠っている間に泌尿器系では何が起こっているのか 
睡眠中にトイレの回数が減る理由
子どもの夜尿症の原因は?
歳をとると困る夜間頻尿の3つの原因
睡眠不足で尿量が増える?
睡眠時無呼吸症候群と夜間頻尿の深い関係
妊娠中の夜間頻尿 がまんのし過ぎは、尿路感染症になりやすい
・第10章 眠っている間に皮膚では何が起こっているのか 
美肌には「ゴールデンタイム」だけで十分なのか
皮膚の構造とターンオーバー
成長ホルモンは皮膚のどこにはたらくのか
たるみ、シワ、乾燥、シミ……睡眠不足による皮膚ダメージ
寝不足の皮膚の血流低下と目の下の「クマ」
皮膚の酸化ストレスと睡眠
朝起きたら顔がむくむ、寝相が悪いとシワが増える
寝不足による見た目の劣化で社会から孤立する

 

著者紹介

西多昌規(にしだ・まさき)

早稲田大学教授、早稲田大学睡眠研究所所長、精神科医。1970年石川県生まれ、東京医科歯科大学卒業。国立精神・神経医療研究センター病院、ハーバード大学客員研究員、自治医科大学講師、スタンフォード大学客員講師などを経て、早稲田大学スポーツ科学学術院・教授。日本精神神経学会精神科専門医、日本睡眠学会総合専門医、日本スポーツ協会公認スポーツドクターなど。専門は睡眠医学、精神医学、身体運動とメンタルヘルス、アスリートのメンタルケア。著書に『自分の「異常性」に気づかない人たち』(草思社)、『休む技術』(大和書房)ほか多数。

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ソルニットにも影響を与えた、英国稀代の批評家の傑作集 『批評の「風景」 ジョン・バージャー選集』ジョン・バージャー著 トム・オヴァートン編 山田美明訳

批評の「風景」 ジョン・バージャー選集

ジョン・バージャー 著 トム・オヴァートン 編 山田美明 訳

ジョン・バージャーは英国が誇る美術批評家で「イギリスのベンヤミン」などとも評されます。『見るということ』や『イメージ』などの著作で日本でも確固たる地位を確立しています。本書は、そのバージャーの思想の全体像を知るのに最適な入門かつ決定版と呼べる選集です。
「キュビスムは、キュビスムの芸術家から見れば自然発生的なものだった。私たちから見れば歴史の一部だが、興味深いことにまだ終わっていない。こうして見るとキュビスムは、様式的区分としてではなく、一定数の人々が経験した瞬間として考えるべきだ。奇妙に配置された瞬間としてである。」と、キュビスムの革新的な見方を提示する「キュビスムの瞬間」や、「肖像画は手製の靴のように当人にぴったり合わなければならないが、その靴の種類な問題になることはなかったのだ」と、肖像画に描かれる個人と社会的役割について考察した「もはや肖像画は存在しない」などの美術批評はもちろんのこと、ベンヤミンやバルトについて語った文芸批評や追悼文まで、実に幅広い作品を収めています。

現代を代表する思想家で、バージャーからも影響を受けているレベッカ・ソルニットは、本書に寄せた謝辞のなかで「情熱的で過剰に政治的でありながら、同時に芸術の創作や日常の細部にも関心を持てること」と、バージャーが矛盾しそうな態度を同時に内包し体現した批評家であることを述べています。彼がそのような視点で物事を見ていたことは、本書をお読みいただけるとよくわかると思いますが、
どのようにしてそのような視座を獲得したのかに迫るのが、冒頭に収められた自伝的エッセイ「クラクフ」です。バージャー自身についてのエッセイはこれまで邦訳書に収められておらず、貴重な一作となっています。彼には、ケンという深い仲にあった人物がいました。バージャー自身はアカデミックな教育を受けていますが、それ以上にこのケンと過ごした日々が、バージャーに複雑なものの見方を教えていたのです。
「君はきちんと理解してからでなければ文末まで読まなかった。それが君の秘訣だよ」。

良質な批評は、世界を単純化することなく見つめ考え続ける力を私達に与えてくれるものです。世界が混迷を極めていくように思えるこの時代、バージャーの批評は多くのことを教えてくれることと思います。

(担当/吉田)

 

目次

第一部 地図を描き直す
一 クラクフ   
二 紙に絵を描く   
三 あらゆる絵画や彫刻の基礎は素描である  
四 フレデリック・アンタル――個人的賛辞
五 デンマークの労働者俳優への講話――観察術について(ベルトルト・ブレヒト文、
アーニャ・ロストック&ジョン・バージャー訳)
六 革命的な解体――マックス・ラファエル著『芸術の要求』について 
七 ヴァルター・ベンヤミン――好古趣味と革命 
八 物語の語り手
九 エルンスト・フィッシャー――哲学者の死
十 ガブリエル・ガルシア・マルケス――死の書記官が死を読み返す
十一 ロラン・バルト――仮面の内側
十二 ジョイスの潮に乗って進む
十三 ローザ・ルクセンブルクへの贈りもの
十四 理想的な批評家と闘う批評家
第二部  大地
十五 ルネサンスの明瞭
十六 デルフトの眺望
十七 ロマン主義のジレンマ
十八 ヴィクトリア朝時代の意識
十九 キュビスムの瞬間
二十 パラード、一九一七年
二十一 パリに関する考察
二十二 ソ連の美学
二十三 ビエンナーレ
二十四 現代の芸術と資産
二十五 もはや肖像画は存在しない
二十六 美術館の歴史的役割
二十七 芸術作品
二十八 『永遠の赤』(一九六〇年)の一九六八年版および一九七九年版への序文
二十九 『彼らの労働のなかへ』三部作への歴史的あとがき 
三十  白い鳥
三十一 魂とその操縦者
三十二 一九九一年八月の第三週
三十三 場に関する一〇論(二〇〇五年六月)
三十四 石(二〇〇三年六月、パレスチナにて)
三十五 それまでの間

 

著者紹介

ジョン・バージャー(John Berger)

1926年、ロンドン生まれ。美術批評家、脚本家、小説家、ドキュメンタリー作家。 『見るということ』『イメージ―視覚とメディア』(いずれもちくま学芸文庫)で美術批評家として知られるほか、ノンフィクション作品もあり、『G.』(新潮社)でブッカー賞を受賞。2017年没。 

編者紹介

トム・オヴァ―トン(Tom Overton)

アーカイブキュレーター。大英図書館にてジョン・バージャーのアーカイブ目録の作成を担当。ホワイトチャペル・ギャラリー、サマセット・ハウス等での展覧会のキュレーション経験があるほか、ガーディアン、ロンドン・レビュー・オブ・ブックスなどに寄稿している。

訳者紹介

山田美明(やまだ・よしあき)

英語・フランス語翻訳家。訳書に『デオナール』『ホロコースト最年少生存者たち』(ともに柏書房)、『文學の実効』(CCCメディアハウス )、『大衆の狂気』(徳間書店)、『ゴッホの耳』(早川書房)、『ファンタジーランド』(共訳、東洋経済新報社)などがある。

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